インターネット字書きマンの落書き帳
ダーマツの家に転がりこむ山ガス概念
松田と山ガスが出る話です。
本編の時間的に、長時間一緒にいるのが難しいのでは……。
という二人ながら、山ガスが松田の家に転がり混んでほしいな。
山ガスならどうやって松田の家に転がりこむかなぁ。
を考えた結果、「俺のこたえはこれだ!」になりました。
松田の家に入るため自ら率先して大怪我をするタイプの山ガスです。
山ガスが容赦なく鼻血出してます。ごほうびだね。
俺の店で出せるのはこれだよ!
本編の時間的に、長時間一緒にいるのが難しいのでは……。
という二人ながら、山ガスが松田の家に転がり混んでほしいな。
山ガスならどうやって松田の家に転がりこむかなぁ。
を考えた結果、「俺のこたえはこれだ!」になりました。
松田の家に入るため自ら率先して大怪我をするタイプの山ガスです。
山ガスが容赦なく鼻血出してます。ごほうびだね。
俺の店で出せるのはこれだよ!
『血を流すくらいどうってことない』
博物館勤務と一口にいっても色々な役割があるのだが、松田の仕事は史跡の出土品を文献と照らし合わせる事や、出土品の年代測定そのものといった幅広い分野の雑務が多く、資料をまとめるために休日返上で働く事も多かった。
松田の場合、学生時代に所属していた研究室へ送る資料をまとめる他、自身も論文を書いて時に学会で発表をする身の上だったからなおさら忙しく、普段の日は博物館の学芸員として働き、休日はいち研究者として仕事をするといったサイクルがほとんどでまとまった休みはとれない。
それなのに休日の研究はあくまで自分の趣味とされ、給料は当然出ない。どこの博物館も経営状態は悪く、職員を雇う余裕もないのが現状だ。時に遠方の遺跡まで実物の出土品を見に行くのでさえ自腹を切っているのだが、他の職員たちも概ね同じ状況だった。
さて、そんな風に研究と論文に追われていた松田だがその日は久しぶりにゆっくりできる休日だった。
まとまった休みはとれなかったから趣味の釣りに出かける余裕はないが、睡眠時間を削る日々が多かった。今日はゆっくり眠って、昼頃に起きたら行きつけの定食屋で昼食をとり、あとは家でだらけて過ごそう。怠惰な生活と言われればそれまでだが、今まで身体を伸ばして寝る時間のほうが少なかったのだから1日くらいはいいだろう。
そう思って張り切って寝るつもりでいたのだが、朝8時を過ぎた頃に何度もインターフォンが鳴る。
誰だ。別に通販などを頼んだ覚えはないから、宅配業者ではないだろう。家族や友人など、気易く家に来るような相手はいない。不思議に思いつつインターフォンをとれば、いつか見た事のある男が立っていた。
年齢は20代といったところか。身体は針金のように細く肌は白いを通り越して蒼白でどこか病的な色にさえ思える。整った顔立ちをしているが、眉間には深いしわが刻まれており誰に対しても疑念の視線を容赦なく向けている。神経質なのか、髪を綺麗になでつけ、今は頬に手を当て松田が出るのをじっと待っている。本来はもう少し背が高いのだろうがひどい猫背のため小柄に見え、ドアスコープに向ける視線も上目遣いになっていた。
誰だったかと記憶を巡り、一つの名前に行き着く。
この男はたしか、山田ガスマスクと名乗っているWebライターだ。
以前、ミステリーツアーで顔を合わせた相手で、元々炎上系の動画配信者をしていたと思うのだが、配信業を引退してからWebライターとして働いているのだ。Webライターとして専らアングラな記事を書いていた気がするが、そんな山田が自分に何の用だろうか。
いや、マスコミや記者が自分に求めるものなんて決まっている。
天誅事件の容疑者としての松田に話しを聞きたいのだろう。
如月努が自ら命を絶った後、松田の容疑者扱いも随分と下火になったのだが、天誅事件はまだ解決しておらず、松田は容疑者のままなのだ。
松田はインターフォンをとると、スピーカーごしに声をかけた。
「悪いが、お前に話す事はなーんも無いで」
その声を聞いた山田はすぐさまドアがノックし残念そうな視線を向ける。
「そんなぁ、起きてるんでしょ松田サン。せっかくなら部屋に入れてよ。僕、ちょっと松田サンと話したい事があるんだよねー」
イマドキの若者らしい、どこか軽薄な喋り方で山田は笑う。
やはり、天誅事件のことを聞きに来たのか。
「俺はお前と語らうのなんてゴメンや」
