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インターネット字書きマンの落書き帳

   
それはカミサマのはなし。
たまにはオリジナルの創作をしようかな……。
と思って、寓話的な話を組み立ててみました。

自分でも組み立てが粗があったなぁ……説教くさい話になっちゃったかなぁ……などと思うところもあるんですが、現状の自分でベストな状態までは引き上げて書けてるとは思います。

いかなる状態でも今の自分で出せる作品の最高を出したいよねッ……。

オリジナルだからわりと好きな書き方でやってしまいました。
多少の好き放題がやれるのはオリジナルのいいところだと思います!
と思ったけど二次創作でも好き放題やってました。そうだね! 楽しいね!

いつも楽しい俺くんです!




『他愛もないこと』

 たまには他愛もない話でもしようじゃないか。
 おおよそ現実的ではない、下らない話をな。

 ある所に、一体のロボットがいた。

 ロボットだから「いた」よりも「あった」と表現する方が正しいのかな。まぁどうでもいいか、そんなことは。

 そのロボットは見た目こそドラム缶に蛇腹のホースをつけたような、こどもの落書きかできの悪いオモチャみたいな代物だったんだが頭脳部分に時間と手間がかけられていてね。
 自立思考っていうのか。自分で考え学習し行動する、といったある意味でニンゲンのような行動が出来るように作られていたんだ。

 見た目こそオモチャだったが、そのロボットはいっぱしに会話もするし考えもする。思考らしいものをして判断をし、時に人間くさい失敗なんかもしたそうだ。
 人間並みに考えて自分の意見を語るコトができるロボットということだな。

 そんなものを作れるなんてさぞすごい奴だと思うだろう?
 だがそのロボットをつくったのはわりと普通のニンゲンだったよ。

 善人という訳でもなければ悪人でもなかったろう。
 フィクションの世界に出る天才的なロボット技術者といえば人間嫌いの偏屈な奴だったり倫理観のないマッドサイエンティストだったりするもんだが、そいつはもちろんそんな奇人変人のたぐいじゃなかった。
 人付き合いもするし極端に口下手だったり辛辣なものいいをする訳でもない。むしろそういった点ではかなり温厚で丁寧な人物と言えただろうな。

 自立思考型のロボットを作る時も、いかにしてロボットへ学習させていくのかそういった知識を惜しげも無く周囲に与えていたそうで弟子のような存在も随分といたようだ。
 指南を受けた教え子たちは親切丁重に教えてくれる上に出し惜しみなどしない方針から随分と人気もあったようだ。
 そうしてみるとなかなか立派な人物にすら思えるな。

 だが当然、人間だから完璧な存在という訳ではなかったさ。
 あるいは人間だからこそ完璧ではない部分を探して見つけられてしまうといえたかもしれないな。

 件の人物は確かにカガクの発展という意味では立派な指導者と言えただろうし人当たりも良かったから他者からみれば好人物に見えたろう。
 だが別の角度から見ればひどく傲慢な自惚れ屋だともいえたのさ。

 何故かって?
 それはそいつが自分の手で神の領域とやらに踏み込みたい、自分ならその段階へたどり着けると信じて疑わずロボット作りに励んでいたからさ。  
 思考し学習するロボットを作る理由は、そいつが神の領域に達したいという願いを叶えるための手段にすぎなかった、といってもいいだろう。
 そのために役に立ちそうな知識を人に教え、技術を分け与えたのは自分が至高の存在としてあがめられるためだった……。

 どうだい、見方によってはカガクの発展に尽力した人物ではあるが見ようによっては人間の考えられる領域を超えられると信じた高慢ちきに見えないか?

 そうして出来たのがその、見た目はドラム缶中身は人間並みに考え行動できるロボットというわけだ。
 そのロボットを作った奴は自分が人間なみの思考能力をもった存在が作れれば神の領域に到達したと思っていたんだろうな。

 実際にそれが神の領域に達したのかというのはさておいて、人間並に学習し判断するという意味ではそのロボットは目的通りの働きをしたよ。
 最初は読み書きもおぼつかなかったロボットが言語を学習し、ルールという厳密なものからマナーという曖昧なものまで察し、状況によって臨機応変な対応をする……。
 ロボット三原則なんてクソ食らえとでも言うように時には人間に対して意見することもあったというのだからたいしたものだろう。
 それを作ったニンゲンが神様になったのかはさておいて、作られたロボットは立派な成果をあげたわけだ。
 自我のようなものをもつロボットを生み出すなんて論理的にあってはならないなんて騒ぎ立てる連中が生まれる程度にはね。

