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インターネット字書きマンの落書き帳

   
異世界に行く新堂×荒井の話(BL)
別に付き合っていない新堂と荒井の話をします。
別に付き合ってないんだけど、BLなのでキスくらい……しますよ!
なぜなら俺は強火の新堂×荒井推しなので。

今回は、「0番ホーム」の噂を探って駅をウロウロする荒井の保護者ぶってついていく新堂が本当に0番ホームに到着しちゃう話です。

この話に出る「0番ホーム」の概念は「裏バイト:逃亡禁止」5巻に収録されている「駅員バイト」の話にインスパイアされています。
みんな裏バイトも読んでくれると俺が喜ぶぞい♥

新堂×荒井に興味もってください♥
興味もってくれた? ありがとー!



『0番ホーム』

 部活が終わり周囲もすっかり日が暮れた頃、疲れた身体を引きずるように駅へ向かう新堂は普段着姿で駅前の様子を窺う荒井の姿を見つけた。 何か探しているのか、駅の看板や通路をしきりに気にしているようだ。いったい何をしているのか気になった新堂は、彼に声をかけてみることにした。

「よぉ荒井、一人で何してんだよ」

 声をかけられ、荒井はひどく驚いた様子だったがそれが新堂だというのに気付くと幾分か安心したように笑みを浮かべた。

「何だ、新堂さんでしたか。いえ、ちょっと個人的な調査ですよ」
「個人的な調査を随分と遅くにするもんだな、もう学生なんて殆ど居ない時間だぜ。それともアレか、オカルト系の話か?」

 夜の調査なら怪談だろうと当てずっぽうで言ったつもりだったが、荒井は肯定の笑みを浮かべると聞いてもいないのに話しだした。

「はい、実は……0番ホームについて調べていたんです」
「0番……何だって?」
「本来、その駅には存在しないホームのことですよ。特定のルートをたどり、特定の階段を登り、エレベーターを使いたどり着いた先に、実際には存在しないホームがあるそうです。番号は44番だったり、13番だったり色々なパターンがあるようですけどね」

 話を聞いて、新堂は以前に半月だけ通っていた塾のことを思い出す。入ってから半月で教師が失踪しそのまま潰れてしまった塾だが、その塾にはエレベーターの番号を特定の順番で押すと行ける別の階層があると専らの噂だったのだ。結局それを確かめる前に塾は潰れてしまったのは今でも惜しいと思っていた。
 荒井が試したいのはエレベーターの番号に暗号を仕込むようなものではなく、実際のルートを通るうちに異世界へ迷い込んでしまうタイプのものだろうがそれでも興味深いのは確かだ。

「で、お前その順番は分かってるのかよ?」
「えぇ、幾つかのパターンを聞いてはいます。当然、噂レベルなので信憑性なんてないですが……」
「よし、だったら行ってみようぜ。あれこれ考えるより実際に行ってみたほうがいいだろ。ダメだったら、噂は噂にすぎなかったってことが分かるもんな」

 そういいながら荒井の肩を叩けば、荒井は少し嬉しそうに笑った。

「新堂さんもお好きですね……では、早速試してみましょうか」

 荒井はいくつかのパターンのルートを最初に説明した。とにかく、ルートを通っている途中に道を確認したり、他人と話をするのもいけないらしい。道順は思った以上に複雑で、ホームに降りるか降りないかだけではなく、階段の何段目まで降りてからまた引き返すといった細かい指定まであった。

「では、行きましょう。道順はぜんぶ僕が記憶していますから後を付いてくてくれますか? 僕が話しかけるまで、僕にはもちろん他の誰かに話しかけられても答えないでくださいね」

