インターネット字書きマンの落書き帳
美術館デートする黒ガス概念(BL)
黒沢とデートするけど、いままでちゃんと誰かとお付き合いしたことないからデートできているか不安になっちゃう山ガス書きたいな!
そう思ったから書きました。
好きな画家の展示につれていってもらったけど、黒沢とデートってことばっかり気になってソワァ……しちゃう山ガスですよ。
二人とも学生時代に付き合っていたくらいの話として書いてます。
デートしたことないから……ってソワつく山ガスをあざとく書きたいと思ってやりました。
反省してません。
そう思ったから書きました。
好きな画家の展示につれていってもらったけど、黒沢とデートってことばっかり気になってソワァ……しちゃう山ガスですよ。
二人とも学生時代に付き合っていたくらいの話として書いてます。
デートしたことないから……ってソワつく山ガスをあざとく書きたいと思ってやりました。
反省してません。
『いつか、思い出せる日にしよう』
その日の美術館が平日にも拘わらず普段より賑わっているように見えたのは、滅多にお目見えしない画家の展示が行われていたからだろう。
作品の大半を自ら処分している上、生前は陰鬱な作風から一般受けもあまりしていなかったその画家は、ほとんどの作品が個人所有のもので美術館に展示されているものは少ない。
そのため、展示会をするたびに新しい作品が展示される事があるのでマニアックなファンが多くついているのだ。
作風も決して明るくはなく、濁った青や灰色で彩られたキャンバスはあたかも工業地帯に立ち上る煙を彷彿とさせる。
特に美術教育を受けずに独学で絵の技法を習得しているのもあるのか、人間にしても静物にしてもひどく歪に描かれる事も多く、見ていておおよそ愉快とはいえない作品がほとんどだった。
件の画家を全く知らない人が見たのならば、グロテスクなホラー展覧会と勘違いをしていただろう。
そんな、言うならばニッチな作家の展示会に、山田は黒沢と来ていた。
より正確に言うのなら、黒沢に誘われたから来ることが出来たのだ。
『確かお前、この画家の展示見たがっていたよな。チケット予約しておいたから一緒に行かないか?』
5Sとして活動している合間、黒沢にそう誘われた時は嬉しいよりも驚きがよほど大きかった。
確かにその画家のことはずっと好きだし、展示会があるという事を谷原と話していた事もある。 時間があれば行けたらいいと思っていたのだが、まさか黒沢が誘ってくるとは思ってもみなかったからだ。
『一緒に行ってくれるの? 嬉しいけど、黒沢サン、その画家のファン?』
『いや、全く知らない。俺はわりと趣味がわかりやすいからな……ミュシャとか、マグリットは好きだがそこまで詳しくはないな……』
どうやら黒沢は、山田が好きだと言っていたから誘ってくれたようだ。作品展示が目的ではなく山田と一緒に出かける事が目的なのだろう。
つまり、展示にかこつけたデートということになる。
それに気付いてから、山田は画家の珍しい展示より黒沢とデートのことで頭がいっぱいになっていた。
というのも、山田はこれまで一度も恋人を作った事がなく、普通のデートというものに縁が無かったからだ。
誘われたのだから二人で行くのは当然として、一緒にいる時は何を話したらいいのだろうか。
デートなのだから手を繋いだりするのが普通なのかもしれないが、男である自分が黒沢と手を繋いでいたら注目されすぎてしまうかもしれない。
それでなくとも、自分たちはネットで顔出し配信をしているのだから目立つだろう。自分はともかく、黒沢に妙な噂を流されたり彼の評判を落とすような事は避けたい。
こんな時はどういう服装で出かけたらいいのだろうか。
展示を見るのにそれなりに歩くから動きやすい方がいいだろうが、黒沢に並んで歩くのなら安物の服装だと悪目立ちする。とはいえ自分はそれほどお洒落な服ももってないし、高い値段帯の服なんて一枚もない。今になって急いで買いに行くのもいかにも意識しているようで気恥ずかしい。ある服で一番気に入っている、そして一番良い服を選んでいくのが無難だろうとは思うが、デートとしてそれが正しいかまではわからない。
