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インターネット字書きマンの落書き帳

   
【紅い絵蝋燭のような少年(新荒・BL)】
新堂さんと荒井くんが恋人として付き合っている世界線の話です。
(挨拶がわりのCP説明)

荒井くんに対して暴力欲求が募ってしまいつい蛮行と蹂躙の攻めをしてしまう新堂さんと、せめられるなら徹底的に屈服させて欲しい荒井くんの倒錯した性をあますところなく書いてます。
(荒ぶる作者のフェチズム)

今回の話は……。
自分の血や肉を新堂さんの口に詰め込んで出来るだけ食べて欲しいという気持ちがある荒井くんがやけに美味しい話です。

あなたもやけに美味しい肉には気をつけてくださいね。

この話はpixivでよそ行き用に編集しなおして出してます → 興味があったらこちらへどうぞ
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「紅い絵蝋燭の人魚」

 珠のようになってにじむ指先の血を新堂誠の鼻先に突き出すと荒井昭二は悪戯っぽく笑って見せた。

「さぁ、口を開けて……舐めてください。あなたが傷つけたんですからね」

 そう告げ差し出された指は蝋のように艶やかで紅くにじんだ血の色はさながら絵蝋燭に描かれた椿のような彩りにも見えただろう。ぷっくりと珠のように丸くなった赤い滴は血だと分かっているのに甘やかな香りすら漂わせているように思う。
 それが荒井の血だからいかにも美味そうに見えるのか、それとも新堂自信の内心に人間の血肉を求めるような獰猛さが秘められていたのか判別はつかなかったがその血は艶やかで香しく、きっと荒井に舐めろと言われずとも口に含んでいただろう。
 指先を少し舐ればその血はまるで濃厚な蜜のように甘く新堂の喉を転がり落ちていく。普通の血であれば錆のようなにおいを漂わせ味もまた鉄を舐めるようなものなのだが新堂の舌を滑り落ちていったのは上等の砂糖菓子のように思えた。

 だから耐えきれずひたすらに指を舐る。わずかに針を刺した程度の小さな傷ではさして血が出ないのも分かっていたが一滴残らずその血を吸い出してやりたいと思うほどその血は甘やかであった。

「新堂さん、僕は……美味しいですか?」

 散々指を舐らせた後、荒井は妖しく笑う。それは一心不乱に指を舐る新堂の様子がおかしくそして愛しいかのようだった。
 どうして荒井の血はこんなにも甘いのだろう。そんな疑問すら彼方へ行く程の味がまだ舌の上に残っている。

「あぁ……お前の血は、えらく美味ェ……だがどういうコトだ? この味……」

 新堂が荒井の指から離れれば涎が名残惜しそうに糸をひいていた。 その身体に脈打つ血潮のすべてを飲み干したくなるほどに美味い血が流れている。
 だが人間の血はもっと錆臭い鉄の味がするのではないか。少なくとも新堂の血はもっと錆のようなにおいがするし味もほとんど感じない。
 それに荒井の身体もおかしい。今しがた傷つけたはずの指にある傷はもう塞がりかけているのだ。すっかり傷が消えた自分の白い指先を眺め、荒井は一つため息をつく。

「さぁ、どうしてでしょうね? 僕にもわからないんですが……僕はここ数年。あるいはそう、数十年は……傷のなおりが少しばかり早いのです。そして僕の身体はどうにも『美味しい』と感じさせるようなのです」

 荒井はそう告げながら自分の服を脱ぐ。
 やけに白い肌はこれから大人になろうとする少年の体つきでありうっすらと筋肉が付いているものの手や胸などはいかにも柔らかそうであった。

「新堂さん、僕を味わってみませんか?」

 肌を曝け出し、荒井は挑発するように笑う。 その言葉の意味を新堂は計りかねていた。
 味わうとは、いくつかの意味があるだろう。
 今しがた傷ついた指先を舐り血の味を確かめるのも味わうことだ。荒井の白い肌を存分に引き裂いて蹂躙し身体に自分の所有物であると証をつけるのもまた征服を味わうというコトだろう。またその身体に己の身体を楔のように穿ち情欲を貪って感度を確かめ絶頂に打ち震える呼吸と声を楽しむのもまた身体を味わうと言えよう。

