インターネット字書きマンの落書き帳
ずっと友達な谷原と山ガスの話
谷原さんと山田ガスマスクが出る話です。
この二人は友達の距離感が書いていて楽しいんですよね。
というか、BLにしようとすると「山田ガスマスクに付き合ってくださいと土下座する谷原と、『セフレならいいよ』『一回だけで彼氏ヅラやめてくれる?』って冷淡に言い放つ山ガスしか思いつかない」という奇病に罹患しています。
という訳で、山ガスに対してうっすら罪悪感を抱いている谷原さんと、全然気にしてない山ガスの話ですよ。
よーろしーくねー。
この二人は友達の距離感が書いていて楽しいんですよね。
というか、BLにしようとすると「山田ガスマスクに付き合ってくださいと土下座する谷原と、『セフレならいいよ』『一回だけで彼氏ヅラやめてくれる?』って冷淡に言い放つ山ガスしか思いつかない」という奇病に罹患しています。
という訳で、山ガスに対してうっすら罪悪感を抱いている谷原さんと、全然気にしてない山ガスの話ですよ。
よーろしーくねー。
『許されないのは、罪がないから』
山田を部屋に呼んだのは1,2年ぶりのはずだが、その様子に以前と変わった所は微塵も見られなかった。
「なんか久しぶりだよねぇ、谷原さんの部屋。あ、ハンタの新刊ある? 谷原さんなら絶対に、買ってると思ったんだよね~」
口では懐かしんでいるが、当然のように本棚を眺めて当たり前のようにHUNTER×HUNTERを手に取る様子は、谷原の部屋にすっかりなじんでいる友人そのものだ。
もっと来ることに抵抗があるか、素っ気なくなっていると思っていたのだが。
谷原は食器棚から久しぶりに山田用のマグカップを出す。
以前はもっと頻繁に二人で遊び、夜通しゲームで盛り上がったり、一人で見るには退屈すぎるB級映画をあれこれ言いながら見たりして遊んでいたのだが、今はその記憶が遙か遠いもののように思えていた。
「なんか久しぶりだよねぇ、僕の部屋で会うの。はい、コーヒー」
山田はブラックも飲めただろうか。それともミルクと砂糖を使うタイプだったろうか。
久しぶりすぎて記憶が曖昧になっていたから、ミルクと砂糖も出しておく。山田は少し迷いながら、スティックシュガーとミルクを一つずつ入れた。
「んー、ハンタ、どこまで読んでたっけな……」
ページをしばらくめくって、山田は最新刊を棚に戻す。そして2巻ほど遡った後、やっと自分の知ってる展開になったのか、嬉しそうにクッションへ腰掛けた。
「そうそう、なんか蟻の王が女の子とボードゲームで戦ってるところまでは知ってるんだよねー」
「あれ、山田くんまだそこまでしか読んでなかったっけ?」
「うん、そう。本誌とか全然だったし……あ、ネタバレしないでよ。結構楽しみにしてるんだから」
パラパラとページをめくる山田の横顔は、いつもより少し少年っぽく見える。
いや、谷原の家にいる時の山田はいつもこんな顔だ。
配信で見せる皮肉屋で冷笑家の立ち振る舞いは山田の一面ではあるが、彼の全てではない。
「ちょっとー、せっかく僕の部屋に来たのに、真っ先に漫画読むとかさ。もうちょっと、谷原さんと楽しくおしゃべりしよう、って気持ちにならないわけ!?」
「んー……べつに? 谷原さん、話つまんないし。それに、今はハンタじっくり読みたいから、集中させてくれる?」
「谷原さんの家、別に漫画喫茶じゃないんですけど。あ、でもハンタはとりあえず読んじゃって。個人的に感想とか言い合いしたいからね」
山田は「ん」と気のない返事をし、クッションを抱きしめ漫画に見入る。
そういえば、集中している時はこっちの話なんて全然聞かないで、こうしていたな。以前はクッションじゃなく、大きめの抱き枕を置いていて、そればっかり抱きしめていたっけ。
猫背のまま、丸くなった体をゆらゆらと揺する姿は、起き上がりこぼしのようだ。
