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インターネット字書きマンの落書き帳

   
芋虫女が忘れられない星野の話(吉星/BL)
精神的に星野が圧倒的に優位に立っている、吉川×星野の話をしますね。

俺じゃなくて倉田さんが書いたんですけどォ……。
何かここに乗せもいいよ、と言われたので乗せておきます。

※実際は、Twitterで書いたネタで「折角だから導入だけでも書いておくか」と書いた導入を、せっかくだから加筆してブログに乗せたもんです。

内容は、芋虫女の世界線。
新堂に助けられたけど、芋虫女に精気を吸われたのがとんでもない快楽で、それが忘れられなくて体を持て余した星野が、吉川に「抱け」って命令するような話ですよ。

新堂が男の体に詳しいですが、抱かれたのか抱いたのかは不明です。
抱いたか抱かれたかわからないシュレディンガーの新堂。

※書いた人は新堂×荒井ユーザーなので荒井を抱いている時の感想として書いてます。
※新堂×荒井のことも好きになってくれ。


『服従』

 星野は満たされない空虚な体を持て余していた。
 煙草を吸おうが酒を飲もうが、何も感じない。

 今まで好物だったはずのものを食べても味すら感じなければ、あれほど嫌悪していた冷凍パスタを見ても何ら心がざわめくこともなかった。

 何故こんなことになってしまったのか、全ての原因はわかっている。夏に出会った化け物の仕業だ。 巨躯を揺らし無数の乳房を垂らした異形の化け物は、後に噂で聞いた話だと「芋虫女」と呼ばれるものであり、サッカー部が合宿所として使っている講堂の4番ベッドに現れる怪異として恐れられているのだという。

 以前の星野であれば、それを聞いたら激しく激怒していただろう。
 何でそんな不吉な場所を自分に宛がうんだと相手を罵り、サッカー部の連中を全員血祭りにあげていたに違いない。

 だが、今は全てがどうでもいい。
 自分が4番ベッドに生贄の如く差し出されたのだとしても、何の感情も抱かなかった。

 今の星野が感じるのは、あの化け物に舐られた快楽ばかりだった。
 腕を吸われ、散々に体を舐られながら身体中の精を吸い取られる。言葉にすると悍ましい行為でしかないはずなのに、星野の体に残ったのは満ちあふれんばかりの幸せとこの世にある快感や悦楽と言われるもの全てを全身に注がれていく喜びとして記憶されていた。

 文字通り貪られ、搾り取られて、死と破滅に向かっていたというのに、星野はそれを求めるようになっていた。 もう一度、あの化け物に貪られたい。そのせいで死んでもかまわない。そう思う程だ。

 あぁ、そうだ、元々今の自分はクソッタレの世界に生きている。

 大切に思っていたはずの存在も、自分が軽率だったばかりに全て指をすり抜けていき、今はそれを忘れるため下らない話や馬鹿な真似をして自分を誤魔化しているにすぎないのだ。
 こんな苦痛に満ちた世界に取り残され、過去の慟哭を悼み未来を喜べるほどの希望がないまま生きるなど、ただ空しいだけだ。

 それなのに、星野が生きることになったのは偶然宿舎に戻った新堂がいたからだった。
 生きることが幸運だとしたら、星野は間違い無く幸運だったろう。もしあの場に新堂がいなければ、星野は確実にこの世にいなかったか、あるいは星野の形をした別の何かにされていたのだから。

 だが、あれから何をしても、星野は満たされないでいた。
 芋虫女という化け物は、星野の全身を満たし突き抜ける程の快楽を与え、その記憶は脳裏にこびりつき一瞬たりともはなれることはなかったのだ。

 星野があの時受けた快楽を再び求めるようになったのは、もはや必然だったろう。

 化け物に貪られた快楽と同等か、あるいはそれを超える衝撃を味わうため、星野は幾人も女を抱いた。
 同じ学校の生徒だけではない。ナンパした年上の女性や、時には人妻の相手もした。星野がまだ高校生なのを知ってもなお、体を求めるような大人たちは星野に対し、ヤバいと言われる薬を試し極上の快楽を与えると約束し、星野もそれに従った。危険だと言われても心地よいと呼ばれる行為はおおむね試してきたし、背徳的と呼ばれる行いもしたこともあれば、倫理観のない扱いをされたこともある。

