インターネット字書きマンの落書き帳
風邪ひき黒沢をお見舞いする山ガスの話(BL)
学生時代、やんわりといい感じで付き合っていた黒沢と山ガスの話をします。
何故なら俺がしたいから!
風邪気味で一日休むことにした黒沢。
それが心配しすぎて大慌てしちゃう山ガスが転がるみたいにお見舞いにやてくる話をしています。
山ガスは黒沢に甘いといいな。
黒沢もまた山ガスに甘いといいな。
そんな風に思っています。
付き合ってはいるんだけど、本命童貞みたいなムーブをかますタイプの黒沢だよ♥
トシカイの最後まで見てないとわからないネタバレがあるよ。
きをつけて♥
何故なら俺がしたいから!
風邪気味で一日休むことにした黒沢。
それが心配しすぎて大慌てしちゃう山ガスが転がるみたいにお見舞いにやてくる話をしています。
山ガスは黒沢に甘いといいな。
黒沢もまた山ガスに甘いといいな。
そんな風に思っています。
付き合ってはいるんだけど、本命童貞みたいなムーブをかますタイプの黒沢だよ♥
トシカイの最後まで見てないとわからないネタバレがあるよ。
きをつけて♥
『あなたのことだけが心配だから』
黒沢がそろそろ寝るかと思った時、すでに背中にうっすらと寒気を感じていた。ざらつくような感覚が喉に張り付き、心なしか関節の節々に痛みも感じる。
無理をしたつもりもないし、不摂生をした覚えもないのだが体調を崩しかけているのは明白だったので、ビタミン系のサプリを飲んで普段より早めに就寝する。
それでも起きた時に体調は随分と悪化しており、目覚めた時は全身が熱っぽく身体を起こすのも億劫なほどの倦怠感に包まれていた。
試しに熱を測ってみれば、37.6度と普段よりやや高めの数字が表示されている。大げさに騒ぎ立てるほどの高熱だとは思わないが、元気に辺りをうろついていい熱でもなさそうだ。 そう思った黒沢は、今日一日静養にあてることにした。
大学の授業に関しては友人に後で話を聞けるように頼んでおく。他にも細々としていた食事の約束やサークルでの話し合いなど予定をいくつかキャンセルしつつ、5Sのメンバーたちにもメッセージを送る。以前からの知り合いやサークルなど交遊が広い黒沢が、最近一番長い時間を共にしているメンバーが5Sであり、程度の差はあれ自分のやりたい事に共感し協力してくれる彼らと過ごす時間が黒沢にとって一番心地よかったから、例え会う予定がなくても何も伝えないのは不義理に思えたからだ。
「今日は少し熱があるみたいだから、家にいる。急ぎの用があったら直接電話か、DMを送ってくれ。メールはすぐに返事が出来ないと思う」
グループトークにそんなメッセージを投げてからのろのろと起き上がり、念のため冷やしておいたスポーツドリンクを飲む。
スマホには主に5Sのメンバー達から「お大事に」「ゆっくりして」といった労いの言葉が届く中、山田だけはグループトークの他に黒沢個人宛にもいくつかメッセージを送っていた。
「黒沢さん大丈夫? 家に風邪薬とか常備してる?」
「もし、何もなかったら僕が買い出しに行くからすぐに言って」
「ちゃんと食事と水分とれてる? 栄養剤でも、ゼリー飲料でも必要なものがあったらすぐ言ってよね」
グループトークの場では「無理しないで」程度の反応しかしてなかったのに、随分と心配性なことだ。
黒沢は、安静にしているから心配しないよう簡単なメッセージを送ると、果物とヨーグルトで朝食を済ませ風邪薬を飲んでからベッドに潜り込んだ。
それからしばらくウトウトし、次に目を覚ました時は昼過ぎ頃だったろう。
水分をたっぷりとったのもあってか随分と寝汗をかき、身体全体がベタついているのが鬱陶しかったが熱は37.0度まで下がっている。喉のいがらっぽさや節々の痛みも消えており、これなら病院に行かずとも良さそうだ。
早く休んだのが功を奏したのだろうと考えながら軽い昼食をとった後、べたつく汗を流すためシャワーを浴びて動きやすい服に着替える。