 今、話を聞いたばかりの新堂ではルートを記憶するのは不可能と判断したのだろう。荒井はそう告げ先に歩き出したから、新堂もまた黙って後を付いていった。
 階段を登り、改札を通る。ホームへおり、別の階段を登る。ホームへ降りず、階段を半ばまで。引き返し、3番ホームへ。傍目からすると駅で迷子になっているように歩き続けるが、比較的に賑やかで大きめな駅なのもあり思ったより気にしている乗客はいない。アナウンスの後、また階段を登り。それから降りてホームへ。

「……どうやらこのルートはハズレのようですね、次のルートを試してみましょう」
「おう、わかった。喋らないでいるってのも結構キツいな」

 時々立ち止まり、軽くルートを確認しながら何度、挑戦しただろう。
 4番ホームへ着くはずの階段を登った先に「44番」と、4の印刷が重なったホームが突然目の前に開けた。
 もう夕暮れ時だったはずなのに、周囲はどこか明るい。だがその明るさは日の出の明るさではなく、白色灯がちらつくような人工的な明るさだった。ホームはコンクリートで出来たごく普通のホームで安っぽいベンチも備え付けられているのだが、立てられた時刻表の文字は滲んでいて読むことが出来ない。
 ここが荒井の言う0番ホームなのだろうか。そう思い荒井の方を見れば、荒井は静かに頷いて見せた。

「0番ホームへ到着したようです。まさか本当に到着できるとは思いませんでした」
「あ、やっぱりここがそうなんだな。何か変わった所だよな、外なのに外の風景もぜんぶ書き割りみたいに作り物っぽいし、もう夜なのにやけに明るいし」

 改めてホームを見渡せば、広さや形は既存の駅と殆ど変わらない風に見える。だが、看板は明らかにおかしい。駅名はにじんでいたりかすれていて読めないし、時刻表は文字化けしたような意味不明な言葉が並んでいる有様だ。ただ、時計だけは普通でスマホの時刻と同じ時間を刻んでいた。

「スマホは一応使えるんだな。圏外だから電話が通じる訳じゃなさそうだが」

 自分のスマホと時計の時刻を見比べる新堂の隣で、荒井もスマホを取り出すと看板や時刻表の写真を撮っていた。せっかくだから証拠写真を残しているのだろう。新堂もそれを真似て駅の周辺を写真におさめる。写った画像はやけに白っぽく人がいないのを覗けば一見すると普通の駅のようだったろう。
 と、その時、新堂の前にゆらりと影が蠢く。人影のようだが新堂より遙かに背が高く、見た限り2m以上はあるだろう。はっと顔をあげ思わず声を出しそうになる新堂の口を、荒井が手のひらで押さえた。

「ダメです新堂さん。影や、異形のものに反応してはいけません。連れて行かれますよ」
「……そんなルール、聞いて無ぇぞ」
「言ってませんでしたからね。僕もまさか本当に来れると思っていなかったので……ただ、変に反応したり見えたりしてる素振りを向けると連れて行かれるとは良く言いますので、反応しないでください」

 新堂は頭を掻きながらベンチへ腰掛ける。すると、駅には思いの外、影の往来が多い事に気付いた。影には影の生活があるのか、階段へ足早に急いだり、駅で電車を待っていたりするような素振りが見える。

「思ったより人影が多いな、幽霊の世界にも勤務時間があるのか?」
「幽霊、というよりここにいるのは平行世界の住人が近いかもしれません。僕たちと似た、でも別世界を生きている人たちを、ガラス一つ隔てて観察出来るような場所なんですよ、ここは」
「ふぅん……よくわかんねぇけど向こうの連中、死んでる訳ではなく俺たちみたいに生活している普通の人間って訳か」
「えぇ、そうなりますね。僕たちの世界と同じルール、同じ摂理で生きているとは限りませんが」

 ホームに電車が通り過ぎて行く。快速電車か駅を飛ばし走る電車は新堂が普段登下校に使っている車両とあまりかわりないように見えた。

「電車で通勤、通学してるのか。こっちの世界とあんまり変わらねぇな。薄ぼんやり見えるから味気ねぇ気がするが」
「そうですね……ですが、異世界をのぞける空間があると知れただけでも幸運ですよ。ここは確かに普段、僕たちのいる世界じゃぁない。僕たちの知らない世界が存在する、それを目の当たりに出来ただけでも僥倖ではありませんか」

