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インターネット字書きマンの落書き帳

   
心霊スポットがある街でタクシー運転手をしている伯父の話
オリジナルの怪談を書きました。
₍₍(ง˘ω˘)ว⁾⁾

夏なので怪談の季節!
ですから、怪談っぽい怪談を語ってみたいと思います。

今回は、心霊スポットがある街で運転手をしている人から聞いた話をします。
俺の土地も比較的に田舎なんですが、やれあそこは出る、ここは出ると言われる場所は結構ありますね。
どうせなら石油でも出てほしいもんです。

『心霊スポットを語る』

 ところでキミは心霊スポットに行った事はあるか?
 いや、別に答えなくてもいい。
 ただ怪談なんぞに興味があるのならそういう場所にも興味があるんじゃないかと思って聞いてみただけだ、そういう場所に行く事を咎めている訳じゃないさ。
 趣味ってのは他人に迷惑をかけず、法を犯してない限り好きなだけ楽しんで欲しいと思っているからな。あぁいう所は、廃墟になった家や禁足地の山中なんかにも行くんだろう?
 経験上、そういう場所には集団で連んで気が大きくなった粗野な連中や感染症を運ぶ虫の類いが多くいる、身の安全に充分注意して楽しんでくれたまえよ。
 心霊スポットといえば、俺の故郷にもあるんだよ。見晴らしのいい峠のカーブなんだが事故が多発していてね。
 事故そのものは、山の下り坂で不意に現れる思ったよりも長いカーブってのもあるんだろうな。油断していてスピードを出しすぎ曲がれなくなった結果だろうと言われているし、地元でもあの道は少し危ないと言われている場所だからな。おこるべくして起こっていると言ってもいいだろう。実際に死亡事故も起こっているから心霊スポットによくある、事故で死んだ誰かの霊っていう文言にも嘘はない、不謹慎な言い方をするとリアリティのある心霊スポットってことだな。
 実際、オカルト雑誌では幽霊の出るカーブとして紹介されているし、最近ではインターネットの動画サイトなんかでも取り上げられているらしい。
 さて、実は俺の身内にタクシー運転手がいるんだが、客の中に時々その心霊スポットに行って欲しいってのが時々にいるそうなんだ。
 車がないと不便な街だからな。心霊スポットに興味があって出かけてみたが、現場の駅についたら歩いてはいけない距離だったからタクシーで行くんだろうな。
 身内の運転手は……この呼び方は不便だから仮に伯父にしておくか。
 伯父は、なんであんな人気の無い場所に行きたがる客が多いのか不思議だったから、その場所をインターネットで調べてみてはじめてそこが心霊スポットになってるのを知ったそうだよ。
 駅からは遠いし、夜に来る客が多くて乗せればなかなか稼ぎがいいから客としては歓迎だが、心霊スポットだと知ると誰かに見られている嫌な気分になるってぼやいていたな。
 時々、ここで暫く待ってほしいなんて頼まれて出て行った客を一人で何もせずボーッと待っていると、気付いたらバックミラーに幽霊が映るんじゃないかとも言っていたか。
「こんなコトなら心霊スポットだって調べなければ良かった」
 とは言っていたが、好奇心猫を殺すじゃぁないが世の中知らない方が幸せってことはいくらでもあるんだろうな、キミも気をつけるといい。
 最も、俺から言わせてもらえば伯父も少し気にしすぎだよな。
 この世界に人間が存在して何千年かは経っているんだから、人が死んでない場所を見つける方が難しいんじゃないか。どんなに賑やかな繁華街でも、誰かしら死んでると思うから人が死んだだけで心霊スポットになるなら今頃世界中は心霊スポットだと思うんだがなぁ。
 なんて、話が脱線したな。伯父の話を続けようか。
