インターネット字書きマンの落書き帳
ヌン蔵から全身脱毛した話をされる一般成人男性さんの話
富入さんと個人的な会話をしたい夢おじさんの皆さん、お待たせしました。
一般成人男性さん(仮)が、富入さんに急に呼び出されて「何だ!?」と思って駆けつけたら、富入さんから全身脱毛を受けた話をして「えぇー!?」ってなる話です。
何を言っているかわからねーと思うが俺もわかんねー。
富入さんとダラダラ会話して、ちょっといい雰囲気の距離感になりたい人コンテンツです。
よーろしーくねー。
一般成人男性さん(仮)が、富入さんに急に呼び出されて「何だ!?」と思って駆けつけたら、富入さんから全身脱毛を受けた話をして「えぇー!?」ってなる話です。
何を言っているかわからねーと思うが俺もわかんねー。
富入さんとダラダラ会話して、ちょっといい雰囲気の距離感になりたい人コンテンツです。
よーろしーくねー。
『心地よい距離感』
「実はね、この前久しぶりに全身脱毛に行ってきたのよ」
富入の言葉を聞き、男は飲んでいたウイスキーを吹き出しそうになる。
普段、滅多に連絡などしてこない富入から二人で話したいと言われた時には、よほど大きな事件がおこったか、厄介な仕事を押し付けられると思っていたからだ。
これが、富入が普通の会社員か何かだったらそこまで気負う必要もなかっただろう。
だが、富入は公安に所属する警察官なのだ。公安が担当する事件というのは昔からテロやクーデターといった国家を揺るがす大事件が多い。そんな富入から、折り入って話があるといわれればよほど重大事件が起こったのではないかと身構えるのも無理はないだろう。
男は富入の協力者なのだからなおさらである。
警察というのは民事不介入の原則があり、事件が起こる前には派手に動かないというのが常なのだが、公安警察は事件を起こさない為に暗躍する組織であり、事が起こる前に調査をするため法的にグレーな捜査や、実際に犯罪とも言える調査をするのも少なくはない。
そういう時、公安が手駒として使うのが一般市民の協力者であり、男はその立場の人間だった。
富入は承知しているが、違法捜査に手を染めた事も一度や二度ではない。
そんな富入からサシ飲みで、しかも案内されたのが秘匿性の高い会員制の個室バーだというのだから警戒心が最高値に達したところでそう言われたのだから、むしろ酒を吹き出さなかっただけ褒めてほしいものである。
「何を言うのかと思ったらそんなことですか」
「そんな事じゃないわよ。私には一大事だったんだから! ここ最近、仕事で立て込んじゃってなかなかエステにも行けなかったでしょう?」
「知りませんよ、富入さんの脱毛事情には興味ありませんから」
「今日から興味を持ちなさいよ。それでね、あんまり長い間行かなかったものだから、あちこち下品な毛が出てきちゃって、それを一気にお手入れしたの。もう、あなた知ってる? 脱毛って暴力よ! ずっと身体中をジリッジリに焼かれるんだけど、暴力! 蛮行! 侵略って感じ。もう、CIAの拷問? って気分だったけど、私も立場上悲鳴なんて上げる訳にはいかないじゃない? だからずーっと唇を噛みしめて耐えたわ。耐えまくったわよ。でもとーってもキツくて……このキツさ、誰かに絶対話したいと思ってたのよね」
それで、自分を呼んだのか。
男はすっかり拍子抜けし、ウイスキーを一気に飲み干した。
水割りじゃ酔えない。今日はロックで。いや、ストレートで飲もう。どうせ富入のオゴリなのだから、いつもよりワンランク上のウイスキーを頼んでも罰は当たるまい。
「本当にそれで私を呼んだんですか? 本当にそれだけ?」
「えぇ、そうだけど? だってアナタ、暇だって言ってたじゃない」
別に本当に暇だった訳ではない。富入に呼ばれたから無理矢理時間を作ったのだ。
男は改めて運ばれたウイスキーも一気に飲み干す。乾いたアルコールが喉を焼いた後、モルトの香りが鼻腔を抜けていった。
「そういう話は友達にでもしてくださいよ……」
男は呆れを通り越した感情を抱き、三杯目のウイスキーを注文する。
富入は額にしわを寄せると、首を傾げて男を見た。
「あらやだ、アナタって私の友達じゃなかったってこと?」
「実際、友達じゃないですよね?」
「だったら私とアナタの関係って一体なに? 恋人とか?」
からかっているのだろう。富入は口元に手を当てクスクスと笑う。
