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インターネット字書きマンの落書き帳

   
近所にすむちょっとエッチなお兄さんという概念のカズ(カズ荒)
荒井くん家の近所に住んでいる、ちょっとエッチなお兄さん、という概念のカズです。
これは、挨拶を兼ねた幻覚の説明!

カズさんの誕生日にお出ししたかったんですが……。
ちょっと遅刻してしまったので、スゴスゴとお出しします。

平和な世界線で、近所に住んでるらしいミステリアスなお兄さん、カズのことが気になっているものの、うまくアプローチできない荒井と、そんな荒井をちょっとからかうような素振りを見せるちょっとエッチなお兄さん、カズ……という概念です。

何の話をしているんですか!?
俺が読みたい話をしています!



『近所に住むミステリアスなお兄さん』

「荒井くん、これから学校かい」

 気怠さを引きずりながら朝の通学路を歩く荒井は、誰かが自分の名を呼んだのに気付いて振り返る。そこには細身の青年が小さく手を上げる姿があった。

 彼は「カズ」と呼ばれている青年だ。
 荒井の近所に住んでいるらしく、図書館や本屋などでしばしば顔を合わせるうち雑談をする程度の仲になっているのだが、どこに住んでいるのかも知らなければどんな仕事をしているのかも知らない。

 カズという名前も周囲の人がそう呼んでるのを聞き、荒井もそう呼ぶようにしただけで本名なのかもわからないといった謎多き青年でもある。
 だが、そういった謎を秘めた存在だからこそ荒井は彼に興味を抱いていた。

「カズさん。えぇ、今から学校です。正直、あまり乗り気ではないんですが……」

 学生の本分は学業である、というのは荒井も理解していた。
 だが、学校という空間に押し込めて画一的な授業を受けさせるという方針はあまり好きではなかった。
 今日の授業は、教師が既知の雑学を得意気に語って授業を停滞させる傾向があるからなおさらだ。
 その場に立ち止まり、大仰なくらいため息をつく荒井を見て、カズは並んで歩き始めた。

「それなら、サボっちゃうかい。電車に乗って映画を見に行くのもいいし、図書館で好きな本でも読んでいる方が有意義だろう」
「それもそうですが、乗り気がしないから学校に行かないでいると出席日数が足りなくなってしまいますからね」
「難儀なことだね。若い頃の苦労は買ってでもしろ、なんて言うけど、買う程価値のない苦労は無駄でしかないと思うけど」

 と、そこでカズは鞄からお茶のペットボトルを差し出す。
 くれるという事だろう。荒井は小さく頭を下げペットボトルを受け取る。不思議なことにそのお茶は驚くほど冷えていた。

「まぁ、もし今日サボるんだったら付き合ってあげるよ。誕生日だから、今日は一日、休みをとったからね」
「えぇ? 誕生日なんですか」

 カズから受け取ったお茶を一口飲み、驚きの声をあげる。
 カズにも誕生日があったのか。人間から生まれていたんだ。そんな当たり前の事さえ不思議に思わせるほど、カズという人間は謎に満ちていたのだ。

「うん、誕生日。双子座」

 いったい、幾つになったのだろう。二十代前半くらいだろうと思うが、見た目で年齢はわからない。休みをとったと言う限り、何かしら仕事をしているのだろうか。誕生日に休みをとりたい理由があったのだろうか。
 様々な疑問が渦巻く中、辛うじて出た言葉は

「それじゃぁ、何かプレゼントが必要でしょうか。僕はいま、何も持っていませんけど……」

 そんな、有り体な言葉だった。
 どうにもカズという人間は、質問を躊躇わせるところがある。どこか浮世離れした雰囲気を抱いているから、あまり本人のことを深く聞いてはいけないような気がしたし、仮に聞いても適当にはぐらかされるか黙ってやり過ごされる事が多かったからだ。
 すると、カズは荒井の頬に触れると妖しく微笑んだ。

「プレゼント、くれるのかい。荒井くん」

 そして吐息がかかる程顔を近づけ

「……だったら、君の唇を。少し、触れるだけで充分だから」

 整った顔立ちは、近づくとますます美しく作り物めいて見える。
 だが、だからこそ彼の語る言葉は蠱惑的で、荒井の心を激しく惹きつけるのだ。
 彼が求めるならこの唇に触れられてもかまわない、そう思う程に。

「ふふ、なんて。冗談さ。いいんだよ、気持ちだけで」

 カズはぱっと荒井から離れると、早いペースで歩き出す。
 行きたい所があったのだろう、見る間に距離が開きそのまま住宅街の彼方に消えてしまいそうなカズに向かって、荒井は声を張り上げた。

「まってください、カズさん。あの……お誕生日、おめでとうございます」

 その声が届いたのか、カズは一瞬ふりかえると静かに微笑む。
 そしてそのまま、陽炎のように雑踏へと消えていった。

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