 それでも、星野の内にある虚(うろ)は広がるばかりで、あの時得た快楽を超えたことはついに一度もなかった。

 元より退屈な日常はただ、ぼんやりと星野の生を貪り、性を掻き立て過ぎていく。

「おい、聞いてんのか星野?」

 そんな星野をの顔を、吉川がのぞき込む。見慣れた吉川の顔を見て、星野は自分が学校にいることをようやく認識した。

 さて、一体何を話していたのだろう。星野はそれすら思い出すのが億劫になっていた。
 実際のところ、最近の星野は全てにおいてやる気などなくなっていた。学校に来ているのは、家に居場所がないというだけだ。勉強をする気も無ければ、誰かとの会話を楽しむような気持ちもない。

 それもあって、以前はよく話しかけてきた連中はすっかり星野の態度に呆れ、最近はめっきり絡まなくなっていた。 今の星野に話しかけてくるのは、この吉川くらいだろう。

「あぁ、聞いてるぜ。何だよ」

 星野は実に適当な相槌をうち、くわえたまま火もつけてない煙草を指先でいじる。
 自分はどうやら屋上にいるということ。まだ日が高く今は昼過ぎか頃だということ。周囲に誰もいないから、恐らく今は授業中なのだろうということをぼんやりと理解した。

「そっか、聞いてるんならいいんだ。それでな……」

 星野の返事をきいて、吉川はまた話を始める。

 必死だな、俺にそんなに嫌われたくないのか。
 星野はぼんやりと、そんなことを考えていた。

 吉川は見た目こそ不良っぽくしているが、実際は気弱で喧嘩にも弱いということに、星野は気付いていた。 人見知りをするのか星野以外の不良仲間はいないらしく、悪そうな連中と話をするときは必ずといっていいほど星野がそばにいた。

 星野は一人でも粗暴な連中と話すのは苦では無かったし、年上でも年下でも不良仲間は多いのだが、吉川は星野くらいしか相手にする不良はいないだろう。
 他の不良たちも何とはなしく吉川のことを、斜に構えて不良ぶっているだけで実は弱く根性もないというのを察しているのかもしれない。

 吉川は星野に見捨てられたら不良として終わる。
 本人もそれに気付いているのだろう、星野に見限られないよう、内心密かに怯えている様子がうかがえる。他の連中が星野と連むことがなくなっても吉川だけがずっと話しかけてくるのは、ひとえに星野に嫌われるのを恐れているのだろう。

 馬鹿馬鹿しい、こいつは不良なんて向いてないんだよ。
 本当は細田のように目立った連中の影に潜み、必死に勉強をしてようやく赤点を免れるくらいの学園生活が似合いなのだ。

 以前の星野は、その思いから幾度かそれとなく吉川に不良をやめるよう忠告したことがある。
 こんなことを続けても先がない。自分の将来を考えるなら、少しでも勉強するなり、技術を身につけるなりしたほうがいいのだと。

 元より不良連中というのは、家庭環境に恵まれずあぶれてしまった人間が多い。
 実際、星野ももう帰る家が無いのと同然の状態であり、だからこそ似た境遇の奴らと連み、互いの家を行き交うことで何とか生活をしていたのだ。

 吉川は違う。帰る家もあれば、愛してくれる家族もいる。
 それならば、普通の学生として地味でも堅実に勉強をしていったほうがよほどいいと、心からそう思っていた。

 しかし、今となってはもう全てがどうでもいい。
 吉川が不良としての自分の立ち位置を確保するため、必死に星野をつなぎ止めようとする姿に何ら感じることもなかった。

「しかし星野、おまえって近くで見ると綺麗な顔してるよな。髪も長ェし、女みてーだ。抱いたら女みたいにキモチイイかもな」

 そんな星野の髪に触れると、吉川はそう言いながらわざと下品に笑う。
 吉川は小心者だ。度胸もなければ気も弱い、喧嘩だってからっきしだ。人見知りもする、一人で女に声をかけることなんてできないだろう。

 不良やヤンキーと呼ばれる人間は、メンツを大事にし他人に舐められるのを極度に嫌う。当然、他人に舐められるような態度をする男は好かれない。根性がない奴と付き合おうなんて女はいないのだ。

 かといって、不良のことを好きになる普通の生徒というのは少ない。普通の生徒たちは不良の価値観を下らないものだと見下しており、関わりたがらないからだ。
 将来は進学し名門大学に行こうなどと思うような勤勉な生徒なら尚更だ。