男が店に着いた時、富入はすでに個室にいてグラスを傾けていた。自分も早いペースで飲んでいると思うが、富入も随分飲んでいるに違いない。
男は肩をすくめ、新しく来たグラスを傾けた。
「私だってわかってるわよ。こういう下らない話をするなら、友達を呼ぶのが普通だろうって。でも、私くらいの年になると気軽に呼べる友達なんていないのよね。学生時代のクラスメイトは私くらいの歳だとみーんな結婚して家庭もあるでしょ? ちょっとした集まりをする機会もないし、私だって忙しいから付き合いで飲みにいけないうちに段々疎遠になっちゃったし。かといって、警察の同期たちからするとやっぱり私の立場って異質なのよね。公安を前に気楽に飲めないだろうから、こっちから誘わないでいるうちに同期ともほとんど縁が切れちゃったのよ」
富入はグラスの氷を揺らしながら、淡々と語る。
男は、富入といつか話した時の事をぼんやりと思い返した。
公安に選ばれた時、自分はこの仕事に命を捧げようと決めたのだと富入は言った。
元々家庭を持つのに向いているとは思えなかったし、愛する人のため時間を捻出し共に過ごすことすらろくにできないのなら、誰かと一緒に人生を歩むのにあまりに相手を不幸にしてしまうと思ったからだ。
一人で生きていく覚悟をしたかわりに、親しい友人と縁を結ぶことが出来なかったのだ。
それでも、富入は部下に随分慕われているというからそれがせめてもの慰めだろう。
「でも、部下にはこんな話できないでしょう!? まさか、私が全身脱毛で泣きそうになってたなんて思われたくないもの。でも、この痛みと辛さは誰かと共有しないとって思ったの! わかるかしら、この乙女心」
誰が乙女なんだ、誰が。
内心そう思いながら、男はグラスのウイスキーを舐めるように飲む。
「わかりましたよ。じゃ、私が頭撫でてあげますから。大変でしたねぇ、偉いですよ泣いたりしなくて」
「ちょっと、そんな子供をあやすみたいに頭撫でないでくれる? ……でもまあいいわ。アナタに話せてちょっとスッキリしたし」
富入は上機嫌な様子で、鼻歌交じりでグラスを傾ける。
「しかし、全身脱毛とは気合い入ってますね。誰かに見せる予定でもあるんですか?」
「あら、アナタそんな事知りたいの? それとも、私のこと誘っているのかしら。そうね……アナタとは知らない仲じゃないもの。特別に、見せてあげてもいいわよ」
酔っているのだろう、普段蝋のように白い富入の頬がうっすらと赤らんでいる。
「いえ、別に見たくないんで今回は遠慮しておきます」
「やーね、次回にご期待してる? 次なんてないかもしれないわよ。どう? 私のこと抱いてくれる?」
クスクスと笑う富入の唇が、いつもより赤く見える。
「それってビジネスとしてですか?」
男はグラスのウイスキーをちびちびと飲みながら、素っ気なく答えた。
「もー、相変わらずアナタって全然可愛げないわよね。反応に面白みがないっていうか……」
「富入さんに可愛いと思われたくないですからね」
「ふふ……でも、ビジネスライクな付き合いならオッケーってことかしら? あなた、ビジネスだったら私のこと抱いてくれるの?」
「そうですねぇ……ホテル代別で、2万円くらいならそれなりのお付き合いをしてあげますよ」
「ちょっと、生々しい数字出してくるじゃないの……でもそれで、私のこと満足させてくれるのかしら?」
「満足させるほどの金額でもなさそうなんで、70点分くらいは楽しませてあげますよ」
よどみなく答える男を前に、富入は拗ねたように口をすぼめる。
「本当、アナタって面白くないわね。ちょっと狼狽えたり、困った顔をしたらもっと素敵なのに」
「そんな事しなくても私はいい男なんで。それに、これでも案外ドギマギしてるんですよ。富入さん、貴方は自分が思っているよりずっと魅力的な人だ。だから私以外には、あんまりそんな冗談はやめておくことですね。若い子だったら、きっと本気にしてますよ」
「あら……もう、急にやめてよ。そういうの。ちょっとドキドキしちゃったじゃない」
富入は口元を抑え、視線を逸らす。本当に照れているのか、うっすらと耳が赤くなっていた。
「私をからかうつもりで、貴方が照れてどうするんですか。それなら、本当にホテルにでも行ってみますか? 2万払えば私は本当にお付き合いしますよ」
男はグラスごしに富入を見つめる。
富入は何かを言おうとしたが、それをぐっと飲み込むと曖昧に笑って見せた。
