インターネット字書きマンの落書き帳
袖山くんの家に泊まりにくる赤川くんの話(赤袖)
袖山くんまじ天使、はっきりわかるんだね!(挨拶)
というワケで、赤川×袖山の話をします。
両片思いではあるもののお互いそれを告げてない関係の二人です。
赤川くんが軽率に袖山くんの家に泊まって行く。
それをすごく喜ぶ袖山くんの話をしているよ。
いずれ付き合う二人の話も好き好き大好き~。
というワケで、赤川×袖山の話をします。
両片思いではあるもののお互いそれを告げてない関係の二人です。
赤川くんが軽率に袖山くんの家に泊まって行く。
それをすごく喜ぶ袖山くんの話をしているよ。
いずれ付き合う二人の話も好き好き大好き~。
『お返しなんていらないから』
袖山勝は布団の中で眠れない時間を過ごしていた。
明日も学校に行かなければいけない。自分は何をするにもモタモタしているから早起きしてもあっという間に家を出る時間になるのだから、ベッドに入ったらすぐに眠りたいのに、あれこれ考えてしまって中々眠れない。
ちゃんと教科書は準備できているだろうか。宿題も全部やっただろうか。予習はしてあるが、ちゃんと正しく出来ているだろうか。先生に指されても答えられるだろうか。
失敗した時の事ばかり考えて、気持ちが重くなる。
鬱々とした気持ちを抱えながら何度目かもわからぬ寝返りをした時、袖山のスマホが光り出す。
何だろうと思い手にとれば、赤川からのメッセージが届いていた。
「……赤川くん?」
袖山は思わず飛び起きて、スマホ画面をじっと見つめる。
赤川は、袖山のクラスメイトだ。友人である荒井から紹介されて以後、あまりゲームで遊んだ事のない自分に色々なゲームを貸してくれている、親切な友人だ。
ただ、親切なだけじゃない。
どんなに自分が下手なプレイをしていても呆れず寄り添って見ていてくれるし、決して袖山を否定することも、けなす事もない。むしろ自分のような人間に「かわいい」とか「優しい」なんて言ってくれる、大切な友人でもある。
「赤川くん、どうしたんだろう……何かあったのかな」
袖山はベッドの上で正座をしながら、スマホの画面を見る。
赤川からは
「ごめん、袖山くん。学校でゲームに熱中していたら終電逃しちゃって……泊めてくれないかな?」
なんて、メッセージが届いていた。
それを見て、袖山は「えぇ!?」と小さく声をあげる。時刻はもう日付が変わりそうになっていたが、こんな時間まで学校に残っている事に驚いたからだ。
赤川はゲーム研究会に所属しているのだが、以前からゲームに熱中しすぎて遅くまで学校に残る事があった。 家に帰るのが億劫になったから、という理由で、鳴神学園まで歩いて来れる袖山の家に泊まる事は時々あったのだが、終電がなくなるまで学校にいたのは初めてだ。
「もう、赤川くんったら……何も怖い目にあってないといいけど……」
袖山は慌ててメッセージを送る。
「家に泊めるのはいいけど、両親が寝ちゃっているから静かにしてね」
それから、続けてメッセージを入れる。
「まだ学校にいるの? 怖いことがおこってない? 迎えに行こうか?」
袖山は臆病な性格で、ホラー映画や怪談の類いは苦手だ。当然、夜に出歩くのも怖い。
だけど、もし赤川に何かあって、赤川が傷ついたり、行方不明になって二度と会えなくなる事の方が、今は怖かった。
それに、 鳴神学園には沢山の怪異が存在している。
毎年多くの生徒が行方不明になっていると言い、その大半は怪異により連れ去られたのだと専らの噂である。
赤川は一度も怪異にあったことがないようで、「幽霊なんて幻覚だろう?」と軽んじているのだが、一年生の頃はサッカー部をしていた袖山は合宿の時、実際に怪異と遭遇したことがあるのだ。
鳴神学園の怪異が本物だということも、夕暮れから急に活発になり現れるということも、身をもって知っていた。
どうしよう、赤川くんが心配だから今からでも外に出ようか。
一人だと怖いけど、懐中電灯と防犯ブザーをもっていればきっと大丈夫だから。
ベッドから飛び起きて着替えようとする袖山に、赤川からのメッセージが入る。
「大丈夫、実はもう袖山くんの家の近所にいるんだよね」
それを見て、袖山は安堵の息をついた。
無事に学校を出る事ができたのなら、大きな心配はいらないだろう。町中で怪異にあった人はそれほど多くないし、袖山の近所はごく普通の住宅街だからだ。
赤川くんが近くまで来ているなら迎えに行こう。
袖山は足音を忍ばせて外に出ると、自宅前の通路を覗く。
