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インターネット字書きマンの落書き帳

   
親友よりも深く、他人よりも浅い関係
これは「告白」「恐怖」「チョコレート」というネタを絡めたのべぷらの企画用に書いたんですが、企画の期限までに手直しできなかったのでここに置いておく系の話です。

元気が! ない!
でも! 何かは書いてる!

淡々と、一人の男が語る自分と腐れ縁である相手の秘密です。
創作はたまに書くと……楽しいけど、趣味の偏りを感じちゃうねッ!




『親友よりも深く絡みつき、だが他人よりも希薄な存在』

 ただいま。連絡もなく遅くなって悪かったな。
 予定外の仕事が入ってしまってどうしても抜けられなかったんだ。
 実の事を言うとまだその仕事も終ったワケではない。ただ一段落ついたから、一端戻って来ただけで着替えたらまた出なきゃいけないのさ。
 まったく、忙しいものだ……最も忙しさに見合った給料を貰っているのだからこっちも手を抜くワケにはいかないがな。

 いや、心配する事の程じゃない。
 予定外の仕事なんてよくある事だ、すぐに片付けてくる。俺もあまり長々と時間をかけてやりたくないし、出来れば早く片付けてゆっくりと休みたいと思っているからな。
 幸い、いつもの奴が手伝ってくれるから今回もすぐに片付くだろうさ。

 あぁ……何だもう食べていたのか。
 良く見つけたな、まだ貰った紙袋から出してもいなかったと思うんだが。

 ……そうか、高級チョコレートの紙袋だったからすぐに分ったのか。
 確かに俺がこんなものをもってくるのは珍しいし、良い店の菓子は紙袋も凝っているから目立つものな。
 ましてや2月はショコラトリーにとって最大のイベントだ。
 味は勿論、パッケージも豪奢に拘っていて見栄えもいいから目立つのも当然か。
 それは別に俺が買ったものじゃない。もらい物だ、今話した「予定外の仕事」をぶち込んできた奴で、よく仕事を手伝ってくれるあいつからのな。

 考えてみればアイツがそれを渡したタイミングも随分と都合のいい頃合いだったな。
 いずれ今日のような想定外の仕事をねじ込んでくるつもりでそんな上等な菓子をよこしたのかもしれん。如何せん、打算的な奴だからな。どうももらい物は素直に喜べなくなってきているんだ。

 あぁ、何も言わずに食べた事は気にしないでくれ。俺が甘い物をあまり食べないのは知ってるだろう?
 そのチョコレートも半ばアイツに押しつけられたようなものだし、俺の家にお前がいるのはあいつも知っているからな。元々、俺を介したお前へのプレゼントのようなものだろう……。
 いやはや、普段から世話になっている仲間だからって、律儀なもんだ。

 だが貰ったからには礼をしないといけないからな、何がいいものだか。他人の好みはわからないからお返しを考えるというのも億劫だな。
 いや、そっちが気にする事じゃないさ。 俺が貰ったものだから、俺から何か適当に渡しておく。お前に手間をかけさせつもりはないから心配するな。別に互い遠慮する間柄でもない、直接会って欲しいものでも聞くとするさ。

 さて、と。そのまま食べながらでいいから聞いてくれ。
 食事の準備も必要ない。俺もシャワーを浴びて着替えたらすぐにまた出ないといけないからな。それで、何から話そうか……。

 とりあえず、そのチョコレートをくれた奴で、今回予定外の仕事をねじ込んできた奴の話をしよう。半分は愚痴みたいになって悪いがな。お前も一度か二度、顔を合わせた事があるか。
 そうだ、年の割にやけに子供っぽく見える奴で、俺とはもう十年来の付き合いになる。
 お前には以前腐れ縁と言ったが……実際はもっと信頼のようなものが強く、深いと言えるな。だがそれでも親密というワケではないんだ。ドライな付き合いで、仕事以外で会う事は殆どないからな。
 最も俺は仕事にかける時間が長いから、それだけあいつと関わる時間が長いワケだが……それだからアイツが俺にとってに大事な存在であるのは間違いない。
 だが、恋愛感情や友情、親愛……。
 そういった人並みの気持ちを抱いているかと聞かれると、特にそういった感じはないんだ。

 実際俺はアイツが死んでも俺は泣かないと思うし、アイツも多分そうだろう。
 十年来の付き合いだというのにここまで心が動かないのは、逆に滑稽だと思うくらいにお互いの気持ちというのはどうでもいい。
 俺たちはそんな関係なんだ。

