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インターネット字書きマンの落書き帳

   
山ガスをソファーから転がり落としてしまう系のきのこさん
ソファーで寝ている山ガスをなんとかしよう!
そう思って、思いっ切り仕出かしてしまう谷原きのこを書きました。

この二人なんかキャッキャしててほしい気持ちがあるんですよね。

山ガスの役に立ちたい!
よーしきのこさん頑張るぞー!

しでかしたー!
みたいなきのこさんが出てきます。

山ガスは変な方向に落ちたり引っ張られたりします。



『何か落ちたり引っ張られたりするやつ』

 山田が動画の編集作業が無事に終わったのは、夜明け間近だったろう。予定していたより手間取ってしまったが、何とか時間前に終わらせる事ができたという安堵を抱き山田はソファーで横になる。

 少しばかりソファーで横になって身体を伸ばし、目を休めたらベッドに行くつもりだったのだが、思いの外疲れていたのかそのまま寝入ってしまった山田が次に目を覚ましたのは、ドカッという鈍い音とともにソファーから床に転がされた時だった。

 一体何があったのかサッパリ分からないまま目を開ければ、肩や背中に鈍い痛みが走る。
 寝返りをした時、うっかりソファーから落ちてしまったのだろうか。
 そう思った矢先に谷原が素っ頓狂な声が聞こえてきた。

「うわぁああぁあああ、山田くん大丈夫!? 何かものっすごい音がしたけど、生きてる? 死んでない?」

 目を開ければ、谷原らしい人物の足元が見える。
 ソファーと谷原、そして自分の距離感を見る限り、どうやら山田はソファーから落ちたのではなく谷原に落とされたようだった。

「んー……死んではいないけどさぁ、なんか背中から聞いた事のない音がした気がするんだけど。谷原サン、なんで僕のこと落としたのさ」

 肩をさすりながら、山田はゆっくり起き上がる。
 幸い落ちたのは背中から肩の方からだったので頭を打ったり首を痛める事などはなかったが、それでもソファーから落とされた痛みは残っていた。

 だが、落とした相手が谷原なのは意外だった。
 眉崎なら容赦なく頭をひっぱたいて「邪魔だ、どけ」なんて言って起こしていただろうし、それでも起きなければソファーから蹴倒して起こしていただろうからさして驚かなかっただろうが、谷原はそういった乱暴な振る舞いをするタイプではないと思っていたからだ。

 それに、山田は谷原とそれほど仲が悪いとも思っていなかった。
 友達という程は親しくないかもしれないが、5Sのメンバーで同じ歳だったし、見ている本や映画、遊んでいるゲームなど趣味も会うから話す機会も多かった。他のメンバーたちに比べて似た作業を任される事が多いから、一緒にいる時間も長い。

 それなりに信頼している相手から、まさか寝ている所を不意打ちのように転がされるなど思ってもいなかったのだ。

「ごめん! ほんとごめんね山田くん、わざとじゃないんだよ! わざとじゃ……」

 山田を転がしソファーから落としたのを気に病んでいるのか、谷原は大げさなくらいに慌てている。山田はその様子が何となくおかしくて、少し意地悪を言ってやりたくなった。

「あーあ、僕、谷原サンのことかなり信頼してたのに。まさか闇討ちで僕のこと落として転がして遊ぶような人だとは思わなかったなー。もうショックで、二度と話す気なくなっちゃったかも」

 軽い冗談のつもりだったが、谷原は真っ青になると今にも土下座しそうな勢いで山田の前に正座した。

「ホントにごめん! 山田くんがソファーで寝てるから、あー、疲れてるんだろうなーと思って、谷原サン、山田くんのことベッドまで運んであげようと思ったんだよ」
「ベッドまで? いや、僕これで男だから結構重いよ。谷原さん、僕と同じで細いし力だってそんなにないでしょ? 何でそんな無茶しようとしたの」
「だって、その……ほ、ほら。この前、山田くんが今日みたいにソファーで寝ている時にさぁ。黒沢さんが難なくベッドまで運んであげてたでしょ? あれ見た時、格好いい! 谷原サンもあんな風に山田くんを運んであげたい! なーんて……それで、今日また山田くんがソファーで寝落ちしてるじゃない? ワンチャン、谷原サンにも出来るんじゃないかーって思って、抱えようとしたら……」

 谷原の声は段々小さくなっていく。
 つまるところ、自分も黒沢みたいに振る舞ってみたかったが盛大に失敗したということだろう。

「なーんで黒沢サンの真似なんかするのさ。黒沢サン、あれでずっとスポーツ続けてるから僕らが思っている以上に体力あるんだよ。普段から滅多に運動なんかしない僕らじゃ真似できないって、ちょっと考えればわかるでしょ」
「そうだけどさぁ、でも……」

 と、そこで谷原は恥ずかしそうに視線をそらす。

「でも、ベッドまで運んでもらっている時の山田くん、すっごい嬉しそうな顔に見えたから……谷原サンも、山田くんに喜んでほしいなーって思っちゃったんだよぉ~、ホントごめんねぇ~」

 谷原はそう言って、何度も頭を下げる。

 本当に、谷原という男は軽率だと思う。
 その場の雰囲気や思いつきで行動をする時があり、そのせいで詰めが甘いところがあるし、ミスもしょっちゅうする。
 それなのに、まるっきりの悪人ではないからどこか憎めないから、怒る気も自然と失せていくのだ。

「もういいよ、谷原サン。別に大怪我しなかったんだし」
「山田くん、ありがとー! 優しいねぇ……ほんとゴメン! 今度ご飯おごるから……」

 こうして謝る谷原なのだが、後日。
 コタツで寝てしまった山田をベッドに運ぼうとして、思いっ切り首を引っ張り首から聞いた事のない音を出して怒られたのだが、それはまた別の話である。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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