インターネット字書きマンの落書き帳
愛しい貴方を引き裂いて(ヤマアルorアルヤマ)
アルフレート君とヤマムラさんの話ではあるんですが、こう……。
闇フレート君がヤマムラさんの事を好きになってしまったので、なんか考えがおかしい方向に全力疾走しちまったな! って話です。
長らくアルフレート君を書いているんですが、未だに「アルフレートくんを完全に理解した」みたいな作品を書けた気がしない……。
逆に言うと「アルフレートくんを書けた気がしないからこそ、アルフレートくんを書き続ける事が出来る」んじゃないかなッ!?
でもアルフレートくんを理解したい。
その鱗片だけでも知りたい……。
そう思ってアルフレートくんの存在に思いを馳せた結果がこれでした。
残念ですね! でも書いてるのは楽しかったです!
闇フレート君がヤマムラさんの事を好きになってしまったので、なんか考えがおかしい方向に全力疾走しちまったな! って話です。
長らくアルフレート君を書いているんですが、未だに「アルフレートくんを完全に理解した」みたいな作品を書けた気がしない……。
逆に言うと「アルフレートくんを書けた気がしないからこそ、アルフレートくんを書き続ける事が出来る」んじゃないかなッ!?
でもアルフレートくんを理解したい。
その鱗片だけでも知りたい……。
そう思ってアルフレートくんの存在に思いを馳せた結果がこれでした。
残念ですね! でも書いてるのは楽しかったです!
「腸(はらわた)に輝きを」
私にとって、師の言葉が全てだった。
逆説的に言うのならば、師の言葉に出会う前までの私は私ではなかったとも言えるだろう。
そんな馬鹿な事があるか。
たかだか他人の言葉一つで自らの人生ごと変わってしまう事なんてあるものか。
もしあったのだとしたら、お前は相当薄っぺらい人間だったのだろうな。
口の悪い狩人はをそう嘲笑うし、実際私もそうなのだと思う。
師の言葉と出会う前の私は、ただ死なないから生きている。
その日の食い扶持を稼ぎ、金を得れば飯と酒に変え、宿に泊まる余裕があれば温かなベッドで眠り、余裕がない時は藁の中に潜り込み石を枕にして眠る。
いよいよ切羽詰まった時は暴力と蛮行に身を任せるか、あるいは淫行に走りその日の飢えや寒さを凌いだ。
時には泥水を啜り、石を投げられ、他人に蔑まれてもただ死なないから生きている。
こんな生き方、人間のものと言えるのだろうか。
いや、とうてい人間らしい生き方とは言えなかっただろう。
これなら落ちた獣たちの方がよほど生きる理由がある。
彼ら、あるいは彼女らは『飢え』『渇いた』から殺すのだから。
生きる理由もないのにただ漫然と死なないために生きていた私と比べれば、剥き出しの本能がおもむくままとはいえそれでも『生きるため』に喰らっている彼ら、あるいは彼女らのほうがどれだけ『生き物』らしかっただろう。
あの頃の私は、人間らしくもなければ生き物らしくもない。
薄っぺらく寄る辺ない、ちょうど湖畔に浮ぶ木の葉のようにただ存在し流されるだけの生き方しかできなかったのだから。
だけど私は、師の言葉に出会った。
師の言葉は私の生きる道を作り、私のすべき事を示してくれた。
真っ暗な闇の中にある鬱蒼とした森の中を照らすカンテラのように、私を導いてくれたのだ。
私はあの時から「何者でもない何か」から「アルフレート」という人間になれたのだ。
師の言葉はまさしく輝きであり、輝きは導きであり、目標でもあった。
血族を狩れ。この街を清潔にするために。
最初は、師の志を継ぐために行動していた。
だが次第に私の中にある師の輝きは大きくなり、それ故に師の功績があまりにも小さく扱われるこの街そのものが狂っているように思えた。
栄光の輝きに満ちた師と、師の手足となり師とともに殉じた処刑隊。
全ての血族、その始祖とも言える穢れた女王・アンナリーゼを打ち倒すために戦いそして散っていった彼らの功績は、今は誰も近寄らないような廃教会にうち捨てられたような碑があるだけに留まっている。
師の功績がこのようなもので良いのだろうか。
誰にも語られず、誰にも知られず。
むしろ今となっては『忘れたい記憶』のように扱われている。
こんな不名誉な事があっていいのだろうか。
いや、いいはずがない。
師の言葉により『生かされた』私が師の名誉を取り戻すため闘うようになったのは、必然とも言えただろう。
師は輝きそのものであり、私の生き方全てだった。
私にとって唯一の輝きは師の栄誉であり栄光であり、それはただ眩しく私を照らしていた。
温もりも、暖かさもなく。ただ、眩しく。
……だから私は、戸惑っていた。
ヤマムラさんがくれる言葉も心も、まるで陽の光のように暖かかったからだ。
あの人を知ったのは、血族の武器である『千景』の所持者だったからだ。
血族の武器を使うのなら血族の縁者かもしれない。
そう思い密かに周囲を伺ったが、あの人はただ偶然千景を手に入れ、それを得物にしているだけの人だった。
