インターネット字書きマンの落書き帳
エイプリルフールの風間と坂上
エイプリルフール~2日目……。
……ということで!
今日もぎりぎり、エイプリルフールかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて「ボクって宇宙人なんだよ~」って言い出す風間とそれをエイプリルフールの嘘だ! と思う坂上の話を……書きました!
Twitterに放流した作品のセルフリメイクですね。
坂上くんの事ちょう可愛いと思ってる風間と、風間のこと憎からず思っている坂上くんです。
……ということで!
今日もぎりぎり、エイプリルフールかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて「ボクって宇宙人なんだよ~」って言い出す風間とそれをエイプリルフールの嘘だ! と思う坂上の話を……書きました!
Twitterに放流した作品のセルフリメイクですね。
坂上くんの事ちょう可愛いと思ってる風間と、風間のこと憎からず思っている坂上くんです。
『四月馬鹿という言葉はスンバラリアに存在しない』
うららかな春の日差しの中、愛犬ポヘの散歩をする坂上に呼びかける男がいた。
「やぁ、坂上くん。久しぶりだねぇ」
長身に爽やかな顔立ち、誰が見ても格好いいと思うルックスをした男は坂上の姿を認めるとすぐさま手を出し
「それじゃ、500円貸してくれないかい? もってるんだろう、500円」
ヘラヘラと笑いながらそう言ってのける。
誰が見ても格好いいのに、誰がみたって残念な行動が先立つのは間違いない、坂上のよく知る風間という人だった。
4月に入り今日から新学期だ。坂上は2年になり、風間はもう卒業している。
春休みは3日までだが、入学式は4月1日からだから今頃鳴神学園では去年の自分と同じよう新しい制服に身を包み緊張の面持ちで理事長の話を聞く新一年生が集まっているのだろう。
「わざわざ500円もらいにきたんですか? あげませんよ、僕はポヘの散歩中にお金もってませんから」
本当は小銭入れにジュース代くらいは入っているのだが、別に言わなくていいだろう。
それより何をしにきたのだろうか。風間が卒業してからの進路は特に聞いてはいない。進学したという噂もあるし、テレビ局に就職したなんて話もある。
どれもありそうだと思ってしまうのが、風間という男だった。
「いやぁ、実はねぇ坂上くん。ボクは宇宙人なんだよ」
風間は屈託ない笑顔をむけ、そう切り出す。
彼の言葉で坂上はすぐに今日がエイプリルフールだということを思い出した。
わざわざ嘘をつくために坂上の前へ現れたのなら、案外と暇なのだろう。
「そうなんですか……」
宇宙人といわれれば、風間は確かにそれっぽい。
日本語の文法は完璧なのに意味や用途の使い方がわかっていない所など、いかにも余所から来た人間っぽいからだ。
それに風間には謎も多い。
坂上は一年間、彼の後輩としてよく連んでいたが、家族構成がどうなっているのか、どこに住んでいるのかもとうとうわからなかったのだ。風間と付き合いが長いはずの日野や新堂も自宅までは知らないというのだから、謎に満ちているといえるだろう。
そんな雰囲気もあってか、それがエイプリルフールの嘘だとわかっていても、坂上は何故だか本当に風間が遠くに行ってしまい二度と会えないような気がしていた。
「それじゃぁ、今までありがとうね。キミとの時間は、けっこう楽しかったよ」
そうして去ろうとする風間の服を坂上は自然と掴んでいた。
「……行っちゃうんですね」
服の裾を握られた風間は、珍しく困惑した表情を見せる。まさか留められるとは思っていなかったのだろう。
「僕、風間さんにはいつもからかわれて、茶化されて、馬鹿にされて、いい事一つもなかったけど……一緒にいる時は、本当に楽しかったんですよ。風間さんは格好いいくせにケチだし、狭量だし、アニメしか見ないし、いつも僕のことシマリスかハムスターでも扱うみたいに頭をくしゃくしゃに撫でて、くそー、いつか僕も風間さんくらい背が高くなってやるー……そんな風に思ってた。それで、卒業しても時々遊びにきて、いつものように僕の頭を撫でてくれるものだと思っていたんですけど……そんな風間さんを見て、いつか絶対、もっと背を高くしてやるって……そう思う、そんな日がまだ続くんだろうって思っていたのに……」
どうせ風間の嘘だろう。それはわかっていた。
だけど4月から何処にいくかわからない風間と、本当にもう会えなくなると思ったら急に悲しくなってきたのだ。
涙がこみ上げてくる。風間の前では泣きたくない。風間がどこにいくとしても、最後なら笑顔を見せたいのに。笑顔の自分を覚えてもらいたいのに……。
「行かないでください、僕も、風間さんに茶化されるの、それほど嫌いじゃありませんでした」
すると風間は坂上の頭にぽんと手を置くと、困ったように笑う。
「まったく、仕方ないなぁ。キミはボクのことそんなに好きだったんだね」
そしてポケットからトランシーバーのようなものを取り出すと、聞いた事のない言葉で話し始めた。どこか遠い国の言葉なのだろうか、時々音域が高すぎて聞き取れないような声もする。
「よし、話を付けてきたよ坂上くん。本当は今日で宇宙に帰るつもりだったんだけど、もっと長く地球の調査をする許可をもらったから」
「えぇ!? ……じゃあ、まだ一緒にいられるんですか」
「そうだね、キミが人間の寿命を迎えるくらいまでは、一緒にいてあげるよ」
風間は笑いながら坂上の柔らかな髪をくしゃくしゃにする。