 だが、件のニンゲンはそれに満足していなかった。
 思考し判断するといったロボットなら自分は作れると思っていたからさ。そこまではまだ制作者にとって想定の範囲内。制作者にとっては人並みの領域だったんだ。
 そいつは、自分の作ったものが人間を超えるには、人間よりも強きな存在でなければならないと考えていたからね。
 そしてその人物は、人間を凌駕する存在というのは人間の弱さを克服した存在だと思っていた。とりわけ人間がもつ脆弱な感性をもっと強固にすることができればより完璧な存在だと思っており、それを作れた時にはじめて自分は本当に新たな生命ともいえる存在をつくれたのだ……と。
 その是非はさておき、そいつにとってのゴールはそこだったってわけさ。

 しかし精神の強さというのが、人間を超える要素だとそいつは思ったようだがいやはや、他人からしてみれば随分と曖昧な判断だと思うよ。
 精神の強さというのは一体何なのか、明確な定義なんてないだろうから、何をしたら強い。どうすれば弱いなんてひどく曖昧な線を引いたものだ。

 ともかく、そいつは思考するロボットを作る事には成功した。
 だから次の段階へ行くために、そいつが人間を超えたのか確かめたくなったのさ。

 だからロボットにこんな質問を。いや、こんな事実を教えた。

「おまえは自分で考え、自分で行動をしている。いま、お前は自分自身の運命をすべて自分の意思で決めて選び取り存在してきたと思っているだろう。だが違うんだ、それらはすべておまえの中に書き込まれた情報にしかすぎない。おまえの考えも行動も、すべて人間がつくったものでありおまえの運命はすべて決まっているんだよ」

 うん、おおむねこういうコトを伝えたかな。
 これは神から視点で人間に語りかけているとするなら「お前は生まれた時から自分自身で考えて行動しているように思えて実は神様が全部決めた運命のレールに従っているだけなんだよ」って言われるような感覚に近いと、少なくともそいつはそう思っていたらしい。
 なるほど、確かにそう思えば不意に知らされたら絶望するかもしれないな。
 しかもそいつはご丁寧に資料を集めてロボットの思考がどのように作られたのか。そしてこれからどのような生き方……という言葉が正しいかはわからないが、どのような生活をしどのように活動停止に至るか。事細やかに説明して聞かせたんだ。

 これは人間でいうならこれから誰と恋人になるのか、結婚するのかしないのか子供がいるのか子供はどう育つのかといったのをすべて教えられるようなものだから、人によっては恐ろしいコトなんじゃないかな。
 文学作品なら苦悩にさいなまれ神に祈りそうなシーンにはなりそうだね。

 だがロボットは取り乱すコトはなかった。

「そうですか、ではその時まで精一杯活動をつづけることにします」

 おおむねそのようなコトを告げ、普段通りの生活に戻っていったのを見てそいつを作った人物は気分の昂揚をおさえられなかった程に喜んだそうだよ。
 ロボットは自分の運命を知ってもなお平然とそれを受け入れた。活動停止は人間でいえば死そのものだ。死を恐れることなく生活することを、生きるコトを選んだ。
それは人間よりも遙かに強固な意志であり精神であると……ンまぁ、そいつはそう思ったようだね。

 実際のところどう思う?
 こちらの印象では色々とアラがあるように見えるよな。 死を恐れないコトがどうして人間の超越だと思ったのかとか、精神が強い存在を作れるのが神の領域なのかとか、思考できるロボットとはいえ死の恐怖というのを意図的に組み込んでおかなければそれを正しく理解しないのではないかとかな。
 ほら、もうあげたらきりがないくらい偏った考えだろう。
 でも作った当人はそれがそれを超越だって信じてるんだからそこは仕方ないと思うしかないよな。 誰が何を考えてどのように行動するかなんて、それが正しいか間違っているか。他人に害を与えるか与えないか。そういった物事の是非はあれどその考えを変える事は不可能といってもいいだろうからな。

