インターネット字書きマンの落書き帳
風邪ひいたので山ガスに買い出しを頼む眉崎の話
特に何でもない、眉崎と山ガスが出る話です。
この二人、家庭環境が劣悪そうで、そういう部分は似ているんじゃねぇかな……。
なんてぼんやりと思いながら書きました。
お互い悪態つきつつも、何となく互いに「死んだら困るな」くらいの距離感の二人ですぞい。
ネタバレ要素があるから全部クリアしてから読んでね♥
時期的には大学時代の話だと思います。
この二人、家庭環境が劣悪そうで、そういう部分は似ているんじゃねぇかな……。
なんてぼんやりと思いながら書きました。
お互い悪態つきつつも、何となく互いに「死んだら困るな」くらいの距離感の二人ですぞい。
ネタバレ要素があるから全部クリアしてから読んでね♥
時期的には大学時代の話だと思います。
『なんか気に入らなくて厄介なやつ』
昨日の夜からどことなく体調が優れないと思っていたが、朝になって身体中が燃えるように熱く思えたから熱を測ってみれば、38度を軽く超えていた。
「あー、くそ。参ったな……」
眉崎はそう独りごちる。
普段から健康に気を付けているから風邪などひかないと高をくくっていたため常備薬らしいものは一切なかったし、当然買い置きなどもしていない。こういう時に声をかければ必ず面倒を見てくれる黒沢は、昨日ドバイに旅立ったばかりだ。
仕方なく友達に買い出しなど頼んでみるが、「家が遠いから無理」だとか「今日はそっちの方向に行かない」なんて適当な理由で断られる。
「なんだよ、何で俺を誰も見舞いに来ないんだよ。俺様に媚び売れる最大チャンスだってのに……」
悪態を零しながら、眉崎は最後の手段として山田へ連絡を入れた。
「悪い、山田。熱が出て動けないから買い出しを頼めるか?」
熱で朦朧としながらも、何とかメッセージを飛ばす。
「何で僕が? 眉崎サンは、お店のお客さんにモテモテなんだからお客さんに頼めばいいでしょ」
返事は迅速で、かつ辛辣だった。
「ばかたれ。店の子に住所なんて教えたら面倒なことになるだろうが。店の子とは付き合ってる訳じゃねーんだから無理」
これは本当だ。ホストクラブで会う女性とはあくまでホストと客という関係でしかなく、誰がいくら使ってもありがたいと思うが特別視はしたことはない。ホストというのは大概そういうものだろう。
「じゃ、他の友達に頼みなよ。僕みたいなサブカル陰キャクソオタクにお願いなんかする必要ないよね」
すぐさま返事がかえってくるが、明らかにこちらを馬鹿にしている。
サブカル陰キャクソオタクとは、5Sの活動中に段取りが悪く苛立った眉崎が山田を怒鳴りつけた時に使った言葉だ。あの時は黒沢に仲裁され笑って誤魔化していたが、案外根に持っていたのだろう。
くそ、そういう陰湿なところが嫌なんだ。
だから頼みたくないんだよこいつには。
「今日はすぐ来れそうなダチがいねーの。熱まじでヤバイ。38度ある」
「マジで? ダッサ。人望ないからだよ。眉崎さん性格キツすぎてメチャクチャ嫌われてるって自覚したほうがいいって」
山田は眉崎が弱っている所を狙い澄ましたかのように冷たい言葉を放つ。
いや、もともと山田は眉崎に対して辛辣だ。性格キツい、口が悪い、協調性がない、すぐ化けの皮が剥がれるタイプのキツネなど、日頃から言いたい放題で言い返してくるのは山田くらいのものだ。
しかも、やけに語彙力があり説得力もある。正論で堂々と反論してくるし、こちらがどれだけ大声を出しても、さしてひるむ様子も見せず従いもしない、年下のくせに生意気な奴だ。
あるいは、山田自身が他人に怒鳴られ脅される環境にいたのかもしれないが……。