松田は一方的にそう告げると、インターフォンを切る。
山田はその後もしつこくインターフォンを鳴らし続けていたが、松田が電源ごとスイッチを切ったら諦めたのか、気付いた時にはドアの前から消えていた。
「まったく、朝からけったくそ悪いわ……」
もっとたっぷり寝るつもりだったが、起きてしまったのなら仕方ない。
部屋着に着替え、読もうと思って詰んでいた本をパラパラとめくったり、見たいと思っていたが機会を逃した映画を見たりしているうち、あっという間に昼が来る。
行きつけの食堂はもう開いてる時間だ。食事時になり客でごった返す前に出かけて、早めに食べて早めに帰ろう。
そう思って外に出て少し歩くと、細い路地で大の男が数人集まり、一人を囲んで何やら文句をつけているのが目に入った。
喧嘩だろうか。
この辺りは決して治安のいい訳ではないから、血気盛んな連中がイキがって売られた喧嘩を買うというのも珍しくはないが、それでも昼間から騒ぎが起こるとは随分物騒になったものだ。
そんな事を思いながら声の方に視線を向ければ、今朝方ドアの前で立っていた山田が複数人の男に囲まれていた。
「いやいや、こんな事で本気になる必要ないでしょ。それとも、図星をつかれて起こっちゃってる感じ?」
今にも殴りかかってきそうな相手を前に、山田はヘラヘラ笑いながら男たちを挑発する。
何を馬鹿なことをしてるんだ。ここの連中は怒りの感情を制御して話し合えるほど冷静な奴らはほとんどいない。
もし、冷静さを美徳としている人間であっても、そのような減らず口を聞いたら少なからず怒るだろう。
そう思った矢先に、男たちは山田に殴りかかった。
白いオーバーサイズのパーカーに鮮血が滴るのがハッキリ見える。
「……ほんま、何やってるんやアイツ」
助けてやる義理はない。だが、見知った顔が殴られているのを知っていて見ぬフリをするのは、気分が悪い。
「しゃあないな……」
松田は男たちへ近づくと、振りかぶる殴ろうとする腕を後ろから引っ張った。
「そんくらいにしとけや」
「なぁ……何だよオッサン。オッサンには関係ねぇだろ!」
男たちはそう言い振り返るが、松田の姿を見てやや焦ったようだった。
無理もないだろう。190cmに近い身長の松田は、見るからにコワモテなのもありよく、そのスジの人間と勘違いされる。
男たちも松田を見て、本職の人間に止められたのだと思ったに違いない。少し怯えたように松田の様子を覗っていた。
「確かに俺には関係ない事やな。せやけどなぁお前ら、集団で一人を殴って大事になったら、悪いのはお前らってことになるやで。ちっと考えてみぃ。こんなクズ相手に、前科なんかついたらしょーもないと思わんか?」
男たちは松田の言い分も最もだと思ったのか。あるいは、松田自身に恐れをなしたのか。
仕方ない、といった顔になると各々どこかに散っていった。
後には尻もちをつく山田だけが残される。
思い切り鼻を殴られたのか、口元を抑えていても鼻血がボタボタ流れていた。
「お前、何しとるん……」
「んー……喧嘩?」
「何で勝てもしない喧嘩ふっかけてるん? 賢そうな顔してるくせに、アホだったんか」
「でも、松田サンが家を出るの見えたから。この道を通った時、僕が喧嘩してれば松サンなら助けてくれると思って」
「ハァ?」
「ねーねー、松田サン。僕、こんな怪我しちゃってるし服も血で汚れて、このままじゃ帰れないからさ。家に入れてくれるよね」
鼻を押さえながら、山田はニヤリと笑う。
こいつ、わざわざ自分と話をするため悪ガキどもに喧嘩をふっかけて、松田が助けると信じてボロボロに殴られたというのか。
もし松田が無視してたら大怪我をしていただろうに。いや、今だって充分すぎるくらいの怪我をしている。このまま松田が放っておいたら、血まみれのまま帰るのだろうか。
「はぁ……わかったわかった。俺の負けや。ほら、ついて来い。そのボロッボロの顔と服、もちょっとマシにしたるわ」
「やったー。松田サンって絶対いい人だから、この手が通じると思ったんだよねぇー」
止まらない血を拭いながら、山田は笑う。
全く、この状況で笑っているなんて、冷静に見えてひどく頭のネジが外れている奴だ。
ひょっとしたら、とんでもなくヤバい奴と知り合ってしまったのかもしれないと後悔のような気持ちもあるが、少しだけ興味を抱いているのも事実だった。
