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インターネット字書きマンの落書き帳

   
光の戦士×ゼロさんというアプローチ(ゼロさん夢小説)
光の戦士(男)×ゼロさんの話です。
光の戦士はヒロシでもない、ちょっと飄々とした女好きで荒波に揉まれてそうなキャラクターで設定している、実質夢小説みたいな話ですよ。

Twitterでフォロワーさんがゼロさんの話をしていた時、ちょうどゼロさんが出ているストーリーラインを走っていたから調子にのって妄想していたら「愛しているを義務でいうゼロさん概念はかっこいいな」と思ったので書きました。

飄々とした光の戦士(男)×ゼロさん概念が欲しい方。
どうぞ読んで健康になってください。(健康にいいと信じて疑わないまなざし)
光の戦士さんは名前がないのでとりあえずずっと「彼」にしてあります。
名前を変更できる機能がないから夢小説失格かもしれんが許してくれ。





『その言葉はには意味さえもない』

 やはりお前さんは美人だな。彼はそう言うと口角を上げた。
 それが笑顔であり向こう側の人間は笑顔を見せる時は楽しいと思うものだというのをゼロは知っていた。だがそれはあくまで向こう側の世界に渡った時に見た人間たちがそうであったというだけでゼロの中にはそのような感情というものはない。
 いや、以前はあったのかもしれないが今のゼロはそのような感情をとうに忘れてしまったのだ。

「私が美人だと嬉しいのか」

 だからいかなる美辞麗句もゼロの心には届かない。
 それでも彼は嬉しそうな顔をして笑うのだ。

「あぁ、嬉しいとも。異界でとびっきりの美人と会えたのだからな」

 そしてどこか調子の外れた鼻歌などを口ずさむ。
 向こう側の人間にとって外見というのはその存在を推し量る重要な要素の一つだというのはゼロも心得ていた。
 また、ゼロの住まう世界……向こう側の人間が「ヴォイド」と呼ぶ世界に存在する妖異たちの外見が向こう側の基準で言えば醜い、あるいは歪で恐ろしい外見だというのもだ。

 どうにも向こう側の世界では複数の目を持つ存在や多数の腕を持つ存在、口が裂け牙を向き出すような存在は恐怖の象徴らしい。

 どれもヴォイドでは当たり前に見る姿でありヴォイドに住む妖異たちにとっては何かしらの執着……それは多くを見たいという欲求であったり、強くなりたいという欲求であったりと根本にあるものは向こう側の人間らとそれほど変わりないだろうというのがゼロの意見ではあるが……それを象徴したような姿で現れているだけなのだが、人間たちはそれがグロテスクに見えるのだ。

 ヴォイドは闇が停滞した世界である。人間たちにとってあまり目の当たりにしたくない感情がそのまま具現化した存在は醜く恐ろしいのかもしれない等とも思うが、思うだけであり口には出さない。

 今のゼロにはそんな思案すらどうでもよい事だったのだ。

「そうか。だが何を言われても私は別段嬉しいとも思わんな……喜びという感情すらすでに私には存在しないのだから」

 ヴォイドに死は存在しない。正しい世界では死の後にエーテルが循環しまた生があるのだが永遠の闇にあるヴォイドで死した後もエーテルが誰かに喰われ消えていかない限りは存在しつづけてしまうのだ。
 ゼロもまた停滞した世界でただ死ぬ事が出来ないという理由で生きている。いや、それを生きているといってもいいのかゼロ自身も疑問だが活動している限りはそれを維持しなければいけないのだから仕方が無いだろう。
 今の身体を維持するためエーテルを喰らい漫然と過ごすのは本能か、それとも義務か。どちらにしても今のゼロはそれにしがみつく程に今ある自分にこだわりはなかった。

「長らくこの怠慢な世界に毒されて感情も摩耗しちまったのか。お前さんの笑う顔も見てみたいものだがな」

 彼は残念そうに肩をすくめて見せた。
 たかが口角を少し上に上げるだけの顔を見たいというのかと思うが表情の変化というのはそれだけ向こう側では大事にされているコミュニケーションの一つらしい。

