インターネット字書きマンの落書き帳
山ガスのこといつでも助けてくれる黒沢概念(黒ガス)/BL
平和にイチャイチャ付き合っている黒沢×山ガスを書きました。
頭はいいんだけど、ちょっと脇が甘い所のある山ガスが男たちに騙されて薬を盛られてどこかに連れ去られる前に、黒沢に助けられていた……みたいな話です。
俺はちょっと脇の甘い山ガスのことがだ~い好き。
みんなも今日から好きになろうぜ!
頭はいいんだけど、ちょっと脇が甘い所のある山ガスが男たちに騙されて薬を盛られてどこかに連れ去られる前に、黒沢に助けられていた……みたいな話です。
俺はちょっと脇の甘い山ガスのことがだ~い好き。
みんなも今日から好きになろうぜ!
『泥濘で溺れて』
泥濘で溺れているような息苦しさと強い疲労感から瞼すら開けるのも億劫なまま深い眠りに身を委ねていた山田に、温かな手が触れる。
「おい、目を覚ませ山田。大丈夫か? しっかりしろ、ほら、起きろ」
頬に触れ、必死に呼びかけるのは黒沢の声だった。
これが眉崎や谷原だったら寝たふりをしてやり過ごしていただろうが、黒沢に呼ばれているのなら起きなければいけないだろう。そんな使命感から、すっかり重たくなった瞼を強引に開けば心配そうにこちらを見る黒沢が、ようやく安心したように頬をゆるめた。
「よかった……目を覚ましたのか。意識がないのかと思って心配したんだぞ」
何でそんな心配をするんだ、少し眠っていただけなのに大げさだな。
そう言おうとし、すぐに身体の異変に気付く。
声が思うように出ない。
何とか瞼を開けたが、身体全体が自分のものではないように全く動かなかった。
「え……あれ? どういう、こと。優弥サン、なんか僕……身体、動かない……」
懸命に喉を震わせれば何とか声は出るが、それだって自分の声とは思えない。まるで、ガラスの壁に隔たれた場所に自分の身体があり、そこから何とか命令して自分の声を出しているような非現実的な感覚がありありと残っていた。
なぜこんな事になったのかは全くわからないが、異常が起こっているのは明らかだ。
身体はピクリとも動かず、考えもまとまらないまま助けを求めるように黒沢の方を見れば、黒沢は心配するなと言うかわりに山田の髪をそっと撫でた。
「大丈夫だと思う。呼吸も安定しているし、脈も正常だ。声も出るようだしな」
大丈夫だと言われても、身体が全くうごかないのだから不安になる。
もしそばに黒沢がついていてくれなかったら、恐怖で叫び声の一つもあげていただろう。
山田が僅かに動く目だけで周囲を確認すれば、どうやら黒沢の自宅のようだった。
今横になっているのも、黒沢のベッドのようだ。
どうして自分が黒沢のベッドで寝ているのだろう。
山田は目を閉じると、眠りに落ちる前の記憶を思い返した。
そう、今日はあまり気乗りしない飲み会に誘われていたのだ。
勉強とバイトで忙しい山田は大学で他の学生と話したりはせず、まともに会話するのは5Sの面々だけといっていいほと人付き合いが希薄だっのだが、5Sとしての活動はそれなりに有名になり、山田の顔が知られるようになったら以前より話しかけてくる面々も増えてきた。
その男たちは、山田が5Sのメンバーだと知って何かと声をかけてくるようになった連中である。
「山田、ちょっとノート見せてよ」
「もし暇ならこんど飲み会に一緒に行かないか? 5Sの山田がいるっていったらこっちもハクがつくんだよ。女の子もいっぱい集まってくれるしさ」
「せっかく有名人になったんだから、もっとその知名度を有効に使わないと勿体ないぜ」
男たちはよくそんな事を言いながら山田を取りかこみ、山田が気のない返事をすると呆れたように去っていた。
だが、男たちが山田に絡む時間は日に日に延びていき、段々しつこさを増してきたのだ。
「山田くんさぁ、一緒に飲み会しようよ」
「俺たちのこと動画に出してよ。絶対面白い動画になるからさぁ」
どう見たって人の言う事も利かなそうな連中が、どうやって面白い動画を作るというのだ。