「どういう意味だテメェ……」

 どこまで求めているのだろう。何を求めているのだろう。 このまま許されてしまえば全て欲してしまう貪欲な獣を抑えるよう新堂が問えば、荒井は相変わらず涼しい顔をして笑っていた。

「そのままの意味ですよ。あなたの抱いた味わうという言葉の意味全てを、僕で試してみては? ……あなたになら食べられてもいいかと思っていますからね」

 荒井の言い方は本気なのか冗談なのか真意が全く見えてこない。 だが食べられてもいいという一言は元より乏しい新堂の自制心を破壊するのに充分だった。
 白く華奢な身体を勢いよく押し首筋に強く噛みついてから後のことは新堂もよく覚えてはいない。だが文字通り身体全体を貪り尽くしたと言っていいだろう。
 身体中を噛み、背に爪をたて、喘ぎ声をもらしてのけぞる唇を強引に塞ぐ。 裂けた肌からは真新しい血が流れそれを舐ればその血はやはり濃厚な蜜のように甘く舌の上に転がり喉の奥へと墜ちていく。
 声を我慢し唇をかみしめる姿も、耐えきれず泣きながら喘ぎ声をあげ身体をビクビクと震わせる姿も何とも言えぬ程に官能的で新堂の支配欲も加虐欲も心地よく刺激する。
 何度目かもわからぬ絶頂の後ベッドに横たわる荒井の姿を見て新堂が我に返った時、荒井の身体はすっかり血塗れていた。

「おい……大丈夫かよ、荒井……」

 濃い血のにおいに包まれどこか朦朧とする頭を支え新堂は荒井の身体に触れる。男にしては華奢で薄っぺらい旨はあちこちが非道い噛み傷だらけでありその全ては新堂がつけた傷だった。
 もっとその血を味わうためかみついた傷から血をすすって、血が出なくなったらまた噛みついてを繰り返した結果身体中に歯形がはっきりと残っており、今もなおその傷からは血がにじみ続けていた。
 いくら何でも血が流れすぎているか。シーツには白濁した液体と血の色が混じり薄紅色となって広がっている。人間はある程度血を失うと死ぬのだというが荒井は大丈夫なのだろうか。

「死んでねぇよな……」

 恐る恐る触れれば、まるで水の中にいるかのように荒井の肌は冷たかった。
 死んでいるのか。あわてて胸の音を確かめればトクン、トクンと心臓が脈打つ音が聞こえる。身体は冷たいがどうやら生きてはいるようだ。
 その安堵から新堂は一つため息をついた。

「僕を殺したかと思いましたか?」

 胸から耳を離せば、荒井が話しかけてくる。
 その目はどこか夢見心地で心ここにあらずといった様子だった。

「おぅ……俺ぁ加減が出来ねぇからな。お前が変な挑発するから、勢い余って殺しちまったかと思ったぜ」
「そう思ったのなら、起こす時は口づけなのでは? ほら、おとぎ話ではよくあるでしょう。死んだと思った眠れる姫を起こす魔法の口づけなど……」
「おとぎ話とは無縁のようなお前がよく言うぜ」

