インターネット字書きマンの落書き帳
背中に傷がある津詰とその傷の意味を知る襟尾
津詰と襟尾が出る話をします。(挨拶)
この話はTwitterでフォロワーのタイノさんが素敵な刑事組のまんがをupしておりまして……。
その作品を見て「身体が傷だらけのボスはいいなァ~」と思い書きました。
天才のまんがと天才のリクエスト! 本当にありがとうございます。
この話は、ボスの背中にある傷を見て「市民を守るボスの背中は絶対にオレが守る!」と決意を固くするタイプの襟尾が出てきますぞい。
襟尾が過去にボスに助けられたんだよ! みたいな模造をしていますが、「この時空ではこれが真実に違いない」という気持ちを抱いてくだされば幸いです。
オレの宇宙ではそうなんだよ……!
A面(津詰視点)とB面(襟尾視点)で、同じシーンを別視点で書いてますがこれはオレの趣味でそうなってます。
一つのシーンを二つの視点で書くのが好きなんだなぁ。
ボスに対する感情が重たい襟尾好きかい?
今日から好きになろうぜ!
この話はTwitterでフォロワーのタイノさんが素敵な刑事組のまんがをupしておりまして……。
その作品を見て「身体が傷だらけのボスはいいなァ~」と思い書きました。
天才のまんがと天才のリクエスト! 本当にありがとうございます。
この話は、ボスの背中にある傷を見て「市民を守るボスの背中は絶対にオレが守る!」と決意を固くするタイプの襟尾が出てきますぞい。
襟尾が過去にボスに助けられたんだよ! みたいな模造をしていますが、「この時空ではこれが真実に違いない」という気持ちを抱いてくだされば幸いです。
オレの宇宙ではそうなんだよ……!
A面(津詰視点)とB面(襟尾視点)で、同じシーンを別視点で書いてますがこれはオレの趣味でそうなってます。
一つのシーンを二つの視点で書くのが好きなんだなぁ。
ボスに対する感情が重たい襟尾好きかい?
今日から好きになろうぜ!
A面(津詰サイド)
ロッカールームで汗だくになったシャツを脱ぎ冷たいタオルで身体を拭いていた津詰が視線を感じ振り返ると、じっとこちらに視線を向ける襟尾の姿があった。
普段なら津詰を見つければ嬉々として声をかけてくるというのに、その時は真剣な顔で黙って背中を見つめている。
鬼気迫る表情とまではいかないが、いつも笑顔でいる襟尾の印象とはかけ離れた姿に津詰は一瞬声をかけるのを戸惑った。
「どうした、オッサンの背中がそんなに珍しいか?」
だがすぐ気を取り直して、なるべく平然を装って襟尾へと声をかける。 すると襟尾はようやく自分を取り戻したみたいな顔をするといつもの笑顔を津詰へと向けた。
「いえ、すいません。ボスの身体、けっこうアチコチに傷があるんだなぁって思って」
やけに真剣な顔をしていた気がするが、背中の傷が気になっただけか。思いの外小さなことを気にかけていたのを安心しながら、津詰は新しいシャツを羽織った。
「刑事なんて仕事してりゃァ危険な目にもあうさ。いや、俺の場合は若ェころ無茶ばかりしてたってのもあるだろうけどな。ま、オマエさんはこうなら無ェよう、気をつけるんだな」
「何言ってるんですか、名誉の負傷でしょう」
「そんなんじゃ無ェよ、一人で先走って勝手に危険な目にあってただけだ。ちゃんと仲間を信頼して連携とってりゃ滅多な事で怪我なんかしねぇんだよ」
「でも……」
襟尾は何か言いかけるが、すぐに腕まくりをした手を津詰の方へと向ける。
「俺は、やっぱりボスのこと立派だと思いますよ。だから、いざって時は俺がボスの事身を挺して守ってみせますから、安心して背中預けてくださいね」
その言葉に、津詰はつい苦笑いになっていた。
「おいおい、俺みてぇなオッサンを守るならちゃんと市民を守れってんだ、そのための刑事だろうが」
「それはそうですけど、市民第一で、ボスもちゃんと守りますから」
屈託なく笑う襟尾はもういつもの姿に戻っている。津詰はやれやれと深く息を一つ吐くと。 「それじゃ、任せたぜ」
そういって、頷いて見せるのだった。
B面(襟尾サイド)
襟尾がロッカールームに入った時、ちょうど上司である津詰が着替えている最中だった。
暑い町中を散々這いずり回って聞き込みをした後だから汗をかいて着替えているのはわかったが、その背中に自然と目がとまる。
