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インターネット字書きマンの落書き帳

   
また他人様のヒカセンを誘拐してる……!
Twitterのフォロワッサンであるやぶろさんが、7日に誕生日という事で……。
誕生日プレゼントとして「やぶろさん家のヒカセンと、エスティニアン、アイメリクの出ている小話を書いて欲しい」とリクエスト頂きましたので、不肖私めが書かせて頂きました。

「その二人が出るならオルシュファンも出したい」
という私めの希望により、オルシュファンも出ております。

エスティニアンの外見描写がチラっとあるので蒼天抜けてる人向けかな。
と思いつつも、実際の外見は見てのお楽しみ感があるので本当にこの描写が正しいかな!?
とワクワクしながら先に進めて頂ければよろしいかなと思います。

誕生日……フライングしちまったが……。
書けちゃったからまぁいいかなって。(まぁいいかなって)

やぶろさん、お誕生日おめでとうございます!
もし蒼天を抜けても……俺の事嫌いにならないでくださいね!(意味深)




「ただ一夜の夢の夜」

 タラニスが「雪の家」にやってきた時、宴はすでに始まっていた。
「どうした、相棒。遅かったじゃないか。こっちは先にやってるぞ」
 木製のカップを掲げながら、エスティニアンは笑う。
 今日はあの厚ぼったい兜を被っておらず、エレゼンらしい凜とした顔立ちと涼しげな視線をこちらに向けていた。
 長い銀髪は食事では流石に邪魔なのだろう、今は一つに縛って頭の上で束ねてある。
「すまないな。私はキミが来るまで待つように言ったんだが……」
 隣に座るアイメリクは、困ったように幼馴染みへ視線を向ける。
 きっと酒が並んで待ちきれなくなったエスティニアンに押し切られたのだろう。
 食卓に並ぶのはパンとスープ、それに僅かな肉料理とお世辞にも豪華なものではなかったが、それでも温かな食事を冷ましてしまうのは惜しい。
「俺は別に構いませんよ。食事が冷めてしまうよりはずっといい」
 タラニスは上着を脱ぐと、開いてる席につく。
 同時にすぐエスティニアンは隣に座り、空のカップに酒を注いだ。
「分ってるじゃ無いか、相棒。今日は日頃の喧騒を忘れて、ゆっくりと飲むとしよう」
 なみなみとつがれた葡萄酒を前にタラニスは思わず苦笑する。
 兄弟子(エスティニアン)はこんなにも酒を楽しむタイプだとは思ってもいなかったからだ。
 考えてみればイシュガルドに来てから心安まる日々はなく、竜詩戦争を止めるための解決策を求めて奔走する日々ばかりだった。
 使命を前に、そして宿敵ニーズヘッグを前にしていつも厳しく、そしてどこか棘のあるような物言いが多い男だと思っていたが、信頼した相手には存外無邪気な側面を見せるのかもしれない。
 あるいは、家族を喪っているが故に近しい存在を感じていたいのかもしれないが。
「おい、あんまりはしゃぐなエスティニアン。お前がそんなに絡んでいたら、タラニス殿が食事を楽しめないだろう」
 アイメリクに制されて、ようやくエスティニアンはタラニスを開放する。
 タラニスは一息つくと、食事へと手を伸ばした。
 その様子を見て、アイメリクもまたパンに手を伸ばす。きっとアイメリクはタラニスが来るまでずっと、待っていてくれたのだろう。
「キミにはイシュガルドに来て早々、この国の醜い所を多く見せてしまったのではと……そう、思う所がある。だからせめて今日この一夜の宴が、キミの良き思い出として残ると良いのだが……」
 アイメリクはパンをちぎりながら、少し寂しそうに笑う。
 きっと彼はタラニスを「巻き込んでしまった」という罪悪感が少なからずあるのだろう。
「いえ、それは……別に、そんな事は思ってませんよ。イシュガルドは俺たちを迎え入れてくれた場所ですから……」
 ここに至る道のりが苦しくなかったといえば嘘になる。
 あまりに多くを喪い、汚名を背負わされて進む道がどれだけ心細く、足に絡みつく雪がどれほど重く思えた事だろうか。
 そうして行き着いた先で与えられた新たな「使命」は過酷極まりないと言えたイシュガルド全土を股にかける大冒険だったが、それでも歩みを止めずにいられた分、悲しい事を考える時間が減ったのは有り難かった。
 きっとこの雪の中で何もせず汚名を雪ぐ機が熟すまで待っていたのだとしたら、心が折れていただろう。
「それに、先輩と……いや、相棒と一緒の旅ですからね。楽しくないはずもない」
 エスティニアンに目配せすえば、彼は嬉しそうに笑って見せる。
 その姿を見て、アイメリクも幾分か安心したのだろう。僅かに頬を綻ばせた。
「キミにそう言ってもらえるとありがたい。色々と助けて貰ってばかりだからな……」
