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インターネット字書きマンの落書き帳

   
指輪をもてあそぶ松田概念(見えない山ガス入り)
松田だけしか出ていない概念としての山ガスです。

これを説明してしまうとダメージが増える話を書いてますよ。

本当に山田ガスマスクはミリも出てないんですけど。
自分のゆるくなった指輪をもてあそぶ松田だけが出ています。

今なら情緒が無料!
肋骨と肋骨の間に刺さればいい!

『赦し』

 昼食を終えた松田は、公園のベンチに腰かけた。
 子供の笑い声が響き、主婦たちが立ち話をしている。

 松田は薬指にはめたプラチナの指輪をくるくると弄びながらその光景を眺めていた。

 買った時は少し窮屈な気がしたが、今は指先で触れるだけで簡単に回る。
 松田が痩せたのか、それとも――理由は、もうどうでもいい。
 あれから随分と時も経っている。これも自然な変化なのだろう。

「どうぞ」

 ぼんやりと手遊びを続ける松田に、誰かが缶コーヒーを差し出す。
 声を潜めているのに、脳の奥底を揺さぶるような心地よい声だ。
 彼は誰だったか。知り合いであるのは間違いないのだが……。

「指輪、随分とゆるくなったみたいですね」

 松田の手がずっと薬指に向かっていることに気付いたのか、彼の視線も指に向く。
 細めた目は慈悲深いが、言葉は軽く冷たい。

「外さないんですか? もう、サイズがあってないみたいですけど」

 彼は、この指輪の意味を知っているのだろうか。
 松田は薬指に目を落とし、そっと指輪に触れる。親指の先で、くるりと指輪が回った。

「せやなぁ……」

 目の前の男は、オーバーサイズのパーカーというラフな出で立ちだ。
 姿勢が良く背も高いためあの男と似たところはなかったが、困ったように眉を下げ曖昧に笑う姿がかすかに面影をなぞる。

「……やっぱり、外せへんな」

 目の前にいる男と、男の向こうにいる面影に、松田もまた曖昧に笑う。

「誰も赦してくれへんみたいやし、俺くらいは、赦したらんとな」

 その笑顔に、男は静かに俯くとゆっくりと目を閉じる。
 雑多な声のなか、二人の間には礼拝にも似た静謐な時間が流れていた。

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