インターネット字書きマンの落書き帳
不安なのは自分が未熟だから(ヤマアル)
ヤマムラさんはとってもやさしい!
それに比べて自分は嫉妬深くて執念深くて狭量でダメダメだ……。
なんて劣等感を抱いてしまい、劣等感からつい苛立ってしまうアルフレートくんの話ですよ。
『恋人に相応しいように』
『相手に相応しくなりたい』
お互いがそう思って、お互いのために研鑽できる。
そういうCPは……素敵なものですねッ。
それに比べて自分は嫉妬深くて執念深くて狭量でダメダメだ……。
なんて劣等感を抱いてしまい、劣等感からつい苛立ってしまうアルフレートくんの話ですよ。
『恋人に相応しいように』
『相手に相応しくなりたい』
お互いがそう思って、お互いのために研鑽できる。
そういうCPは……素敵なものですねッ。
『眩しすぎると不安になる』
ヤマムラの姿が見えない時間が長くなると、アルフレートは不安と焦燥に苛まれるようになっていた。
「何処に行ってたんですか。今日は遅かったですね」
ヤマムラは狩人だ。獣を求め追いかけていれば遅くなる日もあるだろう。
それにもう子供じゃない。日が暮れてから酒場に向い酒を煽りたい日だってあるはずだ。
アルフレートが宿に押しかけ押しかけ女房の如く部屋に居着くようになって久しい。一人になりたいと思う日だってあるだろう。
「あぁ、いつもより遅くなったから心配したかい? 街に近い森で大型の獣を見たという話が入ったから、数人の狩人で普段より大規模な山狩りをしたんだが俺たちは普段一人で活動しているものの方が多いだろう? 集団での狩りには慣れてないから、どうにも手間取ってしまってね」
ヤマムラは何を聞かれても悪くとるような男ではないからアルフレートの追求も特に気にする様子はなかった。
何を聞いても正直に答えてくれたし、何を聞かれてもアルフレートが不機嫌になるような理由が出てきた事など一度だってなかった。
ヤマムラは嘘が得意な方ではない。何を聞いても素直に答えるのは疚しい事など一切ない証拠だろう。
アルフレートという恋人がいるのだから街娼の類いを利用するような不義理をする男ではない事は分っていた。
それでも聞いてしまうのは、ただ不安だったからだ。
自分の見ていない所で、ヤマムラの心が誰かに移るのではないか。
自分の知らないだれかと懇意にし、優しい言葉を交しているのではないか。
ただそれが不安だったのだ。
「もう食事は済んだかい、アル。まだなら一緒に食べにいかないか?」
ヤーナムの外から来た狩人を多く受け入れているこの宿は、二階は宿泊用という名の定住者向けの部屋が多く、一階はそんな狩人たちの酒場と食堂が一緒になっておりヤマムラも普段は下の食堂で食事をとっていた。
「あ、もし良かったら部屋で食べませんか? 私、サンドウィッチを作っておいたんです。冷めてしまいましたがお茶もありますから……」
それを知った上で食事を作っておいたのは、ヤマムラを食堂に行かせないためだ。
ここの食堂は食事をするだけではなく、狩人の社交場にもなっている。
主に狩人同士で情報交換をするのが目的の場所であり色恋の話など殆ど無かったが、それでも知らない狩人とヤマムラが親しく話しているのを見たくはなかったからだ。
「気を遣わせたみたいだな、ありがとう」
ヤマムラはアルフレートの行為を素直に好意と受け取り、嬉しそうに席に着く。
アルフレートの中に疚しい気持ちがある分、全てを素直に受け取ってくれるヤマムラに対し申し訳ない気持ちばかり募るのだった。
(ダメですね、私は……これでは私が嫉妬深くて重いばかりじゃないですか……)
実際のところ、アルフレートは嫉妬深く妄信的で偏愛の酷い方だろう。
正義か悪か、好きか嫌いか、清浄か不浄か。
元々両極端な考え方しか出来ない性分の彼は、愛した相手に執着してしまう部分があるのに気付いていたが、それはすでに矯正出来ない程歪んでいる事もまた知っていた。
「どうしたんだい、アル。食べないのか? 俺を待っていてくれたんだろう」
席についても食事に手をつけない事に気付いたのだろう。ヤマムラはアルフレートの顔を心配そうにのぞき込む。
ヤマムラはきっと、自分が他の誰かに心変わりをする事など考えてもいないし他人と親しく話していても気になどしないのだろう。
彼は寛容な人だから。
(この人は、私にはもったい無いくらいの人ですね……)
だからこそ、卑屈になってしまう。
自分は彼に相応しい男などではない。狭量で嫉妬深く、そして重い人間なのだ。
