インターネット字書きマンの落書き帳
ヌン蔵と山ガスが●●●だった世界線の話(ネタバレあり・黒ガス表現あり)
ゲーセンのプライズに何故か山田ガスマスクが!
いや、マジで「何で!?」なんですかね。
山田ガスマスク本人が一番「なんでぇ!?」って思っているとは思いますが。
いや、あのメンツにいるってことは、ひょっとして「富入の協力者」って過去があったんじゃないの?
とさえ思えてきたので、いっそ「富入の協力者だったころの山ガス」をかいてみました。
・元カレは黒沢
・その後、富入に協力者として雇われる
みたいな状態になっている、富入順蔵と山田ガスマスクの話ですよ~。
フォロワーの推しと推しを書いて、フォロワーを怖がらせましょう!
いや、マジで「何で!?」なんですかね。
山田ガスマスク本人が一番「なんでぇ!?」って思っているとは思いますが。
いや、あのメンツにいるってことは、ひょっとして「富入の協力者」って過去があったんじゃないの?
とさえ思えてきたので、いっそ「富入の協力者だったころの山ガス」をかいてみました。
・元カレは黒沢
・その後、富入に協力者として雇われる
みたいな状態になっている、富入順蔵と山田ガスマスクの話ですよ~。
フォロワーの推しと推しを書いて、フォロワーを怖がらせましょう!
『協力者・YG921号』
小さな窓から、光が僅かに差し込む。
それは今が夏であることを忘れさせるほど、頼りない光だった。
富入順蔵はネクタイをなおし、パイプ椅子に腰掛ける。
すると、それを待っていたかのように扉の奥から一人の青年が姿を現した。
蒼白の肌をした青年は、ひどい猫背のまま富入を見る。
ブツブツと穴の通されたアクリル板越しに笑う青年に、富入も笑顔を向けた。
「久しぶりねぇ、元気そうで何よりだわ」
「えぇ、おかげさまで。んー……そうだね。食事は三食出てるし、規則正しい生活はしてるから。ある意味、娑婆にいる時より健康的かも」
青年はポケットに手を突っ込み、肩を震わせて笑う。
いま、目の前にいる青年はかつて富入の協力者をしていた。
富入は公安の刑事である。
テロやクーデターといった大きな犯罪を取り締まるため、違法な捜査を行う事も多い。
そして、彼ら公安は違法な捜査を行うための手駒として協力者を囲っているのが普通だった。
目の前の青年は、その協力者の一人だったというわけだ。
さて、公安には「クローゼット案件」と呼ばれる事件がある。
警察官僚やら、政治家、代議士といった逮捕されてはいけない存在の事件が公に捜査される事になった時、それを有耶無耶にして手の届かぬ場所へ資料ごと葬り去ってしまう事件のことだ。
目の前にいる青年は、そのクローゼット案件の後始末に関わっていた。
後に天誅事件と呼ばれる、ある殺人事件。その事件に、現役警察官僚の実子が関わっていたのがことの発端だ。
人脈と派閥を多く抱える警察官僚の一人息子が殺人事件をおこしたなど、警察の威信に関わる問題だ。
その上、件の警察官僚は財界や政界にも太いパイプのある人物だったのが、より事態を深刻化させた。
下手に事を荒立てれば、思わぬ犠牲が出かねない。
そう判断され、事件はクローゼット行きとなるのがすぐさま決定する。
その時、富入が「リーダー格のお目付役」として協力を要請したのが、いま目の前にいる青年である。
この青年もまた、天誅事件に関わっていた。
目の前で人が死んだのを理解しながら、その場から逃げ出した罪人なのだ。
「……正直、オジサンが僕の前に現れた時は、あー、終わったって思ったよ。逮捕されるんだろうな。って」
青年は軽く笑う。
実際、逮捕してやりたいと思っていた。
人を殺した癖に、保身のため逃げ出したのだ。救急車を呼んでいれば助かったかもしれなかったのに、その場から逃げる事を選んだ卑怯者なのだから。
「だから、ちょっとほっとしてたんだよね。あー、もう楽になるって。こそこそと逃げ回るみたいに街を歩いて、他人の話題に耳をそばだてて、相手の言葉に気を遣ってボロが出ないように取り繕う生活ってさ。すっごい……嫌だったからさ」
それでも、この青年に罪悪感がないわけではない。
自分の手のなかで急激に体温を失っていく被害者の姿を幾度も夢に見て、全身が脱力し虚ろな視線でぐらぐらと揺れる首を幾度も思い出し、何でもない場所で悲鳴をあげ周囲に驚かれたことも、一度や二度ではなかったという。
Webライターという仕事を選んだのも、幾度もあるフラッシュバックが唐突に襲ってきても、妙だと思う相手が少ないからだ。