 だが、キスをするというのは悪くない。新堂はどこか呆けたままの荒井と唇を重ねれば、荒井は嬉しそうに新堂の舌や唇を舐りそのキスを楽しんでいるようだった。
 あぁ、いつから荒井とこうしてキスをし肌を重ねるのが当たり前になっているのだろう。
 つい最近な気もするし、ずっと以前からのような気もする。
 抑えきれない焦燥と自制できない暴力に突き上げられるまま欲求を満たすかのように相手の身体を蹂躙し支配するどうしようもなく倒錯した性を全て受け止め受け入れる真っ白なキャンバスが荒井の身体だったのは何とはなしに覚えているがそれがいつからかはもうわすれてしまっていた。
 だが誰かに支配され押さえつけられ暴力により傷つけられた痛みすら愛おしいと思う彼の歪んだ魂は新堂のもつ歪さとぴったり合致していたのは偶然でありともに寄り添い傍にいるようになったのは必然だろう。
 愛を暴力で語り快楽を痛みで感じ続ける最中、業はより深く絆はより強く結びつく。
 だから身体を傷つけ血を舐るなどいまさら恐れるコトでもなければ禁忌でさえなかった。これまで荒井の身体から出るエキスを浴びる程口に入れてきたのだ。汗や精液が血に変わっただけ。さしたる変化ではないといえよう。
 だがそれでも今日味わった血はいつもと違う気がする。元々荒井の精液は薄いような気がしていたが体質的なものかと思っていた。
 しかし彼の血は明らかに甘く香しい。まるで彼の血肉が洋菓子で作られているかのように思える程だ。だからつい普段より強く噛み、その血を啜るなどしていた。
 これではまるで吸血鬼だ。新堂はそんなコトを思いながら汚れた口を拭う。
 それでも理性を働かせて精一杯我慢をしたのだ。もう少し荒井の肉が柔らかければかみちぎって肉を喰らっていたかもしれないと思うと非道く恐ろしい。
 新堂は自分が倒錯した性をもち倫理や道徳の向こう側にいるのを理解していたがそれでも人の肉を喰らうというのにはまだ随分と抵抗があった。
 一方の荒井は血に濡れた自分の身体からにじむ紅い液体をぬるぬると指先に塗りつけ、蕩けたような視線を向ける。
 散々と与えられた痛みと窮屈なほどに貫かれた身体の快楽がまだ残っているのか、その目は新堂を見ているようでまたどこか別の所を向いているようだった。

「おい、大丈夫か荒井……」

 どこか虚ろに俯いて白い首筋を晒す荒井の血濡れた身体を前にやはり死ぬほどの痛みを与えていたのではと不意に不安になった新堂は彼の目前へ手を伸ばす。 すると荒井は彼の指先へと突然かじり付いた。
 痛いと思って手を引っ込めたが指先にはじわりと血がにじんでいる。

「何すんだ、テメェ……」

 鋭い視線で睨めつける新堂を前に、荒井はまたどこか悪戯っぽく笑って見せた。

「すいません、散々噛みつかれたから少しばかり仕返しをしてみたくなりまして……あぁ、でも血が出てしまった。どうか……僕に舐らせてくれませんか、新堂さん……くれますよ、ね?」

 そして微かな吐息を漏らし、愛おしそうに新堂の手を握る。
 小さな唇からやけに紅い舌が伸び、彼が何かを言うより先に裂けた傷を舐り始めた。

「ん……新堂さんの味……」

 ぴちゃぴちゃと無心で指をしゃぶりながら恍惚の表情を向ける荒井の肌はいつもより一層白く、長い睫毛がやけに艶めかしく見える。
 本当に、顔だけ見ていれば少年なのか少女なのか判別出来ないほど秀麗な顔立ちだ。 人形のように整っているといえばその通りだろう。だが人形にしてはあまりに破棄がなく表情も乏しい。そういう意味で荒井の顔は人形より人間味がないだろう。
 新堂はそんなコトを思いながら荒井の口へと少し乱暴に指を突っ込んでいた。

「がっ……んっ、ん……」

 口の中をかき回せば苦しそうな表情を見せ、その表情を見るとやはり荒井も人間なのだと安心する。
 荒井はどれだけ苦しみを与えても新堂に対して忠実であろうとし賢明に指を舐ろうとする姿は執着と献身の入り交じった思いから出た行動だったろう。喉の奥まで指を入れても吐き出そうとせず涎を垂らしたままでも舐ろうとする姿は新堂の支配欲を大いに満足させ、それは指を少し噛まれたくらいどうってことない痛みに思えた。

「もういい、荒井。充分だ」

 ひとしきり彼の小さな口を指で弄べば滴る涎に鮮血が混じる。
 噛まれた傷は思ったより深かったのか、まだ血が止まってはいなかった。だが些細な傷だ。水で洗って絆創膏でも貼ればいいだろう。

「……血、止まっていませんね」
「ん? あぁ……まぁすぐ止まるさ。たいした傷じゃない」

 新堂は自分でも傷を舐る。荒井の唾液がまだ残っているせいか、指先は水飴を少し付けたようなほのかな甘みが残っていた。
 あぁ、それにしてもどうして荒井の身体はこんなにも美味しいんだ。 世の中にある美味いものを全て煮詰めたような味と香りを秘めている。普段はそれを服で隠しているのだろうがその血肉はこんなにも美味なのか。
 人間というのは実は美味い生き物なのか。それとも荒井が特別なのか……ぼんやりと考える新堂を前に、荒井の声が聞こえた。