動画だってチームワークが必要だし段取りもある。表にならないだけで地味な作業も沢山あるというのに、撮影の華やかな部分だけに顔を出し有名になるのが目的の連中の話など聞くだけ無駄だと思い、愛想する事もなく聞き流していたのだが、最近は大学内の食堂や山田のバイト先にも姿を現すようになってきた。
このまま放っておけばアパートに押しかけてくる日もそう遠くないだろう。
危機感を抱いた山田は、仕方なく男たちと飲みに行くのを了承した。
「5Sの活動は僕だけのものじゃないから、僕の一存でどうにかなるもんじゃないけど……今日、話だけは聞いてあげるよ。それでダメだって言われたら諦めてよね」
最初に念を押したが、黒沢たちに相談するつもりは毛頭なかった。
仮に相談したとしても大声で騒ぐだけの知名度もない大学生なんて5Sの活動に役立つとは思えないし、眉崎あたりに「ハァ? 冗談は顔だけで充分だろうが」の一言でバッサリ切り捨てられるのは目に見えていたが、機会をつくらなければ収まらないと思ったからだ。
そうして、男たちが行きつけの店に連れて行かれて、最初のビールを一杯飲んで、それから……。
……それから、記憶が急激にぼやけていく。
たった一杯のビールを飲んだだけで、もう頭を上げていられないくらい眠くなってしまい机に突っ伏したような気がする。その様子を見た男たちは、酔い潰れた山田を見てひどくはしゃいでいた。
「すっごいなコレ、本当に効くんだ」
「市販薬と処方薬を特別に調合してんだ。普通の奴ならこの半分の量でも身動きとれなくなるらしいぜ」
「まぁ何でもいいさ。さっさとコイツ、ホテルに連れ込もうぜ。言い逃れ出来ない写真を残せば、俺たちの言うこと何でもきくようになるだろ」
嘲笑まじりに聞こえた会話が、ぼんやりと蘇る。
どうやら男たちは、山田が最初から5Sの活動に関わらせる気がないことなどとっくにわかっていたようだ。
だから薬を盛って、山田の身体を好き勝手に嬲り、その写真で脅そうという魂胆だったのだろう。
「コイツ、中坊の頃からオッサンに身体売って稼いでたって噂だもんな」
男たちのうち、誰かがそう笑う。
それは事実だ。バイトもできず、家では父親が暴れるばかりで金に困っていた時、そういう趣味の男を相手にした事は何度もある。それは高校になってからも続けていて、大学に通うため一人暮らしをするようになった資金はそこから捻出しているのだから。
この程度の悪意を見過ごすとは。
もし本当に写真でも撮られたら後々面倒だ。まさか、自分のせいで5Sを潰す訳にはいかないだろう。
申し訳ない気持ちと、自分の脇の甘さを悔いながら意識は闇の中に沈んで行った。
そう、自分はあの男たちに連れられいいようにされていたはずだ。
どうしてそれが黒沢の家にいるのだろう。 まだ、夢でも見ているのだろうか。
疑問に思う山田の背中に手をまわすと、黒沢はゆっくり彼の上体を起こす。
「気分はどうだ? まだ動けないか」
「う、うん……気分も最悪……なんか身体全体がフワフワして、全く現実感がないや……」
「そうか……少し口を湿らせる。身体が思うようにうごかないまま、水を飲むのは危ないからな」
黒沢はそう言ってから、脱脂綿にしめらせた水で山田の唇と舌を軽く拭く。
冷たい水の雫が喉を潤し、幾分か身体が楽になた気がした。
「あ、あの。優弥サン。僕、へんな薬盛られてた……?」
「あぁ、そうみたいだな。今でも身体がうごかないとなると、相当ヤバい薬だったのかもしれないぞ。全く、程度のわからない連中は何をするかわからないからな。もし妙な事に絡まれてるなら、自分だけで対処しようとせず俺たちにも話をしておけよ。眉崎から、お前が妙な男に引きずられてどこかに連れて行かれそうだって連絡もらった時には驚いたぞ」
「眉崎サンが……」
「そうだ、酔い潰れた山田が知らない男に引きずられてるが、どうも様子がおかしいってな」
どうやら、偶然通りかかった眉崎が山田の異変に気付き、男たちに声をかけその場に留めてくれていたらしい。そして迎えに来た黒沢が、山田を引き取る形で保護してくれたのだろう。
だとすると、眉崎にも礼を言わないといけない。