「やーね、やめておくわよ。公安が民間人を売春なんて言われたら、洒落にならないもの」
「そうですよ、それがいい。それが懸命だ」
富入が無言でグラスを差し出したので、男もまたグラスを掲げ乾杯をすると、残った酒をゆっくりと楽しむ。
公安と協力者。二人の関係はそれでしかなく、友人でも恋人でも家族でもない、友情でも親愛でもない、何とも言い難い関係と感情で結ばれていただろう。
だが、その距離感が不思議と心地よかった。
「実はね、この前久しぶりに全身脱毛に行ってきたのよ」
富入の言葉を聞き、男は飲んでいたウイスキーを吹き出しそうになる。
普段、滅多に連絡などしてこない富入から二人で話したいと言われた時には、よほど大きな事件がおこったか、厄介な仕事を押し付けられると思っていたからだ。
これが、富入が普通の会社員か何かだったらそこまで気負う必要もなかっただろう。
だが、富入は公安に所属する警察官なのだ。公安が担当する事件というのは昔からテロやクーデターといった国家を揺るがす大事件が多い。そんな富入から、折り入って話があるといわれればよほど重大事件が起こったのではないかと身構えるのも無理はないだろう。
男は富入の協力者なのだからなおさらである。
警察というのは民事不介入の原則があり、事件が起こる前には派手に動かないというのが常なのだが、公安警察は事件を起こさない為に暗躍する組織であり、事が起こる前に調査をするため法的にグレーな捜査や、実際に犯罪とも言える調査をするのも少なくはない。
そういう時、公安が手駒として使うのが一般市民の協力者であり、男はその立場の人間だった。
富入は承知しているが、違法捜査に手を染めた事も一度や二度ではない。
そんな富入からサシ飲みで、しかも案内されたのが秘匿性の高い会員制の個室バーだというのだから警戒心が最高値に達したところでそう言われたのだから、むしろ酒を吹き出さなかっただけ褒めてほしいものである。
「何を言うのかと思ったらそんなことですか」
「そんな事じゃないわよ。私には一大事だったんだから! ここ最近、仕事で立て込んじゃってなかなかエステにも行けなかったでしょう?」
「知りませんよ、富入さんの脱毛事情には興味ありませんから」
「今日から興味を持ちなさいよ。それでね、あんまり長い間行かなかったものだから、あちこち下品な毛が出てきちゃって、それを一気にお手入れしたの。もう、あなた知ってる? 脱毛って暴力よ! ずっと身体中をジリッジリに焼かれるんだけど、暴力! 蛮行! 侵略って感じ。もう、CIAの拷問? って気分だったけど、私も立場上悲鳴なんて上げる訳にはいかないじゃない? だからずーっと唇を噛みしめて耐えたわ。耐えまくったわよ。でもとーってもキツくて……このキツさ、誰かに絶対話したいと思ってたのよね」
それで、自分を呼んだのか。
男はすっかり拍子抜けし、ウイスキーを一気に飲み干した。
水割りじゃ酔えない。今日はロックで。いや、ストレートで飲もう。どうせ富入のオゴリなのだから、いつもよりワンランク上のウイスキーを頼んでも罰は当たるまい。
「本当にそれで私を呼んだんですか? 本当にそれだけ?」
「えぇ、そうだけど? だってアナタ、暇だって言ってたじゃない」
別に本当に暇だった訳ではない。富入に呼ばれたから無理矢理時間を作ったのだ。
男は改めて運ばれたウイスキーも一気に飲み干す。乾いたアルコールが喉を焼いた後、モルトの香りが鼻腔を抜けていった。
「そういう話は友達にでもしてくださいよ……」
男は呆れを通り越した感情を抱き、三杯目のウイスキーを注文する。
富入は額にしわを寄せると、首を傾げて男を見た。
「あらやだ、アナタって私の友達じゃなかったってこと?」
「実際、友達じゃないですよね?」
「だったら私とアナタの関係って一体なに? 恋人とか?」
からかっているのだろう。富入は口元に手を当てクスクスと笑う。
男が店に着いた時、富入はすでに個室にいてグラスを傾けていた。自分も早いペースで飲んでいると思うが、富入も随分飲んでいるに違いない。
男は肩をすくめ、新しく来たグラスを傾けた。
「私だってわかってるわよ。こういう下らない話をするなら、友達を呼ぶのが普通だろうって。でも、私くらいの年になると気軽に呼べる友達なんていないのよね。学生時代のクラスメイトは私くらいの歳だとみーんな結婚して家庭もあるでしょ? ちょっとした集まりをする機会もないし、私だって忙しいから付き合いで飲みにいけないうちに段々疎遠になっちゃったし。かといって、警察の同期たちからするとやっぱり私の立場って異質なのよね。公安を前に気楽に飲めないだろうから、こっちから誘わないでいるうちに同期ともほとんど縁が切れちゃったのよ」
