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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ちょっと電話してるだけで嫉妬するタイプのみゆみゆ(みゆしば)
平和な世界線で普通に付き合ってる手塚×芝浦の話を……しますよ!
とはいえ、過去の再掲が多いのですが……まだ見てない人がいる! ヨシ!

今回の話は、ちょっと長電話をしていただけで手塚がメチャクチャ嫉妬してた話ですよ。
俺は! 重い男と重い男がお互い思い合う姿が……大好きッ!
みんなも好きになってくれると嬉しいな♥

舞台設定は2002~2003年くらいのイメージでかいているので、スマホじゃなくてガラケーの世界です。


『押しつぶされるように愛して』

 芝浦がソファーに腰掛けてすぐ、携帯電話が鳴る。
 手塚の家に来た時は手塚とゆっくり過ごしたいから大体の電話は無視するのだが、着信相手が大学の知り合いで、しかも相手にしないと後々しつこく無視した事を追求するタイプだった事に気付き、芝浦はしぶしぶ電話に出た。

「はいはい、芝浦だけど。あぁ……」

 電話に出た時から、少々ヒステリックな声が響く。
 同じ講義をとっている仲間たちでも有名な「かまってちゃん」だ。普段は芝浦も連んでいないのだが、まだ相手の本性を知らない時気軽にノートを貸してから粘着されている。
 勿論苦手な相手であり、あまり話したい相手ではないが相手にしないとかえって面倒だから仕方なく適度にあしらっていた。

「あぁ、わかったよ。わかってる……用件それだけ? もう切るよ。じゃぁねー」

 10分程度は話していただろうか。
 こちらが早く切り上げようとしてるのに延々と話しかけてくる相手に半ばウンザリしながら通話をオフにすれば、手塚はこちらの顔をのぞき込むように見ていた。

「誰からの電話だったんだ。随分と長かったな」

 そしてそう問いかけながら、テーブルの上にハーブティを置く。
 ほんの10分程度だと思っていたが、もっと長く話し込んでいただろうか。相手がなかなか切らせてくれなかったのが長電話になった要因だが、手塚が「随分と長電話」に感じたのなら、自分が思っていた以上に話し込んでいたのかもしれない。

「ごめんごめん。結構ウザ絡みしてくる相手でさ、なかなか切らせてくれなかったんだよねー」

 軽い調子でそう言い、置かれたハーブティを飲めば、ほのかなレモンの香りが口の中に広がる。カフェインを好まない手塚は紅茶を飲む事も少ないから、これはレモングラスだろう。やっと終えた嫌な電話の後に飲むハーブティは、いつもより身体に染み渡っていくような気がした。

「本当にそうか? ……女の声が聞こえたが」

 くつろぐ芝浦の隣に座ると、手塚は真顔でさらに問う。元々無表情で感情が読めない顔をしているが、その声は僅かな苛立ちが見える。手塚を知らない相手なら恐らく何とも思わない程度の語調ではあったが、芝浦は手塚が僅かに苛立っている事に気が付いた。

「まさか、電話の相手が女の子だからって怒ってる? 確かに今電話くれたのは女の子だけど、ちょっとメンタルが弱ってる系の子だから誰にでも長く絡んでくるだけだって……っていうかさ、俺基本的に女の子ダメなの手塚も知ってるでしょ?」
「それはそうだがな……」

 手塚は歯切れが悪そうに言葉を止めると手を組み何かを考えるような素振りを見せた。
 理解はしているが、納得はしていない……という心境だろう。

「何だよ。何か言いたい事ある? 今の電話は講義の内容を確認しただけだし、こっちは何かと絡んでくる話をさっさと切り上げて電話切ったんだけど?」
「それは分ってる。分っているんだが……」