さて、人心地ついたから少しスマホでも触って弄ろうか、それとももう少し横になっていようかと考えていた時、誰かがインターフォンを押した。こんな時間に来客など一体誰だろうか。ネット通販などは最近使っていないはずだから、誰も来ないはずなのだが。不思議に思いつつインターフォン備え付けのカメラ越しに相手を確認すれば、山田が辺りの様子を気にしながら心配げな顔をして立っている姿が映し出された。
大丈夫だと伝えたのだが、いてもたってもいられなかったのだろう。
5Sがまだその名を使ってなかった頃、動画編集の手伝いでやってきた山田をスカウトしたのが黒沢だったのだが、それから山田は黒沢を兄のように慕っており、献身的なまでに世話を焼き従順すぎる程にどんな言うことでも聞くようになっていたのだ。
その姿はさながら黒沢の忠犬だと眉崎は揶揄していたが、兄弟のいない黒沢にとって弟が出来たようで嬉しかったし、慕われているのは悪い気がしなかった。
「山田か。鍵を開けたから入っていいぞ」
黒沢がそう告げれば、すぐにドアが開き転がるように山田が駆け込んでくる。
その手にはコンビニで買ったらしい飲み物やゼリー飲料などがパンパンに詰め込まれていた。
「黒沢サン、風邪ひいたって言ってたけど、大丈夫? 熱、酷いなら僕が車出すから病院行こうか? あっ、これコンビニで……何も食べられなくなってたらいけないと思って、プリンとかゼリーとか……消化のいいってネットで書いてあったレトルトのおかゆとか、あと風邪薬と栄養剤。色々買ってきたから……」
山田は早口でまくし立てながら、いっぱいに膨らんだエコバッグから、コンビニで見るスイーツやあまり見たことのない食べ物まで様々なものを取り出す。
これだけ買ったのなら、それなりの金額を使っただろう。
5Sとしての活動で得た報酬は、メンバーに均等に渡しているのだがそれでも山田はメンバーの中では生活が苦しい方だった。というのも、山田は親の援助などほとんどない状態で大学に通い、一人暮らしをしているからだ。
学費は奨学金と、高校時代に自身がバイトで貯めたという金でまかなっているというが、アパートの家賃を支払っても生活はカツカツだと聞く。実際、5Sの活動をする前までは授業以外はほとんどバイトを入れ何とか食いつないでるような有り様で、それでも満足な食事がとれず授業中でもぐったりと突っ伏していることがしばしばあったと谷原から聞いている。
学生時代のバイトというのもおおよそ健全なものではなかったのだと、そんな噂もネット上ではたまたま見る。
それだけ苦労しているというのに、黒沢に対して金を使うのは全く躊躇がないのだから嬉しいよりも心配だ。これだけ金を使って、果たして生活できるのだろうか。
SNSの噂にあるよう、身体を撃って稼ぐような真似はしてほしくない。
この感情が、5Sのイメージに関わるからという保身からなのか、山田が他の男に抱かれ乱れている姿など許せないという独占欲なのかは黒沢自身にもわからないのだが。
「ありがとうな、山田。これだけ買ったなら結構金を使っただろう。使った分は支払おう。いくらになった?」
いくらだったとしても2,3万は支払うつもりで財布を出したのだが、山田は大げさなくらい手を振ってみせる。
「お金とかいらないから。僕が勝手に買ってきただけだし、黒沢サンがあんまりコンビニの食べ物なんて好きじゃないのも知ってるから、もし食べられなかったら捨てちゃっていいし……」
山田はいつもこうだった。
黒沢を気遣いあれこれと必要なものを準備してくれたり、世話を焼いてくれたりするのだが言葉以外の礼は一切受け取らない。
周囲から「金持ちに媚びを売って小遣い稼ぎしている」と思われたくないのだろうが、それにしてもあまりに何もさせてくれないことが、かえって黒沢には気になっていた。
「それより黒沢サン、もう動いて大丈夫なの?」
山田は上目遣いになりおずおずと問いかける。
これだけ尽くしてくれるというのに、黒沢の前ではいつも不安そうにしているのも心に引っかかっていた。苛立ちとは違うのだが……。