 時刻は20時頃だから都心ならまだ夜のうちにも入らずどこの店でも明かりを爛々と輝かせて営業していんだろうが、田舎ってのは驚くほど夜が早くってな。 伯父がタクシー運転手をしている場所も随分と田舎町なものだから、20時頃でも都心の2時頃くらいの静けさであたりはもう真っ暗。開いている店はコンビニ2件と唯一あるチェーンの居酒屋くらいな上、住民の殆どが車をもっているような土地だ。普段タクシーを使う客は専ら車が運転出来なくなった老人を病院に運ぶ事だから夜には客なんか来ないのを知っているから、そろそろ職場に戻ろうと思い駅前を走っていたそうだよ。
 田舎のタクシーってのは職場に戻って客からの電話を待つって事が多いんだ。特に夜になって乗せるのは酔っ払って自分で運転が出来ないという飲み客が圧倒的に多いからな。都会のタクシーみたいに流して走ったりはしないんだ。
 もし観光地でもないような田舎に行った時、偶然タクシーがやってくる事は殆ど無いんだ。旅行する時にその土地にあるタクシーの電話番号は控えておいた方がいいかもな。
 だから伯父が駅前を通ったのは偶然だった。
 このあたりじゃ見ない風体の若い男が立っているな、と思ったらどうやらタクシーを探していたようでな、夜の客なんて珍しいと思い車を止めたんだと。
 垢抜けた服装に洒落たバックを肩に掛けている外見から、この土地の人間じゃないのはすぐわかった。さっきも言ったが駅前でタクシーを探すなんてこと、そもそもこの土地に住んでいたらしないからな。都会から来た旅行客が宿まで足が無く困っているんだろうと思って乗せたら、その客は随分と客は深刻な表情で件の心霊スポットまで行って欲しいと頼んだそうだ。
 伯父はその頃にはすっかり慣れて、「30分くらいかかりますよ」なんて伝えてからタクシーを走らせた。こんな夜中に来るなんてあの心霊スポットも有名になったものだな、なんて思いながら、当たり障りのない話題を投げかけてみたんだが、男は随分と思い詰めた表情で黙りこくったまま何か考えているようだった。
 最も、タクシーの客なんて色々いるからな。あまり話しかけてほしくないタイプか、あるいは長旅で疲れているのだろうと思い伯父は運転に集中する事にした。
 バックミラーで時々、客がいるのを確認して。何とはなしに、あの心霊スポットにある噂を思い出したりしてたそうだよ。
 そうそう、その心霊スポットは事故死した男の幽霊が出るって噂だった。
 スピードを出してバイクを運転していた男が、峠道のカーブを曲がり損ねてガードレールにぶつかり、その衝撃で首を切断した。それから首なしの幽霊がぼんやりと突っ立っている、なんてよくある怪談話だろう。
 実際にスピードの出やすい峠道で事故も多いらしくてな、噂にあがる心霊スポットには時々に花が供えられているって話だから事故死した亡霊ってのはいかにも最もらしい話だなんて、そんな事を思っていた。
 その間、客の男は怯えた顔でじぃっと外の様子を眺めていたそうだよ。田舎の山道なんてライトが照らされてないところは真っ暗で何も見えないっていうのにな。
 そうして沈黙のまま車を走らせいよいよ噂にある心霊スポットにさしかかってくると、男はますます顔色を悪くして、それでも目が離せないといった様子でじっと外を見ているんだ。田舎の山道なんて目をこらしても外の風景なんか何も見えやしないってのに、まるで何かを確かめるみたいにな。
 伯父はただ黙って外を見ている客を、心霊スポットを見に来た奴にしては随分と大人しいものだと思ったそうだよ。大体、心霊スポットをそうだと知ってやってくる人間はあれこれと土地の情報を聞いたり、実際に事故があるか聞いたり、複数人で騒ぎながらやってくるパターンが多かったみたいだしな。
 ひょっとしたら事故の遺族かとも思ったが、遺族が出向くには随分と遅い時間だし花の一つももってない。いったいどうしてこんな顔で外を見ているのかと不思議に思ってたところ、男は 急に「うわぁぁッ」と叫び声をあげると、その場で小さく蹲っちまったそうだ。
 伯父も突然バックミラーから男の姿が消えたもので、すわ幽霊かと肝を冷やしたみたいだが、後部座席に目をやるとぐっしょりとシートが濡れていたこともなく、男が座席の下に転がりそうな勢いで身体を小さくして、何度も何度も
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