一緒に歩く時は、何を話すのだろう。
黒沢は画家そのものに興味はそれほどないだろうし、作品についてもほとんど知らないだろう。何も知らない人から見たら幽霊画か怪物を描いている風にしか見えない画家だから、黒沢がどんな反応をするのかもわからない。美術館だから他の絵や彫刻の展示もあるだろうが、そういう時にどの程度踏み込んだ会話をするものなのだろう。
何もわからないまま当日を迎え、そして今、山田は何もわからないまま黒沢の後をついてぼんやりと絵を眺めていた。
好きな画家の絵だから当然感動するし、今までネットか本の中でしか見た事のなかった作品の実物が展示されているのもやはり嬉しい。
だがそれ以上に、そばに黒沢がいるのが気になってしまった。
「なぁ、山田。少し聞きたいんだが……」
黒沢は時々山田を呼び、展示されている絵画について質問をしてくる。
幸いな事に黒沢がする質問は山田でも知っている範疇の、その画家が好きなら知っている内容がほとんどだったので答える事は出来たが、それ以外はほとんど喋らないまま館内を進んでいた。
デートというのは、こういうものなのだろうか。
美術館だから当然、絵や彫刻を見る場所で無駄話をする場所ではないのだから静かに鑑賞するのが普通だ。これでいいのだろうと思うが、デートだと思うと自分の行動が正しいのか不安になってくる。
もっと積極的に黒沢と話をしたほうがいいのか。だが、黒沢はそこまでこの画家について興味もないだろう。美術館の展示会なんだから、展示されている作品以外の話をするのも妙な気がする。
「次は、こっちみたいだな。階段を登った先にまだ展示があるようだ。山田、疲れてないか?」
順路と書かれたボードを前にこちらを振り返る黒沢を見て、山田はついに耐えきれずそっと彼に近づいた。
「あ、あのさ、黒沢サン……僕と一緒にいて、楽しい?」
「はぁ? どうしたんだ急に……」
「だ、だってこれ……で、デートだよね? 僕、ちゃんとしたデートってしたことないからさ……ほら、黒沢サン、別にこの画家のことすごく好きって訳じゃなよね? 僕のためにわざわざチケットとってくれたんでしょ? それなのに、僕あんまり黒沢サンと話したりできないし……何話していいかわかんないし……」
話しているうちに頭がいっぱいになり、どんどん声が小さくなっていく。
「……なんか、ごめんね。僕、変なこと言ってる。あーあ、面倒くさい奴で自分でも嫌になっちゃうな」
山田は俯きながら、黒沢の羽織っているジャケットの裾を軽く握る。
黒沢はしばらくきょとんとした顔で山田を見ていたが、すぐに穏やかに笑うと山田の頬を軽く撫でた。
「そんなこと気にしてたのか? 別にいいんだよ、普段通りにしてくれれば。確かに俺はこの画家の事を知らないし、今まで興味もなかった。だが、お前が好きだというから気になったし、今日の展示も興味深いと思っている。何も、お前が無理して楽しませようとしなくてもいいんだ。そう……俺に付き合って、一緒にいてくれるだけでいいんだよ」
「そ、そうなの? えっと……デートって、そういうもの?」
「そういうものだ。別段、誰かが特別に盛り上げようとか、気を遣って何かしようなんて……かえって疲れるだろう? 俺は、ただお前と一緒にこうして、同じ事をしているだけで嬉しいから……嫌じゃなければ、そばにいてくれ」
そして、山田の手をとると僅かに引き寄せる。
その所作があまりに自然で美しく見えたから、山田は自分の耳が赤くなるのがわかった。
「う、うん。わかった……でも、僕さ。すごい……緊張してるのかも。いつもより、ヘンかもしれないけど、それだけは許してくれる?」
「当たり前だろう? むしろ、普段と違うお前が見れるのは嬉しいな。ふふ……俺のためにこんなに恥ずかしがってくれるのか」
「ちょっ、黒沢サン!」
「ははっ、本当に可愛いなお前は……ますます、好きになりそうだ」
