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インターネット字書きマンの落書き帳

   
岸辺露伴かく語りき
去年の年末ドラマ「岸辺露伴は動かない」良かったですね!
そう思って岸辺露伴を描きたくなったから、今年の書きはじめは岸辺露伴先生にします。

動かないシリーズは「原作:岸辺露伴 作画:百年生きている先生」となっている事が多いので……。
何となく「あの先生」の事について語る話です。

新年から「俺が楽しいから書きました!」テイスト満載の話を書いていこうと思います。
いつも二次創作は「俺が楽しいから書きました」という気持ち、大事にしていこうなッ!




「岸辺露伴かく語りき」

 先週の短編……?
 何だ、何をしに来たのかと思ったらそんな話か。

 あぁ、確かに『あの先生』が描いた今週の短編……『岸辺露伴は動かない』の原作はぼくが担当したものだ……とは言ってもぼくがした事といえばただぼくが体験した話を件の先生に聞かせただけで、作画だけでなくネームもあの先生が全てやっているのだからぼくが原作というよりも原案といった方が正しいかもしれないな。
 実際のところ、ぼくがあの作品に関わっている部分なんてごく僅かだ。あくまでアイディアを提供しただけだというのにわざわざ原作としてぼくの名前を出すのだから律儀なものだよ。

 ……あの先生とは知り合いなのかって?
 当然だろう?
 今は月刊誌に移ったとはいえ、あの先生とは長年同じ雑誌で連載をしていたんだ。顔見知りであっても別段不思議な事はない。
 それともキミはこの岸辺露伴に同業者の知人なんて一人もいないとでも思っていたのか?

 そうだな……あの先生と初めて会ったのは、忘年会だったかな。
 ぼくはあまり人の集まりも酒の席というのも好きじゃぁないからあんな下らない場には出たくないんだが、漫画家というのはこれで面倒な付き合いってのも多くてな。
 他のパーティを断っている立場上、年に一度くらいは顔を出しておけとせっつかれるのも面倒だから義理で顔を出しているんだ。

 その時やけに古い上、マニアックなホラー映画の話を熱心にしている男がいてね……それがあの先生だったというワケさ。
 義理で顔を出してすぐ帰るつもりでも、確かに居たという認識をされないと後々面倒だろう。だから30分ほど時間つぶしをしてから普段は帰るんだが、その映画は偶然にも最近ぼくが見た映画だったからね。
 時間つぶしに丁度良いと思って話しはじめたら、意外にも好きな作品に同じものが多くて思ったより話が弾んでな。それから何かと懇意にしているんだ。

 あの先生はぼくより長く連載している先輩だが、規則正しい生活サイクルを崩さず必ず締切り前に原稿を仕上げる事で有名なんだ。
 ぼくも怪我をした時やこの家が燃えた時なんかは流石に休載させてもらったが、そうでもない限り原稿を遅らせた事はないからそういった部分は尊敬しているよ。

 大体、漫画家が徹夜で原稿を仕上げて無理して締切りに会わせるなんてぼくからすればナンセンスだ。そんな寿命を削るようなやりかたで長く漫画家なんか続けられるもんか。
 ぼくは自分の漫画を読んで貰うために漫画を描いているんだ。長く読者にぼくの漫画を読んでもらうためには、ぼく自身が健康で長生きする必用があるだろう。
 以前怪我をして休載するハメになった時、その事はかなり身に染みて感じたからな。健康じゃないと漫画は描けない。漫画が描けなければ読んでもらえないとね。
 最もあの時はその分普段できない取材をたっぷりさせてもらったが……。

 ん、何だその顔は?
 ぼくが他人に敬意を払う事が信じられないといった風じゃないか。
 優れている作品を描いている先輩を認められないほど、この岸辺露伴を狭量な人間だとでも思っていたのか。
 失礼な奴だな。ぼくはキミのそういった所も気に入らないんだ。

 ともかく、その時話をしてからあの先生には色々よくしてもらっているよ。
 作品の好みも近いし、漫画に対するリアリティの追求や考え方もよく似ている。しかもあの先生はこの杜王町近くの出身らしい。
 そんな事もあるんだろう、あの先生はぼくに色々良くしてくれていてね。普段から世話にもなっているから、あの先生からぼくの話を漫画にしたいと言われた時別に構わないと思ったのさ。