その点で、この青年は事件に関わった他のメンバーより幾分か繊細だった。
「だけど、オジサンはさ。けっこう残酷だよね。僕に……あんな仕事任せるなんてさ」
富入が青年に頼んだのは、事件を起こしたリーダー格の動向を探ることだった。
元々、同じメンバーの一人として活動をしていたのだから、リーダー格が今何をして、どういう考えで行動しているのかを知るためだ。
青年は、リーダー格と深い付き合いであり片腕と形容するには十分すぎるほどの存在だったから、本音を探るには適任だったのだ。
メンバーのリーダー格は、キャリア組の一人息子だった。
青年は、リーダー格の男がさらなる罪を重ねないようストッパーとしての役割を富入から任されたのである。
青年は言われた通りの。いや、それ以上の仕事をした。
リーダーの男が折れそうになった時はしっかり支え、さらなる罪に手を出そうとした時は身を挺して止めた。そして、気持ちを立て直し堅実でクリーンな仕事をするよう、言葉巧みに誘導していったのだ。
リーダーの男は青年をよく信頼していたし、青年も信頼によく応え、常に正しいアドバイスをした。
その一部には、青年が富入から聞かされた警察組織の内情という機密情報も幾分かは含まれていたのだが、青年からのアドバイスの甲斐もあり、リーダーの男は起業する。
そこから先は順風満帆だ。
元々、お膳立てされた起業だったから経営は問題なく、みるみるうちに大きな企業へ成長していった。
ある程度の金と権力を得てからは、美味い汁を吸うため近づいてくる連中が幾人もいたが、青年はそれらの連中を適切に仕分けし、役に立つ人間だけをリーダー格に向かわせ、裏がある人間は社会的な制裁という形で内密に処分をしてくれた。
「オジサン、色々調べてるから知ってると思うけどさ。僕、あの人と付き合ってたんだよね。だからさぁ……事件があった後、うまくいかなくて、別れちゃったのはまぁ……仕方ないな、って自分でも思ってる。だけどさ、その後……あの人にふさわしい人を選別するのに、使われるのって結構ストレスだったし。あの人が……僕じゃない人を選んで、トントンで話が進んでさ。婚約までしたのは……正直、かなりキツかったなぁ」
青年は、きゅっと唇を噛む。青白い肌に、唇だけがうっすら紅く染まる。
富入は無言のまま、口元を抑えただ青年を見ていた。
「あーあ、でも結局これ。まさか、テロみたいな連中に横やり入れられちゃうとはねー。今まで僕が頑張ってきたのも無駄になっちゃったのかな。残念だったねー、オジサンも、結構無茶したんでしょ?」
あぁ、確かに無茶をした。だが、もうおしまいだ。
しかし青年は、それほど落胆した様子はなかった。むしろ、協力者という役目から解放されて清々したように見える。
元より、逮捕され罪を償う機会を奪われたことで半ば病んでいたのだから、正しく罰せられ罪を償えるようになった今の方が、気が楽なのかもしれない。
「んー、でも思ったより……短かったかな。ほら、刑期。もっと長い間出てこれないもんだと思ってたんだけど……オジサン、僕のために手を回してくれた?」
やろうと思えば出来ただろう。
しかし、リーダーの罪が暴かれた今となって、青年を協力者にしておく理由はない。
わざわざ刑期を軽くするための取引なんてする必要はなかった。
「アナタ、もし私が『協力者をしてくれるなら、すぐに出してあげる』なんていっていったら、協力してくれるつもり?」
意地悪く笑う富入に、青年は肩をすくめる。
「……ゴメンかな? もう二度とあんな思いしたくないもん。僕ってけっこう繊細なんだからね」
そうだろう。
青年はここで罪を償い、それから人殺しとしての命を背負って生きていくのが似合いだ。
そろそろ時間だと誰かが告げる。
面会時間も、もう少ないのだろう。
「じゃ、僕もういくね。あぁ……オジサン。お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「なに? 出所したら抱いてほしいっていうのなら、考えてあげてもいいわよ」
「えぇ……じゃ、一晩お願いしちゃおうかな? なんて、冗談はこれくらいにして……野村さんのお墓参り、僕のかわりにいってくれない? ココにいたら、花も備えてあげられないから」
青年は、毎月墓参りをしていた。
遺族と顔をあわせることがないよう、時期や日付をずらしてはいたが、花を手向け掃除をするのを欠かしてはいなかった。
「……仕方ないわね。あなたが出てくるまでは変わってあげるわ」
