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インターネット字書きマンの落書き帳

   
シドおじとネロさンに故郷の味を振る舞う話(漆黒→暁月前の話)
シドおじとネロさンに故郷の味を振る舞う話です。
(挨拶と幻覚紹介を一気にしていくスタイル)

気持ちとしては漆黒→暁月の間くらいをイメージしているので、漆黒までクリアをしてからお読みいただければ幸いですぞい。
ゾイゾイ。

故郷が同じふたり。
すでに祖国の政策が斜陽のものとなり、傍目からするといよいよじり貧になってきた祖国に対しての感情は複雑ながら、記憶にある故郷は美しい。
そんな感慨を抱いている二人に、故郷のスープっぽいものを差し出す話なんですぞい。

故郷の料理を振る舞う料理人役で自ヒカセンが出てます。
ちょっと自ヒカセンの設定おいておきますね。

<自ヒカセン設定>

シェヴァ/ミコッテ(オス)/サンシーカー
 褐色白髪の童顔オスッテ。自称21才だが全体的に男児。
 しゃべり方が舌っ足らずで語尾にニャをつけがち、全体的にアホの子。
 百合の間に挟まらない男。

自ヒカセンは出てますが、基本的にCPの邪魔をしないタイプのヒカセンなので気にしないでいただければ幸いです。

別にシドネロイチャイチャコンテンツでもないですが。(?)
でも原作が「オッサンの百合」な二人ですから、多少なんかそういう雰囲気が出てしまっても「FF14でもそうだからな」と思っていただければ幸いです。

なお、ここに出ている料理はボルシチをイメージしてます。
暁月だとレシピに存在してると思うんですが、漆黒の段階だと素材がとれなかろうもん!
なので「ボルシチみたいな何か」です。




『郷愁と憧憬』

 その日は足下から這い寄るような寒さが忍び寄り、夕方頃からはみぞれが降り始めていた。
 アラグ文明の遺産らしい兵器をいくつか見つけてきたガーロンド社の調査員から頼まれて一日のほとんどを外で過ごしていたネロは体を震わせながら石の家へと転がり込んでくる。
 今日は石の家にシドが寄る予定だったからあらかじめモードゥナで作業をしていたのだ。

 今のネロはガーロンド社の社員という肩書きではあるがエオルゼアのあちこちでアラグ文明の痕跡やその遺産を個人的に研究している半ばフリーの冒険者のようになっていた。

 ネロは冒険者のようにお使いごとを頼まれてはいそうですかと二つ返事で引き受けるようなタイプではない。とうてい冒険者に向いている性格ではないだろう。
 だが研究をするには資金が必要だ。

 研究費が欲しいというネロの希望と、エオルゼア各地にまだ残るアラグ文明の遺産やニーム遺跡の調査などガーロンド社では人員が割けないような部分の調査を請け負うかわりに報告された調査に費用を出すという形で今のネロはガーロンド社と関わりをもっていた。

 言うなればフリーの調査員兼技術者といった所だろう。
 これは元帝国軍人であったネロの監視という意味もあるのだが、下手にどこかの国や組織に属するより旧知であるシドの元で働いている方がネロも気楽だったのかその監視付き待遇でも特に不服を申し立てる事や本格的に行方をくらますような事はないようだった。
 最もネロは「シドの部下」という立場はどうにも気に入らないようでシドのコトを会長と認めてはいない様子ではあったのだが。

「ふぅッ……石の家は暖かいなァ。外はみぞれ交じりの雨で酷ぇ寒さだったってのによ……」

 昼頃から暖炉に火を入れてすっかり温かくなった石の家へ転がり込むようにネロが飛び込んできた時、シドはカウンター席でホットワインをすすっていた。

「よぉ、やっとお出ましか。ずいぶんと遅かったな」
「お出ましかじゃ無ェだろ、ガーロンドォ……おまえが呼び出したからわざわざ来てやったんだぜ。こっちは寒空の下で仕事してやってたのに、会長サマは優雅に暖かい所でホットワインか? はっ、いいご身分だな」
「おいおい、アラグ文明の兵器らしいものがあると話したら勝手に見に行ったのはおまえさんだろ? 自分が首を突っ込んだ仕事に文句を言うなって」

 顔を合わせてすぐ言い合いになる二人を前に、シェヴァがひょっこり顔を出す。

「あー、また喧嘩してるー。ダメだよ、ここは石の家。仲間が帰ってくる場所なんだからね……あ、ネロさンもホットワイン飲む? それとももっと強いお酒がいい? それとも……」
「いや、酒はいい。暖かいホットミルクかイシュガルド風の紅茶を出してくれると嬉しいンだが、できるか?」
「いいよ。お砂糖いっぱい入れた奴ねー」

 シェヴァは大げさなくらいに首を大きく縦に振るとキッチンへ引っ込んでいった。
 しばらく急いてする事もないのだろうが帝国を打ち破った光の戦士であり竜詩戦争を終わらせた英雄であり解放者……とその偉業を讃える声が多いシェヴァだが、当人は全く英雄らしさとは無縁のどこか子供っぽいミコッテ族であり小さなお使いごとや料理などを楽しむ姿はいたって普通の少年のようにしか見えなかった。
 これで戦う時は獅子奮迅の活躍を見せるのだから人というのはわからない。実際に手合わせをした事があるネロはその身をもって強さを知っているからなおさらだ。
 その背中を見送るとネロはシドの隣に座った。

「甘党だったか? おまえ。砂糖たっぷりの紅茶を頼むタイプだとは思っていなかったな」
「いンや……そういう訳じゃないが、寒い日に散々頭使って立ちすくんでたもンでね……そうしてると、暖かくて甘いものが恋しくなるってもんだろォ?」
「ネロさンって、ガレマルド出身なんでしょ? 寒い所の人なのに、寒いの苦手なんだね」