飲み会があった居酒屋は眉崎がホストをしている店とそう遠くないが、きっと山田のために出勤時間を遅らせたはずだからだ。まさか眉崎が自分のためにそんな気遣いをしてくれるとは思ってもいなかったのだが。
「俺が着いた時、お前は完全に意識が飛んで自分では立てない状態だったからな。すぐにヤバい薬使われてると思ったよ。だから車に押し込んで、俺の家まで運んで……お前を囲んでた連中に関しては、後でこっちで調べておくさ。お前に飲ませた薬の入手経路次第では、次のターゲットはあいつらにしてもいいな」
黒沢はまた山田をベッドに寝かすと、そばに寄り添いそんな話をする。
「どういう薬を使ったが知らんが、油断していたとはいえお前を騙してホテルに連れ込もうとする連中だ。お前が初めてってわけでもないだろう。こういう事に慣れてるような奴らだったら、俺たちの動画にピッタリだ」
男たちは、望み通り5Sの動画に出る事になりそうだ。
最もゲストではなく、ターゲットとしてのようだが、あれだけ人気者になりたかったのなら本望だろう。ぼんやりとそんなことを考えながら。微かに動くようになった指先を必死に動かして黒崎の指を握る。
「ごめん、優弥サン。迷惑かけちゃって……」
「心配するな。むしろ、お前に何もないうちに助けられてよかったよ……本当に一人で無理はするなよ。お前に何かあったら……」
黒沢はそこまで言うと、言葉にするのはもどかしいといった様子で山田と唇を重ねる。
絡んだ舌は温かく、身体がうごかない不安など吹き飛んでしまった。
「……もう、あまり俺を心配させないでくれ。俺は、お前を失いたくない。必要なことがあったら、何でも話してくれ。黙って届かない場所に行かれるより、そのほうがずっといい」
「う、うん。わかった……ごめんね、優弥サン……それじゃ、悪いんだけどさ……」
普段なら黒沢の身体を抱いたり、手を握ったりしていたのだろうが今は身体がうごかないからもどかしい。
「もう一回、キスしてくれる? ずっと身体がうごかなくて、不安で……もっと優弥サンのこと、そばに感じていたいから……」
だから仕方なく、普段は言わないような事を口にすると、黒沢は少し驚いたような顔をするが、すぐに優しく微笑むと。
「あぁ、もちろん」
甘い言葉で耳を擽り、静かに唇を重ねる。
身動きできない手を、黒沢が静かに握り絞めその温もりが身体の奥底まで広がっていくような気がした。
泥濘で溺れているような息苦しさと強い疲労感から瞼すら開けるのも億劫なまま深い眠りに身を委ねていた山田に、温かな手が触れる。
「おい、目を覚ませ山田。大丈夫か? しっかりしろ、ほら、起きろ」
頬に触れ、必死に呼びかけるのは黒沢の声だった。
これが眉崎や谷原だったら寝たふりをしてやり過ごしていただろうが、黒沢に呼ばれているのなら起きなければいけないだろう。そんな使命感から、すっかり重たくなった瞼を強引に開けば心配そうにこちらを見る黒沢が、ようやく安心したように頬をゆるめた。
「よかった……目を覚ましたのか。意識がないのかと思って心配したんだぞ」
何でそんな心配をするんだ、少し眠っていただけなのに大げさだな。
そう言おうとし、すぐに身体の異変に気付く。
声が思うように出ない。
何とか瞼を開けたが、身体全体が自分のものではないように全く動かなかった。
「え……あれ? どういう、こと。優弥サン、なんか僕……身体、動かない……」
懸命に喉を震わせれば何とか声は出るが、それだって自分の声とは思えない。まるで、ガラスの壁に隔たれた場所に自分の身体があり、そこから何とか命令して自分の声を出しているような非現実的な感覚がありありと残っていた。
なぜこんな事になったのかは全くわからないが、異常が起こっているのは明らかだ。
身体はピクリとも動かず、考えもまとまらないまま助けを求めるように黒沢の方を見れば、黒沢は心配するなと言うかわりに山田の髪をそっと撫でた。
「大丈夫だと思う。呼吸も安定しているし、脈も正常だ。声も出るようだしな」
大丈夫だと言われても、身体が全くうごかないのだから不安になる。
もしそばに黒沢がついていてくれなかったら、恐怖で叫び声の一つもあげていただろう。