 やはり他の国からやってきた冒険者をイシュガルドの内部事情に関わらせてしまった事に少なからず責任を感じていたのだろう。
 その真面目と誠実さを併せ持つからこそ、アイメリクの背について行こうと思う民が多いのだろうな、とタラニスは一人そう思っていた。
「アイメリクさん、今は別に……何というのかな。俺に対して悪かったとか、そういう気持ちがあるなら別に、気にしなくてもいいですから。食事にしてください、酒も全然進んでないじゃないですか」
「あっ、あぁそうだな……」
 言われて思い出したようにアイメリクは夕食を食べ始める。
 そんなアイメリクの隣に座ると、エスティニアンはアイメリクの頭をぐりぐりと撫でる。
「はは、それとも甘い物が少ないから不服か、アイメリク?」
「い、いや……そんなワケでは。エスティニアン、おい……」
「甘い物?」
 首を傾げるタラニスを前に、エスティニアンは茶化すように笑ってみせた。
「こいつ、顔に似合わずかなりの甘党なんだぜ? 紅茶にはバーチシロップを溶かして飲むし、以前なんかクリームたっぷりのケーキに大はしゃぎして、口も手もベタベタに汚してアンドゥルーに怒られたりしてるんだぜ」
「そ、それは。ムカシの話だろう……」
 アイメリクは狼狽しながらそう告げるが、側近がアンドゥルーである時点で実はそう昔の話でもないのだろう。
 だがどこか堅物で近寄りがたいと思っていたアイメリクが、ぐっと身近に感じられた。
「はは、だったら焼き菓子なんか食べますかね? ……俺の分の焼き菓子もどうぞ。俺はそんなに甘いものは食べないんで」
「い、いいのか。キミに悪いじゃないか……」
 そういいつつ、アイメリクの視線は焼き菓子に釘付けとなる。
 どうやらタラニスが思っている以上の甘党らしい。だが子供のように嬉しそうに笑っているアイメリクの姿は子供のように無邪気で、なるほど騎士団を従える長としての彼の魅力はその誠実さに加え、この純粋さもあるのだろうなと合点する。
 アイメリクの世間擦れしてない性格は、彼が理想を語るのに相応しい存在である事を示すと同時に彼なら命がけで守っていいと思わせる何かを与えていた。
「全部もっていっていいですよ、どうぞ」
 焼き菓子の入っている籠ごとアイメリクに向ければ、アイメリクは喜びと困惑が同居した顔でタラニスを見る。
 嬉しい気持ちと、悪いと思う気持ちが行き交っているのだろう。
「俺はもう一つ食べましたから、どうぞ」
 本当はまだ一つも手を付けてないのだが、ここでの嘘は優しさだろう。
 その言葉を聞くとアイメリクは「本当かい?」と聞き直した後、嬉しそうに焼き菓子を頬張るのだった。
「さ、この甘党もやっと食い始めた事だし、俺たちは酒を楽しもうか。なぁ相棒」
 エスティニアンがカップを向けたので、タラニスはそれに乾杯する。
 そうして酒を酌み交わそうとしたそn時。
「どうした、友よ! 晩餐をするというのに、どうしてこの俺を呼んでくれないのだ!?」
 雪の家、その扉が勢いよく開き、オルシュファンが転がるように飛び込んでくる。
 かと思うと、雪のついた身体のままタラニスに抱きついてきた。
「せっかくこの、雪の家にまで友が来ているというのに……寂しいじゃないか! あぁ、アイメリク様にエスティニアン殿。ご無礼をお許し下さい、ですが俺も友と一緒に酒を酌み交わしたいのです」
 さっきまで外にいたオルシュファンの身体は冷たく、上着を脱いだタラニスには少し寒い。
 それにオルシュファン配下の話では、今日は書類仕事がたまっていて一日動け無いだろうという話だったから誘うのを遠慮していたのだが、自分のために早めに仕事を切り上げてくれたのだろうか。
「いや、オルシュファンは忙しいって聞いていたから……」
「我が友のためになら忙しくても時間くらい作ろうじゃないか! ……キミはイイ友だからな。うん……相変わらずこの身体……イイ。実にイイ」
 オルシュファンの姿に、アイメリクもエスティニアンも笑って見せる。
「俺は構わないぞ。酒も食事もたんまりあるからな」
「私も良いと思う。オルシュファン殿がいてくれなければ、タラニス殿がこの地に来訪する事もなかったのだろうからな」
 勿論、タラニスにも断る理由はない。
 エスティニアンは新しいカップを取り出すとそれをオルシュファンに手渡して、タラニスがそのカップに葡萄酒を注いだ。
「それでは、我が良き友との出会いに」
「イシュガルドの平和を胸に……」
「乾杯!」
 4人は高々とカップを掲げ、乾杯の音頭を取る。
 それから陽気な笑い声と、歌と、語らいが夜通し続いたという事は、雪の家が片隅にある暖炉だけが知るのだった。 

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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