「あぁ、幸い早く横になって風邪薬を飲んだのからだろうな。今は微熱程度だ。元々そこまで熱も出てなかったし、明日は普通に学校にも行ける。だから心配するな」
「そっか……良かった。本当に……」
黒沢の答えを聞いて、山田は心底安心したように粋を吐くと服の袖口で目元を拭う。ひょっとして泣いているのだろうか。たかが風邪くらいで大げさだ。呆れるほど心配性だと言ってもいいだろう。
だが、こんなにも心から自分を心配し、一切の打算も忖度もなく見つめてくれた相手がこれまでどれほどいたのだろうか。親でさえ黒沢のことを利用価値の有無で推し量り、周囲の大人に忖度された判断をされ、同級生たちでさえコネ作りの一環として付き合いをするのが当たり前の環境にいたものだから、山田の真っ直ぐな好意は新鮮であり、とても尊い。
彼に何をしてやれるのだろうか。
見返りを求めずそばにいようと思う相手があまりに乏しかったからどうしていいか分からず少し考えた後、黒沢は山田の身体を抱きよせた。
「……黒沢サン」
山田はさして抵抗することなく、黒沢の胸に納まる。
あまり背丈はかわらないはずの山田は身長よりもずっと小柄で細く、少し力を入れれば簡単に壊れそうな気がした。
ずっと、こうしていてほしい。
そばにいて寄り添って自分だけを慕っていてほしい。
ずっと、自分のモノでいてほしい。
願いを込めるように額へ口づけをすれば、山田はくすぐったそうにそれを受け入れた。
「……すまん、山田」
キスをした後、どこか気恥ずかしくなる。
特別な意味などなく、ただ何も礼ができないのは気が引けると思った感謝のつもりだったが、普通だったら不意にキスをされても喜んだりはしないだろう。
「何で謝るのさ。僕、黒沢サンからキスしてもらうの、すっごく嬉しいよ。この時だけ、黒沢サンが僕のことだけ考えているんだって思えるから」
山田は笑うと、どこか甘えるように黒沢の首元へと手を伸ばしもっとキスが欲しいのだとおねだりの仕草を見せる。
今はそれほど体調が悪いわけではないのだが、あまりキスをしたら風邪が移るといけない。そう思った黒沢は唇に触れるだけのキスをして、山田の頬をそっと撫でた。
「この続きは、俺がもう少し元気になってからする。そうだな……今度二人でどこか出かけるか」
「……うん。楽しみにしてる。約束だからね」
山田は微かに笑うと、縋り付くよう抱きつく。
黒沢は彼の身体を抱きしめ返すと、少し乱れた前髪を元に戻してやるように丁寧に、大切に撫でてやるのだった。
黒沢がそろそろ寝るかと思った時、すでに背中にうっすらと寒気を感じていた。ざらつくような感覚が喉に張り付き、心なしか関節の節々に痛みも感じる。
無理をしたつもりもないし、不摂生をした覚えもないのだが体調を崩しかけているのは明白だったので、ビタミン系のサプリを飲んで普段より早めに就寝する。
それでも起きた時に体調は随分と悪化しており、目覚めた時は全身が熱っぽく身体を起こすのも億劫なほどの倦怠感に包まれていた。
試しに熱を測ってみれば、37.6度と普段よりやや高めの数字が表示されている。大げさに騒ぎ立てるほどの高熱だとは思わないが、元気に辺りをうろついていい熱でもなさそうだ。 そう思った黒沢は、今日一日静養にあてることにした。
大学の授業に関しては友人に後で話を聞けるように頼んでおく。他にも細々としていた食事の約束やサークルでの話し合いなど予定をいくつかキャンセルしつつ、5Sのメンバーたちにもメッセージを送る。以前からの知り合いやサークルなど交遊が広い黒沢が、最近一番長い時間を共にしているメンバーが5Sであり、程度の差はあれ自分のやりたい事に共感し協力してくれる彼らと過ごす時間が黒沢にとって一番心地よかったから、例え会う予定がなくても何も伝えないのは不義理に思えたからだ。
「今日は少し熱があるみたいだから、家にいる。急ぎの用があったら直接電話か、DMを送ってくれ。メールはすぐに返事が出来ないと思う」