「んはは、ありがと。オジサン、ほんと顔怖いけどやさしー。それじゃ」
立ち上がる青年を、富入は細い目で見る。
「あまり無理しちゃ駄目よ。もう、あなたは私とは無関係……だから、しっかり罪を償って。それからは、もう自由でいいのよ。あなたみたいに……解放される子の方が、少ないの。だから……自分を大切にしなさい」
「あれ? 心配してくれてる……? んははは、わかってるって。大丈夫……僕、オジサンが思ってるより元気だからね」
青年はそう告げると、手をひらひらと振ると扉の奥へと戻って行く。
微かな笑顔は、ガシャンという冷たい鉄扉の音で阻まれ、もう見ることはできなかった。
小さな窓から、光が僅かに差し込む。
それは今が夏であることを忘れさせるほど、頼りない光だった。
富入順蔵はネクタイをなおし、パイプ椅子に腰掛ける。
すると、それを待っていたかのように扉の奥から一人の青年が姿を現した。
蒼白の肌をした青年は、ひどい猫背のまま富入を見る。
ブツブツと穴の通されたアクリル板越しに笑う青年に、富入も笑顔を向けた。
「久しぶりねぇ、元気そうで何よりだわ」
「えぇ、おかげさまで。んー……そうだね。食事は三食出てるし、規則正しい生活はしてるから。ある意味、娑婆にいる時より健康的かも」
青年はポケットに手を突っ込み、肩を震わせて笑う。
いま、目の前にいる青年はかつて富入の協力者をしていた。
富入は公安の刑事である。
テロやクーデターといった大きな犯罪を取り締まるため、違法な捜査を行う事も多い。
そして、彼ら公安は違法な捜査を行うための手駒として協力者を囲っているのが普通だった。
目の前の青年は、その協力者の一人だったというわけだ。
さて、公安には「クローゼット案件」と呼ばれる事件がある。
警察官僚やら、政治家、代議士といった逮捕されてはいけない存在の事件が公に捜査される事になった時、それを有耶無耶にして手の届かぬ場所へ資料ごと葬り去ってしまう事件のことだ。
目の前にいる青年は、そのクローゼット案件の後始末に関わっていた。
後に天誅事件と呼ばれる、ある殺人事件。その事件に、現役警察官僚の実子が関わっていたのがことの発端だ。
人脈と派閥を多く抱える警察官僚の一人息子が殺人事件をおこしたなど、警察の威信に関わる問題だ。
その上、件の警察官僚は財界や政界にも太いパイプのある人物だったのが、より事態を深刻化させた。
下手に事を荒立てれば、思わぬ犠牲が出かねない。
そう判断され、事件はクローゼット行きとなるのがすぐさま決定する。
その時、富入が「リーダー格のお目付役」として協力を要請したのが、いま目の前にいる青年である。
この青年もまた、天誅事件に関わっていた。
目の前で人が死んだのを理解しながら、その場から逃げ出した罪人なのだ。
「……正直、オジサンが僕の前に現れた時は、あー、終わったって思ったよ。逮捕されるんだろうな。って」
青年は軽く笑う。
実際、逮捕してやりたいと思っていた。
人を殺した癖に、保身のため逃げ出したのだ。救急車を呼んでいれば助かったかもしれなかったのに、その場から逃げる事を選んだ卑怯者なのだから。
「だから、ちょっとほっとしてたんだよね。あー、もう楽になるって。こそこそと逃げ回るみたいに街を歩いて、他人の話題に耳をそばだてて、相手の言葉に気を遣ってボロが出ないように取り繕う生活ってさ。すっごい……嫌だったからさ」
それでも、この青年に罪悪感がないわけではない。
自分の手のなかで急激に体温を失っていく被害者の姿を幾度も夢に見て、全身が脱力し虚ろな視線でぐらぐらと揺れる首を幾度も思い出し、何でもない場所で悲鳴をあげ周囲に驚かれたことも、一度や二度ではなかったという。
Webライターという仕事を選んだのも、幾度もあるフラッシュバックが唐突に襲ってきても、妙だと思う相手が少ないからだ。
その点で、この青年は事件に関わった他のメンバーより幾分か繊細だった。
「だけど、オジサンはさ。けっこう残酷だよね。僕に……あんな仕事任せるなんてさ」
富入が青年に頼んだのは、事件を起こしたリーダー格の動向を探ることだった。
元々、同じメンバーの一人として活動をしていたのだから、リーダー格が今何をして、どういう考えで行動しているのかを知るためだ。
青年は、リーダー格と深い付き合いであり片腕と形容するには十分すぎるほどの存在だったから、本音を探るには適任だったのだ。
メンバーのリーダー格は、キャリア組の一人息子だった。