 あぁ、何故原作に徹して作画をあの先生に任せたのかが気になるのか。
 やっぱりキミって奴は漫画ってのをやっぱり何も分っちゃいないんだな。

 簡単な事さ、ぼくが体験した話をぼく自身が描くとリアリティが損なわれるからだ。

 実体験したぼくの話は、ぼくが描くのが一番リアリティがあるはずだろう。
 そう思ったか?

 それじゃぁ聞くが、漫画というのは常に誰の目線で描かれていると思っているんだ?
 主人公? ヒロイン? ストーリーテラーたる狂言回し?

 いいや、違うね。
 漫画はいつも読者の視点で描かれている。当然だ、漫画は読者に読まれるために存在しているんだからな。

 つまり漫画にはある程度の『客観性』が必用なんだ。
 実際ぼくが体験した事をぼく自身が描くと、それは無意識に自分の主観が入ってしまう。
 そうなると漫画ってのは、えらく平坦になってしまうんだよ。

 自分の中にあるその時抱いた感情……それは恐怖であったり驚きであったり、焦燥、怒り、憤りだったりするだろう。
 それを実体験していると、漫画にその話を落とし込む時その恐怖や驚きの部分が自分のなかで肥大して、思うように原稿へ落とし込めないものなんだ。

 自分の感情が邪魔をして、読者に対する表現が大げさになりすぎたり、逆にひどく淡泊になってしまって物語の本質的な恐怖や驚き、面白さが欠落してしまうのさ。

 ぼくは漫画においてリアリティを大事にしている。
 これは『リアルにその事を知っている上でフィクションを描く事』と『リアルを知らないままでフィクションを描く事』が同じようで全く別の事だというのを知っているからだ。
 前者は作品に深みと説得力とが増す。
 リアルで『何があり得て』『何があり得ないのか』をはっきり理解している上で描いたフィクションは『その描写において必用な事』を欠かす事ない上で『フィクションとして成立させる』事が出来るからだ。

 後者の場合、ただ嘘で嘘を塗り重ねた薄っぺら作風になる。
 薄手の風呂敷の上に風呂敷を重ねていくような空しい描写は一見すると派手で斬新だったりするが、そういった目新しいだけの展開で読者の興味を惹くこともできても長続きさせるのは難しいからな。

 さっきも言ったが、ぼくはぼくの作品を読まれるためにだけ漫画を描いている。
 そしてぼくは、ぼくの漫画を長く読まれて欲しいとも思っている。

 長く読者に読まれるような作品を描く上で、上っ面をなぞるだけの話じゃぁダメなのは漫画にさして興味のないキミでもわかるだろう。
 話の中に核となる部分が存在しなければ漫画は陳腐になるし、確かな知識に裏付けされた描写がなされなければいくら派手な演出を見せても長続きせず一過性のブームが去ればすぐさま飽きられてしまう。

 ぼくはすぐに飽きられ、忘れ去られるような作品を作りたくはないと思っている。
 だからぼくが描いてもこれは面白い話にはならないと、そう思った作品をわざわざ自分で描く気にはならなかっただけだ。

 そんなぼくに対してあの先生は『その話を描いてみたい』と言ってきた。
 ぼくはあの先生だったらぼくの話を上手く作品にしてくれるだろうと思って、原作として托した……それだけの事だ。

 実際あの漫画を読んだんだろう。けっこう面白く仕上げていると思わなかったか。
 ぼくは一応は評価しているんだがな。

 ……あぁ、ヘブンズ・ドアーか。
 そうだな……ぼくはあれを「ギフト」と呼び、あの先生は自作に存在する「スタンド」と絡めてあれを「スタンド能力」と呼んでいるな。
 後ろに立つもの……今は立ち向かうものか。
 中々に面白い発想だと思わないか?
 人の顔がページになって、その人間の記憶や記録、身体に刻まれた本人さえ知り得ない情報をあの本から読み取る事が出来るとは、いかにもあの先生らしい演出だと思うよ。