 二人の話し声が聞こえたのか、キッチンからシェヴァの声がする。
 その言葉を聞いて、ネロは大げさなくらい肩をすくめて見せた。

「寒い土地に生まれたからって別に寒いのが好きって訳じゃ無ェよ……たまたま生まれた場所が寒かったってだけで、寒いもンは普通に寒いに決まってンだろ? 大体あの国にある家は石造りで寒さに強いようできている上、一日中ストーブ焚きっぱなしだ。こっちみたいに隙間風が入ってくる事なんて無ぇんだよ。なぁ、ガーロンドォ?」

 ネロに話をふられ、シドは黙って頷いて見せる。
 ずっと以前にガレマルドから亡命したシドだったが北方にある痩せた土地のガレマール帝国に訪れる冬の厳しさは体が覚えていた。 外に出ただけで肌が割れるように凍てつき、うっかり鉄の遊具に触れれば皮膚がくっついてしまう事さえある程の寒さが1年の半分以上を占める厳しい土地だ。
 だがどの家も室内にいれば温かかったのはシドもはっきりと覚えている。石の家は冬でも防寒対策がかなりしっかりしている方だがリムサ・ロミンサやグリダニアの住宅は木造造りなのもあって本格的な冬が来ると肌寒さが勝る。

「確かに、ガレマルドの冬は厳しいが室内は暖かかったな」
「だよなァ……窓も扉も二重にして、寒さが入らないようになっててよォ。雪深い日は一日中家にいて技術書なんてよく読んでたもんだぜ……」

 懐かしいと思う。
 二人ともすでに故郷へは容易に戻れない身であると同時に故郷の閉鎖的で排他的な政(まつりごと)が肌に合わず逃れてきた身でもある。あの窮屈な国には戻りたいとそれほど思わないのだが、雪ばかりの寂寞とした風景には郷愁を覚えるのだった。

「おまたせ~。はい、ネロさンにはあったかいイシュガルド風のミルクティー。あと、これ二人に……おなか減ってるでしょ? 食べて食べて」

 トレイをもって現れたシェヴァの手にはネロのためにいれたミルクティーの他に深めの器に注がれたスープがあった。
 やけに赤いスープの中にさいの目状に刻まれた野菜がゴロゴロと転がっているのを見て、二人は懐かしさから思わず目を細める。
 それは故郷・ガレマルドで良く食べられていた郷土料理だった。

「レシピを教えてもらったから作ってみたんだ。こっちでは手に入らない食材も結構あったから、近い味と食感のやつで代用してて本場の味とは違うとおもうけどさ。せっかくだから食べてみてよ。タタルさんが食べたら美味しいっていってたから、食べられないような味にはなってないと思うよ」

 レシピを教えてもらったと聞いて、ネロはシドが教えたのだろうと思った。
 だが本当はシェヴァがガイウスから聞いたレシピなのだがそれをネロが知るよしも無いだろう。
 出されたスープを前に二人は戸惑いながらも恐る恐る口をつけた。

 肉も野菜も丁重に下ごしらえがしてあり、やや濃い味付けが体を温める。
 故郷で食べたものより美味しく感じるのは食材が新鮮で良いものを使っている事と、料理人としては玄人はだしの腕前をもつシェヴァの手際があってのものだろう。
 酸味のやや強いスープは体の芯だけではなく心の奥底にある記憶までも揺さぶった。

「はは、田舎で食べた時より上品すぎる位だなァ、ガーロンドォ。おまえもそう思うだろ?」

 一口食べて笑うネロの顔をシェヴァは心配そうにのぞき込む。

「えっ? ほんと? ……味、違う? おいしくない?」

 不安そうになるシェヴァを前に、シドは笑って見せた。

「いや、おまえさんが心配する必要はない。むしろ美味すぎるくらいだ。俺たちが食べていたこの料理はもっと素朴で、味付けも淡泊でな」
「あぁ、正直ここまで美味しいもんじゃなかったぜ。でも作り置きができるとか言ってよォ、大量に作るもんだから、毎日みたいにこのスープを飲まされていたっけな」

 深い器にたっぷりと盛られた赤いスープが、故郷の食卓と重なる。
 テーブルに並んだライ麦のパンと赤いスープだけの食事は暖かな部屋で賑やかな会話を交わし、ストーブが青い炎を上げている光景だ。

「あの時は、美味しいとも思わなかったよなァ」
「そうだな。むしろ飽き飽きしていたくらいだった。当たり前にある料理だと思っていたが……」

 二人はスープを口に運ぶ。
 故郷ではあたりまえだった。だがエオルゼアではとんと見ない料理だ。今はエオルゼアの味にも馴染み、むしろ痩せた土地で乏しい食材しかない故郷の味付けは質素にさえ思えていたものだがそれでも郷里の味は二人の心に染み渡る。

「飽き飽きしていたはずの味が、今は懐かく思えるなんてなァ……」
「あぁ、この味はもう何十年も食べていなかったからな……」

 二人は目を細めながら、郷愁と憧憬の入り交じった笑顔を見せる。
 その姿を見て、シェヴァはやっと安心したように笑った。

「ふふー、良かった。おかわりもあるから、いっぱい食べてよ。なんかおれ、いっつも食べ物作る時いっぱい作っちゃうんだよね」

 暖かなスープが湯気をたてる中、二人は黙々とそれを頬張る。
 それは他に何もなかった一日ではあったが、二人の会話はいつもより故郷を懐かしむ話が多かったという事は語っておいてもいいだろう。

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