インターネット字書きマンの落書き帳
四谷さんはおしまいっ(トシカイ二次創作)
日常を過ごす四谷次男を書きたいと思って書きました。
恐らくこういう日常だったらいいね。
いや、よくないよ!
みたいな話です。
なんかちょっと寂しくて悲しい感じにかけてたら成功。
イェーイ。
四谷パパの背中を見ていた一般成人男性がでます。
楽しんでいってくれよな!
恐らくこういう日常だったらいいね。
いや、よくないよ!
みたいな話です。
なんかちょっと寂しくて悲しい感じにかけてたら成功。
イェーイ。
四谷パパの背中を見ていた一般成人男性がでます。
楽しんでいってくれよな!
『酸味のある拒絶』
ありがとう。
ただその一言だけ書かれたメモと、コーヒー缶がデスクに置かれている。
触れればまだ熱いくらいだ。
きっと今朝買ったばかりなのだろう。
フロアを見渡すが、あの人の姿はない。
「あの、四谷さんは?」
同僚に声をかければ、彼はちょっと首を傾げた。
「センターのほうにいるんじゃないかな。電話してみたらどうだい?」
――あれは、そういう部署だから。
言葉尻にそんな投げやりさが透けて見える。
「そっか……そうだよな」
男は缶コーヒーを手に、休憩室へ入る。
まだ始業前だ、一服ついてもいいだろう。
缶をあければ、微かに酸味を感じる香りが鼻についた。
男が公務員になったのは、大きな理由などない。
安定して楽だと思ったからだ。
幸い頭は良かったから試験も問題なく、実家から通える距離での生活をしている。
何となくで入ったが、地元のことは嫌いじゃない。地域を少しでも良くしたいとも思っているし、何より、正確な仕事が正当に評価されるというのは性に合っている。
なんとなく、で入ったが今ではすっかり愛着も出来た 。
そんな男でも、一度だけ消えたくなった事がある。
手酷い失敗をして、四方八方から攻められ、自分には価値がないと酷く落ち込んだ時だ。
『はは、そんな顔しないで。ほら、暖かいものでも飲みなさい』
差し出されたコーヒー缶が冷えた指先を温める。
仕事にも慣れてきたと思った冬、年度末を前に、彼は大きなミスをした。
指示を出した次長に散々と嫌味を言われ、謝罪のためかけた電話で罵倒でこそない大声で小馬鹿にしたよう嘲られる。
公務員の仕事というのは、法に則った仕事だ。
個人の権利にかかわる仕事でもある。
些末なミスや勘違いで、一人の人間の尊厳を傷つけかねない繊細さがあるのはわかっていた。
だからこそ侮辱も甘んじて受け止めた。
反論もせず、ただただ耐えたのはミスをした自分の責務だと思ったからだ。
挽回しなければ。
焦る気持ちでデスクに向かう男を止めたのが、四谷だった。
『君は、今はいいから。私のことを手伝ってくれないかな?』
そうして与えられたのが、書類を仕分けてファイリングするだけの簡単な仕事だ。
すぐさまミスを修正し新しい調整をしなければと焦っていたが。
『それは、私がやっておくから。君は、今はこれを頼むよ』
強引に止められ、仕方なく書類をホッチキスで留める。
10枚、まとめているうちは苛立った。
なんだあいつ、俺の仕事をとって。今、俺がやらないと、申し訳がたたない。
30枚まとめる頃に、落ち着いてきた。
――いや、焦っている時の仕事は、ミスを呼ぶだけだ。
ミスがあった時ほど、集中力が散漫になることはない。こういう時は業務から離れるのがセオリーだ。
あの人の判断が正しい。
全ての書類をまとめた時、四谷は笑ってくれた。
『やっぱりきみは仕事が早いね。とても、助かったよ。ありがとう。手伝わせてしまって、悪かったね』
その頃、ミスの火消しはあらかた終わっていた。
無関係だったはずの四谷が散々と頭を下げた後、全ての業務を終わらせてくれたのだ。
ありがとうと言う前に差し出されたコーヒーは、ただ温かかった。
四谷が、別部署に飛ばされたのはそれから間もなくのことだ。
理由は言わずもがな。
わざわざ会いに行かなければ顔も見れない場所に向かわされた四谷の担当は「編纂」とついた部下すらいない課。
ようは隔離部署だ。
それが、四谷に対する温情であり彼に出来る精一杯の優しさなのは理解していたのだが――。
居場所のないよう、長椅子の片隅に腰かける背中がひどく小さく見える。
昼であっても真冬の今は、太陽の光が遠くひどく寒いのに、四谷は外のベンチにいた。
弁当を食べているわけでもなく、本を読むなどもせず、ただぼんやりとやたらに澄み切った冬の空を眺めている。
何も変わってない優しい背中は、骨格だけが浮き出ていた。
「あの、暖かいんで飲んでください」
せめて、あの時の礼になればいい。
そう思って差し出したコーヒーを断る事はなかったが。
「あ、あぁ。ごめんね」
何も悪い事などしてないのに、困ったように笑う。
それは、優しい拒絶だった。
