インターネット字書きマンの落書き帳
前髪切りすぎた時の荒井の話(新堂←荒井)
平和な世界線でいずれ付き合う新堂×荒井の話……します!
俺は新堂に片思いをして若干こじらせている昭二のことが、大好きッ……。
という訳で、好きなものを好きなだけ書いていきましょう。
今回の話は、前髪切りすぎたのを気にしている荒井を見た新堂が気軽に「いいじゃねーの」というもんだから、もだもだしてしまう荒井の話をしますよ。
荒井と親友の袖山くんも出ています。
俺は荒井と仲良しの袖山がだいだいだーいすき♥
俺は新堂に片思いをして若干こじらせている昭二のことが、大好きッ……。
という訳で、好きなものを好きなだけ書いていきましょう。
今回の話は、前髪切りすぎたのを気にしている荒井を見た新堂が気軽に「いいじゃねーの」というもんだから、もだもだしてしまう荒井の話をしますよ。
荒井と親友の袖山くんも出ています。
俺は荒井と仲良しの袖山がだいだいだーいすき♥
『少しだけ明るい世界』
昼休みになり学食へ向かう途中、荒井はしきりに前髪へと触れていた。
長くなってきたからと前髪を自分で切ったのだが、普段より少し切りすぎてしまったのだ。
見通しは良くなったが、いつもと視界が違うのはどうにも落ち着かない。前髪をそろえすぎて市松人形のようになってしまった気がして、どことなく恥ずかしさもある。
高校生にもなってそんな事でからかう相手はいないと思っていても、どうしても気になってしまいつい前髪に触れてしまう荒井に、袖山は心配そうな顔を向けた。
「荒井くん、大丈夫。ずっと前髪を気にしてるみたいだけど、気にしなくていいよ。普段とそんなにかわらないし、別に変な風にはなっていないと思うよ」
袖山の言う通り、自分が気にする程変な髪型にはなっていないのだろう。むしろ、気にして前髪に触れている方が目立つに違いない。
それでも普段より開けた視界はどうにも落ち着かず、つい前髪へ手を触れてしまうのだった。
「うん、わかってるんだ袖山くん。でも、どうしても気になっちゃうんだよね」
「そっか、仕方ないよね。髪が伸びるまで待つしか無いよ。大丈夫、そんなに変じゃないし、みんな気付かないうちにすぐ伸びるよ」
袖山の励ましに荒井は小さく頷いてみせる。
実際、赤川や時田は荒井の髪が短くなっているのにまだ気付いていない。袖山も、荒井が前髪ばかり触っているから気にして声をかけたのでようやく気付いたのだ。傍目からすると、微細な変化でしかないのだろう。触っていなければ、確かに気付かれないはずだ。むしろ、自分が気にしすぎていると周囲にも気付かれるかもしれない。
「そうだね、あんまり気にしないようにするよ」
荒井が前髪にそえた手を放したのと、前方から新堂がやってくるのに気付いたのはほとんど同時だったろう。それまで前髪ばかり気にして手で隠していたから新堂が近くまで来ているのに気付かなかったのだ。
新堂は荒井と袖山に気付くと、「おう」と軽く手を上げた後、荒井の顔をのぞき込んだ。
「お、どうした荒井。少し髪切ったのか? おいおい、失恋でもしたんじゃないよなァ」
前髪に触れていないというのに、新堂はすぐに荒井の変化に気付いたようだった。
どうして新堂が気付くのだろう、滅多に会う訳でもないのに。いや、滅多に会わないから印象の違いに気付くのだろうか。それにしても、髪を切ったから失恋とは、随分と安直な物言いだ。古い価値観が上書きされていないのだろうか。やはり見ただけで気付かれるほど、短く切ってしまったのだろうか。様々な思いが渦巻く奥で、恥ずかしさがじわじわと広がっていく。
よりにもよって新堂に見られるとは思っていなかった。
遠くから見つめ、ぼんやりとした好意を抱いている相手が自分の変化に気付いてくれるのは嬉しいが、今回は失敗したという思いが強い分恥ずかしさが大きい。
「そんな訳ないでしょう、少し切りすぎただけですよ」
慌てて前髪に手をやろうとするその手を止めるよう、新堂は荒井の手首を握る。そしてしばらくじっと彼の顔を見つめると。
「そっか、似合ってるじゃ無ぇか」
事もなげにそう言うと、にかっと歯を見せて笑うのだった。
「あー、でもあんまり前髪短くすんなよォ? お前の顔が綺麗だってのが他の連中にも知れたら、ライバルが増えちまうからな」
それからまるで子猫でも可愛がるように、頭をくしゃくしゃに撫でる。
髪に触れる指先から新堂の熱が伝わり、その言葉と重なって激しく気持ちが揺れる。
どういう意味なんだろう、自分の事を綺麗だと思ってくれているのか。少しでも気に掛けてくれているのだろうか。他の誰かにとられたら悔しいと思うのだろうか。
いや、そんなはずは無い。新堂は気に入った相手なら誰に対しても親しく話しかけてくるのだ。自分が特別に慕われてるという訳でもない。勘違いしてはいけない、新堂はそういう男なのだから。
「それじゃ、またな」
ひらひらと手を振る新堂の後ろ姿を袖山と共に見送る。