津詰の背中、正確には左脇腹の周辺には明らかにナイフによるものと思われる刺傷の痕が残っていたからだ。
その傷を見て、襟尾はすぐにそれが「あの時」の傷痕だということに気付く。津詰はもう覚えていないのだろうが、あの傷は間違いなく襟尾を庇って出来たものだった。
きっと津詰は覚えていないだろう。数多の凶悪事件に立ち向かっていた津詰なら身を挺して市民を守った事も一度や二度ではないというのは、彼の身体中に残る傷痕からも容易に想像出来る。 だがその傷の位置は、まだ子供だった自分を庇って出来た傷だというのを襟尾は確信していた。
不安と恐怖と混乱とその他諸々のどす黒い感情で押しつぶされそうになっていた襟尾を救い出してくれた光であり、襟尾が刑事を目指そうと思ったすべてのきっかけなのだ。
あの事件を、津詰は覚えているだろうか。
あの時助けてもらったから今の自分があるとは、襟尾は伝えていない。 思い出されるのも気恥ずかしいというのもあったが、もし覚えていなかったらと思うとそれも少し怖かったからだ。
自分の運命を変える程の衝撃を受けたことが、津詰にとっては他愛の無い小さな事件の一つにすぎないというのは充分にあり得たし津詰らしいとも思ったが、憧れの刑事とともに捜査ができる立場になった喜びだけでまだ感情の整理がついていないというのもある。
だから津詰には「刑事に憧れたのは根島事件の捜査内容を聞いたから」という事にしているのだ。
「どうした、オッサンの背中がそんなに珍しいのか?」
あまりにまじまじと見つめてしまったからだろう。津詰は不思議そうな顔をしてこちらを見ているのに気づき、襟尾はあわてて取り繕うように笑顔を向けた。
「いえ、すいません。ボスの身体、けっこうアチコチに傷があるんだなぁって思って」
そのうち一つは自分を守って出来た傷だ、と言ってしまってもよかったが、何とはなしに言えずにいると津詰は苦虫を噛みつぶしたような顔をしてみせた。
「刑事なんて仕事してりゃァ危険な目にもあうさ。いや、俺の場合は若ェころ無茶ばかりしてたってのもあるんだけどな」
そうだ、津詰はあの時かなりの無茶をしたはずだ。
自分が刑事になった今だからわかる。津詰はただ一人単身で乗り込んで、自分を助けてくれたのだ。
あの時、他の刑事たちは及び腰だったという。津詰が身を挺して守ってくれなければ、自分はもうこの世にいなかったかもしれない。
「ま、オマエさんはこうなら無ぇよう、気をつけるんだな」
津詰がどこか自嘲的にそんな風に言うものだから
「何言ってるんですか、名誉の負傷でしょう」
襟尾はつい声をあげる。例えその後に和を乱すと散々叱られたとしても、模範的な刑事がするような行動ではなかったとしても、それでも襟尾は救われた。 その事実まで否定してほしくなかった。
「そんなんじゃ無ェよ、一人先走って勝手に危険な目にあっただけだ。ちゃんと仲間を信頼し連携とってりゃ滅多な事で怪我なんかしねぇんだよ」
「でも……」
あの時はその滅多な事があったのだ。
だから津詰は一人で動かざるを得ず、今でも残る深い傷を負ってしまったのだろう。
やはり名誉の負傷だ。もっと自信を持って誇ってほしい。そう言いかけ、襟尾は思い直す。
もし襟尾が一般市民であり、あの時の事件の被害者だということを津詰が知っていればその傷を誇り、痛みなどなかったという顔でこちらを心配させないよう振る舞ってくれるのだろう。だが今の津詰は一人の刑事であり襟尾の上司だ。悪い見本を誇るような態度をし、襟尾が妙な真似をして命の危険を晒す事がないよう心配しての事なのだ。
だとしたら、津詰はやはり誇るべき刑事だ。憧れであり偉大な先輩だ。
本当にこの人と巡り会えて良かったと、心の底から思える相手と出会えたのだから襟尾の人生はきっと最高に恵まれているのだろう。
「俺は、やっぱりボスのこと立派だと思いますよ。だから、いざって時はオレがボスの事身を挺して守ってみせますから、安心して背中を預けてくださいね」
襟尾は自然と笑顔になる。
せっかく神の采配で巡り会えた最高の刑事と相棒になれたのだ。あの時の恩返しではないが、彼の背中は自分が守ろう。津詰の判断を信じ、いつだって彼の背中を安心して預けられるような相棒に自分がなれば、津詰はもう一人で単身走り抜ける必用はない。
自分がいつも守っていられるのだから。
きっと自分は、そのために刑事になったのだろう。