グループトークにそんなメッセージを投げてからのろのろと起き上がり、念のため冷やしておいたスポーツドリンクを飲む。
スマホには主に5Sのメンバー達から「お大事に」「ゆっくりして」といった労いの言葉が届く中、山田だけはグループトークの他に黒沢個人宛にもいくつかメッセージを送っていた。
「黒沢さん大丈夫? 家に風邪薬とか常備してる?」
「もし、何もなかったら僕が買い出しに行くからすぐに言って」
「ちゃんと食事と水分とれてる? 栄養剤でも、ゼリー飲料でも必要なものがあったらすぐ言ってよね」
グループトークの場では「無理しないで」程度の反応しかしてなかったのに、随分と心配性なことだ。
黒沢は、安静にしているから心配しないよう簡単なメッセージを送ると、果物とヨーグルトで朝食を済ませ風邪薬を飲んでからベッドに潜り込んだ。
それからしばらくウトウトし、次に目を覚ました時は昼過ぎ頃だったろう。
水分をたっぷりとったのもあってか随分と寝汗をかき、身体全体がベタついているのが鬱陶しかったが熱は37.0度まで下がっている。喉のいがらっぽさや節々の痛みも消えており、これなら病院に行かずとも良さそうだ。
早く休んだのが功を奏したのだろうと考えながら軽い昼食をとった後、べたつく汗を流すためシャワーを浴びて動きやすい服に着替える。
さて、人心地ついたから少しスマホでも触って弄ろうか、それとももう少し横になっていようかと考えていた時、誰かがインターフォンを押した。こんな時間に来客など一体誰だろうか。ネット通販などは最近使っていないはずだから、誰も来ないはずなのだが。不思議に思いつつインターフォン備え付けのカメラ越しに相手を確認すれば、山田が辺りの様子を気にしながら心配げな顔をして立っている姿が映し出された。
大丈夫だと伝えたのだが、いてもたってもいられなかったのだろう。
5Sがまだその名を使ってなかった頃、動画編集の手伝いでやってきた山田をスカウトしたのが黒沢だったのだが、それから山田は黒沢を兄のように慕っており、献身的なまでに世話を焼き従順すぎる程にどんな言うことでも聞くようになっていたのだ。
その姿はさながら黒沢の忠犬だと眉崎は揶揄していたが、兄弟のいない黒沢にとって弟が出来たようで嬉しかったし、慕われているのは悪い気がしなかった。
「山田か。鍵を開けたから入っていいぞ」
黒沢がそう告げれば、すぐにドアが開き転がるように山田が駆け込んでくる。
その手にはコンビニで買ったらしい飲み物やゼリー飲料などがパンパンに詰め込まれていた。
「黒沢サン、風邪ひいたって言ってたけど、大丈夫? 熱、酷いなら僕が車出すから病院行こうか? あっ、これコンビニで……何も食べられなくなってたらいけないと思って、プリンとかゼリーとか……消化のいいってネットで書いてあったレトルトのおかゆとか、あと風邪薬と栄養剤。色々買ってきたから……」
山田は早口でまくし立てながら、いっぱいに膨らんだエコバッグから、コンビニで見るスイーツやあまり見たことのない食べ物まで様々なものを取り出す。
これだけ買ったのなら、それなりの金額を使っただろう。
5Sとしての活動で得た報酬は、メンバーに均等に渡しているのだがそれでも山田はメンバーの中では生活が苦しい方だった。というのも、山田は親の援助などほとんどない状態で大学に通い、一人暮らしをしているからだ。
学費は奨学金と、高校時代に自身がバイトで貯めたという金でまかなっているというが、アパートの家賃を支払っても生活はカツカツだと聞く。実際、5Sの活動をする前までは授業以外はほとんどバイトを入れ何とか食いつないでるような有り様で、それでも満足な食事がとれず授業中でもぐったりと突っ伏していることがしばしばあったと谷原から聞いている。
学生時代のバイトというのもおおよそ健全なものではなかったのだと、そんな噂もネット上ではたまたま見る。
それだけ苦労しているというのに、黒沢に対して金を使うのは全く躊躇がないのだから嬉しいよりも心配だ。これだけ金を使って、果たして生活できるのだろうか。
