インターネット字書きマンの落書き帳
浮かれた街で急に刺される山ガス概念(松ガス)
必要かと思って書きました。
浮かれた気分で街中を歩いている山田ガスマスクが刺されるシーンです。
たぶん、必要だと思ったのでおいておきます。
1mmも松田出ないんですけど、このシチュエーションでBLになるなら松ガスだと思います。
昨日書いたネタの伏線回収だねッ。
いつも「情緒に刺され!」「脇腹に刺され!」と思って書いているんですが、この話は物理的に刺さってます。
やったね!
浮かれた気分で街中を歩いている山田ガスマスクが刺されるシーンです。
たぶん、必要だと思ったのでおいておきます。
1mmも松田出ないんですけど、このシチュエーションでBLになるなら松ガスだと思います。
昨日書いたネタの伏線回収だねッ。
いつも「情緒に刺され!」「脇腹に刺され!」と思って書いているんですが、この話は物理的に刺さってます。
やったね!
『セイレーンの慟哭』
山田は含み笑いをしながら立ち止まると、空にむかって左手を掲げる。
薬指にはめられた指輪は、歓楽街に輝く派手な看板の光を浴び七色に変化した。
いつの間に、指のサイズを調べたのだろう。
最初からそこにあるのが当然だったかのように、指輪は違和感なく馴染んでいる。
こんな場所に立ち止まってニヤニヤしているのはおかしいとわかっているが、それでも顔はだらしなく緩んでいた。
彼の様子がおかしいのは、部屋に帰ってきた時から気付いていた。
特別な日でもないのに、やけにソワソワしていたからだ。
何か隠しているのだろう。
ちょっとしたサプライズでもしようと思っているのか。
つまらないことだったら思いっ切り茶化してやろう。
そう思いながら、彼が行動を起こすのをじっと待っていたのだが、まさか指輪をプレゼントされるとは思ってもいなかった。
こちらに視線も向けず、リングケースを差し出す彼の耳は、日焼けしているにも関わらず赤くなっているのがはっきりとわかる。
指輪を見ても、それが自分のために準備されたものだとはにわかに信じられなかった。
きっとからかわれているのだろう。
こんな大事なものを受け取れる人間ではないのだ。
自分は、決して赦されてはいけない存在なのだから。
それを告げても、彼は指輪を引っ込めることはなかった。
彼は赦そうとしているのだ。
山田の名が罪と同等に語られたとしても、彼だけはその名を愛とともに語ろうとしている。
山田は一生、罪を背負って生きるのが当然だと思っていた。
一度はその罪から逃れようとしたのだからなおさらだ。
『僕なんか、幸せになる資格はないよ』
首を振り俯く山田の心を全て包み込むような抱擁のあと、温かな唇が触れる。
凍っていた心も時間も、ゆっくりと溶けていくような気がした。
『僕、幸せになってもいいの?』
彼はその言葉を否定しなかったから、自然に涙があふれ出ていた。
神が、人が、世界が赦さなくても、ただ一人目の前にいる愛しい男が赦してくれるという感謝と歓喜の涙だ。
あぁ、だけど明日からどうしようか。
今までは茶化して邪険にしてからかって、そんな距離感が心地よいと思っていた。
だけど彼がこんなにも本気に、真摯に自分と向き合ってくれるのなら、今までの態度を改めなければ。
それに、引っ越しの準備もしないと。
ほとんど彼の部屋に入り浸っていたから自宅は実質物置のようなものだから、家具も家電も処分したほうが手っ取り早いかもしれない。
足取りが軽くなる自分に気付き、山田はつい苦笑いになる。
だが、こんなに心が軽いのは久しぶりだ。
明日が来ることを楽しみに思える日が来るなんて、まさか思ってもいなかった。
……そういえば、指輪を受け取った時、ちゃんとお礼を言えてただろうか。
泣き出してしまったから、きちんと答えを言ってない気がする。
言わないといけない。でも、今さら気恥ずかしい。
愛している? 好き? ありがとう? こういう時にふさわしい言葉は何だろう。
山田は指輪を隠すようポケットに左手を突っ込むと、自宅に向けて歩き出す。
街の雑踏の中、慣れた道を歩いていると、突然背中に冷たい何かが触れた。
一体何だ。
振り返るより先に、鈍い衝撃が走る。
最初は、誰かが背後からぶつかってきたのだと思った。
前を見て歩いてなかったか、スマホに気を取られぶつかってしまったのだろう。その程度のことだと思っていた。
だが、何かがおかしい。
背中は徐々に冷えていき、着古したパーカーがじわじわ張り付いていく。
強い圧迫感は徐々に違和感に変わり、異質さに気付いて振り返ると、そこには血濡れた刃物をもつ見知らぬ男が震えていた。
「お、おまえが悪いんだ。おまえのせいで、俺は……」
男の髪も顔も服も、返り血で真っ赤に染まっている。