「びっくりしたねぇ、新堂さんが話しかけてくるなんて……あ、学食急がないと、人がいっぱいになっちゃうね、行こうか」
「うん……」
荒井は袖山と歩き出すと、一瞬立ち止まり振り返った。
「本当、そういう所ですよ新堂さん。好きになりたくないのに僕は、期待してしまう……」
そして小さく呟くと、長い廊下を歩き出す。
どうしようもない思いを抱え、それでも捨てきれないでいる自分を歯がゆく思いながら。
昼休みになり学食へ向かう途中、荒井はしきりに前髪へと触れていた。
長くなってきたからと前髪を自分で切ったのだが、普段より少し切りすぎてしまったのだ。
見通しは良くなったが、いつもと視界が違うのはどうにも落ち着かない。前髪をそろえすぎて市松人形のようになってしまった気がして、どことなく恥ずかしさもある。
高校生にもなってそんな事でからかう相手はいないと思っていても、どうしても気になってしまいつい前髪に触れてしまう荒井に、袖山は心配そうな顔を向けた。
「荒井くん、大丈夫。ずっと前髪を気にしてるみたいだけど、気にしなくていいよ。普段とそんなにかわらないし、別に変な風にはなっていないと思うよ」
袖山の言う通り、自分が気にする程変な髪型にはなっていないのだろう。むしろ、気にして前髪に触れている方が目立つに違いない。
それでも普段より開けた視界はどうにも落ち着かず、つい前髪へ手を触れてしまうのだった。
「うん、わかってるんだ袖山くん。でも、どうしても気になっちゃうんだよね」
「そっか、仕方ないよね。髪が伸びるまで待つしか無いよ。大丈夫、そんなに変じゃないし、みんな気付かないうちにすぐ伸びるよ」
袖山の励ましに荒井は小さく頷いてみせる。
実際、赤川や時田は荒井の髪が短くなっているのにまだ気付いていない。袖山も、荒井が前髪ばかり触っているから気にして声をかけたのでようやく気付いたのだ。傍目からすると、微細な変化でしかないのだろう。触っていなければ、確かに気付かれないはずだ。むしろ、自分が気にしすぎていると周囲にも気付かれるかもしれない。
「そうだね、あんまり気にしないようにするよ」
荒井が前髪にそえた手を放したのと、前方から新堂がやってくるのに気付いたのはほとんど同時だったろう。それまで前髪ばかり気にして手で隠していたから新堂が近くまで来ているのに気付かなかったのだ。
新堂は荒井と袖山に気付くと、「おう」と軽く手を上げた後、荒井の顔をのぞき込んだ。
「お、どうした荒井。少し髪切ったのか? おいおい、失恋でもしたんじゃないよなァ」
前髪に触れていないというのに、新堂はすぐに荒井の変化に気付いたようだった。
どうして新堂が気付くのだろう、滅多に会う訳でもないのに。いや、滅多に会わないから印象の違いに気付くのだろうか。それにしても、髪を切ったから失恋とは、随分と安直な物言いだ。古い価値観が上書きされていないのだろうか。やはり見ただけで気付かれるほど、短く切ってしまったのだろうか。様々な思いが渦巻く奥で、恥ずかしさがじわじわと広がっていく。
よりにもよって新堂に見られるとは思っていなかった。
遠くから見つめ、ぼんやりとした好意を抱いている相手が自分の変化に気付いてくれるのは嬉しいが、今回は失敗したという思いが強い分恥ずかしさが大きい。
「そんな訳ないでしょう、少し切りすぎただけですよ」
慌てて前髪に手をやろうとするその手を止めるよう、新堂は荒井の手首を握る。そしてしばらくじっと彼の顔を見つめると。
「そっか、似合ってるじゃ無ぇか」
事もなげにそう言うと、にかっと歯を見せて笑うのだった。
「あー、でもあんまり前髪短くすんなよォ? お前の顔が綺麗だってのが他の連中にも知れたら、ライバルが増えちまうからな」
それからまるで子猫でも可愛がるように、頭をくしゃくしゃに撫でる。
髪に触れる指先から新堂の熱が伝わり、その言葉と重なって激しく気持ちが揺れる。
どういう意味なんだろう、自分の事を綺麗だと思ってくれているのか。少しでも気に掛けてくれているのだろうか。他の誰かにとられたら悔しいと思うのだろうか。
いや、そんなはずは無い。新堂は気に入った相手なら誰に対しても親しく話しかけてくるのだ。自分が特別に慕われてるという訳でもない。勘違いしてはいけない、新堂はそういう男なのだから。
「それじゃ、またな」
ひらひらと手を振る新堂の後ろ姿を袖山と共に見送る。
「びっくりしたねぇ、新堂さんが話しかけてくるなんて……あ、学食急がないと、人がいっぱいになっちゃうね、行こうか」
「うん……」
荒井は袖山と歩き出すと、一瞬立ち止まり振り返った。
「本当、そういう所ですよ新堂さん。好きになりたくないのに僕は、期待してしまう……」
そして小さく呟くと、長い廊下を歩き出す。
どうしようもない思いを抱え、それでも捨てきれないでいる自分を歯がゆく思いながら。
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