月のない夜だった。周囲にある家はどこもライトが消えており、皆が寝入っているようだ。
人の気配もなく静まりかえる街の静けさは夜の暗さをより深めているようで、街灯の少ない道路の先を見ていれば暗闇に吸い込まれそうになる。
赤川くんは今、どこにいるのかな。
無事に家まで着けるといいけど、この暗さだと何かあったら心配だ。
迎えに行きたいけど、どこの道から来るのだろう。
暗がりに目をこらし、誰かが来ないか確かめる。
そんな袖山の肩が、不意に誰かに掴まれた。
「ひ、ひゃぁ!」
驚きのあまりその場に座り込んで小さくなる袖山の前に、浅黒い手が伸びる。
「ごめんごめん、驚かせちゃったかな。僕だよ、袖山くん」
見ればそこに赤川の姿があった。
袖山は大きく息をつくと、しばらくじっと差し出された手を見ていた。
「び、びっくりした……もう家にまで来ていたんだね」
「あぁ、近所まで来てからメッセージを送ったんだ。そうしたら、袖山くんが外に出ているのが見えて声をかけたんだけど、後ろからだったからビックリさせちゃったか。ごめんね、脅かすつもりはなかったんだけど」
袖山はこわごわと赤川の手をとり立ち上がる。
温かな手は袖山の恐怖心を和らげた。
「ううん、僕が臆病すぎるんだよ。ビックリし過ぎちゃってごめんね。それより、家にあがってよ」
「いつもありがとう袖山くん、お邪魔するよ」
袖山は家に上がると赤川を自分の部屋に通す。
本当はリビングでゆっくりお茶でも飲んで欲しかったのだが、両親が起きてきた時に赤川を見たら流石に驚くだろうと思ったからだ。
「はい、これ、赤川くんのトレーナー。僕には大きいけど、赤川くんならちょうどいいと思うから寝間着代わりにどうぞ。シャワーはすぐに浴びれるけど、お風呂に入るなら追い焚きしておこうか? あっ、その前にご飯にしようか? 冷凍食品でいいなら、何かもってくるよ」
部屋に入り、クッションに座る赤川にトレーナーを差し出し、袖山はそう問いかける。
その姿を、赤川は不思議そうに見つめていた。
「そんな、泊めてくれるだけで充分だよ袖山くん。そんなに気を遣わなくてもいいのに」
「でも、何も食べないでゲームをしていたんだよね? ダメだよ、赤川くんはいつもご飯あんまり食べないのに、エナジードリンクばっかり飲んでるって荒井くんから聞いたよ。ちゃんとご飯も食べないと、病気になっちゃうよ。赤川くんだって、いっぱいゲームをやるために長生きしたいでしょ?」
「うん、まぁ……それを言われるとそうだけどね。自分が死んだ後、面白いゲームが出たと思うとやっぱり悔しいから」
「それなら、ちゃんと食べた方がいいよ。でも、もう夜遅いから、うどんとかにしようか? 僕、今ちょっと作ってくるね。あっ、その前にシャワー浴びてきちゃう? その間に作っておくから」
「そうだなぁ……うん、シャワーを浴びてこようかな」
「じゃぁ、僕はうどんを作っておくね。お風呂あがったら僕の部屋に来て」
袖山は、キッチンに向かうため部屋から出ようとする。
「あのさ、袖山くん……」
そんな袖山を、赤川が呼び止めた。
何かあるのだろうか。不思議に思って振り返れば、赤川は俯き視線を逸らす。
「袖山くんは、いつも優しいよね。深夜に泊めてって言っても嫌がらないし、ご飯も作ってくれるし……」
「赤川くんが困っているんだから当然だよ。それに、赤川くんはいつも、僕に親切にしてくれるし、色々なゲームを貸してくれるし……」
「それは、僕が好きでやっている事だって。袖山くんは全然ゲームのこと知らないから、いつも新鮮な感想をくれるだろう。僕はそれを聞くのが楽しからで……だから、何というのかな……僕は、袖山くんの世話になってばかりだから、何かお返しできる事があったらしたいんだけど、何か僕に出来る事ないかな?」
「そんなこと……」
袖山は顔をあげ、優しく笑う。
袖山は、赤川がそばにいるだけで充分嬉しいのだ。一緒にいて、寄り添ってくれるだけで幸せで、声をかけてもらえるだけでいつも楽しく思っている。自分がゲームで遊ぶ姿を見てくれている優しい眼差しが好きだったし、その横顔を見ているだけで心が穏やかになるのだ。
「そんなこと必要ないよ。僕はね、赤川くんが誰かの家に泊めて貰おうって思った時、僕のところに来てくれるのが嬉しいんだ。だって、赤川くんは僕と違って友達も多いよね? それなのに、沢山いる友達のなかから、僕を選んでくれて、ありがとうね」
だから素直に思いを告げ、袖山は部屋から出る。