「うるせぇよ。人望ねーのはお互い様だろ。テメーがぶっ倒れた時に面倒見てやるから、頼む」
「ふーん、貸しにしておいてくれるんだ。わかった。気が向いたらやってあげるから、欲しいものとか、逆に絶対食べられないものとか伝えておいて」
やりとりの記憶は、そこで途絶えている。
次に眉崎が目覚めた時、夕方になっていた。
ベッドも寝間着も汗でぐっしょり濡れているが、起きれる程度に回復した気がする。
そういえば、店に今日は出られないと連絡はしたか。
何も食べてないからせめて水分くらいとろう。
のろのろ回転する頭で冷蔵庫に入れた水を飲みスマホを確認する。
「インターフォン鳴らしても出ないから、ドアノブに全部ひっかけておいたよ。貸しにしておくから、100倍で返して」
昼頃に山田からメッセージが届いているのを見て、眉崎はドアを開けた。
言われた通り、ドアノブにレトルト食品やゼリー飲料が入ったビニールがぶら下げてある。
誰かに横取りされたらどうするつもりだ。
こんな所にひっかけておいて、日に当たって腐ったらどうする。
そう思わないこともなかったが、宅配ボックスのようなものもない眉崎の家ではこうするしかなかったんだろう。
幸いなことに中にはアイスのように溶けるものや、果物のように腐りやすいものは一切入っていない。
助かった。
そう思いながら眉崎はスマホを取り出す。
100倍返しする予定はないが、礼くらい言わないとな。
「うるせぇ、俺の方が年上なんだから尽くすのは当然だろうが。今後とももっと素直に言うことをきけよ? それが社会の常識ってのだからな。ま、今回は助かったぜ。ありがとうな」
あぁ、ありがとうと伝えるだけでいいはずなのに、山田相手にはつい悪態が先に出る。
我ながら素直じゃないと思うのだが。
「何いってんの? 友達いなくて人望のない、ないない尽くしの先輩が可哀想だから手を差し伸べてあげただけだから。慈悲深い僕に感謝するといいよ。ま、お大事にね」
山田の返事も大概だ。
何だよあいつ、素直じゃない。全然可愛くない。
そう思いながらスマホを置くと、眉崎はビニール袋からぬるくなったスポーツドリンクを取り出す。
きっと今頃山田も同じように眉崎を、素直じゃなくて可愛げのない奴だと思っていることだろう。
昨日の夜からどことなく体調が優れないと思っていたが、朝になって身体中が燃えるように熱く思えたから熱を測ってみれば、38度を軽く超えていた。
「あー、くそ。参ったな……」
眉崎はそう独りごちる。
普段から健康に気を付けているから風邪などひかないと高をくくっていたため常備薬らしいものは一切なかったし、当然買い置きなどもしていない。こういう時に声をかければ必ず面倒を見てくれる黒沢は、昨日ドバイに旅立ったばかりだ。
仕方なく友達に買い出しなど頼んでみるが、「家が遠いから無理」だとか「今日はそっちの方向に行かない」なんて適当な理由で断られる。
「なんだよ、何で俺を誰も見舞いに来ないんだよ。俺様に媚び売れる最大チャンスだってのに……」
悪態を零しながら、眉崎は最後の手段として山田へ連絡を入れた。
「悪い、山田。熱が出て動けないから買い出しを頼めるか?」
熱で朦朧としながらも、何とかメッセージを飛ばす。
「何で僕が? 眉崎サンは、お店のお客さんにモテモテなんだからお客さんに頼めばいいでしょ」
返事は迅速で、かつ辛辣だった。
「ばかたれ。店の子に住所なんて教えたら面倒なことになるだろうが。店の子とは付き合ってる訳じゃねーんだから無理」
これは本当だ。ホストクラブで会う女性とはあくまでホストと客という関係でしかなく、誰がいくら使ってもありがたいと思うが特別視はしたことはない。ホストというのは大概そういうものだろう。