寒い時など、エアコンをつけずにいたら来ていたパーカーを頭までかぶって、本当に起き上がりこぼしそのもののようになっていたこともある。
ずっと変わらなかった、あたりまえの日常に、かつて山田は存在していた。
「ほんと、山田くんて全然かわんないよねぇ」
これで少しでも変わってくれていれば、きっともっと気が楽だったのだろう。
配信で演じているように、皮肉屋な冷笑家で人を突き放したような振る舞いをしていたのなら。あるいは有名配信者としての自負に満ちあふれ自信家のように振る舞っていたのなら、谷原もこんなに引け目など感じなかったはずだ。
それなのに、谷原の前にいる山田は以前と変わりない。
部屋に来るなり漫画を物色して、「これ好きだったんだよねー」とか「最新刊ある! あれどうなったの? あ、まってネタバレなしね」なんていいながら漫画を読んで、それから谷原に「前のここ、伏線だったね」とか、「急に現れたキャラだと思ったけど、一気に場を動かして面白くした感じ」なんて、淡々と感想を語る。
その感想は共感できることもあれば、谷原が思ってもいなかった視点の内容もあっていつも新鮮で、谷原にとって優しい日常の一欠片だったのだが――。
壊してしまったのだ。
他ならぬ、谷原自身の手で。
『――配信作業、手伝ってくれない?』
山田に声をかけたのは、谷原だった。
周りは年上のメンバーばかりで、動画の撮影や編集ができるから雇われているのもあり、周囲になじめてない気がしたからだ。
黒沢や清水が谷原を冷遇していた、という訳ではない。むしろ年上として気遣ってくれていたし、食事はいつもおごってくれていた。
眉崎は谷原をイジるし雑な応対もするが、彼の場合は誰に対してもそうだから仕方ないと諦めもつく。
動画配信のために集まっているだけで仲良しチームである必要はないが、長い作業の間に話の合う友人のような存在がほしいとも思っていた。
せめて同い年のメンバーがいてくれたらいい。
自分と同じように動画の編集や演出ができる人間だとなおいい――。
山田を誘ったのは、彼もまた動画の編集を得意としていたからだ。
だけど、受けてくれるとは思っていなかった。
食事の時も一人でいることが多く、スマホでゲームをするか本を読んでいる姿しか見たことがない。
サークルに入る訳でもなく、時間があればバイトをしているとは聞いていた。
今考えると山田は、少ない理解者の間だけで濃密な関係のなか、深い会話に沈んでいるのが似合いだったのだろう。
静かだがゆっくりと、派手ではないが満たされる空間で、人生の意味はどういうものか深く思案するほうが楽しめるタイプの人間だったのだ。
それなのに谷原は目立つ場所に引きずってしまった。
自分が声をかけたから、彼は手伝ってくれた。
幾度か手伝ううちに、現場の撮影も任されるようになった。
現場に出るうち、メンバーの一人にと誘われた。
なし崩し的にメンバーになり、5Sとなってからは自分のキャラクターを確立させ、それを演じるようになっていった。
目立つような振る舞いは、本質的に苦手だったはずだろう。それでも、頼まれて任されたのなら最大限の成果をあげるため尽力する。
山田はそのような男だった。
だから――。
「――ごめん。ごめんね、山田くん」
震えながら、絞り出すような声で謝罪する。
5Sに関わってしまったから、山田を人殺しにしてしまった。
本来なら関わる必要もなければ、一生無縁で生きていられたはずの山田を巻き込んだのは間違いなく自分だ。
僕が山田くんにヘルプを頼まなければよかった。
年上に気を遣うのがいやでも、撮影や編集は僕だけでやればよかったんだ。
編集、演出とかは清水先輩や黒沢先輩も覚えてくれるといっていたんだから、あのまま4人で活動していればよかった。
僕のせいだ。僕のせいで――。
自然と涙がこぼれる。
手に力が入り、ズボンの布を握ってシワができていた。
「君まで巻き込んじゃってさぁ。こんなことになっちゃって、ごめん。そんなつもり、なかったんだ。僕も、黒沢さんも……」