 だが、俺はアイツに憧れてるしアイツもまた俺に憧れている。
 その事実が俺たちを深く縛り付けて今でも互い離れがたい関係が続いてしまっているというワケだ。

 有り体な言い方をすれば……理解者、といった所か。
 人間が、人生の中で心の底から理解しあえる共通の何かをもつというのは奇跡的な確率で、それに出会えたらその時点で幸運だ。
 そう思える程度に、あいつとは「仕事」と「趣味」の差異はあれどお互いの腕を認め合っている関係なんだ。

 俺は仕事でこの道に入った。クライアントから依頼を受け、計画を立て、仕事をこなす。
 最初はもっと色々と考えて仕事をしていたが、最近はすっかりルーチンワークさ。
 どんな仕事もそうだろうが、慣れてしまえば飽きがくるものだ。

 アイツの方は趣味でこの道に入って、感情のまま、気が向いたら、意欲が出たら事を成すタイプだ。素人仕事のように見えるがあらゆる面でプロの俺からしても見事な仕事をする手腕は芸術的でさえある。
 ルーチンワークで飽きが来ていた俺から見てあいつの仕事は荒削りだが目が離せないような魅力があって、どうにも捨て置けなくなっていたんだ。
 あるいは俺も本当はビジネスの中だけでなく、アイツのようにもっと自由に、もっと楽しく仕事をしてみたいと思っていたのかもしれないな。
 生来、自由や独創性と無縁だからどうにもアイツのようにする事は出来ないが……。

 俺は自由で独創的なあいつの仕事を美しいと思った。
 アイツはプロとして仕事をする俺の姿に憧れを抱いた。

 だからだろうな、知り合ってからは当然のように連むようになり、今はお互い仕事上のパートナーだ。
 ……いや、今の俺にとってはただのパートナーいうよりずっと近い。俺の半身と言ってもいいくらい大きな存在になっているだろうな。

 そんな相手だというのに死んでも泣かないというのはお前は不思議に思うかもしれないな。
 だが結局のところ、俺たちのような奴はその程度の感情や感覚しか持ち合わせていないというわけだ。

 ……薄々勘付いていたんだろう?

 そう、アイツは趣味で殺すタイプの奴なんだ。
 あまり計画性のある方じゃなくてな。衝動的とでも言うか、感情的とでもいうか……心が動いた、昂ぶった、そういう時に殺す。
 殺すのが目的であり何か成すための手段ではないから、時に突然殺すんだ。そう、 今日みたいにな。
 困ったものだろう?
 今さっき、仕事が一段落したといったが諸々の準備が出来たと。まぁそういう事だ。
 だからこっちも依頼を早めに済ませる必用が出来てな。

 アイツが殺した奴を、俺が片付ける。
 俺が殺した奴は、アイツが片付ける。

 お互い暗黙の了解とでもいうのか、知らない間にそんなルールが出来ていてな。
 今回、アイツが殺したから始末をつけてくるつもりだが、それなら俺の方も溜っていた仕事を一つ片付けたいと思ってここに寄ったんだ。

 まだ聞こえてるか?

 そうだ……お前は俺の「標的」だったんだよ。
 クライアントからは今月末までと言われていたから頃合いを見計らっていたんだが、アイツが今日「殺してしまった」から、俺も片付けてしまう事にしたんだ。
 お前も少しは心当たりがある身の上だろう? そうじゃなきゃ、プロの俺に仕事が舞い込むはずがないものな。

  突然こんな告白されても驚いて声も出ないか?
 それとも、もう聞こえてないか……アイツのくれた手土産、存外に即効性のある毒のようだ。

 アイツの毒は基本的に自家製だ、もう助からないから無駄に足掻かない方がいい。楽に死ねなくなるからな。
 あぁ、だがこれ以上床が汚れても始末に困るか。
 この服もどうせ着替えるのだしな……。

 先に片付けてしまう事にするか。
 安心しろ。俺はずっとこれを生業にしてきたから無駄に苦しませるような事はない。
 標的になった理由はおおむね聞いているが、過去の己を思えば俺の手にかかるのは幸運だと思った方がいい。痛みも苦しみも極力少ないまま、安らかに死ねるんだからな。

 さて、お前は神に祈るのか? 死は救済と捉えるのか?
 それとも輪廻転生とやらを信じるか?
 最後の祈りはどうしてやるのか適切か……そんな事も知らずに過してしまったが、今になってはどうとでもいいし、どうにもならんな。

 別れの挨拶に何が適切なのかよくわからないから、俺流の挨拶をさせてもらう。

 ひとまず、ごきげんよう。
 良い夢を。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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