山田が僅かに動く目だけで周囲を確認すれば、どうやら黒沢の自宅のようだった。
今横になっているのも、黒沢のベッドのようだ。
どうして自分が黒沢のベッドで寝ているのだろう。
山田は目を閉じると、眠りに落ちる前の記憶を思い返した。
そう、今日はあまり気乗りしない飲み会に誘われていたのだ。
勉強とバイトで忙しい山田は大学で他の学生と話したりはせず、まともに会話するのは5Sの面々だけといっていいほと人付き合いが希薄だっのだが、5Sとしての活動はそれなりに有名になり、山田の顔が知られるようになったら以前より話しかけてくる面々も増えてきた。
その男たちは、山田が5Sのメンバーだと知って何かと声をかけてくるようになった連中である。
「山田、ちょっとノート見せてよ」
「もし暇ならこんど飲み会に一緒に行かないか? 5Sの山田がいるっていったらこっちもハクがつくんだよ。女の子もいっぱい集まってくれるしさ」
「せっかく有名人になったんだから、もっとその知名度を有効に使わないと勿体ないぜ」
男たちはよくそんな事を言いながら山田を取りかこみ、山田が気のない返事をすると呆れたように去っていた。
だが、男たちが山田に絡む時間は日に日に延びていき、段々しつこさを増してきたのだ。
「山田くんさぁ、一緒に飲み会しようよ」
「俺たちのこと動画に出してよ。絶対面白い動画になるからさぁ」
どう見たって人の言う事も利かなそうな連中が、どうやって面白い動画を作るというのだ。
動画だってチームワークが必要だし段取りもある。表にならないだけで地味な作業も沢山あるというのに、撮影の華やかな部分だけに顔を出し有名になるのが目的の連中の話など聞くだけ無駄だと思い、愛想する事もなく聞き流していたのだが、最近は大学内の食堂や山田のバイト先にも姿を現すようになってきた。
このまま放っておけばアパートに押しかけてくる日もそう遠くないだろう。
危機感を抱いた山田は、仕方なく男たちと飲みに行くのを了承した。
「5Sの活動は僕だけのものじゃないから、僕の一存でどうにかなるもんじゃないけど……今日、話だけは聞いてあげるよ。それでダメだって言われたら諦めてよね」
最初に念を押したが、黒沢たちに相談するつもりは毛頭なかった。
仮に相談したとしても大声で騒ぐだけの知名度もない大学生なんて5Sの活動に役立つとは思えないし、眉崎あたりに「ハァ? 冗談は顔だけで充分だろうが」の一言でバッサリ切り捨てられるのは目に見えていたが、機会をつくらなければ収まらないと思ったからだ。
そうして、男たちが行きつけの店に連れて行かれて、最初のビールを一杯飲んで、それから……。
……それから、記憶が急激にぼやけていく。
たった一杯のビールを飲んだだけで、もう頭を上げていられないくらい眠くなってしまい机に突っ伏したような気がする。その様子を見た男たちは、酔い潰れた山田を見てひどくはしゃいでいた。
「すっごいなコレ、本当に効くんだ」
「市販薬と処方薬を特別に調合してんだ。普通の奴ならこの半分の量でも身動きとれなくなるらしいぜ」
「まぁ何でもいいさ。さっさとコイツ、ホテルに連れ込もうぜ。言い逃れ出来ない写真を残せば、俺たちの言うこと何でもきくようになるだろ」
嘲笑まじりに聞こえた会話が、ぼんやりと蘇る。
どうやら男たちは、山田が最初から5Sの活動に関わらせる気がないことなどとっくにわかっていたようだ。
だから薬を盛って、山田の身体を好き勝手に嬲り、その写真で脅そうという魂胆だったのだろう。
「コイツ、中坊の頃からオッサンに身体売って稼いでたって噂だもんな」
男たちのうち、誰かがそう笑う。
それは事実だ。バイトもできず、家では父親が暴れるばかりで金に困っていた時、そういう趣味の男を相手にした事は何度もある。それは高校になってからも続けていて、大学に通うため一人暮らしをするようになった資金はそこから捻出しているのだから。
この程度の悪意を見過ごすとは。
もし本当に写真でも撮られたら後々面倒だ。まさか、自分のせいで5Sを潰す訳にはいかないだろう。
