インターネット字書きマンの落書き帳
過去にすら嫉妬するタイプの黒ガス(BL)
最近はパラドックスとか比喩とか悪魔とか、そういう類いの思考実験をモチーフに何か書くのが俺の中ではやってます。
ので、今回もベースはそういう哲学っぽいやつなんですが~。
特に哲学を感じないようになっているので、「なんかわからんけど頭いいっぽい!」と思ってくれたらHappyです。
ウェイウェイ!
内容は、黒沢に対して臆病なくらい従順な山ガスを信頼しているし愛している。
だからこそ、自分の知らない一面をみると、苛立ってしまう黒沢の話です。
重たい男好きかい?
今日から好きになろうぜ!
ので、今回もベースはそういう哲学っぽいやつなんですが~。
特に哲学を感じないようになっているので、「なんかわからんけど頭いいっぽい!」と思ってくれたらHappyです。
ウェイウェイ!
内容は、黒沢に対して臆病なくらい従順な山ガスを信頼しているし愛している。
だからこそ、自分の知らない一面をみると、苛立ってしまう黒沢の話です。
重たい男好きかい?
今日から好きになろうぜ!
「不可逆の過去」
電話で使う、よそ行きの声。スマホの待ち受けにある、知らない風景。背負ったリュックの缶バッジ。
何気ない日常の中で山田の見せるわずかな所作に、黒沢は焦れていた。
――何を焦っているんだ、らしくない。
内心つぶやき、口元に手をあてる。
電話の相手は、ゼミの教授だ。普段のようにふてぶてしく生意気なしゃべり方をしない。当然だ。
スマホの待ち受けも、山田がソロキャンプをした時に撮ったもの。山田個人の趣味だ、黒沢の出しゃばるところではない。
リュックの缶バッジは――。
思えば、ずっとつけている。
誰かからもらったものだろうか。大事なものだろうか。それとも、つけていて忘れているだけなのか。真意はわからない。
黒沢と知り合った時に、すでに鞄についていた。
過去に山田のしてきたこと。山田と出会った人。山田の行動の先にできた交友や思い出の品に、ケチをつける理由はない。
理由はないのだが――。
「なぁ、おまえ。この缶バッジ、どうしたんだ?」
置かれたリュックのバッジを、つい指さす。
そんなこと知ってどうする。
頭の中ではわかってるのだが――。
「え? これ? んー、どうしたんだっけな……」
カラカラと、金属の音がする。
ピンクの背景にブラウン管テレビをかたどった白いロゴ。見たこともないデザインだ。
黒沢とは縁のない店のロゴか。WEBではやっているキャラか。それとも――。
「そうそう、友達が、イベント用に作った缶バッジだ。なんか、洋ゲーのキャラみたいだよ」
初めて聞くエピソードだ。
そもそも山田は、友達らしい友達がいないと、そう思っていた。
普段は5Sの活動のためずっと作業部屋に入り浸っているし、スマホにくるメッセージも5Sメンバーのものばかり。
家族と折り合いが悪いのは知っていたし、口下手の上に皮肉屋だ。
こんなに癖のある男にも、友達と呼べる相手がいるのか。
一体どんな相手なんだ。
谷原のようなタイプの賑やかしか。
そもそも、本当にただの友達なのだろうか。
山田は過去の話をしない。
学生時代はあまり良い環境ではなかったからと本人が言うから触れないようにしていた。
だから、山田がこれまで誰と出会ったのか。恋人がいたのかいないのか。そういったことは、何も知らない。
「んー、どうしたの黒沢サン。何か、僕、気に触ることした?」
山田は不安そうに、こちらの顔をのぞき込む。
山田はいつもそうだ。黒沢が少し黙っているだけで、不安で壊れそうになる。
誰にでも否定的で、誰もを見下して冷笑し、誰でも皮肉を叩く山田が、黒沢には従順なのは、心の底から黒沢に見捨てられるのを恐れているからだろう。
逆説的に言うのなら、黒沢が山田を手元におき、寵愛しているからこそ、山田は尊大でいられるのだ。