「じゃ、他の友達に頼みなよ。僕みたいなサブカル陰キャクソオタクにお願いなんかする必要ないよね」
すぐさま返事がかえってくるが、明らかにこちらを馬鹿にしている。
サブカル陰キャクソオタクとは、5Sの活動中に段取りが悪く苛立った眉崎が山田を怒鳴りつけた時に使った言葉だ。あの時は黒沢に仲裁され笑って誤魔化していたが、案外根に持っていたのだろう。
くそ、そういう陰湿なところが嫌なんだ。
だから頼みたくないんだよこいつには。
「今日はすぐ来れそうなダチがいねーの。熱まじでヤバイ。38度ある」
「マジで? ダッサ。人望ないからだよ。眉崎さん性格キツすぎてメチャクチャ嫌われてるって自覚したほうがいいって」
山田は眉崎が弱っている所を狙い澄ましたかのように冷たい言葉を放つ。
いや、もともと山田は眉崎に対して辛辣だ。性格キツい、口が悪い、協調性がない、すぐ化けの皮が剥がれるタイプのキツネなど、日頃から言いたい放題で言い返してくるのは山田くらいのものだ。
しかも、やけに語彙力があり説得力もある。正論で堂々と反論してくるし、こちらがどれだけ大声を出しても、さしてひるむ様子も見せず従いもしない、年下のくせに生意気な奴だ。
あるいは、山田自身が他人に怒鳴られ脅される環境にいたのかもしれないが……。
「うるせぇよ。人望ねーのはお互い様だろ。テメーがぶっ倒れた時に面倒見てやるから、頼む」
「ふーん、貸しにしておいてくれるんだ。わかった。気が向いたらやってあげるから、欲しいものとか、逆に絶対食べられないものとか伝えておいて」
やりとりの記憶は、そこで途絶えている。
次に眉崎が目覚めた時、夕方になっていた。
ベッドも寝間着も汗でぐっしょり濡れているが、起きれる程度に回復した気がする。
そういえば、店に今日は出られないと連絡はしたか。
何も食べてないからせめて水分くらいとろう。
のろのろ回転する頭で冷蔵庫に入れた水を飲みスマホを確認する。
「インターフォン鳴らしても出ないから、ドアノブに全部ひっかけておいたよ。貸しにしておくから、100倍で返して」
昼頃に山田からメッセージが届いているのを見て、眉崎はドアを開けた。
言われた通り、ドアノブにレトルト食品やゼリー飲料が入ったビニールがぶら下げてある。
誰かに横取りされたらどうするつもりだ。
こんな所にひっかけておいて、日に当たって腐ったらどうする。
そう思わないこともなかったが、宅配ボックスのようなものもない眉崎の家ではこうするしかなかったんだろう。
幸いなことに中にはアイスのように溶けるものや、果物のように腐りやすいものは一切入っていない。
助かった。
そう思いながら眉崎はスマホを取り出す。
100倍返しする予定はないが、礼くらい言わないとな。
「うるせぇ、俺の方が年上なんだから尽くすのは当然だろうが。今後とももっと素直に言うことをきけよ? それが社会の常識ってのだからな。ま、今回は助かったぜ。ありがとうな」
あぁ、ありがとうと伝えるだけでいいはずなのに、山田相手にはつい悪態が先に出る。
我ながら素直じゃないと思うのだが。
「何いってんの? 友達いなくて人望のない、ないない尽くしの先輩が可哀想だから手を差し伸べてあげただけだから。慈悲深い僕に感謝するといいよ。ま、お大事にね」
山田の返事も大概だ。
何だよあいつ、素直じゃない。全然可愛くない。
そう思いながらスマホを置くと、眉崎はビニール袋からぬるくなったスポーツドリンクを取り出す。
きっと今頃山田も同じように眉崎を、素直じゃなくて可愛げのない奴だと思っていることだろう。
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