 きちんと弁明をしているつもりだが、その話しも聞いているのかいないのか、生返事をするばかりでどうにも要領を得ない。
 苛立っているのは確かだが、手塚自身が苛立ちの理由を分ってないような気もした。
 もしそうなら、いくら説明したって納得なんて到底しないだろう。あれこれ言えば逆に疑いの目を向けられるような気もする。
 何か空気を変えないといけない。
 そう思った芝浦は悪戯っぽく笑うと手塚の膝に手を置いた。

「そんなに不満そうな顔をして、何が不満なのかなー、海之ちゃんは。ひょっとして、嫉妬? 俺に嫉妬とかしてくれてるとか?」

 雰囲気を変えるつもりで、わざと茶化したように言ったつもりだった。
 だが、手塚は存外に驚いたような顔をすると、暫くまた考えるように俯いた。
 多少は和むかと思ったが逆効果だっただろうか。だとすると、次はどうアプローチするのが正解か……考える芝浦の肩を手塚は突然掴むと、その目を真っ直ぐ見つめた。

「そうだ……そうだな、その通りだ。俺はどうやら、嫉妬をしているようだ」
「はぁっ。なに言ってんだよ手塚……」
「俺は自分が思っている以上に、嫉妬深いタチのようだ。お前が他の誰かと話しているのを見れば心変わりしたんじゃないかと不安になるし、大学の友人との付き合いを優先させあえなくなった日はそれがお前にとって必用だと分っていても、苛立っている……」
「ちょ、ちょっと手塚どうしたのさ。それ、本気で言ってる?」
「あぁ、本気だ。どうやら俺は自分でも思っている以上に、重くて面倒くさい男だったみたいだな」

 その言葉を聞いて、芝浦は黙り込む。
 手塚が本当に嫉妬しているなんて、思ってもいなかったからだ。
 というのも、手塚は普段から表情が顔に出る事がなく、話していても喜びや怒りを露骨に出す事が無かったからだ。今でこそ僅かな語調の変化で「喜んでいるんだろう」とか「怒っているんじゃないか」と何とはなしに察する事が出来るようになったが、付き合いがまだ浅かった頃は何をしていても何処か退屈そうな顔をしていると思っていた程だ。
 だから自然と手塚という男は感情に乏しく、あまり大げさに怒ったり喜んだりはしない。感情の薄い男だと勝手に思っていたものだから、まさかそ本当に芝浦に対して嫉妬の気持ちを抱いているとは夢にも思っていなかったのだ。
 芝浦が何も言わなかったからだろう。手塚はどこか申し訳なさそうな顔をすると僅かに俯いた。

「そうだよな……小さい事に嫉妬して、電話ごときに口を挟むような男は重いよな……悪かった。まさか自分がこんなにも狭量だとは思っていなかったんだ」

 手塚自身も、嫉妬をしていた自分に驚いたのだろう。そして、重く面倒くさい男だと思われて嫌われるのを恐れているのかもしれない。
 だが落ち込んで項垂れる手塚の姿を見て、嫌いになる事など出来ない。むしろそんなにまで思っていてくれたのなら、嬉しいとさえ芝浦は思っていた。

「ははっ、全然大丈夫だって。むしろ、嫉妬してくれる位俺の事好きなんだろ。だったら全然オッケー。狭量? そんな事ないだろ。あんたの世界が俺だけになるなら、それって結構嬉しい事だよね」
「いいのか? ……どうやら俺は、俺自身が思っている以上に重い男みたいだぞ」
「いいのいいの。それ言ったら俺だってかなり重いし、嫉妬深いし、相当しつこいよ? それに俺、メチャクチャ重く愛されて、縛られて動け無いくらいにされるの大歓迎だから……あんたの愛で縛って、絡め取って、押しつぶして……俺にあんたしか見えない位にしてくれよな」

 芝浦が手塚の頬に触れれば、手塚はその手をとり身体を抱き寄せる。二人はそのまま、お互いを求めるように唇を重ねた。
 互いに持つ重い鎖で互いを縛り付け、二度と離れないように。
 そんな祈りにも似た思いを抱きながら。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
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