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インターネット字書きマンの落書き帳

   
好きな人の前では甘えるのが下手になる坊ちゃん概念(みゆしば)
平和な世界で普通に付き合ってる手塚と芝浦の話です。
(挨拶と幻覚を一気に凝縮した一文)

今回は、いつものように「俺にひどい事言ったでしょ? 罰として俺の言う事聞いて~」というひどくひねくれた甘え方をするしばじゅんちゃんを、甘やかすは甘やかすけど一応は一度断ってみて反応を見て楽しむ。
そんなみゆみゆの話ですよ。

しばじゅんちゃん、「試し行為」みたいなのを頻繁にしそうだよね。
しそう。する。
はいする! 今決まりました。

二次創作はだいたい自分の幻覚!




『本心で甘えて』

「あ、今俺にひどい事したでしょ? すごーく傷ついたなー。俺ってこれで結構繊細なんだけど?」

 時々、芝浦はそのような事を言い出す事があった。
 もちろん、直前までしていた事は他愛もないじゃれあいだったり、普通の会話だったりするので芝浦にはさほどショックを受けた表情はない。
 だが、傷つく言葉の度合いは人それぞれだ。手塚が何の気なしに話した言葉が芝浦をいたく傷つけた、なんて事もあるだろう。

 それに、芝浦本人のいう通り彼は生意気でわがままな態度が目立つが実は結構繊細だ。
 まだ子供っぽく純粋すぎるようなところもある。

 父と不仲ではあるが世間の荒波から守られてきた箱入り息子といってもいいだろう。
 金持ちの御曹司という立場から常にちやほやされてきたため、厳しい言葉に慣れてないのもまた事実だった。

「だから、俺を傷つけた責任。ちゃーんととってよね? 今日はいーっぱい甘えさせてくれないといやだからねー」

 だが、その後に続く言葉はそんな「おねだり」がほとんどだった。
 つまるところ、自分にひどい事をしたという理由で甘やかしてほしいのだろう。 他人の弱みを握り、自分は上の立場で扱われたいという欲求が芝浦には常に存在していた。

 だがそれにしては、やり方が下手だと思う。
 露骨すぎるし、口調も芝居がかっていて本気で怒ってないのは見え見えだった。

 普段の芝浦は甘え上手といってもいいだろう。
 やや童顔に見える顔立ちを存分に利用して甘えた声でしなだれかかれば、大概の相手は芝浦を「かわいい」と思うだろうし、実際にほとんどの相手は上機嫌になり芝浦にいろいろ良くしてくれているそうだ。
 特に男女問わず年上には可愛がられ方が尋常ではなく、高いものでも食事でもいえば何でもおごってくれるような「おじさま」が何人もいるのだとは聞いている。(手塚がいる手前、そのような相手と深くかかわる事はないようだが)

 それほどまでに「甘え上手」を自負しているだろうに、手塚の前ではこのように露骨な甘え方をするのだから仕方がない。
 手塚には無理な技術など使わなくてよいと思っているのなら馬鹿にされたものだが、本命を前に素直に甘えられないというのならかわいいものだがさて、この場合どうだろう。

 いや、どちらにしても毎回毎回「傷ついた」やら「ひどい事された」と被害者ぶられるのも面白くない。
 そこは釘を刺しておかなければ、芝浦はどんどん調子に乗るだろう。そういう性格なのだから。

 手塚は膝に乗って得意げに告げる芝浦の鼻先に指を突き出すと、やや冷たい口調で言った。

「お前はいつもそう言うが、俺はそんなにひどい男か?」
「えっ? ……そりゃ、そうでしょ。そうやって疑うような顔するの、ひどいと思うけど」
「これでもお前だけは特別に、優しくしてやっているつもりなんだがな。そう毎日、『ひどい事をした』なんて言われるとさすがに不安になる……」
「えっ? 不安になるとか、そういう人間ぽい感情あるんだ!?」
「当たり前だろう、全く……お前こそ、そういう軽率な発言で俺にひどい事をしているとは思わないのか?」

 手塚の強い口調を前に、芝浦は困ったような表情を見せる。
 普段は素直に従って芝浦のいう通り思う存分甘えさせていたから、目論見が外れ動揺しているようにも見えた。
 相変わらず、頭が良い癖にアドリブに弱いやつだと思う。あるいは手塚の事が好きすぎて深く考えるのができないのかもしれないが。

「え、えーっと。そ、その。手塚が嫌だったら謝るから。ご、ごめん」
「いや、いやだという訳でもないんだがな。お前がわざとそうやって気を引こうとする癖があるのはわかっているつもりだ」

 だが、と唇だけでつぶやいて芝浦の身体を抱き寄せる。
 触れた時一瞬、芝浦の身体がビクリと大きく震えたのは、手塚に嫌われるのが怖いといった気持ちの表れだったろう。

「だが、いつも言われると落ち込む気持ちもわかるだろう? なぁ、淳……たまには素直に、おねだりしてみてくれないか?」
「えっ!?」
「お前はそういって俺の気を引き、思う存分甘えたい。それだけなんだろう? それなら最初から、素直にそう言ってくれないか? ひどい事してるとか、そういった駆け引きはなしでな」

 芝浦は少しうつむき考えるようなそぶりを見せるが、すぐに顔をあげると。

「……海之、おれ、あんたにいーっぱい甘えたいからっ、その……甘えさせて、くれる?」

 顔を真っ赤にしながら、懸命にそう告げる。
 その姿はあまりにも愛らしくてかわいらしい。同時に思うのだ。やはり自分の前で素直に甘えてこないのは恥ずかしさの裏返しで、好きな気持ちが強すぎて上手く言い出せないのだろうと。
 同時に、少し心配になる。
 この愛らしい姿をほかの誰かに見せたりはしていないのだろうか、と。

「あぁ、当然だ。……何でもしてやる。そのかわり、俺意外のだれにもそんな事言うな。俺以外の誰にもそんな事させないからな?」

 確かめるように囁くと芝浦の身体を引いて強く抱きしめ、いつもより熱量の多い口づけを交わす。愛しい男の恥ずかしそうな顔ほど愛らしいものはなく、その爪も髪の毛一本に至るまですべて自分のものにしたいし、誰にも譲りたくない。
 そんな強く深い執着という名の愛情で、愛しい男を縛り付けて。

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