涙で声がつまる谷原の顔を、山田はしばらく黙って見つめた。
かと思うと
「ちょっとまって、谷原さん泣いてる? やめてって、おっかしー。え、ほんとに?」
漫画本をもったまま、クスクスと笑い始めた。
「……山田くん?」
きょとんとする谷原を前に、山田は笑いながら言う。
「うん、確かに僕は谷原さんに誘われたから5Sを手伝ってたよ。それで、こんなことになっちゃって――それは、うん。よくなかったな、ってのはある。もう、ダメだーってのもあるけどさ。でも僕、別に谷原さんに言われたから全部やったわけじゃないから。ちゃんと、自分で考えた上で決めたことだからさ、谷原さんのせいじゃないし」
「で、でもさぁ……」
「というか、谷原さんってそんな、僕の運命を握ってるほど重要人物って訳じゃないから」
ケラケラ笑う山田の無粋な言い草に、谷原は頬を膨らます。
「ちょっと、何さ、それっ。僕はねぇ、けっこう山田くんとはいい友達だと思ってたよ。それなのに――」
「ん、僕もそうだよ。谷原さんは、すっごいいい友達。5Sのメンバーである前に、友達だから。だからさぁ、一人で責任とか負わなくても全然いいってこと。谷原さんと僕が友達なのも、5Sのしでかしも、今は全部別の話。わかった?」
と、そこで山田は本を閉じ、心配そうな顔になる。
「……それとも、もう友達じゃないのかな。僕と会ってたら、いやな記憶思い出しちゃうし。一緒にいて窮屈だとか。そう思うんならさ。だったら……仕方ない、けど。それ、ちょっといやだな。ねぇ、谷原さんは、友達でいてくれるよね?」
当然だ。
山田と友達でいられなくなるのは、こっちだっていやだ。
「あ、当たり前でしょ。山田くんは友達だって。ずっと、これからも……」
「なははっ、ならよかった。だったらさ……もう一冊読み終わったら、ハンタの感想戦付き合ってよ。僕と感想戦できるくらい読み込んでる友達、ほかにいないから」
「も、もちろんだよ。受けて立つさ! 谷原さんだって、ハンタには一家言あるからね!」
やや食い気味になって声をあげる谷原を見て、山田はクスクス笑う。
そして小さく
「……よかった」
そうやってつぶやく声を聞き、谷原も心底安堵するのだ。
僕も、友達を失わなくてよかった。
喜びも悲しみも楽しさも、そして罪も同じように背負ってくれる。
そんな友達がいてくれるのだから、自分はまだ救われているのだろう。
山田を部屋に呼んだのは1,2年ぶりのはずだが、その様子に以前と変わった所は微塵も見られなかった。
「なんか久しぶりだよねぇ、谷原さんの部屋。あ、ハンタの新刊ある? 谷原さんなら絶対に、買ってると思ったんだよね~」
口では懐かしんでいるが、当然のように本棚を眺めて当たり前のようにHUNTER×HUNTERを手に取る様子は、谷原の部屋にすっかりなじんでいる友人そのものだ。
もっと来ることに抵抗があるか、素っ気なくなっていると思っていたのだが。
谷原は食器棚から久しぶりに山田用のマグカップを出す。
以前はもっと頻繁に二人で遊び、夜通しゲームで盛り上がったり、一人で見るには退屈すぎるB級映画をあれこれ言いながら見たりして遊んでいたのだが、今はその記憶が遙か遠いもののように思えていた。
「なんか久しぶりだよねぇ、僕の部屋で会うの。はい、コーヒー」
山田はブラックも飲めただろうか。それともミルクと砂糖を使うタイプだったろうか。
久しぶりすぎて記憶が曖昧になっていたから、ミルクと砂糖も出しておく。山田は少し迷いながら、スティックシュガーとミルクを一つずつ入れた。
「んー、ハンタ、どこまで読んでたっけな……」
ページをしばらくめくって、山田は最新刊を棚に戻す。そして2巻ほど遡った後、やっと自分の知ってる展開になったのか、嬉しそうにクッションへ腰掛けた。
「そうそう、なんか蟻の王が女の子とボードゲームで戦ってるところまでは知ってるんだよねー」