「ご、ごめん。黒沢サン。僕、気づかなくて……わ、わるいことしたなら、謝るから、だから……」
無言の黒沢に、山田は慌てふためく。
別に怒ってはいないのだが。他人の顔色をうかがい、空気を読もうとする癖が身にしみている山田にとって、黒沢のわずかな苛立ちも肌が焼けるほどにあついのだろう。
心配するな、おまえのせいじゃない。
そう思っているが、焦れた心は静まらない。
黒沢が見てない時間が、山田にはある。
そして、黒沢と出会う前、山田は少しずつ、今のような人間になっていった。
黒沢に服従し、従順で、献身的。
黒沢が笑えば喜び、不機嫌ならおびえ、悲しそうなら必死におどけて慰めようとする。
あまりにもまっすぐで、あまりにも無垢な思いをもつこの一個の宝石をカットしたのは黒沢ではない。
黒沢と出会う前に山田の周りにいた、別の誰かだ。
過去をすべて暴くことはできない。
生まれた場所、育った環境。すべてが違うのだから、手の届かない記憶が山田を構築しているのは仕方ない。
そう、思うのだが――。
「……謝らなくていい。そのかわり、なるべく俺のそばにいろ」
頬に触れたあと、自分の所有物なのだから当然というように山田と唇を重ねる。
「えっ? えっ……う、うん、わかってる。黒沢サンがそばにいろ、っていったらそばにいるし、出て行けといったら出て行くから……」
だから嫌わないでほしい。
そうとでも言いたげな目を向ける山田の身体を抱き寄せ、膝の上にのせる。
悔しい。
都合のいい手駒の一つでしかないはずの男が、過去にどう過ごしていたかに嫉妬する。
ほかの誰かと会い、自分の前とは違う声色を使うことすら焦燥を覚える。
苛立ちをごまかすよう、山田のシャツをたくし上げる。
「ま、まって黒沢サン。ちょっ……こんなとこで……」
恥じらうように頬を染め、うつむきながらも寄り添う山田は普段と同じく従順で、献身的で、認めたくないが愛おしい。
一番扱いやすく調教した、外付けの知性。
その程度の存在だったはずなのに、今はその過去にある陰が見通せないのも苛立たしい。
焦れた心をごまかすよう、白い肌に指を滑らす。
かすかな声をあげ、必死に黒沢を呼ぶ甘い声になでられながら、ぼんやりと思うのだ。
いつか、この男が自分の手元を離れたとき、ほかの誰かが、この過去に焦れることもあるのだろうか。
視線の隅に、リュックのバッチが映る。
もしそうなら、いつか、自分の影が。あのバッジのように、なればいい。
電話で使う、よそ行きの声。スマホの待ち受けにある、知らない風景。背負ったリュックの缶バッジ。
何気ない日常の中で山田の見せるわずかな所作に、黒沢は焦れていた。
――何を焦っているんだ、らしくない。
内心つぶやき、口元に手をあてる。
電話の相手は、ゼミの教授だ。普段のようにふてぶてしく生意気なしゃべり方をしない。当然だ。
スマホの待ち受けも、山田がソロキャンプをした時に撮ったもの。山田個人の趣味だ、黒沢の出しゃばるところではない。
リュックの缶バッジは――。
思えば、ずっとつけている。
誰かからもらったものだろうか。大事なものだろうか。それとも、つけていて忘れているだけなのか。真意はわからない。
黒沢と知り合った時に、すでに鞄についていた。
過去に山田のしてきたこと。山田と出会った人。山田の行動の先にできた交友や思い出の品に、ケチをつける理由はない。
理由はないのだが――。
「なぁ、おまえ。この缶バッジ、どうしたんだ?」
置かれたリュックのバッジを、つい指さす。
そんなこと知ってどうする。
頭の中ではわかってるのだが――。
「え? これ? んー、どうしたんだっけな……」
カラカラと、金属の音がする。
ピンクの背景にブラウン管テレビをかたどった白いロゴ。見たこともないデザインだ。
黒沢とは縁のない店のロゴか。WEBではやっているキャラか。それとも――。