「やはり、これくらいでは新堂さんも……僕のようなものには、なってくれませんか……」

 僕のようなものには、なってくれない。
 荒井は確かにそう言った。

 どういう意味だろうか。
 自分と荒井では歳も体格も違うし性格に関していえば正反対だ。荒井が自分のようになるのもまた自分が荒井のようになるのも無理な話だし、お互いに違うからこそ引き寄せられたのではないか。

「どうした、荒井? ……俺はテメェみてぇにはなれねぇコトくらいわかってるだろう」
「あぁ、聞こえてましたか。えぇ、そうなんです。そうなんですけど……ね」

 そこで荒井は柔らかに笑う。

「そうなんですけど……このままずぅっと、一人で生きていくのはやはり寂しいじゃないですか。だから……新堂さんも僕みたいになってくれればいいなんて、少し思っているんですよ」

 そうしてベッドの上に座りシーツを身体に巻き付けた荒井の姿はさながら人魚のようだった。
 丘に打ち上げられたまま身体の自由がきかずじっとその場でうずくまる人魚のような。

 ……あぁ、そういえば荒井は以前なんの話しをした?

 人魚の肉を喰らったという話をしたのは荒井だったろうか。あれは集まりの時に出た与太話であり坂上を怯えさせるために作ったデタラメも多かった。
 荒井の話は荒唐無稽でおおよそ本当にあったコトだとは思えないが、やけにリアリティのある語り口は今でも耳に残っている。
 あの時荒井は人魚の肉を喰らった話しをしただろう。その肉は口のなかで雪のように溶けていくような驚くほど柔らかで美味だったというではないか。
 それはきっと今日散々としゃぶりつくしたあの甘やかな血の味と同じような味だったのではないだろうか。

 人魚は不老不死の呪いをもつといい、だがその人魚は呪いがつきて死んだのだと荒井は言っていた。
 不老不死の呪いはもう途切れたのだと。だからもう、人魚は死んでしまったのだと。
 だが坂上はあの日奇妙なことを口走っていなかったか。

「十年前、ぼくはあの人を見たコトがあるんです。あの頃と同じ姿で……」

 そんなコトを終わったあと、一人つぶやいてはいなかったか。
 10年前に今の姿をしているなら荒井はもう30に届く歳になる。だが彼の身体はまだ大人のものではなく、その肌の柔らかさも艶やかさも少年の肌に近い。
 こんな身体をしているのにすでに成人しているとはどうにも思いがたい。

 だとすれば人魚の呪いはまだ残っていて荒井の身体を蝕んで年を取るのをわすれさせ死ぬことすら叶わない無間地獄の歩みをまだ続けているというのだろうか。
 それまで誰にも告げず一人で呪いを背負って生きていたが、新堂にもこちら側に来てほしいと願っているのだろうか。
 それを願いよりそって二人で生きていきたいと。年を取った新堂を見送ることはなく、お互い若い姿のままでずっと傍にいてほしいと……。

 何もわからない。どれが真実でどれが虚構なのか何も。
 だがひとつだけ、わかることがある。

「おまえがどんな姿をしてても、おまえが何者でも、もう俺が一人にしてやるかよ……」

 誰が何といおうと、自分が一人にはさせない。
 新堂は自らに言い聞かせるよう呟いて唇を重ね、荒井もまたその唇を受け入れ慈しむように彼の舌を舐る。

「嬉しいです、新堂さん。僕が言っても信じられないかもしれませんけど……あなたの思いが、愛おしい……」

 荒井は新堂の頬を撫でると、微かに唇を開く。

『だからこそ、一緒に年を取るコトができたらどんなに幸せだったろう』

 唇がそう動いたように見えたから、新堂はその言葉を飲み込むようにまたキスを続ける。
 荒井の身体いっぱいに付けられた噛み傷はすでに治りその肌は元通り蝋を塗ったかのような滑らかな白さを取り戻していた。

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