「おいおい、オレみてぇなオッサンを守るならちゃんと市民を守れってんだ、そのための刑事だろ」
津詰は呆れた様子だが、襟尾は本心から思っていた。
何をいってるのだ、津詰はいつだって市民を真正面から守っている。だが、肝心の津詰は誰が守るというのだ。
津詰が市民を守るなら、襟尾がその背を守ればいい。
「それはそうですけど、市民第一で、ボスもちゃんと守りますから」
だがそんな事をいってもきっと津詰は納得しないだろうから、警察学校のような模範解答をして誤魔化す。 津詰は深く息を吐くと。
「それじゃ、任せたぜ」
頷いてから、ロッカールームを出ていった。
彼が出た後の扉を眺め、襟尾はほとんど無意識に呟く。
「あなたの背中は、オレが守りますから。必ず、絶対に。だから……どうか、オレの前からいなくならないでくださいね。ボス」
祈りも近い感情が、胸にこみ上げていた。
ロッカールームで汗だくになったシャツを脱ぎ冷たいタオルで身体を拭いていた津詰が視線を感じ振り返ると、じっとこちらに視線を向ける襟尾の姿があった。
普段なら津詰を見つければ嬉々として声をかけてくるというのに、その時は真剣な顔で黙って背中を見つめている。
鬼気迫る表情とまではいかないが、いつも笑顔でいる襟尾の印象とはかけ離れた姿に津詰は一瞬声をかけるのを戸惑った。
「どうした、オッサンの背中がそんなに珍しいか?」
だがすぐ気を取り直して、なるべく平然を装って襟尾へと声をかける。 すると襟尾はようやく自分を取り戻したみたいな顔をするといつもの笑顔を津詰へと向けた。
「いえ、すいません。ボスの身体、けっこうアチコチに傷があるんだなぁって思って」
やけに真剣な顔をしていた気がするが、背中の傷が気になっただけか。思いの外小さなことを気にかけていたのを安心しながら、津詰は新しいシャツを羽織った。
「刑事なんて仕事してりゃァ危険な目にもあうさ。いや、俺の場合は若ェころ無茶ばかりしてたってのもあるだろうけどな。ま、オマエさんはこうなら無ェよう、気をつけるんだな」
「何言ってるんですか、名誉の負傷でしょう」
「そんなんじゃ無ェよ、一人で先走って勝手に危険な目にあってただけだ。ちゃんと仲間を信頼して連携とってりゃ滅多な事で怪我なんかしねぇんだよ」
「でも……」
襟尾は何か言いかけるが、すぐに腕まくりをした手を津詰の方へと向ける。
「俺は、やっぱりボスのこと立派だと思いますよ。だから、いざって時は俺がボスの事身を挺して守ってみせますから、安心して背中預けてくださいね」
その言葉に、津詰はつい苦笑いになっていた。
「おいおい、俺みてぇなオッサンを守るならちゃんと市民を守れってんだ、そのための刑事だろうが」
「それはそうですけど、市民第一で、ボスもちゃんと守りますから」
屈託なく笑う襟尾はもういつもの姿に戻っている。津詰はやれやれと深く息を一つ吐くと。 「それじゃ、任せたぜ」
そういって、頷いて見せるのだった。
B面(襟尾サイド)
襟尾がロッカールームに入った時、ちょうど上司である津詰が着替えている最中だった。
暑い町中を散々這いずり回って聞き込みをした後だから汗をかいて着替えているのはわかったが、その背中に自然と目がとまる。
津詰の背中、正確には左脇腹の周辺には明らかにナイフによるものと思われる刺傷の痕が残っていたからだ。
その傷を見て、襟尾はすぐにそれが「あの時」の傷痕だということに気付く。津詰はもう覚えていないのだろうが、あの傷は間違いなく襟尾を庇って出来たものだった。
きっと津詰は覚えていないだろう。数多の凶悪事件に立ち向かっていた津詰なら身を挺して市民を守った事も一度や二度ではないというのは、彼の身体中に残る傷痕からも容易に想像出来る。 だがその傷の位置は、まだ子供だった自分を庇って出来た傷だというのを襟尾は確信していた。
不安と恐怖と混乱とその他諸々のどす黒い感情で押しつぶされそうになっていた襟尾を救い出してくれた光であり、襟尾が刑事を目指そうと思ったすべてのきっかけなのだ。
あの事件を、津詰は覚えているだろうか。
あの時助けてもらったから今の自分があるとは、襟尾は伝えていない。 思い出されるのも気恥ずかしいというのもあったが、もし覚えていなかったらと思うとそれも少し怖かったからだ。