青年は、リーダー格の男がさらなる罪を重ねないようストッパーとしての役割を富入から任されたのである。
青年は言われた通りの。いや、それ以上の仕事をした。
リーダーの男が折れそうになった時はしっかり支え、さらなる罪に手を出そうとした時は身を挺して止めた。そして、気持ちを立て直し堅実でクリーンな仕事をするよう、言葉巧みに誘導していったのだ。
リーダーの男は青年をよく信頼していたし、青年も信頼によく応え、常に正しいアドバイスをした。
その一部には、青年が富入から聞かされた警察組織の内情という機密情報も幾分かは含まれていたのだが、青年からのアドバイスの甲斐もあり、リーダーの男は起業する。
そこから先は順風満帆だ。
元々、お膳立てされた起業だったから経営は問題なく、みるみるうちに大きな企業へ成長していった。
ある程度の金と権力を得てからは、美味い汁を吸うため近づいてくる連中が幾人もいたが、青年はそれらの連中を適切に仕分けし、役に立つ人間だけをリーダー格に向かわせ、裏がある人間は社会的な制裁という形で内密に処分をしてくれた。
「オジサン、色々調べてるから知ってると思うけどさ。僕、あの人と付き合ってたんだよね。だからさぁ……事件があった後、うまくいかなくて、別れちゃったのはまぁ……仕方ないな、って自分でも思ってる。だけどさ、その後……あの人にふさわしい人を選別するのに、使われるのって結構ストレスだったし。あの人が……僕じゃない人を選んで、トントンで話が進んでさ。婚約までしたのは……正直、かなりキツかったなぁ」
青年は、きゅっと唇を噛む。青白い肌に、唇だけがうっすら紅く染まる。
富入は無言のまま、口元を抑えただ青年を見ていた。
「あーあ、でも結局これ。まさか、テロみたいな連中に横やり入れられちゃうとはねー。今まで僕が頑張ってきたのも無駄になっちゃったのかな。残念だったねー、オジサンも、結構無茶したんでしょ?」
あぁ、確かに無茶をした。だが、もうおしまいだ。
しかし青年は、それほど落胆した様子はなかった。むしろ、協力者という役目から解放されて清々したように見える。
元より、逮捕され罪を償う機会を奪われたことで半ば病んでいたのだから、正しく罰せられ罪を償えるようになった今の方が、気が楽なのかもしれない。
「んー、でも思ったより……短かったかな。ほら、刑期。もっと長い間出てこれないもんだと思ってたんだけど……オジサン、僕のために手を回してくれた?」
やろうと思えば出来ただろう。
しかし、リーダーの罪が暴かれた今となって、青年を協力者にしておく理由はない。
わざわざ刑期を軽くするための取引なんてする必要はなかった。
「アナタ、もし私が『協力者をしてくれるなら、すぐに出してあげる』なんていっていったら、協力してくれるつもり?」
意地悪く笑う富入に、青年は肩をすくめる。
「……ゴメンかな? もう二度とあんな思いしたくないもん。僕ってけっこう繊細なんだからね」
そうだろう。
青年はここで罪を償い、それから人殺しとしての命を背負って生きていくのが似合いだ。
そろそろ時間だと誰かが告げる。
面会時間も、もう少ないのだろう。
「じゃ、僕もういくね。あぁ……オジサン。お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「なに? 出所したら抱いてほしいっていうのなら、考えてあげてもいいわよ」
「えぇ……じゃ、一晩お願いしちゃおうかな? なんて、冗談はこれくらいにして……野村さんのお墓参り、僕のかわりにいってくれない? ココにいたら、花も備えてあげられないから」
青年は、毎月墓参りをしていた。
遺族と顔をあわせることがないよう、時期や日付をずらしてはいたが、花を手向け掃除をするのを欠かしてはいなかった。
「……仕方ないわね。あなたが出てくるまでは変わってあげるわ」
「んはは、ありがと。オジサン、ほんと顔怖いけどやさしー。それじゃ」
立ち上がる青年を、富入は細い目で見る。
「あまり無理しちゃ駄目よ。もう、あなたは私とは無関係……だから、しっかり罪を償って。それからは、もう自由でいいのよ。あなたみたいに……解放される子の方が、少ないの。だから……自分を大切にしなさい」
「あれ? 心配してくれてる……? んははは、わかってるって。大丈夫……僕、オジサンが思ってるより元気だからね」
青年はそう告げると、手をひらひらと振ると扉の奥へと戻って行く。
微かな笑顔は、ガシャンという冷たい鉄扉の音で阻まれ、もう見ることはできなかった。
PR
COMMENT