SNSの噂にあるよう、身体を撃って稼ぐような真似はしてほしくない。
この感情が、5Sのイメージに関わるからという保身からなのか、山田が他の男に抱かれ乱れている姿など許せないという独占欲なのかは黒沢自身にもわからないのだが。
「ありがとうな、山田。これだけ買ったなら結構金を使っただろう。使った分は支払おう。いくらになった?」
いくらだったとしても2,3万は支払うつもりで財布を出したのだが、山田は大げさなくらい手を振ってみせる。
「お金とかいらないから。僕が勝手に買ってきただけだし、黒沢サンがあんまりコンビニの食べ物なんて好きじゃないのも知ってるから、もし食べられなかったら捨てちゃっていいし……」
山田はいつもこうだった。
黒沢を気遣いあれこれと必要なものを準備してくれたり、世話を焼いてくれたりするのだが言葉以外の礼は一切受け取らない。
周囲から「金持ちに媚びを売って小遣い稼ぎしている」と思われたくないのだろうが、それにしてもあまりに何もさせてくれないことが、かえって黒沢には気になっていた。
「それより黒沢サン、もう動いて大丈夫なの?」
山田は上目遣いになりおずおずと問いかける。
これだけ尽くしてくれるというのに、黒沢の前ではいつも不安そうにしているのも心に引っかかっていた。苛立ちとは違うのだが……。
「あぁ、幸い早く横になって風邪薬を飲んだのからだろうな。今は微熱程度だ。元々そこまで熱も出てなかったし、明日は普通に学校にも行ける。だから心配するな」
「そっか……良かった。本当に……」
黒沢の答えを聞いて、山田は心底安心したように粋を吐くと服の袖口で目元を拭う。ひょっとして泣いているのだろうか。たかが風邪くらいで大げさだ。呆れるほど心配性だと言ってもいいだろう。
だが、こんなにも心から自分を心配し、一切の打算も忖度もなく見つめてくれた相手がこれまでどれほどいたのだろうか。親でさえ黒沢のことを利用価値の有無で推し量り、周囲の大人に忖度された判断をされ、同級生たちでさえコネ作りの一環として付き合いをするのが当たり前の環境にいたものだから、山田の真っ直ぐな好意は新鮮であり、とても尊い。
彼に何をしてやれるのだろうか。
見返りを求めずそばにいようと思う相手があまりに乏しかったからどうしていいか分からず少し考えた後、黒沢は山田の身体を抱きよせた。
「……黒沢サン」
山田はさして抵抗することなく、黒沢の胸に納まる。
あまり背丈はかわらないはずの山田は身長よりもずっと小柄で細く、少し力を入れれば簡単に壊れそうな気がした。
ずっと、こうしていてほしい。
そばにいて寄り添って自分だけを慕っていてほしい。
ずっと、自分のモノでいてほしい。
願いを込めるように額へ口づけをすれば、山田はくすぐったそうにそれを受け入れた。
「……すまん、山田」
キスをした後、どこか気恥ずかしくなる。
特別な意味などなく、ただ何も礼ができないのは気が引けると思った感謝のつもりだったが、普通だったら不意にキスをされても喜んだりはしないだろう。
「何で謝るのさ。僕、黒沢サンからキスしてもらうの、すっごく嬉しいよ。この時だけ、黒沢サンが僕のことだけ考えているんだって思えるから」
山田は笑うと、どこか甘えるように黒沢の首元へと手を伸ばしもっとキスが欲しいのだとおねだりの仕草を見せる。
今はそれほど体調が悪いわけではないのだが、あまりキスをしたら風邪が移るといけない。そう思った黒沢は唇に触れるだけのキスをして、山田の頬をそっと撫でた。
「この続きは、俺がもう少し元気になってからする。そうだな……今度二人でどこか出かけるか」
「……うん。楽しみにしてる。約束だからね」
山田は微かに笑うと、縋り付くよう抱きつく。
黒沢は彼の身体を抱きしめ返すと、少し乱れた前髪を元に戻してやるように丁寧に、大切に撫でてやるのだった。
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