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インターネット字書きマンの落書き帳

   
嗜虐癖を受け入れて欲しい男と、自分を見捨てないでほしい男(黒ガス・BL)
己のフェチズムに逆らえない!
逆らえないんだよ!

という訳で、平和に付き合っていたはずの黒沢×山ガスだけど、黒沢も山田もうちに秘めた感情が鬱屈していてどうしようもないから、人の愛し方がおかしい話を書きました。

俺はね。
感情の重たい男が、感情の重たい男を好きになる話を書くのがだいだいだ~いすき!

嗜虐癖のある人間と、自傷癖のある自責の強い人間が出会ってしまっておこる虐待のような愛情が、だいだいだ~いすき!

書かずにはいられない性分なの!
だから書いた!

話としては こちら の作品の続きみたいな奴なんですけどね。
ほのぼのしている空気から奈落に突き落としたの? くらいテンションが違うかもしれませんが、これが俺の因業なんで諦めてください。

全国の、山ガスを嗜虐する黒沢を見たい人♥
楽しんでいってくれよな♥


『許容と寛容』

 周囲は暗闇に閉ざされ、聞こえるのは僅かな吐息とベッドが軋む音。そして、両手をきつく縛る荒縄が身体に食い込む音だけだ。
 何をされているのかも、相手が何をしているのかもわからないまま自分の鼓動だけがやけに大きく聞こえる。

「優弥サン……もう、終わりにしよ? 流石にこのままだと……僕だって、怖いよ」

 声が震えているのが自分でもわかる。
 きつく縛られた両腕はベッドに結ばれ思うように動けない上、目はタオルとアイマスクで二重に塞がれ光は一切届かず今室内に電気がついているのかさえ分からない。

 黒沢のことは信頼している。唇も、身体だって許した相手だ。
 彼になら何をされてもいいし、彼だったら何をしてもいいと本気で思っているのだが、だからといって恐怖心まで捨て去れる訳ではない。

 腕が縛られていること以外にわかることといえば、目隠しをされていることと自分がベッドに横になっていること。そして、一糸まとわぬ姿にされていることだけだ。

「ひどいことされるの、嫌いじゃないし。こういうプレイも慣れてる方だと思うけど……写真撮ったりするのはやめてくれるよね? 流石にそういうのは……」

 今の時代、写真や動画というのは一度インターネット上に流れたら取り返しのないほど広がりを見せる。
 それが卑猥であったり他人の興味関心、興奮を煽るような内容ならなおさらだ。

 山田は自分の身体が痩せぎすでおおよそ魅力のあるものではないと自覚していたが、ニッチな趣味の人間が多いジャンルの方が長く使われ大いに拡散されるということも知っていた。
 黒沢個人に留めておかれるのなら別に構わないが、大多数の目にふれるのは嫌だと思う程度の羞恥心は残っていたし、ネットタトゥーの恐ろしさは良く知っていたからなおさら不安が掻き立てられる。

「心配しなくても、写真なんか撮りはしないさ。ただ……もう少しだけ、お前の身体を確かめておきたいんだ」

 ベッドの傍らから黒沢の声がする。手元で何か弄っているのか、カチカチとスイッチを入れる音がした。
 それからベッドが軋み、黒沢の大きな手が山田の身体に触れる。
 ひっ、と小さい声が漏れ身体がびくりと震えた。

「見た目は、もうどこも怪我をしてないな。痣がすっかり消えているし、傷も良くなっている。跡が残らないよう気をつけて治療した甲斐があったな」

 黒沢の指が山田の首筋を、胸元を、腹を、ゆっくりと撫でる。
 飴細工を扱うように優しい慈しむような愛撫のはずなのに、全身の毛が逆立つほどの怖気が身体中を駆け抜けていった。

「優弥サン、ほんとやめて……怖いから。怖いからさ、もう許して……他のことなら何でもするから。せめて、目隠しだけでもとってよ。お願いだから……」

 その願いは聞き入れられない。そう告げるように、黒沢は山田の言葉を唇で塞ぐ。
 舌を絡め、ゆっくりとなだめるようなキスをした後、黒沢は手にした何かのスイッチを入れた。

「優弥サン、今の、何の音?」

 何かしらのスイッチが入る音はしているが、他の音は一切しない。不安感から問えば、黒沢は喉を鳴らすように笑った。

「怖がるなよ。UVライトのスイッチを入れただけだ」
「UV……」
「ブラックライトと言った方がわかりやすいか? 紫外線を出す、青白く光るライトだよ」

 ブラックライトなら聞いたことがある。紫外線を発するタイプのライトのことだ。
 宝石の鑑定なんかに使ったり、レジンを固める時に使ったりするのだと聞いたことがあるが、何を照らすつもりなのだろう。

