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インターネット字書きマンの落書き帳

   
失う事は恐ろしい(手芝・みゆしば)
平和な世界線で手塚と芝浦が恋人同士として普通に過ごす話です。
(定例行事・一行で説明する幻覚)

今回はふと「怖い物とかあるのか」と聞かれ「お前を失うのが怖いな」とど直球に答えてしまうみゆみゆ概念です。
自分の運命その一部になってしまった恋人でパートナーで相棒だから、その未来が見えなくなってしまったみゆみゆ概念ですよ。

攻めのスパダリをどんどん盛って生きていきたいよねッ!




「きっとそれは素晴らしい喪失」

 芝浦はテレビ画面に向い、コントローラーを握る。
 画面には夜の寒村にうち捨てられた廃屋が映し出されている。
 廃屋になる前は村の中心になってたであろう名士の家だったようだが、広い屋敷は意味ありげに市松人形が並べられていたりしめ縄がぶら下がっていたりといかにも和風ホラー映画の世界観だ。
 手塚は何となくそのゲームが面白そうに見えたので、後ろから芝浦のプレイを眺めていた。

 芝浦はFPSが得意なのだが、それ意外のゲームもプレイするし大概のゲームをそつなくこなす。
 ホラーゲームも好きなようで操作も手慣れたものだったが。

「うわぁッ! 今なんか出たし!」

 不意に現れた幽霊タイプのクリーチャーを前に、驚きながら身体をびくりと震わせる。
 ホラーゲームで遊ぶのは好きだが、ホラー演出そのものはあまり得意ではないようだった。

「芝浦は案外怖がりだな」

 その様子を見てつい口にすれば、芝浦はさぞ心外だといった様子で振り向いた。

「いやいやいや、違うって。俺べつにホラーとかそういうの全然大丈夫だから。ただ、この手のいきなりバーンって出てくるタイプの奴にはちょーっとビックリしちゃうんだって」

 芝浦は必死にそう抗議をする。
 確かに芝浦はわりとグロテスクな描写のある映画も、ゴア描写の強いゲームも平気なタイプだ。だが突然窓から犬が飛び出したり、窓に血まみれの幽霊が張り付いたり……といった描写は音の演出も相まっていつでも驚いているように思える。

「別にいいんじゃないか? 恐怖心というのは命の危険がある時に感じるものだ。怖がりだという事は、それだけ身の危険に敏感という事だからな」
「だからっ、俺は別に怖がりじゃないし」
「それに、怖がってるお前はいつも可愛いからな」
「なぁっ……またそういう事言うし。いつもそんなんで喜ばないからね」

 芝浦はそう言いつつもまんざらでもない顔でコントローラーを握る。
 そしてふと、思い出したように言うのだ。

「そういえば、手塚ってホラー映画もホラゲーも見てて全然大丈夫な人だよな」
「ん? あぁ、そうだな。普通に映画として面白いかどうかで見ているが、恐怖心を強く感じているかと言われればそれはない……最も、別にそれはホラーに限った事でもないがな」

 手塚は映画やドラマ、小説といったフィクションに心を動かされるという事はあまりない性分だった。
 見ていて面白いとは感じるが、悲しいシーンで涙を流す事もなければ憎き悪役を前にした主人公とともに怒りを覚える事もない。
 あれはあくまで物語でありフィクションの存在で自分と切り離して考えているため感情移入をしないという事もあるのだろう。

「確かに、手塚って映画で泣いたりしないもんね」

 そう語る芝浦は、これで結構感動して泣いたりすることがある。
 友達と見る時は『何でも茶化す道化役』を演じるのが癖になっており『全然感動できなかった』と強がった態度を見せるのだが、手塚の前では素直に泣いたり怒ったりするのでフィクションにおいても感情移入ができるタイプのようだ。
 あるいは本質的にめり込みやすいから普段は他人に対して距離をとり無頓着であろうとしているのかもしれないが。