こんな真似をしてまで松田の気を惹こうとする、山田の目的は一体何なのか。少なくとも、今まで自分の周辺に現れたマスコミ連中とは違うのだろう。
こいつはとんでもない猛毒だ。
だが、どうせ毒を試すのなら全部飲んでやるのもいい。
久しぶりに好奇心を刺激され、どこかくすぐったい気持ちを抱いて松田は今来た道を戻る。
見慣れた道が、今日は随分と違う道に見えたのはきっと気のせいではないのだろう。
博物館勤務と一口にいっても色々な役割があるのだが、松田の仕事は史跡の出土品を文献と照らし合わせる事や、出土品の年代測定そのものといった幅広い分野の雑務が多く、資料をまとめるために休日返上で働く事も多かった。
松田の場合、学生時代に所属していた研究室へ送る資料をまとめる他、自身も論文を書いて時に学会で発表をする身の上だったからなおさら忙しく、普段の日は博物館の学芸員として働き、休日はいち研究者として仕事をするといったサイクルがほとんどでまとまった休みはとれない。
それなのに休日の研究はあくまで自分の趣味とされ、給料は当然出ない。どこの博物館も経営状態は悪く、職員を雇う余裕もないのが現状だ。時に遠方の遺跡まで実物の出土品を見に行くのでさえ自腹を切っているのだが、他の職員たちも概ね同じ状況だった。
さて、そんな風に研究と論文に追われていた松田だがその日は久しぶりにゆっくりできる休日だった。
まとまった休みはとれなかったから趣味の釣りに出かける余裕はないが、睡眠時間を削る日々が多かった。今日はゆっくり眠って、昼頃に起きたら行きつけの定食屋で昼食をとり、あとは家でだらけて過ごそう。怠惰な生活と言われればそれまでだが、今まで身体を伸ばして寝る時間のほうが少なかったのだから1日くらいはいいだろう。
そう思って張り切って寝るつもりでいたのだが、朝8時を過ぎた頃に何度もインターフォンが鳴る。
誰だ。別に通販などを頼んだ覚えはないから、宅配業者ではないだろう。家族や友人など、気易く家に来るような相手はいない。不思議に思いつつインターフォンをとれば、いつか見た事のある男が立っていた。
年齢は20代といったところか。身体は針金のように細く肌は白いを通り越して蒼白でどこか病的な色にさえ思える。整った顔立ちをしているが、眉間には深いしわが刻まれており誰に対しても疑念の視線を容赦なく向けている。神経質なのか、髪を綺麗になでつけ、今は頬に手を当て松田が出るのをじっと待っている。本来はもう少し背が高いのだろうがひどい猫背のため小柄に見え、ドアスコープに向ける視線も上目遣いになっていた。
誰だったかと記憶を巡り、一つの名前に行き着く。
この男はたしか、山田ガスマスクと名乗っているWebライターだ。
以前、ミステリーツアーで顔を合わせた相手で、元々炎上系の動画配信者をしていたと思うのだが、配信業を引退してからWebライターとして働いているのだ。Webライターとして専らアングラな記事を書いていた気がするが、そんな山田が自分に何の用だろうか。
いや、マスコミや記者が自分に求めるものなんて決まっている。
天誅事件の容疑者としての松田に話しを聞きたいのだろう。
如月努が自ら命を絶った後、松田の容疑者扱いも随分と下火になったのだが、天誅事件はまだ解決しておらず、松田は容疑者のままなのだ。
松田はインターフォンをとると、スピーカーごしに声をかけた。
「悪いが、お前に話す事はなーんも無いで」
その声を聞いた山田はすぐさまドアがノックし残念そうな視線を向ける。
「そんなぁ、起きてるんでしょ松田サン。せっかくなら部屋に入れてよ。僕、ちょっと松田サンと話したい事があるんだよねー」
イマドキの若者らしい、どこか軽薄な喋り方で山田は笑う。
やはり、天誅事件のことを聞きに来たのか。
「俺はお前と語らうのなんてゴメンや」
松田は一方的にそう告げると、インターフォンを切る。
山田はその後もしつこくインターフォンを鳴らし続けていたが、松田が電源ごとスイッチを切ったら諦めたのか、気付いた時にはドアの前から消えていた。
「まったく、朝からけったくそ悪いわ……」
もっとたっぷり寝るつもりだったが、起きてしまったのなら仕方ない。
部屋着に着替え、読もうと思って詰んでいた本をパラパラとめくったり、見たいと思っていたが機会を逃した映画を見たりしているうち、あっという間に昼が来る。