「笑って欲しいなら対価をよこせばいつだって笑ってやる。お前のエーテルはかなり上等なんだろう」

 ゼロは帽子のつばに触れると突き放すように言う。彼はゼロとの会話を望むがゼロにとって対価のない会話は億劫でしかなかったから、あまりしつこく話しかけられても面倒なだけだった。
 だが彼は意に介さずゼロへと話しかけてくる。まるでゼロに拒まれているのもまた楽しいといった様子を見せるのだからつくづく変わった男なのだろう。

「わかって無ぇな……俺はお前さんの愛想笑いが欲しいんじゃ無ぇよ。心から笑う顔を見たいって言ってんだ」

 そして変わった男は変わった事を言うものだ。
 心から、といったがゼロにはそのようなものがまず認識できていないのだ。存在していないものを出せというのだから無理な話だろう。

「わかってないのはお前だろう。私にそのようなものは、無い」

 だから、ゼロなのだ。
 押しつけられた名前ではあるが自分にはふさわしいとも思った。何も無い、永遠にない。
 まったく、今の自分そのものではないか。

「でも、これから出来るかもしれないだろ?」

 そんなゼロに彼は屈託なく告げる。
 そういえばゼロに名を与えたヤ・シュトラも似たようなことを言っていたか。
 ゼロは始まりのゼロ。ゼロであることを認識した時から最初のひとつを数える事ができるのだと。
 数えるのも億劫になるほど何もなかったゼロにいまさら何かが生まれるとは到底思えなかったが、それをゼロが告げるより先に彼は言葉を続けた。

「そうだな……お前さんが笑顔になれる日のために、俺から愛を贈ろう」
「愛?」
「そう、愛だ。……愛してるぜ、ゼロ。初めて見た時からお前の気高さと美しさが何よりも愛おしい」

 彼はやけに真剣な顔をし、ゼロの前に手を差し出す。
 愛というのは何だかわからないが、向こう側の人間はやけにそれを賛美していた気がする。だが当然ゼロの中にあるものではなく、またヴォイドに住まうものたちもそのような感情をもってはいないだろう。

「そう言われても私にとって愛など無価値だ……押しつけられても困るな」

 価値のない言葉を告げられても面倒なだけだ。
 それに妙な感情に縛られると厄介なことになるというのは以前ゼノスと契約した時に身をもって知っている。
 それでも彼は出した「愛」とやらを引っ込めようとはしなかった。

「それなら、お前さんも俺を愛してくれ。そう、愛していると言えばいい……そうしたら貸し借りなしだ。いいだろ?」

 以前ヤ・シュトラから名前を押しつけられ、それを借りにされた事がある。 彼はそのような打算を見せる相手ではないが押しつけられた愛を貸しにされ取り立てられても困るというものだ。
 愛している。
 その言葉だけで彼が納得するというのなら言っておいた方がいいだろう。
 貸し借りがない状態でなければ対価ある契約に支障が出かねないのだから。

「わかった。私もお前を愛している……これでいいな?」

 その言葉を聞き、彼は満足そうに笑ってゼロの手を取る。

「あぁ、それでいい。いつかお前さんの中でその言葉が意味を成す日を楽しみにしているぜ」

 そうして笑う彼のその笑顔の意味は今のゼロにはわからなかった。
 だがいずれ彼の言う通り言葉が意味をなしゼロの感情を揺さぶる事があるというのなら、きっとそれは面白い事なのだろう。
 ゼロはただぼんやりと、そんなことを考えていた。

 愛という言葉が時に呪いとなって運命を絡め取り、血反吐をまき散らすほどの苦しみや痛みすら与えるということを知らないというのがゼロにとって幸福だったのかあるいは不幸なことになるのか、その先を知るものは誰もいない。

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