「あれ、山田くんまだそこまでしか読んでなかったっけ?」
「うん、そう。本誌とか全然だったし……あ、ネタバレしないでよ。結構楽しみにしてるんだから」
パラパラとページをめくる山田の横顔は、いつもより少し少年っぽく見える。
いや、谷原の家にいる時の山田はいつもこんな顔だ。
配信で見せる皮肉屋で冷笑家の立ち振る舞いは山田の一面ではあるが、彼の全てではない。
「ちょっとー、せっかく僕の部屋に来たのに、真っ先に漫画読むとかさ。もうちょっと、谷原さんと楽しくおしゃべりしよう、って気持ちにならないわけ!?」
「んー……べつに? 谷原さん、話つまんないし。それに、今はハンタじっくり読みたいから、集中させてくれる?」
「谷原さんの家、別に漫画喫茶じゃないんですけど。あ、でもハンタはとりあえず読んじゃって。個人的に感想とか言い合いしたいからね」
山田は「ん」と気のない返事をし、クッションを抱きしめ漫画に見入る。
そういえば、集中している時はこっちの話なんて全然聞かないで、こうしていたな。以前はクッションじゃなく、大きめの抱き枕を置いていて、そればっかり抱きしめていたっけ。
猫背のまま、丸くなった体をゆらゆらと揺する姿は、起き上がりこぼしのようだ。
寒い時など、エアコンをつけずにいたら来ていたパーカーを頭までかぶって、本当に起き上がりこぼしそのもののようになっていたこともある。
ずっと変わらなかった、あたりまえの日常に、かつて山田は存在していた。
「ほんと、山田くんて全然かわんないよねぇ」
これで少しでも変わってくれていれば、きっともっと気が楽だったのだろう。
配信で演じているように、皮肉屋な冷笑家で人を突き放したような振る舞いをしていたのなら。あるいは有名配信者としての自負に満ちあふれ自信家のように振る舞っていたのなら、谷原もこんなに引け目など感じなかったはずだ。
それなのに、谷原の前にいる山田は以前と変わりない。
部屋に来るなり漫画を物色して、「これ好きだったんだよねー」とか「最新刊ある! あれどうなったの? あ、まってネタバレなしね」なんていいながら漫画を読んで、それから谷原に「前のここ、伏線だったね」とか、「急に現れたキャラだと思ったけど、一気に場を動かして面白くした感じ」なんて、淡々と感想を語る。
その感想は共感できることもあれば、谷原が思ってもいなかった視点の内容もあっていつも新鮮で、谷原にとって優しい日常の一欠片だったのだが――。
壊してしまったのだ。
他ならぬ、谷原自身の手で。
『――配信作業、手伝ってくれない?』
山田に声をかけたのは、谷原だった。
周りは年上のメンバーばかりで、動画の撮影や編集ができるから雇われているのもあり、周囲になじめてない気がしたからだ。
黒沢や清水が谷原を冷遇していた、という訳ではない。むしろ年上として気遣ってくれていたし、食事はいつもおごってくれていた。
眉崎は谷原をイジるし雑な応対もするが、彼の場合は誰に対してもそうだから仕方ないと諦めもつく。
動画配信のために集まっているだけで仲良しチームである必要はないが、長い作業の間に話の合う友人のような存在がほしいとも思っていた。
せめて同い年のメンバーがいてくれたらいい。
自分と同じように動画の編集や演出ができる人間だとなおいい――。
山田を誘ったのは、彼もまた動画の編集を得意としていたからだ。
だけど、受けてくれるとは思っていなかった。
食事の時も一人でいることが多く、スマホでゲームをするか本を読んでいる姿しか見たことがない。
サークルに入る訳でもなく、時間があればバイトをしているとは聞いていた。
今考えると山田は、少ない理解者の間だけで濃密な関係のなか、深い会話に沈んでいるのが似合いだったのだろう。
静かだがゆっくりと、派手ではないが満たされる空間で、人生の意味はどういうものか深く思案するほうが楽しめるタイプの人間だったのだ。
