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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ミスした襟尾のサポートをする津詰の話(パラノマ二次創作)
俺のサイト、昨日(5/12)で22周年でした!
俺が忘れてました!(挨拶)

というわけで、22年目でも変わらず二次創作を放流したいと思います。
今回はパラノマサイトの津詰徹生と襟尾純が出る話ですよ。
失敗して凹んで落ち込んでしょんぼりしている大型犬みたいな襟尾をそれとなくフォローするようなデキるおじさまの津詰の話です。

Twitterで放流していた話を加筆とか修正とかして「新作だよ!」ってツラでお出ししました。
加筆しているから新作! 加筆しているから新作!(素振り)



『苦くて沢山のコーヒー』

 どんな仕事であっても一瞬の油断が大きなミスに繋がる事はある。
 だがそれが刑事の仕事となると重大さが変わってくるものだ。
 一瞬の判断ミスで多くの市民を危険に晒す事にもなれば、その場で命が奪われる可能性すらある。そういう意味で刑事とはまさに一刻のミスすら許されない仕事とも言えるだろう。
 その日、襟尾純がした過ちもそのようなものであった。

 襟尾がその道を通ったのは偶然だった。
 普段出勤する時に通っている道が道路工事で封鎖されていたからやむを得ず遠回りをする事になったからだ。少しでも時間を短縮させるため公園を突っ切る近道をしよう、そう思い路地をはずれて公園へと入れば一人の男が目に留まる。
 一見すれば何の変哲もない姿だったろう。服装もいたって普通だ。だが周囲を伺う視線や極端に警戒するような動きは不審を拭えなかった。刑事としてのキャリアは浅くとも多くの犯罪に接し本物の犯罪者を目の当たりにしていた襟尾は男の目や行動が明らかに浮いてみえたのだ。
 男を呼び止め職務質問をしたのは当然の行為だったろうし、実際男は襟尾が警察だと告げた時明らかに目が泳いでいた。確実に何かを企んでいる、あるいはもう犯罪に手を染めているかもしれない。半ばそれを確信した時、誰か応援を呼べば良かったのだ。
 だがその時襟尾はまだ半信半疑の状態であった。相手が自分と比べ華奢だというのもあり油断していたのもあるだろう。そのまま一人で対応し、任意で手荷物検査をすれば中からはやけに刃の厚いナイフや小型の斧など刃物ばかりがぞろぞろ出る。驚いて何だと問いかけた時、相手は鞄を襟尾にぶつけると慌てて逃げていったのだ。

 歳は30代、中肉中背で短い黒髪の男だというのは覚えている。
 名前と職業はよどみなく答えていたが免許証は持ち歩いていないというので確認していなかったのも失態だったろう。今はそれが本名だったのかも定かではない。
 そもそも男は何をしようとしていたのか、それともすでに何かをしていたのかもハッキリとしていないのだ。詳しい素性がわからないまま取り逃がしてしまったのはやはり大きな失敗だったろう。
 慌てて連絡しても後の祭りであり、現在フロアでは不審者の足取りを追うための無線が飛び交っていた。
 鞄を投げたから刃物の多くは回収しているだろうが当人が隠し持っている可能性は充分にある。不審者が何者なのか、どこに逃げてどこへ行こうとしているのかその足取りを追うため所轄の刑事や警邏隊の連絡が飛び交っている。

 そんな中、襟尾は何もできず安普請の椅子に一人こしかけ項垂れていた。
 自分が失敗したのだから皆を手伝わなければいけないと思っていたが、少しでも喋ろうものなら「オマエは黙っていろ」と激しい言葉が返るだけである。
 これはミスをした人間にそのまま仕事を任せれば焦りや不安からさらに大きなミスをするという事は良くあるので立て続けに失敗するのを防ぐためであり決して襟尾を冷遇しているワケではない。むしろ慮っての事だとはよく分かっているのだが、張り詰めた空気の中肌が焼けるほど殺気立つ雰囲気で何も出来ないというのは何事に対しても前向きである襟尾でも流石に堪えるものがあった。

 襟尾も過去の経験からミスした時ほど落ち着いて静観したほうが下手に現場をかき回すよりよっぽど良いというのは心得ていたし、他の同僚が似たようなヘマをした時その火消しを手伝った事もある。当然その時は嫌な気持ちではなかったし傷心の同僚を色々励ましたこともある。
 それでも、頭ではわかっていても心がどうにも追いつかないでいた。
 自分のせいで周囲に迷惑をかけているという実感と悔悟の念が激しく胸を焦がし何も出来ない不甲斐なさと自分の甘さ、あるいは慢心に対して焦燥ばかりが募る。

 何もできない無力さと何もしてはいけないという歯がゆさを覚えながら騒がしくなるフロアを眺めていれば、襟尾の上司である津詰徹生が彼の前へ足を止める。
 ボスが一体何の用があるというのだ。励ましの言葉なら今は必要ないと思っていた。いま、尊敬する津詰から「気にするな」とか「若い時は失敗する」なんて有り体の慰めを言われたのならきっと自分はますます惨めになるのだから。
 そう思っていた襟尾に津詰は自分の財布を渡すと

「襟尾、コーヒーを買ってきてくれ。これで人数分だ、缶コーヒーでいい。頼んだぜ。差し入れくらい入れてやらねぇと、空気が熱くなりすぎるからな」

 そう告げ、襟尾の肩へ軽く手を乗せ笑って見せた。
 居たたまれない気分のまま俯くばかりだった襟尾の顔に輝きが戻る。
 自分にはまだ出来る事があるのだ。津詰は決して襟尾を見捨てたりはしないし、襟尾に下手な慰めなどをしないのだ。

「わ、わかりましたボス。俺絶対に買ってきますから。すっごいの買ってきますからね」

 そして嬉しそうに笑うと駆け足で部屋を出た。
 急ぐ必要もなければ慌てて行く必要もないとは思っていたが身体が自然と動き出したのだ。

「津詰、相変わらずテメェは甘いな。若いのは少しくらい苦ェ思いさせておくくらいが丁度いいんだぜ」

 津詰に一人の刑事が近づき、そんな声をかける。不審者を追う情報がないかあちこち連絡をつけているのだろう、火のついてない煙草をくわえながら忙しそうに電話をまわしている。その姿を横に、津詰はサングラスをずらして襟尾の去った後を見た。

「別にアイツの為って訳じゃ無ェよ。ただ俺がなぁ、いつも元気で走り回ってるアイツばっかり見てるからしょぼくれて景気悪いツラしてるアイツを見ると調子出ないってだけだ」

 その後、襟尾はあり得ない数のコーヒーを買い込んできて津詰の財布は空っぽになってしまったのだが、元気そうに走り回り笑って津詰に付き添うようになったから結果は上々というべきだろう。

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