 新堂の隣に座ると、荒井はどこか上機嫌な様子で足を伸ばし周囲を見た。心なしか普段より猫背もなおっている。好奇心旺盛な荒井だから、リスクがあっても異世界の実在を確認できた喜びの方が大きいのだろう。

「ところで、ここから帰れるんだよな。まさか、来る事ばっかり考えて帰り方は知らないなんてオチか?」
「帰り方まで深く考えていませんでしたが……」
「おい、まてよここに閉じ込められるのはゴメンだぜ」
「大丈夫ですよ、帰るのはそんなに難しくはないと思います。来るのにルールが多いぶん、元の場所に戻されるのは簡単なはずですから」
「本当か……?」

 新堂の問いかけに荒井は軽く肩をすくめて見せる。思ったよりは計画性がない荒井の性格に呆れながらも、新堂もまたどこか楽観的に周囲を眺めていた。荒井と同様に、来た道を戻れば元の世界に戻れるような気がしていたからだ。
 時計を見れば20時を過ぎている。部活がある新堂は帰りがこの時間になるのも珍しくないが、帰宅部の荒井にとって流石に遅い時間だろう。一度家に帰ってから外出しているなら尚更だ。

「そろそろ帰るか、こんな遅くまで出歩いていたらいくらお前の家でも心配するだろ」
「そうですね……目的は果たせましたし、写真も残しておきましたから」

 その時、新堂も荒井もすっかり油断していた。揺れる影はただ揺れているだけでこちらに一切興味を示していないか、見えていないような動きしかしていなかったからだ。 だからこそ、二人並んでホームから去ろうとした時、荒井の前に突如として天井から垂れ下がる影が現れたのは予想外の事であり、普段から冷静な荒井も思わず声をあげそうになったのは当然のことだったろう。
 反応したら、つれていかれる。
 荒井からそう聞いていた新堂はとっさに荒井の身体を抱き寄せると「悪い」と小さく口にして、そのまま唇を重ねた。悲鳴をあげそうだった所、強引に塞がれた唇は喉を震わせるだけで声にはならない。新堂は横目で影の様子を確かめながら、唇を重ねたまま歩き出した。下手に喋れる状態にしているより、お互い声が出ない状態のまま進んだ方が無難だと思ったからだ。
 階段を降り、角を曲がりきるまで唇を重ねていたが影の気配が薄くなったのでようやくキスを止める。

「……このへんなら大丈夫そうだな。悪ぃな荒井、急だったから止められねぇと思って」
「い、いえ。大丈夫、ですけど……」

 荒井は顔を赤くするとすっかり俯いて唇をおさえる。

「……意外と大胆ですね。こういう事には奥手な人だと思っていました」

 キスをされた事を言っているのだろう。新堂としては人口呼吸のような、人命救助的な気持ちでしたキスだったから不可抗力程度にしか思っていなかったが荒井はそうではないようだ。 あまりに恥ずかしがる荒井を前にして、新堂まで顔が赤くなる。キスだと意識してなかったのに、改めて唇を触れる事が特別なことなのだと再認識した気分だった。

「何だよやけに照れるじゃ無ぇか……初めてだったか?」
「べ、別に新堂さんには関係ないでしょう……行きますよ。まだ現実には戻ってないみたいですから」

 荒井に背を押され、新堂は駅を歩き出す。
 程なくして人の気配が戻り駅はいつもの賑やかさを取り戻していき、元の世界に戻ってきた実感が沸くが今の新堂は背後で照れからか視線も合わそうとしない後輩の態度ばかりが気になり、異世界に行ったことなど何処か遠くの出来事のように思えるのだった。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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