それなのに谷原は目立つ場所に引きずってしまった。
自分が声をかけたから、彼は手伝ってくれた。
幾度か手伝ううちに、現場の撮影も任されるようになった。
現場に出るうち、メンバーの一人にと誘われた。
なし崩し的にメンバーになり、5Sとなってからは自分のキャラクターを確立させ、それを演じるようになっていった。
目立つような振る舞いは、本質的に苦手だったはずだろう。それでも、頼まれて任されたのなら最大限の成果をあげるため尽力する。
山田はそのような男だった。
だから――。
「――ごめん。ごめんね、山田くん」
震えながら、絞り出すような声で謝罪する。
5Sに関わってしまったから、山田を人殺しにしてしまった。
本来なら関わる必要もなければ、一生無縁で生きていられたはずの山田を巻き込んだのは間違いなく自分だ。
僕が山田くんにヘルプを頼まなければよかった。
年上に気を遣うのがいやでも、撮影や編集は僕だけでやればよかったんだ。
編集、演出とかは清水先輩や黒沢先輩も覚えてくれるといっていたんだから、あのまま4人で活動していればよかった。
僕のせいだ。僕のせいで――。
自然と涙がこぼれる。
手に力が入り、ズボンの布を握ってシワができていた。
「君まで巻き込んじゃってさぁ。こんなことになっちゃって、ごめん。そんなつもり、なかったんだ。僕も、黒沢さんも……」
涙で声がつまる谷原の顔を、山田はしばらく黙って見つめた。
かと思うと
「ちょっとまって、谷原さん泣いてる? やめてって、おっかしー。え、ほんとに?」
漫画本をもったまま、クスクスと笑い始めた。
「……山田くん?」
きょとんとする谷原を前に、山田は笑いながら言う。
「うん、確かに僕は谷原さんに誘われたから5Sを手伝ってたよ。それで、こんなことになっちゃって――それは、うん。よくなかったな、ってのはある。もう、ダメだーってのもあるけどさ。でも僕、別に谷原さんに言われたから全部やったわけじゃないから。ちゃんと、自分で考えた上で決めたことだからさ、谷原さんのせいじゃないし」
「で、でもさぁ……」
「というか、谷原さんってそんな、僕の運命を握ってるほど重要人物って訳じゃないから」
ケラケラ笑う山田の無粋な言い草に、谷原は頬を膨らます。
「ちょっと、何さ、それっ。僕はねぇ、けっこう山田くんとはいい友達だと思ってたよ。それなのに――」
「ん、僕もそうだよ。谷原さんは、すっごいいい友達。5Sのメンバーである前に、友達だから。だからさぁ、一人で責任とか負わなくても全然いいってこと。谷原さんと僕が友達なのも、5Sのしでかしも、今は全部別の話。わかった?」
と、そこで山田は本を閉じ、心配そうな顔になる。
「……それとも、もう友達じゃないのかな。僕と会ってたら、いやな記憶思い出しちゃうし。一緒にいて窮屈だとか。そう思うんならさ。だったら……仕方ない、けど。それ、ちょっといやだな。ねぇ、谷原さんは、友達でいてくれるよね?」
当然だ。
山田と友達でいられなくなるのは、こっちだっていやだ。
「あ、当たり前でしょ。山田くんは友達だって。ずっと、これからも……」
「なははっ、ならよかった。だったらさ……もう一冊読み終わったら、ハンタの感想戦付き合ってよ。僕と感想戦できるくらい読み込んでる友達、ほかにいないから」
「も、もちろんだよ。受けて立つさ! 谷原さんだって、ハンタには一家言あるからね!」
やや食い気味になって声をあげる谷原を見て、山田はクスクス笑う。
そして小さく
「……よかった」
そうやってつぶやく声を聞き、谷原も心底安堵するのだ。
僕も、友達を失わなくてよかった。
喜びも悲しみも楽しさも、そして罪も同じように背負ってくれる。
そんな友達がいてくれるのだから、自分はまだ救われているのだろう。
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