 一見すると無敵の能力に見えて、『禁止されている言葉は書き込めない』だとか、『本人が間違って記憶している事がある』だとか『身体も心もまだ気付いてない事は記載されない』とか、意外と弱点がある……というのもいかにも漫画的で面白いじゃないか。

 無敵の能力ってのはそれを倒す力が存在しなくなるから、漫画に出る人物は何かしら弱点をもってなければいけない。
 その点、あの先生は流石だね。ぼくの能力を自分の世界観……スタンド使いという世界観に落とし込んだ上であのような表現ができるのはぼくはしない発想だ。
 人の顔をページにして本のように読む描写も、なかなかグロテスクで面白いだろう。ぼくはあのシーンは結構気に入ってるんだ。生きた人間が無機質になるという組み合わせはそれほど嫌いじゃないんでね。

 ぼくだって好きなものは誉めるんだよ、別にいつも他人を見下してやいない。
 それにこの位認めておかないと、岸辺露伴は他人の才能に嫉妬してケチばかりつけてる奴だと思われるのも癪だからな。

 ……あぁ、演出だあんなもの。
 本当にぼくがそんな真似できるワケがないだろう?
 人間を本のようにして他人の記憶を読み解くだなんて、そんな事が本当に出来たらぼく自身が漫画のキャラクターみたいじゃないか。

 漫画家は漫画が面白ければそれでいいんだ。
 漫画家本人が面白くてどうする。

 ぼくはよく取材に行くが、人間観察をするのが得意なんだ。
 人をじっと観察していると、何とはなしに何を考えているのか。過去に何をしてきたのか。どういう性格なのか。そういった事を推測する事が出来る。
 シャーロック・ホームズは相手を見ただけで職業を当てるのが得意だが、ぼくもそれに近い視点で相手を観察しているんだ。
 最もぼくの場合かの名探偵のように相手が何者かを当てる必用はないからな。推測というより空想の一端と言った方がいいかもしれないがね。

 それをあの先生は自身の漫画にある世界観へと落とし込んで「ヘブンズ・ドアー」というスタンドとして登場させたにすぎない。
 そう、全ては創作だよ。あの先生のな。
 いくつかの描写はやや大げさすぎるとも思っているんだが、その方が読者も喜ぶんだろう。

 ともかく、ぼくはあの漫画のように人の顔をページにして命令を描き込むような事はできないから安心するといい。
 ……何だ、むしろガッカリしたみたいだな。何か書いて欲しい命令でもあったのかい?

 全く、キミはとんだ甘ちゃんのままだな。
 もしぼくが本当にギフトを得ていたとして、このぼくがキミの都合がいいような命令なんて書込むとでも思っているのか? 馬鹿馬鹿しい。どうしてこのぼくが、この岸辺露伴がキミなんかのためにわざわざキミの喜ぶような事をしてやらないといけないんだ。何の得にもならないっていうのに。

 そうだな、もしぼくが本当にヘブンズ・ドアーを使えたとしたら真っ先にキミにはこの命令を書込んでいるだろう。

『二度とこの岸辺露伴の家に近づかない』

 ……いいアイディアじゃないか。
 何度来るなといっても来る面倒な相手が一掃できて、執筆も捗りそうだ。

 さて、分ったのならさっさと帰ってくれないか。
 これから執筆作業に入る。ぼくは一人で漫画を描けるし漫画を描く作業を見られたくはない。わかるだろ、キミは邪魔なだけだなんだよッ。

 ……さて、やっと帰ったか。
 全く来るたびにたいした用もなく一方的に話していって煩わしい。
 そろそろ本当に書くか?

 二度とこの岸辺露伴の家に近づかない。
 そうすればもう少し快適になるだろうが……。

 ……いや、まぁいいだろう。
 あまり周囲の人間に命令を書込みすぎるとリアリティが損なわれるし、あの手合いの人間を相手にするのは面倒だがこちらから知り合おうとするのはもっと面倒だからな。
 生きる資料としてもうすこし手元においてやるとするか。

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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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