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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ダンテの頭をこねくりまわすヒース(リンバス二次創作)
ダンテとヒースクリフが出る話です。

マルチクラック事務所で義体バッチバチのヒースが、ダンテの頭を見て「俺もそういうの着けようかな~?」って言うだけの話ですよ。

書きながら、「ダンテの頭って触れるもんなのか?」「燃えている時計だから触れないんじゃないか」と思いましたが「義体ならそういうの大丈夫だろう」で押し通す事にしました。

二次創作、俺に都合のいい展開しかおこらない!


『マルチクラック&アナログ』

 チクタクと秒針を鳴らしながら椅子に座って書類を読むダンテの姿を、ヒースクリフは静かに眺めていた。

 今はマルチクラック事務所のフィクサーとしての姿をしているため、胸の前で両腕を組んでいる他、背中から生えた二本の腕が頭を支えている。
 マルチクラック事務所は、所属しているフィクサーが全て義体手術をしているといった変わり種の事務所なのだという。

 この世界で義体により体の欠損を補う者は多い。いや、欠損してなくとも利便性を求めて義体手術をする者も多いくらいだ。 それでも義体を誰でも受け入れているのかといえば、決してそうではない。 釘と金槌のように、義体を施術していることで不純とし排除するような集団も存在するし、そこまで過激な思想ではないにせよ、都市の大部分を見れば義体の施術をしている人間は少数派に所属するだろう。マルチクラック事務所のように集団で行動することは自衛の意味もあるように思えた。

(どうしたの、ヒース。さっきからずっと、私の方を見ているよね)

 ダンテはヒースに視線を向ける。他の人からするとただチクタクと代わり映えもなく秒針を鳴らしているようにしか聞こえないのだが、ダンテと共鳴した囚人たちだけはダンテと意思疎通が可能だった。最も、あくまで意思疎通が可能というだけで、ダンテと対等に会話するかどうかというのは別の話なのだが。

 幸いなことに、今日のヒースはまともに対話できる人格のようだった。
 ヒースは四本の手を器用に組み替えながら、ダンテの顔をのぞき込む。

「いや、お前の頭……義体だよな。時計タイプってのはうちの事務所にもいないから、珍しいと思って」
(うん、そうみたいだね)
「何だよ、そうみたいだねって。随分と他人事だな」
(実は私、気付いたらこの頭になっていたんだよね。だから、義体の施術をいつしたのか、って記憶がないんだよ。そもそも、この頭が本当に義体なのかも私にはわからないんだ)
「あぁ、そういうことか。それは囚人の俺は知ってる事なのか……まぁいいや。通りで珍しい義体だと思った。うちの事務所で頭を義体にしてる奴はいるが、口がきけなくなるようなタイプの義体は流石に珍しいからな」

 確かに、ダンテは囚人たちと意思疎通はできるが、囚人ではない相手との会話は出来ない。
 今まで出会った人々の中には、ダンテが意思をもち喋る存在だということすら気付かない人間もいただろう。

「でも、珍しいよな。時計型の義体か……格好いいじゃねぇか。俺も頭を義体にするなら、変に人間っぽいのじゃなく明らかに義体らしい形にするか。時計型の義体ってのは、何処にでもあるもんなのか?」

 ヒースクリフは四本の手でダンテの顔をあちこち触る。
 変な所を触られたら、自分でも知らない機能が出てこないかと少し心配になるが、義体に対して好意的なヒースを見るのは新鮮な気分だった。

(やめてくれよ、くすぐったい気がする……うん、でも、ヒースクリフが義体に興味を抱くのは、ちょっと面白いね。普段のヒースクリフは「チクタクうるさくて集中できない」とか「義体だから処分する」とか言って金槌を振り下ろしそうになるからね)
「おいおい、普段の俺ってそれ、他の世界の俺ってことだよな……他の世界の俺、一体どんな過酷な環境にいるんだよ……」

 ヒースクリフは驚いたように自らの顔を掻いたり、頭を掻いたりしてみせる。
 うるさいと苛立つのはセブン協会のヒースクリフだったか、いつも頭を使っていて大変な時は、小さな音でも気が散るようだ。殴りかかってくるのは釘と金槌のヒースクリフだから、ある意味では必然かもしれない。
 しかし、マルチクラック事務所のヒースクリフが自分の可能性として釘と金槌にいるというのはどういう思うだろう。

「……でも、退屈ではなさそうで羨ましい事だ。俺は、あんまり体を弄りすぎて最近、痛みと一緒に感情も抜けきったような気がしてならねぇんだよな」

 実際、マルチクラック事務所では義体により痛みを感じないまま、体が壊れて死に至るフィクサーが少なくないという。 今、目の前にいるヒースクリフも、体の7割は義体化しているそうだ。おかげで死ぬ事もないし、定期メンテナンスを欠かさなければ健康に気遣う必要もないのだという。

(私は、頭まで義体にしなくてもいいと思うけどね)

 ダンテはチクタクと秒針の音をたてながら、ヒースクリフを見た。

(だって、私みたいに記憶を失ってしまったら大変だよ。この世界の常識までぼんやりとしてしまうんだから。例えヒースクリフにとって、思い出したくないような過去が沢山あったとしてもだよ。私のように記憶を失って、自分が何者だかわからないけれども、漠然とした不安や、焦燥や、空虚さなんてヒースにまで味わってほしくはないし)

 ヒースクリフは、他の彼の人格と比べれば随分と落ち着いた様子で。あるいは随分とまえに諦念に至っていたように、ダンテの姿を見据えた。

(それに、ヒースクリフはとても良い顔をしているだろう。声だって出せるんだ、とても心地よい声だよ。それを失ってしまうのは、勿体ないと思うなぁ)
「はぁ? あんた、俺のこといい男だと思ってくれてんだ」
(あれ、自覚はないのかな? ヒースクリフは綺麗な顔立ちだと思うよ。男らしいし、意志の強い顔をしているよね。私はいま、こんな時計面で自分の素顔も思い出せないけど、ヒースクリフみたいにいい男だったら嬉しいよね。あぁ、でも今、あまり人の外見についてとやかく言うのは、失礼にあたるのかな。ごめんね、自分の顔が時計だから、やっぱり人間の顔に憧れちゃうんだよね)

 わたわたと慌てるダンテを前に、ヒースクリフは四本の腕で顔を隠す。

「べ、別にいいんだ。まぁ、そうだな……アンタがそう言うなら、まだしばらく頭や顔、喉のあたりは弄らないようにしておくさ」

 義手の指からもれた顔は、照れたように紅潮していた。

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