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インターネット字書きマンの落書き帳

   
台風でしまわれちゃう山ガス(松ガス)/BL
台風だ! 山ガスをしまえ!

……というわけで。
台風の時、山ガスわりと無防備に外に出たり、ベランダから外眺めてキャッキャ!
とかしてそうだよな~。

と思ったので書いてみました。

台風が来るっていうのに外を眺めてキャッキャしている山ガスを部屋にしまう松田の概念です。
俺は「山ガスの元カレが黒沢」という概念が好きなので、うっすら「黒沢に溺愛されていて、その時の思い出をクッソ引きずってる山ガス」みたいになってますよ。

うっすらと黒沢の思い出を引きずっているし、黒沢が好きでいたことだけで生きていける。
そんな山ガスのこと、黒沢を引きずっているお前ごと好きだけど、それはそれとして黒沢じゃなくちゃんと俺を見て俺を愛せと思っている松田みたいな奴が……好きです。

トロの部分!

台風でしまわれちゃう人を書くの好きかい?
今日から好きになろうぜ!

特に付き合ってないダーマツとガスです。

『台風だやまだをしまえ』

 その日は朝から台風の予報が出ており、普段なら仕事に出れば職場で長っ尻して研究に励む松田も流石に定時で帰ることにした。
 すでに止まっている電車もあり、普段よりギュウギュウになった車両に乗り込んで駅までついた後は、台風の停電に備えてカップラーメンやレトルト品、水に電池を少し買い足して家に帰れば、そこには窓を開けベランダから外を眺めている山田の姿があった。

「おまえ、何しとるん? 天気予報も見てないんか? もうすぐ台風が来るんやで」

 防災用にあれこれ買い足した品をテーブルに置いて声をかけるが、山田は空を眺めながら頬杖をついていた。

「見てよ松田サン、見た事ないくらい雲がどんどん流れていくよ。すっごいねー」

 山田は空を指さし、ケラケラと笑う。
 そうしている合間にも雲行きはどんどん怪しくなっており、鉛のような雲がたちどころに空を包み込んだかと思えばゴロゴロと唸るような音までしはじめた。

「おまえホンマ、アホちゃうか? 朝から台風来る言うとったやないか。はよベランダから出て、雨戸閉めて……」

 そう言っている合間に、一閃の後稲光が落ちる。やや遅れて爆発音に近い雷鳴が室内に響き渡り、近くに雷が落ちた事が察せられた。
 これだけ近くに落ちたのなら、マンション内にいても落ちる事がある。雷は外にいるだけで命に関わるリスクのある天候だというのに、山田は相変わらずベランダから外を眺め

「今の見た松田サン。すっごい雷! ビカビカビカって光って、ドーン。ハッキリ落ちてくるのが見えたよ。おもしろいねー」

 と、まるで危機感のない様子で笑っていた。

「ほんまアホかお前は!」

 呆れを通り越して怒りを抱き、松田は山田の両脇をしっかり抱えるとそのままひょいと持ち上げてソファーの上に投げるよう転がす。
 そして手早く雨戸を閉め、念のためベランダに出られないようにつっかえ棒代わりに掃除用のワイパーを立てかけておいた。

「何するのさ、松田サン。せっかく面白いなーと思ってて見てたのに」

 山田は頬を膨らませて口を尖らせる。
 台風に対する危機感がないのだろうか。松田の部屋はマンションの10階近くにあるから浸水の危険はないだろうが、それでも大雨でベランダにはビルの合間から強い風が吹き付け、松田の体格でもうっかりすると吹き飛ばされそうになる。松田よりもっと細くて軽そうに見える山田だったら本当に吹き飛ばされてしまいそうだ。そして、うっかり風に煽られベランダから落ちたら命はないだろう。
 そういう想像が出来ないのだろうか。あるいは、自分の命にそこまで頓着してないのかもしれない。

「アホか。それで死んだらどうするんや。この高さから落ちたらお前なんてトマトみたいにグッチャグチャやで。お前には危機感とかないんか?」

 松田に言われ、山田は不思議そうに首を傾げた。

「大丈夫でしょ? いくら僕でもベランダから落ちたりしないよ。それに、もうちょっと風が強くなったら部屋に入ろうと思ってたし」

 そして、そう言いながらソファーの上に体育座りをしてポチポチとスマホを弄り出す。
 本当に部屋に入るつもりがあったのだろうか。山田は頭はいいのだが、想像力が足りないとでもいうのか。もし、そういう事をしたら自分がどうなるか。という部分をあまり考えず無茶な行動に走る事がある。無意識に自虐的な態度や行動をしがちなのだ。自分のことを大切に出来ないとでもいうのか。あるいは、自分自身の人生にどこか諦念を抱いているのか、ハッキリとはわからないがそれは松田からしてみると自棄をおこした子供のように危うく見えた。

「とにかく、今日はもう家から出たらアカン。コンビニに行くとかも、もうやめたほうがえぇで。俺が駅から家まで帰るだけでも、ごっつい風吹いとったからなァ」
「はーい」

 元気のいい返事をしながら、山田はひょこひょこと玄関に向かうので松田はその首根っこをつかまえて引きずるとまたリビングのソファーに投げるよう転がした。

「おまえ、今どこに行こうとしとったん?」
「え? コンビニ。なんか、アイスとか食べたいなーって思って」
「だから! もう外はアカン状態になってる言うたやろうが! 人の話聞いとんのか? 冷蔵庫にあるモン好きに食うていいから、外には出るな!」
「だーってー、台風の時って何かワクワクするよね。いつもと違ってヤバい感じがして。僕、そういう時に外に出るの結構好きなんだよね」

 山田はソファーの上でまた体育座りをすると、袖で口元を隠してクスクス笑う。
 本当に危機感がないのか。命がいらないのか。その両方か。
 松田は呆れと怒りの入り交じった感情を抱きながら、山田の額を思いっ切り弾いてやった。

「いたっ! 何するの松田サン」
「お前の方がよっぽど何してんねん。いいか、絶対にもう外に出るな。これは命令や。出たらもう、ウチに入れてやらんからな」
「えー……何でそんな心配するのさー。僕、もういい大人だよ?」
「俺からしたらケツの青いガキや」
「それに、僕が大丈夫だっていうんだから大丈夫だって」
「お前が大丈夫でも、俺が心配なんや! わかったら大人しく飯食って寝てろ。台風が行くまではそばに居たるからな」

 松田はそう言いながら、山田の頭をぐりぐりと撫でる。
 山田はされるがままに撫でられた後も、じっと松田を見つめていた。

「……何や? 俺の顔に何かついてたか?」
「んー? 目つきの悪いタレ目とふと眉。あと、怖い顔とか?」
「喧嘩売っとんのか?」
「あはは……うそうそ。なんか……僕のこと、心配してくれる人なんか久しぶりだったから……ちょっと嬉しかった。ありがとね、松田サン」

 山田はそう言うと、すぐに首を引っ込めてソファーに横になり、手だけひらひら振って見せる。

 心配されたのは、久しぶりといった。
 以前もどこか危なっかしい山田に寄り添い声をかけていた人間がいたのだろうか。
 その相手はきっと、心の底から山田を心配し大切に扱っていたのだろう。

 胸の中に、僅かな苛立ちが募る。

「何やねん。ほんま……俺はあいつを、どうしたいんやろなァ……」

 松田の独り言をかき消すよう、雨戸にバラバラと大粒の雨が当たりはじめた。

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