狩人は変わり者が多い。
だがこの街に来る理由の多くは『血の医療』を求めての者だった。
不治の病を治すため。不老不死の噂を聞いて。病により伏せた愛する人を治す術を求めて。
大体はそんな理由でヤーナムに立ち入り、そして血の医療が存外に万能ではない事を知って落胆するのだ。
だがヤマムラさんが流れ着いた理由は違っていた。
亡き恩人に報いるため。仇討ちのためこのヤーナムに獣を追って来たというのだ。
私は、『何と高潔な人なのだろう』と思った。
彼の恩人が彼にとってどのような存在であったのか、私は知らない。愛する者だったのかもしれないし、命を救ってくれた盟友だったのかもしれない。
いずれにせよ『恩人』は恩人であり、恋人だろうが盟友だろうが『赤の他人』にすぎない。
だが彼はそんな『赤の他人』のために己を鍛え抜き、命を賭してまで獣と闘おうとしたのだ。
献身だ。
己の身を厭わず、先にある人生全てをなげうっても恩人に報いたいと思うその気持ち。これを高潔と言わず、何というのだろう。
彼の持つ千景と血族が無縁である事実が分った以上、私は彼について知る必要はなかった。
だがそれでも私は自分からヤマムラさんに声をかけていた。
おそらく、私は彼に自分を重ねていたのだと思う。
彼は死んだ恩人に報いるため仇討ちを果たした。
私もまた、すでにこの世の者ではない恩師に報いるため戦っている。
志をもち、それを果たした人間はどのようなものなのか……。
私はそれが知りたくて、あの人に近づいたのだろうと思う。
言うなれば、些細な好奇心だ。
だが私は忘れていた。『好奇心猫を殺す』という言葉が何故存在するのかという事を。
そう、好奇心というのは深淵のようなものだ。
興味をもって覗いた時、すっと足下を引っ張られそのまま落ちかねない目のくらむように深く暗い、何があるか分らない穴なのだ。
私にとって、ヤマムラさんはそういう人だった。
穏やかで優しく、物腰も柔らかだ。
連盟に所属しているのは、恩人の敵討ちを果たしてから生きる理由を失った自分を拾ってくれた恩義からだという。
義理堅いのだろう。情にも厚い。
僅かに言葉を交した私の事もよく覚えていてくれたし、年若い私の事を何かと気遣ってくれた。
顔をあわせれば大事ないか、困った事はないか、暖かくしているか、無理をしてないか、身体を大切に……。
自分が無茶ばかりしている癖に、私の心配ばかりする。
……ヤマムラさんにとって、私は最初から『アルフレート』という一人の人間だった。
師の言葉に殉じている私を軽んじる事もなかった。
私が処刑隊の亡霊と罵られているのを知ってもなお、それを咎めようともしなかった。
あるいはあの人自身がかつて『恩人の敵』というある種の亡霊に取り憑かれて戦っていたのだから私を責める筋合いは無いと思っていたのかもしれないが、ただ私に寄りそい、私を気づかい、慈しんでくれるあの人の存在は私にとって心地よかった。
それは師の与えてくれた言葉とは違う。
師の言葉は輝きだ。
限りなく透明な光を帯びた私の道しるべであり、導きだ。
だがヤマムラさんの与える言葉もまた、私にとって大切なものになっていた。
あの人の言葉は温もりだ。
冬場の暖炉のような。あるいは日だまりのような、そんな暖かな抱擁だ。
師の言葉と、あの人の言葉が同じくらい『尊い』ものだと感じた時。
私は、どうしていいのか分らなかった。
師の言葉は私の導きだ、私が私であるための生きる指標だ。
だがヤマムラさんの言葉もまた、私を私にしてくれた。
あの人は、私が私である事を受け入れ包み込んで、私の全てを飲込んでくれる。
……気付いた時、私はあの人の傍にいたいと思うようになっていた。
だがそれは私の生き方を否定する。
私の生きる道に、あの人とともに生きて行くという道は最初からないのだ。
私は輝きに身を賭すために生きているのだから。
だけど、それでも。
それでもあの人は暖かい。あの人は優しい言葉を囁き、柔らかな指先で触れ、唇も体温も全て私に捧げてくれる……。
私は、あの人も輝きなのではないかと思い始めている。
師の輝きとは違う。
だがあの人の与えてくれる暖かさは「輝き」と呼べるものではないか。
師の輝きは、師の言葉にあった。
あの人の輝きは、一体どこにあるのだろう。
……連盟は、虫を見つけるために獣の腹を割く。
私たちには見えないが、連盟員には「虫」が見えるらしい。
輝きに導かれた私にもあるいは、「輝き」が見えるのではないだろうか。
あの人の身体を裂いて、その中に輝きがあったのだとしたら。
あの人は、師と同じ「輝き」の使徒であることがわかる。
もし無ければあの人はただの人だ。私の温もりも思いも、全て錯覚だった事がわかる。
裂いてみれば、きっとわかるはずだから。
そう、しようと思う。
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