インターネット字書きマンの落書き帳
自暴自棄になる山ガスとダーマツの話(松ガス・BL)
デンドロビウム!(挨拶)
フォロワーが思考実験をモチーフに話を書いていて、それが面白かったので……。
「かっこいい! 俺もやりたい!」
そう思って、書きました。
かっこいい!
それはすべて書く理由……。
内容は、自暴自棄になり、痛みがないと生きている実感がない。
そんな山ガスと、その保護者をしている松田の山ガスです。
フォロワーが思考実験をモチーフに話を書いていて、それが面白かったので……。
「かっこいい! 俺もやりたい!」
そう思って、書きました。
かっこいい!
それはすべて書く理由……。
内容は、自暴自棄になり、痛みがないと生きている実感がない。
そんな山ガスと、その保護者をしている松田の山ガスです。
『スクリーン』
腫れた顔も、裂けた肌も、清潔な匂いに包まれる。
「ほら、終わったで」
薬箱を閉じる音を聞きながら、山田は自分の手をシーリングライトにかざす。
丁重に巻かれた包帯からは血が滲んでいた。
「まったく、ろくに人も殴れんくせに……」
松田は薬箱をテーブルの上に置き、あきれた顔をする。
なにさ、嫌だったら助けなくてもいいのに。
助けてくれって頼んだこともない。
山田は無言のまま、包帯を止めるテープを弄る。
皮膚に張られたテープのまわりはうっすらと赤くなっていた。
こちらを見ようとしない山田の態度に苛立ったのか、松田はぐい、とその手を引くと少し強引に顔を寄せる。
「おまえなぁ。どうしていっつも、怪我するような真似ばっかりしとるん。あの時も――」
あの時も。あの時も。あの時も。
繰り返される「あの時」とはどれを指しているのだろう。
アロマオイルという名の脱法ドラッグを焚き、意識を飛ばして動けなくなった時か。
刃物を振り回して泣き叫ぶ自称・メンヘラを茶化して切りつけられた時か。
赤く焼けた石を、面白半分に握り絞めた時か――。
「お前の無茶に振り回されるこっちの身にもなってみぃ、全く……」
松田の言葉は、怒りよりも呆れや諦めの色合いが強い。
どうして。
そう聞かれても、答えようがない。
自分には、世界がずっと他人事なのだから。
「言っても、松田さんにはわからないよ」
自分の世界にいるものは――この、松田も含めて、全て作り物なのではないか。
全員が台本を読んで、演じているだけではないか。
感覚や感情もなく、ただ決められたルーティンで動いているだけではないか――。
「アホか。言わな、わからんわ。超能力者と違うんやで」
山田がそう思うのは、自分自身の存在がずっと希薄だったからだ。
物心ついたときからそう、世界の全てを画面越しで眺めている。そんな、冷めた場所に立っていた。
親から与えられる愛情も。クラスメイトたちの友情も。自分の中には存在しない。
触れられれば温かい。
殴られれば痛い。
精一杯走ったら苦しい。
身体に残った感覚も、心の奥には響かない。
――この世界は、まがい物だ。
幼少期から、山田はそんな認識にとりつかれていた。
いや、あるいは――。
「僕にとって、世界って嘘なんだよ」
親からの愛情は気まぐれで、おおよそ信じられなかった。
「世界が嘘だから――痛いとか、苦しいとか。そういうの? 反応を、確かめていたい、ってのかな」
曖昧な愛情を享受していたから、他人の気持ちを素直に受け取れなくなっていた。
自分は誰かに愛されるほど、成熟してないし立派な人間でもない――。
「痛いのと、苦しいのと、気持ちいいの。そういうので、なんか――世界にいられる、って気がするから」
だけど、それを認めてしまえば、自分は世界でひとりぼっちだから――。
――それなら、世界を否定したほうが、ずっと、ずっと楽だ。
「だから、僕さ――」
何か語る前に、唇が触れる。
ほんの一瞬、羽が撫でるようなキスだがそれでも、温かかった。
「お前が、どう思ってるか知らんけどな」
自分でも、キスをする予定なんてなかったのだろう。
頬を抑え、恥ずかしそうに目を伏せて、しどろもどろになる松田は、普段の年上らしい落ち着きはない。
「俺が、こう……してやった。お前が、俺の中におる。これは――お前がどんだけ否定しても、俺の中では絶対に変わらへん。別にわかってくれとは思わんけどな。それは――知っておいてくれ」