黒沢は軽く笑うと、ゆっくりと歩きだす。
「やめてよ、もう……」
山田は自分の頬を抑え、すっかり熱を帯びた顔を冷ますのに必死だった。
せっかくの展示だが、これはとても集中できそうにないが、それでいいのかもしれない。
もしこの後、また同じ画家の展示が来た時、この日のことを思い出しくすぐったい気持ちになれたのなら、きっとそれも幸せな事なのだろう。
その日の美術館が平日にも拘わらず普段より賑わっているように見えたのは、滅多にお目見えしない画家の展示が行われていたからだろう。
作品の大半を自ら処分している上、生前は陰鬱な作風から一般受けもあまりしていなかったその画家は、ほとんどの作品が個人所有のもので美術館に展示されているものは少ない。
そのため、展示会をするたびに新しい作品が展示される事があるのでマニアックなファンが多くついているのだ。
作風も決して明るくはなく、濁った青や灰色で彩られたキャンバスはあたかも工業地帯に立ち上る煙を彷彿とさせる。
特に美術教育を受けずに独学で絵の技法を習得しているのもあるのか、人間にしても静物にしてもひどく歪に描かれる事も多く、見ていておおよそ愉快とはいえない作品がほとんどだった。
件の画家を全く知らない人が見たのならば、グロテスクなホラー展覧会と勘違いをしていただろう。
そんな、言うならばニッチな作家の展示会に、山田は黒沢と来ていた。
より正確に言うのなら、黒沢に誘われたから来ることが出来たのだ。
『確かお前、この画家の展示見たがっていたよな。チケット予約しておいたから一緒に行かないか?』
5Sとして活動している合間、黒沢にそう誘われた時は嬉しいよりも驚きがよほど大きかった。
確かにその画家のことはずっと好きだし、展示会があるという事を谷原と話していた事もある。 時間があれば行けたらいいと思っていたのだが、まさか黒沢が誘ってくるとは思ってもみなかったからだ。
『一緒に行ってくれるの? 嬉しいけど、黒沢サン、その画家のファン?』
『いや、全く知らない。俺はわりと趣味がわかりやすいからな……ミュシャとか、マグリットは好きだがそこまで詳しくはないな……』
どうやら黒沢は、山田が好きだと言っていたから誘ってくれたようだ。作品展示が目的ではなく山田と一緒に出かける事が目的なのだろう。
つまり、展示にかこつけたデートということになる。
それに気付いてから、山田は画家の珍しい展示より黒沢とデートのことで頭がいっぱいになっていた。
というのも、山田はこれまで一度も恋人を作った事がなく、普通のデートというものに縁が無かったからだ。
誘われたのだから二人で行くのは当然として、一緒にいる時は何を話したらいいのだろうか。
デートなのだから手を繋いだりするのが普通なのかもしれないが、男である自分が黒沢と手を繋いでいたら注目されすぎてしまうかもしれない。
それでなくとも、自分たちはネットで顔出し配信をしているのだから目立つだろう。自分はともかく、黒沢に妙な噂を流されたり彼の評判を落とすような事は避けたい。
こんな時はどういう服装で出かけたらいいのだろうか。
展示を見るのにそれなりに歩くから動きやすい方がいいだろうが、黒沢に並んで歩くのなら安物の服装だと悪目立ちする。とはいえ自分はそれほどお洒落な服ももってないし、高い値段帯の服なんて一枚もない。今になって急いで買いに行くのもいかにも意識しているようで気恥ずかしい。ある服で一番気に入っている、そして一番良い服を選んでいくのが無難だろうとは思うが、デートとしてそれが正しいかまではわからない。
一緒に歩く時は、何を話すのだろう。
黒沢は画家そのものに興味はそれほどないだろうし、作品についてもほとんど知らないだろう。何も知らない人から見たら幽霊画か怪物を描いている風にしか見えない画家だから、黒沢がどんな反応をするのかもわからない。美術館だから他の絵や彫刻の展示もあるだろうが、そういう時にどの程度踏み込んだ会話をするものなのだろう。