富入はグラスの氷を揺らしながら、淡々と語る。
男は、富入といつか話した時の事をぼんやりと思い返した。
公安に選ばれた時、自分はこの仕事に命を捧げようと決めたのだと富入は言った。
元々家庭を持つのに向いているとは思えなかったし、愛する人のため時間を捻出し共に過ごすことすらろくにできないのなら、誰かと一緒に人生を歩むのにあまりに相手を不幸にしてしまうと思ったからだ。
一人で生きていく覚悟をしたかわりに、親しい友人と縁を結ぶことが出来なかったのだ。
それでも、富入は部下に随分慕われているというからそれがせめてもの慰めだろう。
「でも、部下にはこんな話できないでしょう!? まさか、私が全身脱毛で泣きそうになってたなんて思われたくないもの。でも、この痛みと辛さは誰かと共有しないとって思ったの! わかるかしら、この乙女心」
誰が乙女なんだ、誰が。
内心そう思いながら、男はグラスのウイスキーを舐めるように飲む。
「わかりましたよ。じゃ、私が頭撫でてあげますから。大変でしたねぇ、偉いですよ泣いたりしなくて」
「ちょっと、そんな子供をあやすみたいに頭撫でないでくれる? ……でもまあいいわ。アナタに話せてちょっとスッキリしたし」
富入は上機嫌な様子で、鼻歌交じりでグラスを傾ける。
「しかし、全身脱毛とは気合い入ってますね。誰かに見せる予定でもあるんですか?」
「あら、アナタそんな事知りたいの? それとも、私のこと誘っているのかしら。そうね……アナタとは知らない仲じゃないもの。特別に、見せてあげてもいいわよ」
酔っているのだろう、普段蝋のように白い富入の頬がうっすらと赤らんでいる。
「いえ、別に見たくないんで今回は遠慮しておきます」
「やーね、次回にご期待してる? 次なんてないかもしれないわよ。どう? 私のこと抱いてくれる?」
クスクスと笑う富入の唇が、いつもより赤く見える。
「それってビジネスとしてですか?」
男はグラスのウイスキーをちびちびと飲みながら、素っ気なく答えた。
「もー、相変わらずアナタって全然可愛げないわよね。反応に面白みがないっていうか……」
「富入さんに可愛いと思われたくないですからね」
「ふふ……でも、ビジネスライクな付き合いならオッケーってことかしら? あなた、ビジネスだったら私のこと抱いてくれるの?」
「そうですねぇ……ホテル代別で、2万円くらいならそれなりのお付き合いをしてあげますよ」
「ちょっと、生々しい数字出してくるじゃないの……でもそれで、私のこと満足させてくれるのかしら?」
「満足させるほどの金額でもなさそうなんで、70点分くらいは楽しませてあげますよ」
よどみなく答える男を前に、富入は拗ねたように口をすぼめる。
「本当、アナタって面白くないわね。ちょっと狼狽えたり、困った顔をしたらもっと素敵なのに」
「そんな事しなくても私はいい男なんで。それに、これでも案外ドギマギしてるんですよ。富入さん、貴方は自分が思っているよりずっと魅力的な人だ。だから私以外には、あんまりそんな冗談はやめておくことですね。若い子だったら、きっと本気にしてますよ」
「あら……もう、急にやめてよ。そういうの。ちょっとドキドキしちゃったじゃない」
富入は口元を抑え、視線を逸らす。本当に照れているのか、うっすらと耳が赤くなっていた。
「私をからかうつもりで、貴方が照れてどうするんですか。それなら、本当にホテルにでも行ってみますか? 2万払えば私は本当にお付き合いしますよ」
男はグラスごしに富入を見つめる。
富入は何かを言おうとしたが、それをぐっと飲み込むと曖昧に笑って見せた。
「やーね、やめておくわよ。公安が民間人を売春なんて言われたら、洒落にならないもの」
「そうですよ、それがいい。それが懸命だ」
富入が無言でグラスを差し出したので、男もまたグラスを掲げ乾杯をすると、残った酒をゆっくりと楽しむ。
公安と協力者。二人の関係はそれでしかなく、友人でも恋人でも家族でもない、友情でも親愛でもない、何とも言い難い関係と感情で結ばれていただろう。
だが、その距離感が不思議と心地よかった。
PR
COMMENT