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インターネット字書きマンの落書き帳

   
シンドーパイセンの家に泊まるの意識しすぎる荒井の話(BL)
平和な世界線で普通に付き合っている新堂と荒井の話をしています。(挨拶)

最近は「今日は親がいないからウチに遊びに来いよ」って新堂から言われてじゃぁ行くかなぁと思って出かけてみたものの、普段は自宅で会っているから落ち着かない気持ちになって色々考えこんでしまう荒井の話が俺の中でブームなのでその話です。

今回はお風呂に入っていたら色々と考えてしまいすっかりのぼせてしまう荒井の話してます。

初々しいような男子高校生のCPは好きかい?
今日から好きになろうぜ!



『アウェイ』

 荒井昭二は裸のまま湯の張ったバスタブをぼんやりと見つめていた。
 新堂誠の両親が不在だから遊びに来ないかと誘われた、その意味がわからないほど鈍感ではなかったし、すでに新堂とは何度も肌を重ねているのだからなおさらだ。
 今になって臆することもなければ恥じらう事もないはずなのだが、初めて新堂の家に泊まるという事を意識すればするほど荒井は普段より消極的な考えばかり抱くようになっていた。

「バスルームをあまり汚さないようにしないといけませんよね、新堂さんの家ですから……」

 バスタブに張られた湯を指先で確かめながら荒井はほとんど無意識に呟く。
 普段は自分の家だから細かい事など気にせず多少汚れても自分で掃除をすればいいと軽く考えていたのだが、他人の家でそのような振る舞いは出来ないだろう。もし汚してしまったらどうするのか、ゴミはどこに捨てたらいいのか、掃除道具はどこにあるのだろうか等、自宅ではあまり気にしなかった細かい事ばかり気にしてしまう。
 荒井が些末なことでも自分の失敗を許すことが出来ない性格だというのもつまらない事をあれこれと考えてしまう理由だろう。

「ダメですね、雰囲気に飲まれて冷静さを欠くようでは僕もまだまだです」

 荒井は小さく首を振るとシャワーを浴び身体を洗う。
 シャンプーなどは新堂から家にあるものを自由に使っていいと言われもってこなかったが髪を洗えば普段新堂の身体からする匂いが自分からするのだろうと思えて気恥ずかしさが募る。
 新堂と話している時は普段通りに振る舞えるが、一人でいると他人の家に置いていかれたような気持ちが強くなり余計なことばかり考えてしまうのだ。
 これは普段の荒井が家では自分の過ごしやすい空間をつくり深い思考に浸る時間が長いということもあり、環境の変化に対して脳が必要以上に警戒してしまうという人間の本能的な理由もあるというのは荒井にもわかっていたが、それだと新堂の隣にいる時に自然体で振る舞える事実から新堂のそばでなら安心であり安全だということを認めてしまうことになる。
 今は恋人や彼氏などと呼ばれてもいい関係ではあるのだが、それでも荒井は自分が抱く思いを恋やら愛の類いだとは思いたくなかったし、ましてや新堂のそばにいれば安心できるほど惚れ込んでいるとは認めたくなかったのだ。新堂が自分に熱を上げてそれを自分が支配する立場ならいいのだが。
 とにかく、じっとしていては考え過ぎてしまう。少しでも身体を動かし気を紛らわせなければと思い身体を流してから湯船につかれば先に新堂が入っていたことを思い出してしまった。
 新堂はよく荒井の家に泊まるようになっており同じ湯をつかう事など何度もあったし何なら一緒に風呂へ入った事もあるのだが、新堂が日常的に使うバスタブであることが一度頭によぎったらとたんに気になってしまうのだ。

「調子が狂いますね……僕の家に新堂さんが来ている時はそんなの気にした事なんて……最初は少しは気にしてましたけど、ここまで色々考えたりはしなかったはずなんですけれども」

 バスタブに沈むように身を委ねれば全身が湯に包まれる。少し温いくらいの温度に設定された湯は普通よりも体温が高い新堂の肌を思い出させた。
 意識しすぎだ、普段とかわらない事をするだけだというのに普段と違う環境でどうにも落ち着かないらしい。やはり新堂の家ではなく自宅に案内したほうが良かったかとも思うがいまさら後悔しても仕方ないだろう。
 それに、行くと決めた時は新堂の家で過ごせるという期待と喜びが大きかったのは間違いない。

「おい、荒井。大丈夫か?」

 様々な考えが巡るが何もまとまらないままぼんやりと湯につかっていればガラス戸ごしに新堂の声が聞こえる。

「なっ、何ですか新堂さん。だ、いじょうぶですけど」

 想像していなかった新堂の姿に上ずった声になるが、新堂は返事があったことを安心したようだった。

「いや、普段より随分と長風呂だからよ。のぼせてるか、ウチの風呂に慣れてねぇから戸惑ってるのかって心配したんだよ。無事ならいいんだ」
「は、はい……少し考え事をしていて、普段より長風呂になってしまったみたいで……いま上がりますから」

 そんなに長湯をしていたのだろうか。色々考えてしまい時間など気にしていなかったが様子を見に来るくらいなのだからそうかもしれない。
 慌ててバスタブから出ようとしたが無理に動いたことと思いのほかのぼせていたのがあり目眩から膝をついてしまった。

「荒井、本当に大丈夫か?」
「大丈夫です、軽い目眩ですから……」

 実際にたいした事はない、少し休んで冷たいシャワーを浴びればすぐに治る程度だ。だが新堂はそう思わなかったのだろう、仕方ないといった様子でバスルームのドアを開けると

「ちょっと待ってください、何で入ってきてるんですか……」
「いいから黙ってろ、別にここで何かしようとは思わねぇよ」

 そんな言葉を交わした後、バスタオルで荒井の身体を包んで軽々と抱き上げた。

「のぼせたんだろ? 俺の部屋で休んでから着替えろよ、風呂場の後始末はしておいてやるから」
「そんな、大丈夫ですよ少し休めば。このくらい、たまにある程度です」
「オマエが大丈夫でも俺が嫌なんだよ。ウチで倒れられたら困るし、ウチに初めて泊まった時にのぼせて死にそうになったなんて思い出になるのは最悪だろうが」

 そして部屋に着くとベッドの上に優しく寝かせる。 粗暴に見えるし実際にその通りの新堂だがこういう時はやけに優しいところを見せるのも荒井の心をかき乱すのだ。

「……よし、着替えは今もってきてやるからまってろ。あぁ、その前に何か飲んだ方がいいか。スポーツドリンクでももってくるから待ってろ」
「ありがとうございます……」
「当たり前だろ、オマエは俺のモンなんだ。テメェの身体の一部みてぇな存在をぞんざいに扱うかって」

 と、そこで新堂は少し荒井を見つめると我慢が出来なかったという顔で唇を重ね、荒井の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「……何ですか、どうして今キスなんてするんです?」
「いや、なぁ……おまえの青白ェ顔がのぼせて赤くなってるのは……色っぽいってか、何つーか、まぁそういうのだ。分かれよ」
「わかりませんよ……まぁ、嫌ではないですけど」

 荒井が少し笑うのを見ると新堂は安心したように部屋から出て行く。その後ろ姿を見送るとベッドへと身を委ねた。
 まったく、今日はずぅっと新堂のペースに飲まれていて今ひとつ調子が出ない。感情に飲まれ狼狽えるのは恥ずかしいとも思うし自制出来ない自分をもどかしくも思う。
 だが新堂と同じ匂いが自分の身体からしているのだろうと思うと、たまにはこの空気に身を委ね彼に好きなようにされるのも悪くないかと思うのだった。

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