インターネット字書きマンの落書き帳
酔った時に出るのは本性ですよ。(みゆしば)
平和な世界線で普通に付き合っている手塚と芝浦の話です。(挨拶という幻覚)
二人の関係を知ってなお、城戸くんが友人として普通に接してます。いいやつだからね!(さらに幻覚の上乗せ)
今回は、家に帰った時点ですでに酔っ払っていたしばじゅんちゃんが、普段あんまり言わないような事を人前で口走る姿を見せつつも、あんまり動揺しないみゆみゆ……みたいな話です。
基本的に優しい世界!
ただ二人が幸せな姿を祝福してもらえる、そんな世界ですよォ……。(限界オタクの顔で)
二人の関係を知ってなお、城戸くんが友人として普通に接してます。いいやつだからね!(さらに幻覚の上乗せ)
今回は、家に帰った時点ですでに酔っ払っていたしばじゅんちゃんが、普段あんまり言わないような事を人前で口走る姿を見せつつも、あんまり動揺しないみゆみゆ……みたいな話です。
基本的に優しい世界!
ただ二人が幸せな姿を祝福してもらえる、そんな世界ですよォ……。(限界オタクの顔で)
『酔った時には素直になれる』
手塚が家に帰った時、すでに芝浦はすっかり出来上がっていた。
「ふぇー……あ、海之おかっえりー。ラリホッホー! ……ふぇ」
手塚の顔を見ると芝浦は嬉しそうに笑って手を振るが、すぐに机に突っ伏してうとうとし始める。その姿を城戸は少しばつの悪そうな顔で見つめていた。
今日は城戸が家に来るのは事前に聞いていた。芝浦は城戸と何だかんだ言って仲も良く二人でいれば対戦ゲームでもしていると思ったが、まさか酒盛りで酔いつぶれているとは。
「まったく、もう骨がないみたいにグニャグニャだな。どれだけ飲んだんだ?」
「いや、ゴメン手塚。飲ませるつもりはなくて……ただ、俺が自分のために買ったコークサワーをコーラだと思って気が付いたら飲んでたんだ」
城戸は申し訳なさそうに頭を下げる。芝浦の回りにはコークサワーが3本転がっていた。
ビール1本で酔いが回る芝浦だから、サワーでも3本は許容量をオーバーしていても当然だろう。
「気にするな、気付かずに飲んだコイツも悪い……大体、酒が弱いくせにこいつは酒を飲もうとするからこうなるんだ」
手塚はそう言いながら、芝浦の身体を支えようとする。
「んー、んー……んー?」
芝浦は目を覚ます様子もなく、手塚の身体によりかかって頭はぐらぐら揺れるばかりだった。
「首の据わってない赤ん坊みたいになってるな……仕方ない、ベッドに転がしておくか……」
仕方ないといった様子で手塚は芝浦の身体を支えると少し強引に立たせる。酒が回り意識はハッキリとしてない様子だったが、それでも支えて立たせればまだ何とか立ち上がり歩けはするようだ。
「んー、海之? 海之だー……えへー、海之ー」
隣にいるのが手塚だと気付いたのだろう。芝浦は手塚の身体にすり寄ると酔ってすっかり赤くなった顔を向けて笑う。
「海之ぃ、俺さ、はじめてアンタと会った時、なんかいいなーって思うだけだったんだよ」
「そうか……おい、歩けるか?」
そう言いながら、手塚は初めて芝浦と会った時の事を思い出す。
実際、初めて会ったのはどれくらい前なんだろう。手塚が芝浦と顔を合わせたのは彼が店の客として来るようになってからだが、芝浦はそれ以前から手塚の事を知っていたのは確かだった。
占いをする以前から、ずっと手塚の様子を見ていたのが彼の口ぶりから覗えたからだ。
そんな事をするのならもっと早くに話かけてくれればと今だったら思えるのだが。
「それでさァ……海之の店、占ってもらうようになって……その時は、好きになって貰えなくてもいいから……ただ、好きでいるのは許して欲しいなって。出来れば、嫌いにならないで欲しいなァって……それくらいの気持ちで手塚の店、通ってた……」
「お前、相当酔ってるな……」
普段から芝浦は二人でいる時、頻繁に「好きだ」という事をアピールする性格ではあるが、過去の事をあれこれ話たりするタイプではないし何より人前で手塚にベッタリと甘えるタイプでもない。
酔って周囲が見えておらず、城戸が遊びに来ている事もすっかり失念しているのだろう。
