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インターネット字書きマンの落書き帳

   
絶対的運命という名の楔についての考察(山ガス)
特にBLとかそういう話じゃない二次創作もたまにはかくよ。
本当にBLではないのかい?

わっかんねぇ。
BLの手癖が入っているのでBLを感じたら……。

おいしくたべてください!



『運命という名の偶発的な必然について』

 SFはお好きですか?

 助手席に座る僕に、彼は不意にそんなことを聞いた。
 ちょうど会話が途切れ、ぼんやりと外の景色を見ていた頃合いだ。
 何ら変哲のない田舎道の新緑にも見飽きたのに気付いたようだった。

「あんまりジャンルに拘って本は読まないかなぁ……流行りの奴なら読んでるけど」
「そうですか。それでは、タイム・リープあるいはタイム・トラベルの話はご存知ですか?」 「それなら、多少は。最近、ちょっと流行ってるし」

 タイム・リープもタイム・トラベルも過去へ遡り、未来を変化させるというテーマはよく似ている。
 最近流行りのアニメや映画にも、タイム・リープもの……時を幾度も遡り、都度べつの運命を歩むといった作品は増えているだろう。

「時を遡り、過去を変えるというアプローチはいくつかありまして……」

 それからしばらく、SFのタイムトラベル講義がはじまった。
 時を戻し、過去を変えるという展開を描く時には、過去を変えた時点で、新しい未来が創造されるパターンは、パラレル・ワールド(平行世界)の概念も含むパターンが多い。
 時間の流れが多層である世界線、がそうらしい。

 時間の流れがもっと直線的であった場合は、また少し話しが違うようで、例え過去の出来事をかえても、未来から来た人物がすでに未来を観測している限り、同じ結果にしかならないそうだ。
 その設定が採用されている場合、未来を変えるためには未来人が自らの存在を失うしかない。

 前者は、量子力学的。
 後者は古典力学的なアプローチだそうだ。

「最も、現在において時間を逆行し過去をかえる、というのは学術論理的には、不可能なんですけどね」

 彼はそう、締めくくった。

 ――そう、現在においてすでに出来上がった過去は、決して変えられない。
 粛々とそれを受け入れ、現実の問題として対処するしかないのだ。

 わかっている、それでも――。

「おまえが、山田ガスマスクっちゅうんか? ふーん、マスクつけてるイロモンライターかと思ったら、顔は案外普通やなぁ」

 僕の前に、僕がすっぽり隠れるくらい大きな男が笑っている。
 上野の、あの事件で人生が狂ってしまった人だ。

 彼の人生がおかしくなってなかったら、きっと僕らは出会わなかったのだろう。
 彼にとっては、僕と出会っている時点で人生は「失敗」している。

 犯罪は、おこった時点で失敗だ。
 被害者も、犯人も、被害者の関係者も、犯人の周囲の人間も、全部が全部、失敗なのだ。

 だから、僕は「もしも」の世界を考える。

 彼は誰にも疑われることもなく、普通に生きて、普通の結婚をして、小さな子供の手を引いて、夜の公園で怪しげなツアーなど参加する機会はなかったのだろう。
 もし、そうだったら、僕との出会いも何か変わっていたのだろうか。

『運命とは、存外に強固なものなんですよね』

 その時、助手席で聞いた他愛もない言葉が鮮明に蘇る。

『ループものの作品において、戻る時間軸がある程度固定されていたり、決して覆せない運命が存在する、という設定も多いんですよ。そういうのは……絶対的に起こる運命という名の、圧倒的な力場として固定されているのではないか……という理論です」

 あは、どういうこと?
 意味わかんないんだけど……。

『つまり……平行世界の概念においても、単純なタイムトラベルの概念においても……ある人生において、絶対におこってしまう出来事というのは、往々にしてあるものです。それを人は運命と呼び、それだけは、いかなる世界線でも、いかなる理由があっても避けられない。受け入れなければいけない、絶対な楔なんですよ』

 あの時は、意味がわからなかった。
 だけど、今ははっきりとわかる。

 もしも、あんな事が起こらなければ――なんて、そんな事は最初から、ない。

 ――僕が最初から存在してなかった。
 その世界線なら、あるかもしれないけど――。

 だから僕がいるかぎり、僕の『運命』は決まっている。

「そう? オジサンは、なんかすっごく偉そう。スジモン、って感じだけど」

 それなら僕は幾度でも道化を演じ、玩具でいよう。
 僕はきっと、生まれた時からそういう風に作られているのだから。

 ――空には、星が瞬いている。
 その星もまた、僕が幾度その下を歩いても、位置をかえることはないのだろう。

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