うどんには何を入れたらいいんだろう。天ぷらは流石にないけど、卵くらいは入れた方がいいか。カマボコやネギもあればいいんだけれども。
赤川のために作る夕食のことばかり考えていた袖山は、聞こえていなかっただろう。
部屋から出る前の赤川が、赤い顔をしながら小さく
「選ぶに決まっているだろう、好きなんだから」
そう呟いていた事を。
袖山勝は布団の中で眠れない時間を過ごしていた。
明日も学校に行かなければいけない。自分は何をするにもモタモタしているから早起きしてもあっという間に家を出る時間になるのだから、ベッドに入ったらすぐに眠りたいのに、あれこれ考えてしまって中々眠れない。
ちゃんと教科書は準備できているだろうか。宿題も全部やっただろうか。予習はしてあるが、ちゃんと正しく出来ているだろうか。先生に指されても答えられるだろうか。
失敗した時の事ばかり考えて、気持ちが重くなる。
鬱々とした気持ちを抱えながら何度目かもわからぬ寝返りをした時、袖山のスマホが光り出す。
何だろうと思い手にとれば、赤川からのメッセージが届いていた。
「……赤川くん?」
袖山は思わず飛び起きて、スマホ画面をじっと見つめる。
赤川は、袖山のクラスメイトだ。友人である荒井から紹介されて以後、あまりゲームで遊んだ事のない自分に色々なゲームを貸してくれている、親切な友人だ。
ただ、親切なだけじゃない。
どんなに自分が下手なプレイをしていても呆れず寄り添って見ていてくれるし、決して袖山を否定することも、けなす事もない。むしろ自分のような人間に「かわいい」とか「優しい」なんて言ってくれる、大切な友人でもある。
「赤川くん、どうしたんだろう……何かあったのかな」
袖山はベッドの上で正座をしながら、スマホの画面を見る。
赤川からは
「ごめん、袖山くん。学校でゲームに熱中していたら終電逃しちゃって……泊めてくれないかな?」
なんて、メッセージが届いていた。
それを見て、袖山は「えぇ!?」と小さく声をあげる。時刻はもう日付が変わりそうになっていたが、こんな時間まで学校に残っている事に驚いたからだ。
赤川はゲーム研究会に所属しているのだが、以前からゲームに熱中しすぎて遅くまで学校に残る事があった。 家に帰るのが億劫になったから、という理由で、鳴神学園まで歩いて来れる袖山の家に泊まる事は時々あったのだが、終電がなくなるまで学校にいたのは初めてだ。
「もう、赤川くんったら……何も怖い目にあってないといいけど……」
袖山は慌ててメッセージを送る。
「家に泊めるのはいいけど、両親が寝ちゃっているから静かにしてね」
それから、続けてメッセージを入れる。
「まだ学校にいるの? 怖いことがおこってない? 迎えに行こうか?」
袖山は臆病な性格で、ホラー映画や怪談の類いは苦手だ。当然、夜に出歩くのも怖い。
だけど、もし赤川に何かあって、赤川が傷ついたり、行方不明になって二度と会えなくなる事の方が、今は怖かった。
それに、 鳴神学園には沢山の怪異が存在している。
毎年多くの生徒が行方不明になっていると言い、その大半は怪異により連れ去られたのだと専らの噂である。
赤川は一度も怪異にあったことがないようで、「幽霊なんて幻覚だろう?」と軽んじているのだが、一年生の頃はサッカー部をしていた袖山は合宿の時、実際に怪異と遭遇したことがあるのだ。
鳴神学園の怪異が本物だということも、夕暮れから急に活発になり現れるということも、身をもって知っていた。
どうしよう、赤川くんが心配だから今からでも外に出ようか。
一人だと怖いけど、懐中電灯と防犯ブザーをもっていればきっと大丈夫だから。
ベッドから飛び起きて着替えようとする袖山に、赤川からのメッセージが入る。
「大丈夫、実はもう袖山くんの家の近所にいるんだよね」
それを見て、袖山は安堵の息をついた。
無事に学校を出る事ができたのなら、大きな心配はいらないだろう。町中で怪異にあった人はそれほど多くないし、袖山の近所はごく普通の住宅街だからだ。
赤川くんが近くまで来ているなら迎えに行こう。
袖山は足音を忍ばせて外に出ると、自宅前の通路を覗く。
月のない夜だった。周囲にある家はどこもライトが消えており、皆が寝入っているようだ。
人の気配もなく静まりかえる街の静けさは夜の暗さをより深めているようで、街灯の少ない道路の先を見ていれば暗闇に吸い込まれそうになる。
赤川くんは今、どこにいるのかな。
無事に家まで着けるといいけど、この暗さだと何かあったら心配だ。
迎えに行きたいけど、どこの道から来るのだろう。
暗がりに目をこらし、誰かが来ないか確かめる。