何かを言う前に、膝に力が入らなくなり山田はその場に崩れ落ちた。
目の前には無慈悲なまでに赤い色が広がっていく。
通りすがりの人々が、悲鳴や叫びをあげる。
遠のく叫び声と、霞み行く血だまりに、山田はふっと息を吐く。
それから、微かに笑って、静かに目を閉じた。
どこかから、サイレンの音が聞こえてくる。
それは無言の慟哭のように、あたりの空気を震わせた。
山田は含み笑いをしながら立ち止まると、空にむかって左手を掲げる。
薬指にはめられた指輪は、歓楽街に輝く派手な看板の光を浴び七色に変化した。
いつの間に、指のサイズを調べたのだろう。
最初からそこにあるのが当然だったかのように、指輪は違和感なく馴染んでいる。
こんな場所に立ち止まってニヤニヤしているのはおかしいとわかっているが、それでも顔はだらしなく緩んでいた。
彼の様子がおかしいのは、部屋に帰ってきた時から気付いていた。
特別な日でもないのに、やけにソワソワしていたからだ。
何か隠しているのだろう。
ちょっとしたサプライズでもしようと思っているのか。
つまらないことだったら思いっ切り茶化してやろう。
そう思いながら、彼が行動を起こすのをじっと待っていたのだが、まさか指輪をプレゼントされるとは思ってもいなかった。
こちらに視線も向けず、リングケースを差し出す彼の耳は、日焼けしているにも関わらず赤くなっているのがはっきりとわかる。
指輪を見ても、それが自分のために準備されたものだとはにわかに信じられなかった。
きっとからかわれているのだろう。
こんな大事なものを受け取れる人間ではないのだ。
自分は、決して赦されてはいけない存在なのだから。
それを告げても、彼は指輪を引っ込めることはなかった。
彼は赦そうとしているのだ。
山田の名が罪と同等に語られたとしても、彼だけはその名を愛とともに語ろうとしている。
山田は一生、罪を背負って生きるのが当然だと思っていた。
一度はその罪から逃れようとしたのだからなおさらだ。
『僕なんか、幸せになる資格はないよ』
首を振り俯く山田の心を全て包み込むような抱擁のあと、温かな唇が触れる。
凍っていた心も時間も、ゆっくりと溶けていくような気がした。
『僕、幸せになってもいいの?』
彼はその言葉を否定しなかったから、自然に涙があふれ出ていた。
神が、人が、世界が赦さなくても、ただ一人目の前にいる愛しい男が赦してくれるという感謝と歓喜の涙だ。
あぁ、だけど明日からどうしようか。
今までは茶化して邪険にしてからかって、そんな距離感が心地よいと思っていた。
だけど彼がこんなにも本気に、真摯に自分と向き合ってくれるのなら、今までの態度を改めなければ。
それに、引っ越しの準備もしないと。
ほとんど彼の部屋に入り浸っていたから自宅は実質物置のようなものだから、家具も家電も処分したほうが手っ取り早いかもしれない。
足取りが軽くなる自分に気付き、山田はつい苦笑いになる。
だが、こんなに心が軽いのは久しぶりだ。
明日が来ることを楽しみに思える日が来るなんて、まさか思ってもいなかった。
……そういえば、指輪を受け取った時、ちゃんとお礼を言えてただろうか。
泣き出してしまったから、きちんと答えを言ってない気がする。
言わないといけない。でも、今さら気恥ずかしい。
愛している? 好き? ありがとう? こういう時にふさわしい言葉は何だろう。
山田は指輪を隠すようポケットに左手を突っ込むと、自宅に向けて歩き出す。
街の雑踏の中、慣れた道を歩いていると、突然背中に冷たい何かが触れた。
一体何だ。
振り返るより先に、鈍い衝撃が走る。
最初は、誰かが背後からぶつかってきたのだと思った。
前を見て歩いてなかったか、スマホに気を取られぶつかってしまったのだろう。その程度のことだと思っていた。
だが、何かがおかしい。
背中は徐々に冷えていき、着古したパーカーがじわじわ張り付いていく。
強い圧迫感は徐々に違和感に変わり、異質さに気付いて振り返ると、そこには血濡れた刃物をもつ見知らぬ男が震えていた。
「お、おまえが悪いんだ。おまえのせいで、俺は……」
男の髪も顔も服も、返り血で真っ赤に染まっている。
何かを言う前に、膝に力が入らなくなり山田はその場に崩れ落ちた。
目の前には無慈悲なまでに赤い色が広がっていく。
通りすがりの人々が、悲鳴や叫びをあげる。
遠のく叫び声と、霞み行く血だまりに、山田はふっと息を吐く。
それから、微かに笑って、静かに目を閉じた。
どこかから、サイレンの音が聞こえてくる。
それは無言の慟哭のように、あたりの空気を震わせた。
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