「でも手塚でもさー、怖いものとか苦手なものってあるの? 蜘蛛は苦手とか、ぬめぬめした排水溝には触りたくないとか……あ、カフェインが苦手なのは知ってるけど」

 そう言われて、手塚はふと思い返す。
 ごく最近「恐ろしい」と感じた事があったからだ。

 そう、それは占いのこと。
 手塚は運命や因果律という存在をどこか信じており、自分の運命を知るための占いというものに強い興味を抱いていた。
 そんな自分の占いがかなり当たるという事に気付いたのは学生時代の頃だ。
 水難の相が出ていると告げたクラスメイトが信じる事なく海に出かけ、溺れてしまった時には絶望した。
 運命を知っていても、変えられない事があるのだと。因果律は覆せないかもしれない。だが相手がそれを信じてくれれば、小さなミスや事故などは防げるはず。

 そうして占いをするうち、段々と自分の未来が見えなくなってきた。

『占い師ってのは、自分の事は占えなくなるもんだぜ。どうにもなァ、自分の事となると客観視できなくて、リーディングにミスが増えるんだ。人間、自分の事はよく分らないもんだよな』

 それは占い師の先輩が言っていた事だった。
 同じように路上で店を構えていた彼は今はどこかの店に所属して副業として占いをしていると聞く。
 だから自分の未来が見えなくなっても、あまり気にはしなかった。
 自分に何があっても親しい人の未来を見て、不運や不幸を避ける事が出来れば占い師としての役目は充分果たしていると思ったからだ。

 だが今、芝浦の未来がどうしても読み取れない。
 おそらく彼があまりにも手塚に深く関わってしまったため以前ほど客観視できなくなったせいだと思うのだが、その時手塚はそれを『恐ろしい』と思ったのだ。

 愛しい芝浦の未来が読めないという事は、彼に降りかかる災難や不運が予測できないという事だ。
 自分の占いならそれが避けられる可能性があるというのに、そうなると芝浦を守り切れないかもしれない。自分の手から離れ運命に絡め取られてしまうかもしれない。
 そう思った時、手塚は心底恐ろしいと思ったのだ。

「……当然だろ。俺にだって怖いと思う事くらいある」
「マジで? 全然想像できないんだけど」

 信じてない様子で笑いながらテレビに向う芝浦の隣に座ると、手塚は自然と肩を抱き寄せていた。

「ちょ、ちょっ……ゲームの邪魔なんだけど」
「俺は、ただお前を失うのが怖い」
「えっ!? また、今そういうこと言うッ? ……手塚ってムードとか雰囲気とか関係なく、突然言いたい時に言うよね。……ま、俺はいつ言われても嬉しいけどさ」

 芝浦は笑顔のまま手塚に身体を預けゲームを続ける。
 まるで手塚が傍らにいるのが当然のようにそうする芝浦を見て、手塚は改めて芝浦淳という男が自分の身体の一部同然である事を実感した。

 すでに芝浦は自分の運命の一部なのだ。
 だから未来も見通せなくなったのだろうと思うし、芝浦に何かあった時それを予測できず手遅れになってしまったら、それは考えるだけで恐ろしい。

 だがそれでも自分自身も無意識のうち芝浦こそ運命を共にできる相手だとしていた事や、二人でこれから先の分らない未来を手探りでたぐり寄せる事が出来るのはきっと幸せな事だろうから。

「いつでも言うさ。俺はお前を失いたくない。お前と運命をともにしたい……ずっとずっと傍にいてくれ」

 握った手は熱く、自然と唇が重なる。

「ちょ、まっ……ゲーム途中なんだけど……」

 芝浦は最初不服そうに口をもごもご動かしていたが、すぐに黙ってそれを受け入れた。
 見えなくなった未来は恐ろしい。
 だがともに寄り添い運命を共にできるのなら、きっとそれは素晴らしい事なのだろう。

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インターネット駄文書き
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紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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