「これを肌の上に照らすとな。見た目ではわからない内出血や痣の痕跡が浮かび上がってくるんだよ」

 山田の疑問を見透かしたように、黒沢は説明する。
 それが事実なのかそれとも黒沢がそう思い込んでいるだけなのかはわからなかったが、山田の肌にライトを照らし彼の身体に傷がないか確認しているのは確かなようだ。

「UVライトは青白い光でぼんやり薄明かりが光っている風に見えるが、これで結構強い光なんだ。目に入ったらお前を傷つけるかもしれない。もう少しだけ、そのままでいてくれ」
「うん……別にいいけど。僕の身体にそんなもの照らして、どうするのさ」
「そうだな……お前は、ずっと気に入らない相手に難癖をつけて自分を散々殴らせ、その動画を上げて相手を制裁してただろ?」

 黒沢に言われ、数ヶ月前まで無茶をしていた自分のことを思い出す。

 居酒屋やバーなど、酒の入る場所ではやたらと声の大きい男が一人はいるものだ。
 我が強く品位に欠け、他人に対するセクハラやパワハラを武勇伝のように語る奴を見かけては、山田はわざわざちょっかいをかけてきた。  
そうして怒り、喧嘩になって殴りつけてきた相手の姿を録画し、動画をupすることでそれを見て正義感に駆られた視聴者は率先して相手の正体を暴き、社会的な制裁を自然と与えるという投稿をこれまで何度かしてきたのだ。

 かなりの視聴数があり、実際に暴力に走った相手を突き止める人物も多くいた。
 確か山田の晒した相手のほとんどは職場やアパートを突き止められ、仕事も辞め姿を消したはずだ。

 数字がとれる上、自分の大嫌いな人間まで消せるのだから多少殴られるくらいは何ともないと思っていたのだが……。

「よし、傷はもう残ってないようだな。お前の身体に、知らない男の痕が残っているのが以前から気に入らなかったんだよ」

 黒沢は、そうではなかった。

『俺のモノであるなら、俺の痕だけを残してくれ』

 黒沢からそう願われてから、自分を餌にして相手を釣るのは一切止めた。
 視聴数が稼げるコンテンツの一つだったと自負していたし、何より山田自身が好きでやっていた企画だったから止めてしまうことで一抹の寂しさとバーにいる偉そうな男を見かけても何も出来ないというじれったさはあった。

 だが黒沢が自分を求めてくれたのは嬉しかったし、何より黒沢との約束を破ることで彼から見捨てられるのが恐ろしかったのだ。

 黒沢は、特に何の取り柄もなく燻っているだけだと思っていた自分を見つけてくれた。
 自分に興味を抱いて、5Sの活動に誘ってくれた人物なのだから、彼に突き放されるのが山田にとっては何より恐ろしいことだった。

「うん、あれから別に誰にも喧嘩なんてふっかけてないし。元々、他人に触られるの嫌いだから。今、俺の肌に触っていいのは優弥サンだけだから」

 当然のように言い、笑う山田の腰に黒沢の体が乗る。

「そうか……それは、良かった」

 その言葉が終わるより先に、山田の喉に強い圧がかかる。
 首の骨が軋む音が身体の中に反響し、いくら口や喉を動かしても呼吸が出来ない。

 首を絞められているのだと気付いたのは、一拍遅れてからだった。

 何で、どうして。
 理由のない暴力を前に疑問だけが渦巻く。

 その疑問に答えるよう、黒沢はまるで独り言のように呟いた。

「……やっと綺麗なキャンバスになったんだ。他の誰かじゃない、俺の痕だけを残してくれ。頼む。お前は、お前だけは俺のモノでいてくれ。俺を受け入れてくれ。否定しないでくれ。お前の全てを理解してやる……だから、お前は……お前だけは、俺を否定しないでくれ……」

 約束や命令ではない、胸の内を全て吐き出すかのような切願で、山田はほんの少しだけ黒沢の真意に触れた。

 山田が黒沢に見捨てられたくないように、黒沢もまた山田から拒絶されたくないのだ。
 強い嗜虐も、歪んだ正義感もこびりついた欺瞞も猜疑心も何もかも否定せず寄り添っていてほしい。

 全てを受け入れ許す相手として、黒沢は山田を選んだのだ。

 曝け出した心に寄り添いそれを受け入れる相手として自分を選んでくれたのなら、何て幸運なのだろう。
 黒沢優弥という人間の最も醜い部分を救い上げる相手として自分を選んでくれた。
 それだけで、自分はもう一生を生きていくのが寂しくないし、ここで死んでも怖くない。

 わかったよ。
 愛しているから許してあげる。

 声にならない声を唇だけで呟いて、山田はその意識を手放す。
 それは彼が今まで生きていた中で最も優しいく心地よい微睡みだった。

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インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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