インターネット字書きマンの落書き帳
カズさんはぴば!
6月13日はカズさんの誕生日だったので、カズさんの誕生日を一人で祝う荒井昭二の話を書きました。
本当に当日書いたんですけど、upする機会がなかなかなくてェ~。
ちょっと遅くなりましたがBlogにもupしておきます。
(日付をごまかして、13日にupしてるふりをしてますが、今日は6/18なんですよね)
俺がカズさんと荒井を書くのはレアリティが高いと思うので喜んでください!
俺は喜びます。
キャッキャ!
本当に当日書いたんですけど、upする機会がなかなかなくてェ~。
ちょっと遅くなりましたがBlogにもupしておきます。
(日付をごまかして、13日にupしてるふりをしてますが、今日は6/18なんですよね)
俺がカズさんと荒井を書くのはレアリティが高いと思うので喜んでください!
俺は喜びます。
キャッキャ!
『あなたに ありがとう と 伝えたい』
白桃が入れられた果物籠の脇に、荒井昭二は二つのグラスを並べ瓶に入った無色の液体を注いだ。
波打ち揺れるのは果実酒のように甘い日本酒だ。
6月13日は、ついに本当の名すら知らぬまま別れ、そして未だ荒井の胸を幾たびも打ち据える、ある男の誕生日だった。
どうやって彼の誕生日を知り得たのかは覚えていない。
彼本人の口から聞いたような気もするし、後から彼の軌跡をたどるうちに知ったような気がする。
だが、すでに知り覚えてしまった以上、その日が平凡な一日ではなくなってしまったのは確かだ。
荒井の好みはワインやブランデーなのだが、この日は日本酒で祝おう。
そう思うのは、彼と会い過ごした日々に未成年にも構わず酒を飲ます、無粋だが気のいい男たちの喧騒がいつも背景にあったからだ。
あの時飲んだ日本酒は喉に染みるほど尖った味だったが、今日は荒井好みの蕩けるように甘く果実酒のように心地よい口当たりの日本酒を注いでいる。
この方が荒井の好みだというのもあるし、痺れるほどに辛口の日本酒だとあの夏に近すぎるから強く深く思いだしてしまうのも厭だったのはあるだろう。
だが何より、あの人と過ごした幻想のような一夏は、蜜のように甘く蕩けて胸の中にまだ渦巻き消えていないのだから、あの時触れた指先と、肌と、唇と、同じように陶酔をもたらす味と色彩の酒が似合うと思ったのだ。
グラスの縁に指先で触れ、僅かに天へ掲げる。
「カズさん。誕生日、おめでとうございます」
彼はきっと、誕生日が来ることに喜びなど抱いてはいなかっただろう。
むしろ、その日を忌々しく思っていたに違いない。
一年過ぎるたび、まだこの世界にいる自分に憤り、逃れられぬ運命に落胆し、己の不甲斐なさに苦悩もしたはずだ。
そのように勝手に彼の思いを想像し決めつけてしまうことも失礼な気がしたが、彼が見せた表情は深い諦念の色が濃く、だからこそ儚くも美しく思えた。
「僕は、あなたが産まれてくれて、本当に良かったと思っていますよ」
誰もいない向こう側に声をかけ、グラスに口をつけた時
「僕は君に寄り添いもしなかった。癒やそうとも、慰めようとも、ともに歩もうともしなかった。それなのに、君は僕が産まれた事を祝福してくれるのかい?」
虚空にぼんやりと彼の姿が浮かぶ。
アルコールの見せる幻影か。ただ、自分の理想を投影しただけの虚構か。
どちらでもいいし、どちらだって同じことだ。
「えぇ、当然です。貴方は僕をズタズタに切り裂いて、こんなに深い傷を残してくれた。僕はこの傷痕を背負って、これから一生生きていけるんですから」
荒井は自然と笑顔になると、グラスの酒を呷る。
あぁ、恥の多い人生とは、何と滑稽で素晴らしいのだろう。
空になったグラスをテーブルに置き、荒井は目を細める。
果物籠に置かれた桃についた僅かな傷からは甘い匂いが立ち上り、じくじくと腐り始めていた。
白桃が入れられた果物籠の脇に、荒井昭二は二つのグラスを並べ瓶に入った無色の液体を注いだ。
波打ち揺れるのは果実酒のように甘い日本酒だ。
6月13日は、ついに本当の名すら知らぬまま別れ、そして未だ荒井の胸を幾たびも打ち据える、ある男の誕生日だった。
どうやって彼の誕生日を知り得たのかは覚えていない。
彼本人の口から聞いたような気もするし、後から彼の軌跡をたどるうちに知ったような気がする。
だが、すでに知り覚えてしまった以上、その日が平凡な一日ではなくなってしまったのは確かだ。
荒井の好みはワインやブランデーなのだが、この日は日本酒で祝おう。
そう思うのは、彼と会い過ごした日々に未成年にも構わず酒を飲ます、無粋だが気のいい男たちの喧騒がいつも背景にあったからだ。
あの時飲んだ日本酒は喉に染みるほど尖った味だったが、今日は荒井好みの蕩けるように甘く果実酒のように心地よい口当たりの日本酒を注いでいる。
この方が荒井の好みだというのもあるし、痺れるほどに辛口の日本酒だとあの夏に近すぎるから強く深く思いだしてしまうのも厭だったのはあるだろう。
だが何より、あの人と過ごした幻想のような一夏は、蜜のように甘く蕩けて胸の中にまだ渦巻き消えていないのだから、あの時触れた指先と、肌と、唇と、同じように陶酔をもたらす味と色彩の酒が似合うと思ったのだ。
グラスの縁に指先で触れ、僅かに天へ掲げる。
「カズさん。誕生日、おめでとうございます」
彼はきっと、誕生日が来ることに喜びなど抱いてはいなかっただろう。
むしろ、その日を忌々しく思っていたに違いない。
一年過ぎるたび、まだこの世界にいる自分に憤り、逃れられぬ運命に落胆し、己の不甲斐なさに苦悩もしたはずだ。
そのように勝手に彼の思いを想像し決めつけてしまうことも失礼な気がしたが、彼が見せた表情は深い諦念の色が濃く、だからこそ儚くも美しく思えた。
「僕は、あなたが産まれてくれて、本当に良かったと思っていますよ」
誰もいない向こう側に声をかけ、グラスに口をつけた時
「僕は君に寄り添いもしなかった。癒やそうとも、慰めようとも、ともに歩もうともしなかった。それなのに、君は僕が産まれた事を祝福してくれるのかい?」
虚空にぼんやりと彼の姿が浮かぶ。
アルコールの見せる幻影か。ただ、自分の理想を投影しただけの虚構か。
どちらでもいいし、どちらだって同じことだ。
「えぇ、当然です。貴方は僕をズタズタに切り裂いて、こんなに深い傷を残してくれた。僕はこの傷痕を背負って、これから一生生きていけるんですから」
荒井は自然と笑顔になると、グラスの酒を呷る。
あぁ、恥の多い人生とは、何と滑稽で素晴らしいのだろう。
空になったグラスをテーブルに置き、荒井は目を細める。
果物籠に置かれた桃についた僅かな傷からは甘い匂いが立ち上り、じくじくと腐り始めていた。
PR
COMMENT