ヤマムラのように大らかで優しい人間が自分のような男に縛られていいのだろうかと、どうしても思ってしまう。
ましてや自分はいつか、彼の元を離れていくのが「分っている」のだから尚更だ。
ただいっときだけ、このヤーナムという胡乱な街で寄り添っているだけの存在に過ぎないのだから。
どうせ寄り添うならもっと確かな存在……。
疑う事もなく愛を注ぐ相手と寄り添っていた方が、ヤマムラには相応しいのではないか。
自分ではない、もっと大らかで優しい誰かと……。
(あぁ、でもそれを思うと嫉妬してしまう。他の誰かにとられる位ならと、そう思ってしまう……私は、どうしたいんでしょうか……この人と、どうやって接したら……どうしていいのか……)
思考が堂々巡りを繰り返し、食事もどうにも味気ない。
「どうしたんだい、アル。あまり食欲もないようだけど、具合が悪いのかい」
数口食べて手が止まるのを不思議に思ったのか、ヤマムラはアルフレートの額に手を触れてその熱を確かめた。
「熱はないみたいだけど」
「えぇ、大丈夫です。ただ……ただ、あなたが優しいから……私のような男には、勿体ない気がして……」
胸に秘めているつもりだった言葉が、つい零れる。
ヤマムラはいまいちピンときてない顔でアルフレートを見つめていた。
「あの、ヤマムラさんは優しくて、大らかで……貴方からすると、私なんてまだ子供のように思えるんじゃないかと思ったら、私には勿体ない人というか……私では、釣り合ってないというか……そんな風に、思えてしまって……」
子供っぽい事を言っているのは分っている。
だが今言わないと、心にわだかまっているこの気持ちが抑えきれなくなりそうだったから勢いのまま告げれば、ヤマムラはいかにもそんな些細な事とでも言うように優しく笑って見せた。
「何いってるんだい。俺みたいな冴えない男を選んでくれたのはキミだろう。俺の方こそ、キミには勿体ないんじゃないかって思うよ」
「そんな事ありませんよ! ヤマムラさんは……ヤマムラさんは素晴らしい人ですから……」
「キミがそう思ってくれるように、俺だってキミの事をそう思っているよ、アル……相応しくないとか、勿体ないとか、そんな風に思わないでくれ」
「ですが……」
と、そこでヤマムラは頭を掻くと恥ずかしそうな顔を見せた。
「キミは俺に勿体ないくらいの男だと思っているのは本当の事だよ。キミはまだ年若くて綺麗だし、身体だって俺のような痩せぎすの男と比べて立派だ。俺よりもっと若くて話が会うような相手と付き合うべきなんじゃないか……なんて思った事、一度や二度じゃないさ」
「そんな事……私はヤマムラさん意外の人なんて考えられないですよ……」
「あぁ、キミはそう言ってくれるだろう。俺はキミの言葉を信じているから……だからせめて、キミに相応しい相手になれるように出来る事はないかって、いつも考えているんだ」
ヤマムラはアルフレートから少し視線をそらす。
恥ずかしいと思っているのだろう。
「実際、外見はもうオジサンだからね。あまり若作りは出来ないけど……キミの恋人としてみっともないマネはしないよう獣狩りでは無礼をしないように気をつけているし、ヤーナムの流儀というのも学んでる。俺が妙な振る舞いをしたら、キミが恥ずかしい思いをするから……そう思って、キミの恋人である事を誇りにして日々を過しているんだ」
意外だった。ヤマムラがこんなにも自分を思って生活しているなんて、想像もしていなかったからだ。
「……だから、俺に相応しくないとか言わないでくれよ。俺にとってキミは自慢の恋人だし、誇るに値する相手なんだから」
そう言われ、ただ自分の思いにばかり目を向けていた事が恥ずかしくなる。
相応しいか相応しくないか、そういう事を考えるのならヤマムラのように『相応しくなるため』に行動すればいいだけの話なのだ。
すぐに出来るかわからないが……。
「そう、ですよね……すいません、私……」
「いいんだ……キミがそうして曇っている顔をしているのは俺の本意じゃない。気が晴れたらまた笑ってくれるな、アル。俺はキミの笑顔が好きだから」
ヤマムラがそう言ってくれるのなら、今は笑おう。
彼が望むのなら、彼に相応しい恋人として。
自分の出来る事なんて僅かしかないだろうがそれでも「好きだ」と真っ直ぐに言ってくれるヤマムラに対して、恥ずかしくないように。
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