そんな袖山の肩が、不意に誰かに掴まれた。
「ひ、ひゃぁ!」
驚きのあまりその場に座り込んで小さくなる袖山の前に、浅黒い手が伸びる。
「ごめんごめん、驚かせちゃったかな。僕だよ、袖山くん」
見ればそこに赤川の姿があった。
袖山は大きく息をつくと、しばらくじっと差し出された手を見ていた。
「び、びっくりした……もう家にまで来ていたんだね」
「あぁ、近所まで来てからメッセージを送ったんだ。そうしたら、袖山くんが外に出ているのが見えて声をかけたんだけど、後ろからだったからビックリさせちゃったか。ごめんね、脅かすつもりはなかったんだけど」
袖山はこわごわと赤川の手をとり立ち上がる。
温かな手は袖山の恐怖心を和らげた。
「ううん、僕が臆病すぎるんだよ。ビックリし過ぎちゃってごめんね。それより、家にあがってよ」
「いつもありがとう袖山くん、お邪魔するよ」
袖山は家に上がると赤川を自分の部屋に通す。
本当はリビングでゆっくりお茶でも飲んで欲しかったのだが、両親が起きてきた時に赤川を見たら流石に驚くだろうと思ったからだ。
「はい、これ、赤川くんのトレーナー。僕には大きいけど、赤川くんならちょうどいいと思うから寝間着代わりにどうぞ。シャワーはすぐに浴びれるけど、お風呂に入るなら追い焚きしておこうか? あっ、その前にご飯にしようか? 冷凍食品でいいなら、何かもってくるよ」
部屋に入り、クッションに座る赤川にトレーナーを差し出し、袖山はそう問いかける。
その姿を、赤川は不思議そうに見つめていた。
「そんな、泊めてくれるだけで充分だよ袖山くん。そんなに気を遣わなくてもいいのに」
「でも、何も食べないでゲームをしていたんだよね? ダメだよ、赤川くんはいつもご飯あんまり食べないのに、エナジードリンクばっかり飲んでるって荒井くんから聞いたよ。ちゃんとご飯も食べないと、病気になっちゃうよ。赤川くんだって、いっぱいゲームをやるために長生きしたいでしょ?」
「うん、まぁ……それを言われるとそうだけどね。自分が死んだ後、面白いゲームが出たと思うとやっぱり悔しいから」
「それなら、ちゃんと食べた方がいいよ。でも、もう夜遅いから、うどんとかにしようか? 僕、今ちょっと作ってくるね。あっ、その前にシャワー浴びてきちゃう? その間に作っておくから」
「そうだなぁ……うん、シャワーを浴びてこようかな」
「じゃぁ、僕はうどんを作っておくね。お風呂あがったら僕の部屋に来て」
袖山は、キッチンに向かうため部屋から出ようとする。
「あのさ、袖山くん……」
そんな袖山を、赤川が呼び止めた。
何かあるのだろうか。不思議に思って振り返れば、赤川は俯き視線を逸らす。
「袖山くんは、いつも優しいよね。深夜に泊めてって言っても嫌がらないし、ご飯も作ってくれるし……」
「赤川くんが困っているんだから当然だよ。それに、赤川くんはいつも、僕に親切にしてくれるし、色々なゲームを貸してくれるし……」
「それは、僕が好きでやっている事だって。袖山くんは全然ゲームのこと知らないから、いつも新鮮な感想をくれるだろう。僕はそれを聞くのが楽しからで……だから、何というのかな……僕は、袖山くんの世話になってばかりだから、何かお返しできる事があったらしたいんだけど、何か僕に出来る事ないかな?」
「そんなこと……」
袖山は顔をあげ、優しく笑う。
袖山は、赤川がそばにいるだけで充分嬉しいのだ。一緒にいて、寄り添ってくれるだけで幸せで、声をかけてもらえるだけでいつも楽しく思っている。自分がゲームで遊ぶ姿を見てくれている優しい眼差しが好きだったし、その横顔を見ているだけで心が穏やかになるのだ。
「そんなこと必要ないよ。僕はね、赤川くんが誰かの家に泊めて貰おうって思った時、僕のところに来てくれるのが嬉しいんだ。だって、赤川くんは僕と違って友達も多いよね? それなのに、沢山いる友達のなかから、僕を選んでくれて、ありがとうね」
だから素直に思いを告げ、袖山は部屋から出る。
うどんには何を入れたらいいんだろう。天ぷらは流石にないけど、卵くらいは入れた方がいいか。カマボコやネギもあればいいんだけれども。
赤川のために作る夕食のことばかり考えていた袖山は、聞こえていなかっただろう。
部屋から出る前の赤川が、赤い顔をしながら小さく
「選ぶに決まっているだろう、好きなんだから」
そう呟いていた事を。
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