 なんて、気が動転したように呟いていたそうだよ。
 場所もちょうど幽霊が出ると噂の心霊スポットでな。伯父は「あぁ、きっとこの人は霊感ってのを持っている人で、幽霊らしい姿を見たに違いない」と。そう思って心霊スポットから離れ、最寄りのコンビニまでタクシーを走らせたそうだ。
 明るい場所なら落ち着くだろうと思ったし、コンビニなら人がいるから心霊スポットにいるより気が紛れるだろうと考えたんだろうな。運転中は、自棄を起こした客が襲ってきやしないかと心配で、しきりに「大丈夫です」「心配ありませんよ」と優しい声をかけていたそうだけどな。
 そうしてコンビニにたどり着いて、甘いコーヒーなんかを差し出すと男はぽつぽつ語り始めたそうだ。
「2年前、この場所にツーリングに来た事があるんです」
「道中で同じように一人でツーリングに来ていたバイク乗りと仲良くなって、それじゃあ一緒に目的地まで行こうと言ったら、その途中に相手が事故にあったんですよ」
「その時俺は怖くなって、逃げ出してしまったんです。だって仕方ないでしょう、その人とは旅の途中で気があったというだけで、名前も住所も知らないんですから」
「あの時、少し調子に乗って随分とスピードも出してました。バイクも、警察に見られたら良い顔をしないタイプの手を入れていたのもあって、ますます関わりたくなかったんです」
「それで、逃げるようにその場を立ち去った後、この場所で幽霊が出るって聞いたんです。ひょっとしたら、あの時の男が幽霊になって出てきてるんじゃないか。俺の事を恨んでいるんじゃないかって。それで、事故がおきたカーブにさしかかったとき、俺には見えたんですよ」
「幽霊になったあの男が、俺の方を指さしてたのを。まるで、助けてくれなかった俺のコトを責めるみたいに……」
 さて、それからその男がどうなったのか、というのは割愛しておこう。
 俺は一応聞いてるが、話のキモはそこじゃい。それに、こういう因果はあえて言わない方が怪談らしくて面白いだろう。
 だから俺からは、もう少し別の話を伝えておこうと思う。
 実はこの心霊スポットにいる幽霊、虚空にむけて指をさしているのは確かなようなんだが、噂では事故で首と胴体が離れたが首の方が見つからず、自分の首がある場所を指しているって話なんだ。
 その男を指さしていた訳じゃないのに、男が罪悪感から自分が指されたのだと勘違いしたのか。それとも、無くなった首を指していたという解釈が間違っていて「オマエが俺を置いていったんだ」と訴えていたのか、はたまた真相が他にあるのか……キミはどう思う。
 それと、もう一つ伝えておこうか。
 伯父の話だと、その心霊スポットはもう5年前から幽霊が出るって噂があったそうだ。
 また、あの峠にはここ2,3年で死亡事故になるほど大きな事故は無くなっているそうなんだよ。危険なカーブでもあるし、警察が少し厳しく見回るようになってめっきり事故が減ったそうだ。
 さて……男はいったい、どこから幻惑されていたんだろうか。
 それとも幻惑されていたのは男ではなく伯父の方だったのか、今となっては詮無き事だな。
 俺の話は、これでおしまいだよ。
 最初に心霊スポットへ行くかどうか聞いたよな。もしキミが臆せず行くタイプの人間なら最初にも言ったが、くれぐれも他人様に迷惑をかけないよう、自分の対処できる範疇で楽しんでくるといい。
 自分で自分が制御できなくなるほどのめり込むのは、何においても危険だからな。

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HN:
東吾
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職業:
インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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