自分の運命を変える程の衝撃を受けたことが、津詰にとっては他愛の無い小さな事件の一つにすぎないというのは充分にあり得たし津詰らしいとも思ったが、憧れの刑事とともに捜査ができる立場になった喜びだけでまだ感情の整理がついていないというのもある。
だから津詰には「刑事に憧れたのは根島事件の捜査内容を聞いたから」という事にしているのだ。
「どうした、オッサンの背中がそんなに珍しいのか?」
あまりにまじまじと見つめてしまったからだろう。津詰は不思議そうな顔をしてこちらを見ているのに気づき、襟尾はあわてて取り繕うように笑顔を向けた。
「いえ、すいません。ボスの身体、けっこうアチコチに傷があるんだなぁって思って」
そのうち一つは自分を守って出来た傷だ、と言ってしまってもよかったが、何とはなしに言えずにいると津詰は苦虫を噛みつぶしたような顔をしてみせた。
「刑事なんて仕事してりゃァ危険な目にもあうさ。いや、俺の場合は若ェころ無茶ばかりしてたってのもあるんだけどな」
そうだ、津詰はあの時かなりの無茶をしたはずだ。
自分が刑事になった今だからわかる。津詰はただ一人単身で乗り込んで、自分を助けてくれたのだ。
あの時、他の刑事たちは及び腰だったという。津詰が身を挺して守ってくれなければ、自分はもうこの世にいなかったかもしれない。
「ま、オマエさんはこうなら無ぇよう、気をつけるんだな」
津詰がどこか自嘲的にそんな風に言うものだから
「何言ってるんですか、名誉の負傷でしょう」
襟尾はつい声をあげる。例えその後に和を乱すと散々叱られたとしても、模範的な刑事がするような行動ではなかったとしても、それでも襟尾は救われた。 その事実まで否定してほしくなかった。
「そんなんじゃ無ェよ、一人先走って勝手に危険な目にあっただけだ。ちゃんと仲間を信頼し連携とってりゃ滅多な事で怪我なんかしねぇんだよ」
「でも……」
あの時はその滅多な事があったのだ。
だから津詰は一人で動かざるを得ず、今でも残る深い傷を負ってしまったのだろう。
やはり名誉の負傷だ。もっと自信を持って誇ってほしい。そう言いかけ、襟尾は思い直す。
もし襟尾が一般市民であり、あの時の事件の被害者だということを津詰が知っていればその傷を誇り、痛みなどなかったという顔でこちらを心配させないよう振る舞ってくれるのだろう。だが今の津詰は一人の刑事であり襟尾の上司だ。悪い見本を誇るような態度をし、襟尾が妙な真似をして命の危険を晒す事がないよう心配しての事なのだ。
だとしたら、津詰はやはり誇るべき刑事だ。憧れであり偉大な先輩だ。
本当にこの人と巡り会えて良かったと、心の底から思える相手と出会えたのだから襟尾の人生はきっと最高に恵まれているのだろう。
「俺は、やっぱりボスのこと立派だと思いますよ。だから、いざって時はオレがボスの事身を挺して守ってみせますから、安心して背中を預けてくださいね」
襟尾は自然と笑顔になる。
せっかく神の采配で巡り会えた最高の刑事と相棒になれたのだ。あの時の恩返しではないが、彼の背中は自分が守ろう。津詰の判断を信じ、いつだって彼の背中を安心して預けられるような相棒に自分がなれば、津詰はもう一人で単身走り抜ける必用はない。
自分がいつも守っていられるのだから。
きっと自分は、そのために刑事になったのだろう。
「おいおい、オレみてぇなオッサンを守るならちゃんと市民を守れってんだ、そのための刑事だろ」
津詰は呆れた様子だが、襟尾は本心から思っていた。
何をいってるのだ、津詰はいつだって市民を真正面から守っている。だが、肝心の津詰は誰が守るというのだ。
津詰が市民を守るなら、襟尾がその背を守ればいい。
「それはそうですけど、市民第一で、ボスもちゃんと守りますから」
だがそんな事をいってもきっと津詰は納得しないだろうから、警察学校のような模範解答をして誤魔化す。 津詰は深く息を吐くと。
「それじゃ、任せたぜ」
頷いてから、ロッカールームを出ていった。
彼が出た後の扉を眺め、襟尾はほとんど無意識に呟く。
「あなたの背中は、オレが守りますから。必ず、絶対に。だから……どうか、オレの前からいなくならないでくださいね。ボス」
祈りも近い感情が、胸にこみ上げていた。
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