 吉川はわざと下ネタを言うが、女を抱いた事なんて無いのは星野からすれば明らかだった。
 だから虚勢をはり、ハリボテのプライドを守るようこんな冗談を言うのだろう。
 だから星野を抱きたいなんて軽口もただの冗談でそのつもりがないのはわかっていた。

 わかってはいたのだ。だが。

「男に抱かれるのって、かなりいいみたいだぜ」

 以前、新堂がそんなことを話していたのを、星野は思い出す。

「いや、抱かれたことがあるワケじゃねぇぜ? ただ、そうだな……男に抱かれると、イき方がスゲェんだよ。何度もビクビク震えて、射精しなくてもイきまくっちまうんだ。だからよォ、お前がそんなに気持ち良くなりてぇんなら、いっそ男を試してみたほうがいいかもな」

 どうして新堂とそん話をしていたのかは覚えていない。ただ、その内容だけははっきりと覚えていた。

 男に抱かれるのは、気持ちが良いものだ。
 本当なら、試す価値はある。

 一片でもあの芋虫女が与えた快楽に届く可能性があるのなら、星野はすでに超えてはいけない境界線を何度も超えている。怖いものなどない。

「……試してみるか?」

 星野は口角を僅かにあげて笑う。

 吉川相手なら悪くないと思ったのもある。だがそれ以上に、吉川であれば自分の思い通りに動かせるという思いが強かった。

 星野は吉川に対して優位であることに気付いていたからだ。

 吉川は一人で不良でいられるような根性はない。気も弱ければ腕っ節も弱い、見た目だけ不良っぽくしているが中身はどちらかというと日陰者側の人間だ。星野が吉川を見限り離れてしまえば、不良でもいられない。だが、今さら普通の生徒に戻ることもできない、宙ぶらりんの状態で孤独になるのは目に見えている。

 今まで吉川と連んでいるのは、星野にとって吉川が面倒をかけない人間だったから、ただそれだけだ。
 星野は一匹狼になりやすい性分であり、不良は一人でいる相手を執拗に狙う傾向がある。その都度喧嘩をし相手を打ちのめすのが面倒に思えた時、吉川が話しかけてきたのが連むきっかけだった。

 二人になれば、変に絡んでくる連中は減る。吉川はルックスだけは不良っぽかったし体も大きく見えたから、風よけには丁度良かったのだ。

 星野と吉川は自然と二人で連むようになっていった。
 お互い友人のように振る舞い、傍目からは対等の関係に見えただろう。だが実際に二人の間には明確な優劣があり、圧倒的に優位なのは星野の方だ。

 星野が離れれば吉川の高校生活は完全に詰む。
 だから、星野から吉川に強く言えば決して断らないことは最初からわかっていた。

「何いってんだよ星野、冗談だって」

 吉川は笑って冗談にしようとする。
 吉川ならそうだろう、ここで軽く流して終わりにして、そうやって何でも中途半端に生きていくのだ。不良としてもパッとせず、女にも相手にされずに。

 だから星野は吉川の襟首を掴むと、強引に引き寄せ唇を重ねてやった。

 無理矢理舌を滑り込ませ、たっぷり舐ってやれば吉川は驚きながらも弱々しく舌を絡める。驚くほど稚拙で、不器用なキスだ。童貞だとは確信していたが、キスすらしたことが無かったのかもしれない。

 それでも、星野からのキスは経験の乏しい吉川の体を昂ぶらせるのに充分な効果をあげていた。

「なっ、なっ、何するんだよ星野……」

 慌てて星野から離れる吉川だが、服の上からもわかるほど股間が膨らんでいる。
 まったく、どれだけ女に縁が無いんだ。あるいは本当に、星野に対して欲情を抱いていたのだというのか。

「……俺は、本気だ」

 星野は僅かに笑うと、ぺろりと唇を舐める。
 そして吉川の腕を掴むと、耳元で囁いた。

「逃げるなよ。もし断ったら……お前とは、終わりだ」

 吉川の顔が絶望に歪む。やはりそうだ、吉川は、自分には逆らえない。

 心配するな、そんな顔をしなくても俺が良くしてやる。
 もしお前が俺を悦ばせてくれたのなら、他の女を抱くのが退屈になるくらい、お前の体を慰めてやるよ。

 星野は吉川の体を引き寄せ抱きしめると、再び唇を重ねる。
 重ねた唇から吉川の熱と、怯えるような体の震えを感じた。

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東吾
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インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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