何もわからないまま当日を迎え、そして今、山田は何もわからないまま黒沢の後をついてぼんやりと絵を眺めていた。
好きな画家の絵だから当然感動するし、今までネットか本の中でしか見た事のなかった作品の実物が展示されているのもやはり嬉しい。
だがそれ以上に、そばに黒沢がいるのが気になってしまった。
「なぁ、山田。少し聞きたいんだが……」
黒沢は時々山田を呼び、展示されている絵画について質問をしてくる。
幸いな事に黒沢がする質問は山田でも知っている範疇の、その画家が好きなら知っている内容がほとんどだったので答える事は出来たが、それ以外はほとんど喋らないまま館内を進んでいた。
デートというのは、こういうものなのだろうか。
美術館だから当然、絵や彫刻を見る場所で無駄話をする場所ではないのだから静かに鑑賞するのが普通だ。これでいいのだろうと思うが、デートだと思うと自分の行動が正しいのか不安になってくる。
もっと積極的に黒沢と話をしたほうがいいのか。だが、黒沢はそこまでこの画家について興味もないだろう。美術館の展示会なんだから、展示されている作品以外の話をするのも妙な気がする。
「次は、こっちみたいだな。階段を登った先にまだ展示があるようだ。山田、疲れてないか?」
順路と書かれたボードを前にこちらを振り返る黒沢を見て、山田はついに耐えきれずそっと彼に近づいた。
「あ、あのさ、黒沢サン……僕と一緒にいて、楽しい?」
「はぁ? どうしたんだ急に……」
「だ、だってこれ……で、デートだよね? 僕、ちゃんとしたデートってしたことないからさ……ほら、黒沢サン、別にこの画家のことすごく好きって訳じゃなよね? 僕のためにわざわざチケットとってくれたんでしょ? それなのに、僕あんまり黒沢サンと話したりできないし……何話していいかわかんないし……」
話しているうちに頭がいっぱいになり、どんどん声が小さくなっていく。
「……なんか、ごめんね。僕、変なこと言ってる。あーあ、面倒くさい奴で自分でも嫌になっちゃうな」
山田は俯きながら、黒沢の羽織っているジャケットの裾を軽く握る。
黒沢はしばらくきょとんとした顔で山田を見ていたが、すぐに穏やかに笑うと山田の頬を軽く撫でた。
「そんなこと気にしてたのか? 別にいいんだよ、普段通りにしてくれれば。確かに俺はこの画家の事を知らないし、今まで興味もなかった。だが、お前が好きだというから気になったし、今日の展示も興味深いと思っている。何も、お前が無理して楽しませようとしなくてもいいんだ。そう……俺に付き合って、一緒にいてくれるだけでいいんだよ」
「そ、そうなの? えっと……デートって、そういうもの?」
「そういうものだ。別段、誰かが特別に盛り上げようとか、気を遣って何かしようなんて……かえって疲れるだろう? 俺は、ただお前と一緒にこうして、同じ事をしているだけで嬉しいから……嫌じゃなければ、そばにいてくれ」
そして、山田の手をとると僅かに引き寄せる。
その所作があまりに自然で美しく見えたから、山田は自分の耳が赤くなるのがわかった。
「う、うん。わかった……でも、僕さ。すごい……緊張してるのかも。いつもより、ヘンかもしれないけど、それだけは許してくれる?」
「当たり前だろう? むしろ、普段と違うお前が見れるのは嬉しいな。ふふ……俺のためにこんなに恥ずかしがってくれるのか」
「ちょっ、黒沢サン!」
「ははっ、本当に可愛いなお前は……ますます、好きになりそうだ」
黒沢は軽く笑うと、ゆっくりと歩きだす。
「やめてよ、もう……」
山田は自分の頬を抑え、すっかり熱を帯びた顔を冷ますのに必死だった。
せっかくの展示だが、これはとても集中できそうにないが、それでいいのかもしれない。
もしこの後、また同じ画家の展示が来た時、この日のことを思い出しくすぐったい気持ちになれたのなら、きっとそれも幸せな事なのだろう。
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