「そうそう、友達が、イベント用に作った缶バッジだ。なんか、洋ゲーのキャラみたいだよ」
初めて聞くエピソードだ。
そもそも山田は、友達らしい友達がいないと、そう思っていた。
普段は5Sの活動のためずっと作業部屋に入り浸っているし、スマホにくるメッセージも5Sメンバーのものばかり。
家族と折り合いが悪いのは知っていたし、口下手の上に皮肉屋だ。
こんなに癖のある男にも、友達と呼べる相手がいるのか。
一体どんな相手なんだ。
谷原のようなタイプの賑やかしか。
そもそも、本当にただの友達なのだろうか。
山田は過去の話をしない。
学生時代はあまり良い環境ではなかったからと本人が言うから触れないようにしていた。
だから、山田がこれまで誰と出会ったのか。恋人がいたのかいないのか。そういったことは、何も知らない。
「んー、どうしたの黒沢サン。何か、僕、気に触ることした?」
山田は不安そうに、こちらの顔をのぞき込む。
山田はいつもそうだ。黒沢が少し黙っているだけで、不安で壊れそうになる。
誰にでも否定的で、誰もを見下して冷笑し、誰でも皮肉を叩く山田が、黒沢には従順なのは、心の底から黒沢に見捨てられるのを恐れているからだろう。
逆説的に言うのなら、黒沢が山田を手元におき、寵愛しているからこそ、山田は尊大でいられるのだ。
「ご、ごめん。黒沢サン。僕、気づかなくて……わ、わるいことしたなら、謝るから、だから……」
無言の黒沢に、山田は慌てふためく。
別に怒ってはいないのだが。他人の顔色をうかがい、空気を読もうとする癖が身にしみている山田にとって、黒沢のわずかな苛立ちも肌が焼けるほどにあついのだろう。
心配するな、おまえのせいじゃない。
そう思っているが、焦れた心は静まらない。
黒沢が見てない時間が、山田にはある。
そして、黒沢と出会う前、山田は少しずつ、今のような人間になっていった。
黒沢に服従し、従順で、献身的。
黒沢が笑えば喜び、不機嫌ならおびえ、悲しそうなら必死におどけて慰めようとする。
あまりにもまっすぐで、あまりにも無垢な思いをもつこの一個の宝石をカットしたのは黒沢ではない。
黒沢と出会う前に山田の周りにいた、別の誰かだ。
過去をすべて暴くことはできない。
生まれた場所、育った環境。すべてが違うのだから、手の届かない記憶が山田を構築しているのは仕方ない。
そう、思うのだが――。
「……謝らなくていい。そのかわり、なるべく俺のそばにいろ」
頬に触れたあと、自分の所有物なのだから当然というように山田と唇を重ねる。
「えっ? えっ……う、うん、わかってる。黒沢サンがそばにいろ、っていったらそばにいるし、出て行けといったら出て行くから……」
だから嫌わないでほしい。
そうとでも言いたげな目を向ける山田の身体を抱き寄せ、膝の上にのせる。
悔しい。
都合のいい手駒の一つでしかないはずの男が、過去にどう過ごしていたかに嫉妬する。
ほかの誰かと会い、自分の前とは違う声色を使うことすら焦燥を覚える。
苛立ちをごまかすよう、山田のシャツをたくし上げる。
「ま、まって黒沢サン。ちょっ……こんなとこで……」
恥じらうように頬を染め、うつむきながらも寄り添う山田は普段と同じく従順で、献身的で、認めたくないが愛おしい。
一番扱いやすく調教した、外付けの知性。
その程度の存在だったはずなのに、今はその過去にある陰が見通せないのも苛立たしい。
焦れた心をごまかすよう、白い肌に指を滑らす。
かすかな声をあげ、必死に黒沢を呼ぶ甘い声になでられながら、ぼんやりと思うのだ。
いつか、この男が自分の手元を離れたとき、ほかの誰かが、この過去に焦れることもあるのだろうか。
視線の隅に、リュックのバッチが映る。
もしそうなら、いつか、自分の影が。あのバッジのように、なればいい。
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