「でもさァ、海之ってなんか俺に気のある素振り見せたりするでしょ? 俺、好きになって欲しいと思ってなかったのにちょっと期待しちゃったし……アンタ俺にすっごい優しいんだもん。こっちは好きになっちゃ駄目だって思ってるのに、アンタはどんどん俺の事好きにさせる……もうホントさぁ、ズルイよね。元々好きな顔の男に優しくされたらさぁ……期待しちゃうもん……」
芝浦が店の常連になった頃の話をしているのだろう。あの頃は手塚も少なからず芝浦の事を意識していた。芝浦自身は気持ちを押しとどめ隠しているように見せていたかもしれないが、有り余る程の好意は嫌でも伝わっていた。
自分に対して好意を抱いている相手の事は嫌いになれないものだ。
だが芝浦に対して親身に接していたのはただ単純な愛着や彼が上客であるといった感謝だけのものではなかったのは確かだろう。
あの頃から少なからず、手塚も彼に好意を抱いていた。だからこそ優しくなれたのだから。
「だが期待を裏切ったつもりはないがな……ほら、もういいだろう? 部屋に行くぞ」
「うん、うん……そだね。海之は……俺の事好きになってくれたから……」
おぼつかない足取りで進む芝浦を支え、手塚は寝室まで向う。その最中も、芝浦は話し続けていた。
「でもさ、でもっ……俺、思ってなかった……あの時、好きだって思ってた海之のこと。実際海之も俺の事好きになってくれた時に、飽きちゃうんじゃないかなーとか……思ってたから。俺さ、ちゃんと人の事好きになった経験ないし。手に入らないから憧れてるだけで、手に入ったらもう飽きちゃうんじゃないかなーとか心配してたんだよ。ンでもさぁ、俺、今の海之の方が前の時よりもっと好きなんだよね」
酒が入っているからか、声はいつもより幾分か大きい。当然城戸にも聞こえているだろう。手塚は城戸の姿を見れば、城戸は慌てて視線をそらした。流石に居心地が悪そうだ。
「お前なぁ……城戸が来てるんだぞ。忘れてるのか? 完全に飲み過ぎだな……どうせ今言った事も明日には忘れてるんだろうな」
「あはー、そうかもしれなーい。けどさぁ、俺がそう思ってるのはホントだからねー? ……海之のこと、今日が一番好きだって思ってる。だけど、明日はきっと今日よりずっと好きになってるって」
それは、こっちだって同じ思いだ。
酒に弱くて子供っぽくて、自分が可愛いのを知っていてそれを散々利用するくせに肝心なところで脇が甘い。手のかかる所が多いとは思うがいつでも一途にだた自分だけを見ている姿がどだだけ手塚にとって嬉しい事だったろうか。
彼の重すぎると言われ拒絶されつづけた思いの全てを受け入れて、それでもなお深く愛してくれる本当の理解者と出会えたの奇跡は、どんな幸福にも勝るというものだ。
「……わかった。明日ももっと好きになってくれ。俺も、そうするから」
「うん……へへー、海之。好きー」
照れたように笑うとすぐに眠くなったのか、俯く芝浦を何とかベッドに転がすと手塚はリビングに戻る。
「あはは……なんかゴメンな手塚。邪魔しちゃった感じで……」
「気にしないでくれ、むしろ飲んだアイツの相手は疲れただろう? 酔うと寝るかやけに甘えてくるか、極端なんだアイツは」
「ずっと寝てたから別に世話なんてしてないって。あぁ、でもなんだろうな……」
城戸は残った缶ビールを飲み干すと、穏やかな笑顔を手塚に向けた。
「……芝浦があんな風に笑うのも、手塚があんな風に優しい顔をするのも俺あんまり見た事なかったからさ。なんか、良かったなって思うんだよね」
相変わらず、城戸という男はお人好しだ。
だからこそ他人の幸せを自分の事のように喜んでくれるのだろうし、手塚のように重いばかりの男でも芝浦のようにいつも城戸を茶化して遊んでいるような男でもそれが友人であれば幸福である姿を見るのが彼にとっても幸福なのだろう。
「相変わらずお人好しだな城戸は……」
だがその人の良さを前にして、改めて自分が恋人にも友人にも恵まれた、幸せな人間なのだと思うから。
「……だが、ありがとう」
自然と素直に言葉が出る。
城戸はそんな手塚に、新しく開けたビール缶を差し出す。手塚はそれを受け取ると、城戸と二人で乾杯した。
愛しい男と良き友と同じ時間をすごせる喜びを静かに噛みしめて。
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