行きつけの食堂はもう開いてる時間だ。食事時になり客でごった返す前に出かけて、早めに食べて早めに帰ろう。
そう思って外に出て少し歩くと、細い路地で大の男が数人集まり、一人を囲んで何やら文句をつけているのが目に入った。
喧嘩だろうか。
この辺りは決して治安のいい訳ではないから、血気盛んな連中がイキがって売られた喧嘩を買うというのも珍しくはないが、それでも昼間から騒ぎが起こるとは随分物騒になったものだ。
そんな事を思いながら声の方に視線を向ければ、今朝方ドアの前で立っていた山田が複数人の男に囲まれていた。
「いやいや、こんな事で本気になる必要ないでしょ。それとも、図星をつかれて起こっちゃってる感じ?」
今にも殴りかかってきそうな相手を前に、山田はヘラヘラ笑いながら男たちを挑発する。
何を馬鹿なことをしてるんだ。ここの連中は怒りの感情を制御して話し合えるほど冷静な奴らはほとんどいない。
もし、冷静さを美徳としている人間であっても、そのような減らず口を聞いたら少なからず怒るだろう。
そう思った矢先に、男たちは山田に殴りかかった。
白いオーバーサイズのパーカーに鮮血が滴るのがハッキリ見える。
「……ほんま、何やってるんやアイツ」
助けてやる義理はない。だが、見知った顔が殴られているのを知っていて見ぬフリをするのは、気分が悪い。
「しゃあないな……」
松田は男たちへ近づくと、振りかぶる殴ろうとする腕を後ろから引っ張った。
「そんくらいにしとけや」
「なぁ……何だよオッサン。オッサンには関係ねぇだろ!」
男たちはそう言い振り返るが、松田の姿を見てやや焦ったようだった。
無理もないだろう。190cmに近い身長の松田は、見るからにコワモテなのもありよく、そのスジの人間と勘違いされる。
男たちも松田を見て、本職の人間に止められたのだと思ったに違いない。少し怯えたように松田の様子を覗っていた。
「確かに俺には関係ない事やな。せやけどなぁお前ら、集団で一人を殴って大事になったら、悪いのはお前らってことになるやで。ちっと考えてみぃ。こんなクズ相手に、前科なんかついたらしょーもないと思わんか?」
男たちは松田の言い分も最もだと思ったのか。あるいは、松田自身に恐れをなしたのか。
仕方ない、といった顔になると各々どこかに散っていった。
後には尻もちをつく山田だけが残される。
思い切り鼻を殴られたのか、口元を抑えていても鼻血がボタボタ流れていた。
「お前、何しとるん……」
「んー……喧嘩?」
「何で勝てもしない喧嘩ふっかけてるん? 賢そうな顔してるくせに、アホだったんか」
「でも、松田サンが家を出るの見えたから。この道を通った時、僕が喧嘩してれば松サンなら助けてくれると思って」
「ハァ?」
「ねーねー、松田サン。僕、こんな怪我しちゃってるし服も血で汚れて、このままじゃ帰れないからさ。家に入れてくれるよね」
鼻を押さえながら、山田はニヤリと笑う。
こいつ、わざわざ自分と話をするため悪ガキどもに喧嘩をふっかけて、松田が助けると信じてボロボロに殴られたというのか。
もし松田が無視してたら大怪我をしていただろうに。いや、今だって充分すぎるくらいの怪我をしている。このまま松田が放っておいたら、血まみれのまま帰るのだろうか。
「はぁ……わかったわかった。俺の負けや。ほら、ついて来い。そのボロッボロの顔と服、もちょっとマシにしたるわ」
「やったー。松田サンって絶対いい人だから、この手が通じると思ったんだよねぇー」
止まらない血を拭いながら、山田は笑う。
全く、この状況で笑っているなんて、冷静に見えてひどく頭のネジが外れている奴だ。
ひょっとしたら、とんでもなくヤバい奴と知り合ってしまったのかもしれないと後悔のような気持ちもあるが、少しだけ興味を抱いているのも事実だった。
こんな真似をしてまで松田の気を惹こうとする、山田の目的は一体何なのか。少なくとも、今まで自分の周辺に現れたマスコミ連中とは違うのだろう。
こいつはとんでもない猛毒だ。
だが、どうせ毒を試すのなら全部飲んでやるのもいい。
久しぶりに好奇心を刺激され、どこかくすぐったい気持ちを抱いて松田は今来た道を戻る。
見慣れた道が、今日は随分と違う道に見えたのはきっと気のせいではないのだろう。
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