この世界はスクリーンの上。
自分が舞台に上がる事はなく、ただ眺めているだけのはずだけど――。
「んー。どうだろ。考えとくね」
唇の上に温もりと、松田のにおいが残る。
たとえ、自分が全てを否定していたとしても――松田の中にはきっと、「山田」が存在しつづける。
それは、少しだけ嬉しかった。
腫れた顔も、裂けた肌も、清潔な匂いに包まれる。
「ほら、終わったで」
薬箱を閉じる音を聞きながら、山田は自分の手をシーリングライトにかざす。
丁重に巻かれた包帯からは血が滲んでいた。
「まったく、ろくに人も殴れんくせに……」
松田は薬箱をテーブルの上に置き、あきれた顔をする。
なにさ、嫌だったら助けなくてもいいのに。
助けてくれって頼んだこともない。
山田は無言のまま、包帯を止めるテープを弄る。
皮膚に張られたテープのまわりはうっすらと赤くなっていた。
こちらを見ようとしない山田の態度に苛立ったのか、松田はぐい、とその手を引くと少し強引に顔を寄せる。
「おまえなぁ。どうしていっつも、怪我するような真似ばっかりしとるん。あの時も――」
あの時も。あの時も。あの時も。
繰り返される「あの時」とはどれを指しているのだろう。
アロマオイルという名の脱法ドラッグを焚き、意識を飛ばして動けなくなった時か。
刃物を振り回して泣き叫ぶ自称・メンヘラを茶化して切りつけられた時か。
赤く焼けた石を、面白半分に握り絞めた時か――。
「お前の無茶に振り回されるこっちの身にもなってみぃ、全く……」
松田の言葉は、怒りよりも呆れや諦めの色合いが強い。
どうして。
そう聞かれても、答えようがない。
自分には、世界がずっと他人事なのだから。
「言っても、松田さんにはわからないよ」
自分の世界にいるものは――この、松田も含めて、全て作り物なのではないか。
全員が台本を読んで、演じているだけではないか。
感覚や感情もなく、ただ決められたルーティンで動いているだけではないか――。
「アホか。言わな、わからんわ。超能力者と違うんやで」
山田がそう思うのは、自分自身の存在がずっと希薄だったからだ。
物心ついたときからそう、世界の全てを画面越しで眺めている。そんな、冷めた場所に立っていた。
親から与えられる愛情も。クラスメイトたちの友情も。自分の中には存在しない。
触れられれば温かい。
殴られれば痛い。
精一杯走ったら苦しい。
身体に残った感覚も、心の奥には響かない。
――この世界は、まがい物だ。
幼少期から、山田はそんな認識にとりつかれていた。
いや、あるいは――。
「僕にとって、世界って嘘なんだよ」
親からの愛情は気まぐれで、おおよそ信じられなかった。
「世界が嘘だから――痛いとか、苦しいとか。そういうの? 反応を、確かめていたい、ってのかな」
曖昧な愛情を享受していたから、他人の気持ちを素直に受け取れなくなっていた。
自分は誰かに愛されるほど、成熟してないし立派な人間でもない――。
「痛いのと、苦しいのと、気持ちいいの。そういうので、なんか――世界にいられる、って気がするから」
だけど、それを認めてしまえば、自分は世界でひとりぼっちだから――。
――それなら、世界を否定したほうが、ずっと、ずっと楽だ。
「だから、僕さ――」
何か語る前に、唇が触れる。
ほんの一瞬、羽が撫でるようなキスだがそれでも、温かかった。
「お前が、どう思ってるか知らんけどな」
自分でも、キスをする予定なんてなかったのだろう。
頬を抑え、恥ずかしそうに目を伏せて、しどろもどろになる松田は、普段の年上らしい落ち着きはない。
「俺が、こう……してやった。お前が、俺の中におる。これは――お前がどんだけ否定しても、俺の中では絶対に変わらへん。別にわかってくれとは思わんけどな。それは――知っておいてくれ」
この世界はスクリーンの上。
自分が舞台に上がる事はなく、ただ眺めているだけのはずだけど――。
「んー。どうだろ。考えとくね」
唇の上に温もりと、松田のにおいが残る。
たとえ、自分が全てを否定していたとしても――松田の中にはきっと、「山田」が存在しつづける。
それは、少しだけ嬉しかった。
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