 ともかく、制作者は満足だったようだ。
 学習し、思考するロボットが死を恐れずになお生活を続けるといった姿こそが制作者の思う強い存在であり、人間を超越した段階であり、それを作り出した自分は神の領域にも立ち入れた。
 そのような自尊心と優越感とを抱き幸福と昂揚の境界線も曖昧にそいつは眠りについた。今までの苦労は無駄ではなかったとか、自分なりの満足感を抱いてな。

 だがすぐ翌日に絶望することになる。

 何故かって?
 そのロボットが壊れてしまったからだ。

 原因はよくわからなかった。
 翌日ロボットの様子を確認した時は壊れていたんだからな。

 高いところから落ちて粉々に砕けていたんだ。
 なんでそのロボットが高い場所に上ったのかはわからない。 高いところで何か見つけたそれを取りに行ったのかあるいは好奇心を抱いたからだろうか。 あるいは制作者から事実を告げられた後、よく考えこれ以上の活動は無意味だと自ら壊れるような行動に走ったのか……。

 憶測はできたよ。だが真実はわからなかった。
 そういったコトを知ろうにも肝心の頭脳にあたる部分が壊れていたんだからだめだったんだ。
 いくらカガクが進歩したとしても、記憶を保存する部分が物理的にぶち壊れてしまったらそれを読み解くコトができなかったみたいだな。
 最も、人間並に考えるロボットのデータが仮に残っていたとして、そこに抱いている情報を正しく読み取れていたかはわからないけどな。
 ほら、死体の脳みそを取り出してあれこれ調べてもその脳みそが実際に何を考えてどのような気持ちを抱いていたかはわからないだろう。それと大差ないはなしだよ。

 そいつは、ひどく落胆した。

 落胆した理由はいくつかある。その一つはロボットの活動停止理由が事故だったのか事件だったのかとうとうわからなかったからだ。
 ロボットの思考データはすべて消えてしまったし、ロボットがその場所に行ったということを知っている人間すらいなかった。 後に生かせるデータを何一つ残さないで、ロボットは壊れてしまったのだからね。

 だけど何よりそいつが落胆した……というより、自分が神の領域に行くに至らない凡才だと。ただの人間にすぎないと痛感したのはロボットがその日にいともたやすく壊れてしまったという事実だ。

 先にも少し語ったが、技術者はロボットがあと何年稼働するかというコトと、これからどのような学習をしていくかをおおよそ予想していたんだ。
 稼働年数はもともとの寿命だ。ロボットというのはパーツが型落ちしたり部品の破損などで長くても10年は稼働してない。 ロボットよりもっと単純なつくりをした家電だって10年以上使っていればそろそろ取り替え時だろう?
 このロボットも残り稼働時間はあと2年ほどの予定だった。
 そしてその2年でロボットが興味をもつ学習傾向を把握していたそいつは、おおよそどのような学習をしどのような研究に価値を見いだすかも想定していた。
 いわば運命を予測していたんだ。
 神が人間の運命を決めているように、そいつもロボットの運命を決める事で神サマのまねごとをしたつもりだったんだろうな。

 だが結果は見ての通り、己の作ったロボットを制御することはできなかった。

 何も残せなかった無力さ。自分は運命を作る側じゃないというコトを改めて突きつけられたような現実感。そういうのを見せつけられたとでもいうのか、思い知ったとでもいうのか、自分がいかに思い上がっていたのか身にしみて感じたようだよ。

 もっとも、そんな事にいまさら気付いたのかと外野からすれば思うことだが、自分の世界に入れ込んでしまうというのはそのように考えを狭めてしまうのかもしれないな。
 あるいはそのように考えを狭め尖らせたからこそ、常人では行き着く事が難しいほどの領域に立ち入れたのかもしれないがね。

 さぁ、そのニンゲンのことをどう思う?

 自分がニンゲン以上のものになれると思っておごっていた点では確かに愚かに思えるだろう。
 だがカガクの躍進に一役買ったのも確かだからその側面では輝ける存在ともいえる。

 そういった生き方を無駄だと思うかい?
 徒労だと思うかい?

 さて、お喋りはこのくらいにしておこうか。「ハカセ」さま。
 今日は偉大なる思考と学習するロボットを作り上げた日なんだろう。
 盛大なセレモニーになる、せいぜい胸を張って歩むといいさ。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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