ぜんぶ、嘘だ。エイプリルフールなのだから。それがわかっていても、まだ一緒に。ずっと一緒にいられると、そう言ってくれたことが、たただた嬉しかった。
「そうだ、もし寿命を迎えたらキミをまた若い頃の姿に戻して、ボクの母星につれていくとしよう。ボクだって寂しいからね」
「えぇ……!?」
それにしても、実は本当だという事はないだろうか。
いずれ坂上は知らない宇宙で大事な家族として飼われる事になったりするのかもしれない。
やわらかな春の日差しが二人を照りつけ、坂上の足下でポヘはくるりと丸くなっていた。
うららかな春の日差しの中、愛犬ポヘの散歩をする坂上に呼びかける男がいた。
「やぁ、坂上くん。久しぶりだねぇ」
長身に爽やかな顔立ち、誰が見ても格好いいと思うルックスをした男は坂上の姿を認めるとすぐさま手を出し
「それじゃ、500円貸してくれないかい? もってるんだろう、500円」
ヘラヘラと笑いながらそう言ってのける。
誰が見ても格好いいのに、誰がみたって残念な行動が先立つのは間違いない、坂上のよく知る風間という人だった。
4月に入り今日から新学期だ。坂上は2年になり、風間はもう卒業している。
春休みは3日までだが、入学式は4月1日からだから今頃鳴神学園では去年の自分と同じよう新しい制服に身を包み緊張の面持ちで理事長の話を聞く新一年生が集まっているのだろう。
「わざわざ500円もらいにきたんですか? あげませんよ、僕はポヘの散歩中にお金もってませんから」
本当は小銭入れにジュース代くらいは入っているのだが、別に言わなくていいだろう。
それより何をしにきたのだろうか。風間が卒業してからの進路は特に聞いてはいない。進学したという噂もあるし、テレビ局に就職したなんて話もある。
どれもありそうだと思ってしまうのが、風間という男だった。
「いやぁ、実はねぇ坂上くん。ボクは宇宙人なんだよ」
風間は屈託ない笑顔をむけ、そう切り出す。
彼の言葉で坂上はすぐに今日がエイプリルフールだということを思い出した。
わざわざ嘘をつくために坂上の前へ現れたのなら、案外と暇なのだろう。
「そうなんですか……」
宇宙人といわれれば、風間は確かにそれっぽい。
日本語の文法は完璧なのに意味や用途の使い方がわかっていない所など、いかにも余所から来た人間っぽいからだ。
それに風間には謎も多い。
坂上は一年間、彼の後輩としてよく連んでいたが、家族構成がどうなっているのか、どこに住んでいるのかもとうとうわからなかったのだ。風間と付き合いが長いはずの日野や新堂も自宅までは知らないというのだから、謎に満ちているといえるだろう。
そんな雰囲気もあってか、それがエイプリルフールの嘘だとわかっていても、坂上は何故だか本当に風間が遠くに行ってしまい二度と会えないような気がしていた。
「それじゃぁ、今までありがとうね。キミとの時間は、けっこう楽しかったよ」
そうして去ろうとする風間の服を坂上は自然と掴んでいた。
「……行っちゃうんですね」
服の裾を握られた風間は、珍しく困惑した表情を見せる。まさか留められるとは思っていなかったのだろう。
「僕、風間さんにはいつもからかわれて、茶化されて、馬鹿にされて、いい事一つもなかったけど……一緒にいる時は、本当に楽しかったんですよ。風間さんは格好いいくせにケチだし、狭量だし、アニメしか見ないし、いつも僕のことシマリスかハムスターでも扱うみたいに頭をくしゃくしゃに撫でて、くそー、いつか僕も風間さんくらい背が高くなってやるー……そんな風に思ってた。それで、卒業しても時々遊びにきて、いつものように僕の頭を撫でてくれるものだと思っていたんですけど……そんな風間さんを見て、いつか絶対、もっと背を高くしてやるって……そう思う、そんな日がまだ続くんだろうって思っていたのに……」
どうせ風間の嘘だろう。それはわかっていた。
だけど4月から何処にいくかわからない風間と、本当にもう会えなくなると思ったら急に悲しくなってきたのだ。
涙がこみ上げてくる。風間の前では泣きたくない。風間がどこにいくとしても、最後なら笑顔を見せたいのに。笑顔の自分を覚えてもらいたいのに……。
「行かないでください、僕も、風間さんに茶化されるの、それほど嫌いじゃありませんでした」
すると風間は坂上の頭にぽんと手を置くと、困ったように笑う。
「まったく、仕方ないなぁ。キミはボクのことそんなに好きだったんだね」
そしてポケットからトランシーバーのようなものを取り出すと、聞いた事のない言葉で話し始めた。どこか遠い国の言葉なのだろうか、時々音域が高すぎて聞き取れないような声もする。
「よし、話を付けてきたよ坂上くん。本当は今日で宇宙に帰るつもりだったんだけど、もっと長く地球の調査をする許可をもらったから」
「えぇ!? ……じゃあ、まだ一緒にいられるんですか」
「そうだね、キミが人間の寿命を迎えるくらいまでは、一緒にいてあげるよ」
風間は笑いながら坂上の柔らかな髪をくしゃくしゃにする。
ぜんぶ、嘘だ。エイプリルフールなのだから。それがわかっていても、まだ一緒に。ずっと一緒にいられると、そう言ってくれたことが、たただた嬉しかった。
「そうだ、もし寿命を迎えたらキミをまた若い頃の姿に戻して、ボクの母星につれていくとしよう。ボクだって寂しいからね」
「えぇ……!?」
それにしても、実は本当だという事はないだろうか。
いずれ坂上は知らない宇宙で大事な家族として飼われる事になったりするのかもしれない。
やわらかな春の日差しが二人を照りつけ、坂上の足下でポヘはくるりと丸くなっていた。
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