申し訳ない気持ちと、自分の脇の甘さを悔いながら意識は闇の中に沈んで行った。
そう、自分はあの男たちに連れられいいようにされていたはずだ。
どうしてそれが黒沢の家にいるのだろう。 まだ、夢でも見ているのだろうか。
疑問に思う山田の背中に手をまわすと、黒沢はゆっくり彼の上体を起こす。
「気分はどうだ? まだ動けないか」
「う、うん……気分も最悪……なんか身体全体がフワフワして、全く現実感がないや……」
「そうか……少し口を湿らせる。身体が思うようにうごかないまま、水を飲むのは危ないからな」
黒沢はそう言ってから、脱脂綿にしめらせた水で山田の唇と舌を軽く拭く。
冷たい水の雫が喉を潤し、幾分か身体が楽になた気がした。
「あ、あの。優弥サン。僕、へんな薬盛られてた……?」
「あぁ、そうみたいだな。今でも身体がうごかないとなると、相当ヤバい薬だったのかもしれないぞ。全く、程度のわからない連中は何をするかわからないからな。もし妙な事に絡まれてるなら、自分だけで対処しようとせず俺たちにも話をしておけよ。眉崎から、お前が妙な男に引きずられてどこかに連れて行かれそうだって連絡もらった時には驚いたぞ」
「眉崎サンが……」
「そうだ、酔い潰れた山田が知らない男に引きずられてるが、どうも様子がおかしいってな」
どうやら、偶然通りかかった眉崎が山田の異変に気付き、男たちに声をかけその場に留めてくれていたらしい。そして迎えに来た黒沢が、山田を引き取る形で保護してくれたのだろう。
だとすると、眉崎にも礼を言わないといけない。
飲み会があった居酒屋は眉崎がホストをしている店とそう遠くないが、きっと山田のために出勤時間を遅らせたはずだからだ。まさか眉崎が自分のためにそんな気遣いをしてくれるとは思ってもいなかったのだが。
「俺が着いた時、お前は完全に意識が飛んで自分では立てない状態だったからな。すぐにヤバい薬使われてると思ったよ。だから車に押し込んで、俺の家まで運んで……お前を囲んでた連中に関しては、後でこっちで調べておくさ。お前に飲ませた薬の入手経路次第では、次のターゲットはあいつらにしてもいいな」
黒沢はまた山田をベッドに寝かすと、そばに寄り添いそんな話をする。
「どういう薬を使ったが知らんが、油断していたとはいえお前を騙してホテルに連れ込もうとする連中だ。お前が初めてってわけでもないだろう。こういう事に慣れてるような奴らだったら、俺たちの動画にピッタリだ」
男たちは、望み通り5Sの動画に出る事になりそうだ。
最もゲストではなく、ターゲットとしてのようだが、あれだけ人気者になりたかったのなら本望だろう。ぼんやりとそんなことを考えながら。微かに動くようになった指先を必死に動かして黒崎の指を握る。
「ごめん、優弥サン。迷惑かけちゃって……」
「心配するな。むしろ、お前に何もないうちに助けられてよかったよ……本当に一人で無理はするなよ。お前に何かあったら……」
黒沢はそこまで言うと、言葉にするのはもどかしいといった様子で山田と唇を重ねる。
絡んだ舌は温かく、身体がうごかない不安など吹き飛んでしまった。
「……もう、あまり俺を心配させないでくれ。俺は、お前を失いたくない。必要なことがあったら、何でも話してくれ。黙って届かない場所に行かれるより、そのほうがずっといい」
「う、うん。わかった……ごめんね、優弥サン……それじゃ、悪いんだけどさ……」
普段なら黒沢の身体を抱いたり、手を握ったりしていたのだろうが今は身体がうごかないからもどかしい。
「もう一回、キスしてくれる? ずっと身体がうごかなくて、不安で……もっと優弥サンのこと、そばに感じていたいから……」
だから仕方なく、普段は言わないような事を口にすると、黒沢は少し驚いたような顔をするが、すぐに優しく微笑むと。
「あぁ、もちろん」
甘い言葉で耳を擽り、静かに唇を重ねる。
身動きできない手を、黒沢が静かに握り絞めその温もりが身体の奥底まで広がっていくような気がした。
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