――それでも、受け取ってくれたのなら報われた。
そう思っていたのに、テーブルの上には「返礼」がある。
やはりあの人は、もう誰も自分の内に人を入れないのだろう。
缶から細い湯気がたつ。
一口も飲めないまま、コーヒーは冷めていった。
ありがとう。
ただその一言だけ書かれたメモと、コーヒー缶がデスクに置かれている。
触れればまだ熱いくらいだ。
きっと今朝買ったばかりなのだろう。
フロアを見渡すが、あの人の姿はない。
「あの、四谷さんは?」
同僚に声をかければ、彼はちょっと首を傾げた。
「センターのほうにいるんじゃないかな。電話してみたらどうだい?」
――あれは、そういう部署だから。
言葉尻にそんな投げやりさが透けて見える。
「そっか……そうだよな」
男は缶コーヒーを手に、休憩室へ入る。
まだ始業前だ、一服ついてもいいだろう。
缶をあければ、微かに酸味を感じる香りが鼻についた。
男が公務員になったのは、大きな理由などない。
安定して楽だと思ったからだ。
幸い頭は良かったから試験も問題なく、実家から通える距離での生活をしている。
何となくで入ったが、地元のことは嫌いじゃない。地域を少しでも良くしたいとも思っているし、何より、正確な仕事が正当に評価されるというのは性に合っている。
なんとなく、で入ったが今ではすっかり愛着も出来た 。
そんな男でも、一度だけ消えたくなった事がある。
手酷い失敗をして、四方八方から攻められ、自分には価値がないと酷く落ち込んだ時だ。
『はは、そんな顔しないで。ほら、暖かいものでも飲みなさい』
差し出されたコーヒー缶が冷えた指先を温める。
仕事にも慣れてきたと思った冬、年度末を前に、彼は大きなミスをした。
指示を出した次長に散々と嫌味を言われ、謝罪のためかけた電話で罵倒でこそない大声で小馬鹿にしたよう嘲られる。
公務員の仕事というのは、法に則った仕事だ。
個人の権利にかかわる仕事でもある。
些末なミスや勘違いで、一人の人間の尊厳を傷つけかねない繊細さがあるのはわかっていた。
だからこそ侮辱も甘んじて受け止めた。
反論もせず、ただただ耐えたのはミスをした自分の責務だと思ったからだ。
挽回しなければ。
焦る気持ちでデスクに向かう男を止めたのが、四谷だった。
『君は、今はいいから。私のことを手伝ってくれないかな?』
そうして与えられたのが、書類を仕分けてファイリングするだけの簡単な仕事だ。
すぐさまミスを修正し新しい調整をしなければと焦っていたが。
『それは、私がやっておくから。君は、今はこれを頼むよ』
強引に止められ、仕方なく書類をホッチキスで留める。
10枚、まとめているうちは苛立った。
なんだあいつ、俺の仕事をとって。今、俺がやらないと、申し訳がたたない。
30枚まとめる頃に、落ち着いてきた。
――いや、焦っている時の仕事は、ミスを呼ぶだけだ。
ミスがあった時ほど、集中力が散漫になることはない。こういう時は業務から離れるのがセオリーだ。
あの人の判断が正しい。
全ての書類をまとめた時、四谷は笑ってくれた。
『やっぱりきみは仕事が早いね。とても、助かったよ。ありがとう。手伝わせてしまって、悪かったね』
その頃、ミスの火消しはあらかた終わっていた。
無関係だったはずの四谷が散々と頭を下げた後、全ての業務を終わらせてくれたのだ。
ありがとうと言う前に差し出されたコーヒーは、ただ温かかった。
四谷が、別部署に飛ばされたのはそれから間もなくのことだ。
理由は言わずもがな。
わざわざ会いに行かなければ顔も見れない場所に向かわされた四谷の担当は「編纂」とついた部下すらいない課。
ようは隔離部署だ。
それが、四谷に対する温情であり彼に出来る精一杯の優しさなのは理解していたのだが――。
居場所のないよう、長椅子の片隅に腰かける背中がひどく小さく見える。
昼であっても真冬の今は、太陽の光が遠くひどく寒いのに、四谷は外のベンチにいた。
弁当を食べているわけでもなく、本を読むなどもせず、ただぼんやりとやたらに澄み切った冬の空を眺めている。
何も変わってない優しい背中は、骨格だけが浮き出ていた。
「あの、暖かいんで飲んでください」
せめて、あの時の礼になればいい。
そう思って差し出したコーヒーを断る事はなかったが。
「あ、あぁ。ごめんね」
何も悪い事などしてないのに、困ったように笑う。
それは、優しい拒絶だった。
――それでも、受け取ってくれたのなら報われた。
そう思っていたのに、テーブルの上には「返礼」がある。
やはりあの人は、もう誰も自分の内に人を入れないのだろう。
缶から細い湯気がたつ。
一口も飲めないまま、コーヒーは冷めていった。
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