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インターネット字書きマンの落書き帳

   
存在しない名探偵イサンの回
存在しない名探偵イサンの回を夢想しました。
Twitterにも流しておいたんですけどね、せっかくなのでブログにも置いておきます。

特に何の事件もおこってないんだけど、イサンが事件がおこったような空気で謎解きをします。
名探偵ネタを書くと本当に、ヒースクリフが「どういうことだよ!」をしてくれるので「ミステリーでどういうことだってばよ」役の重要さがわかりますね、はい。



『風雷館の殺人』

 イサンは胸元へ手をやると、恭しく一礼する。

「これにて、すべての推論は検証されたり」

 そしてそう告げ、静かに目を閉じた。
 長い睫毛を伏せ、艶やかな黒髪は微かに揺れる。
 訥々と語られた推理は突拍子も無いように思えたが、その全てに矛盾はなく洗練された舞踊を眺めているかのように美しくさえあった。

 外は相変わらずひどい豪雨で、外には何の生物の気配もない。
 まるで世界から隔絶された館の中で、皆の視線が自然とウーティスに注がれていた。

 完璧のように見えたアリバイは全て瓦解した。あの時、犯行現場にいる事ができたのは彼女だけだというのはイサンの論証より明らかだ。
 ウーティスにもそれがわかっているのだろう。全てを認めたかのよう、静かに目を閉じている。言い訳をするつもりも、釈明をするつもりもないようだ。

 これで終わったのだ。
 長い夜も、この悪夢も。

「つまり、この女が犯人だったって事かよ」

 ヒースクリフは驚きと恐れの入り交じった目をウーティスに向ける。そして、誰もが思っていたが口には出さなかった言葉を発した。
 するとイサンは不思議そうに小首を傾げてみせる。

「否、私の推論はただ一つ。かの時、犯行現場にいる事が出来し者、ウーティスただ一人だということのみ……」

 そして乾いた靴音を響かせ、ある人物の前へと立つ。

「犯人は汝なり、そうであろう……ファウスト?」

 その刹那、雷鳴とどろき窓ガラスに激しい雨粒が打ち付ける。
 夜はまだ、始まったばかりのようだ。

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