インターネット字書きマンの落書き帳
アパ殺世界のショージとマサル(袖山くん過去模造あり)
アパ殺少しずつプレイしています。
リメイクではなく、リブート版ベースの新作……ということで。
アパシー 鳴神学園七不思議では見られなかったキャラの一面や物語が見れて楽しいですね。
この話は、アパ殺の世界線で明らかになった荒井と袖山の関係性が「尊い……」と思ったので描きました。
メインは袖山くんの過去模造です。
袖山くん、尊いぞ……いと健やかに元気に育て……。
リメイクではなく、リブート版ベースの新作……ということで。
アパシー 鳴神学園七不思議では見られなかったキャラの一面や物語が見れて楽しいですね。
この話は、アパ殺の世界線で明らかになった荒井と袖山の関係性が「尊い……」と思ったので描きました。
メインは袖山くんの過去模造です。
袖山くん、尊いぞ……いと健やかに元気に育て……。
『後悔したくないだけだから』
荒井は袖山とともに帰り道を歩いていた。
グラウンドに西日が射し、校長の銅像が赤く照らされている。
「袖山くん、どうして僕のことを誘ったりしたのかな」
僅かに土台がずれた銅像を見て、荒井はぽつりと呟いた。
鳴神学園に入って一ヶ月ほど経った頃、荒井はすでに飽きていた。
学校という画一的なカリキュラムの元で授業を強いられるのは苦痛だったし、どこを見ても話の合う相手がいなかったからだ。
もう学校などやめて家に引きこもって生活しよう。
自分の学力があれば選べる進路はいくらでもあるだろうし、つまらない人付き合いも、無駄な知識も必要ない。
そう思った荒井に声をかけてきたのが、袖山だった。
「学校に来てくれると嬉しいなぁ」
「荒井くんのこと、すごい人だと思っているんだ。だから、友達になりたいんだよ」
声をかけられた時は、つまらない友達ごっこをしたいだけの人間なのだろうと思っていた。
クラスみんなで仲良くだとか、学生生活の友情だとか、つまらない人間関係に翻弄されるのは嫌だったし、付き合うなら自分に見合った価値のある人間と付き合いと思っていた荒井にとって、取り立てて特技もなければ成績も人並み程度、運動に関しては人並み以下で体も弱く、よく喘鳴のため無理な運動が出来ない袖山など、一緒にいる理由も見いだせなかった。
「見て、荒井くん。これさ、少し変なんだよね。ちょっとずつ動いているみたいで……」
だけど、袖山の一言が荒井に「明日も学校に来てみよう」と思えるようにしてくれた。
「荒井くんがよかったら、明日も一緒に確かめてみない? 僕一人だと見間違えかもしれないから……」
袖山が、荒井にとって興味を抱ける話をもってきてくれた。
そのおかげで荒井は学校に通うようになり、今は優れた才能をもつ友人を多く見つけ、人並みに楽しい学園生活を送れている。
全てのきっかけは袖山だった。
彼がいなったら、今の荒井はなかったろう。
だからふと、気になってそんな事を口にしていた。
すると袖山はいつものように困った顔をして、申し訳なさそうに話し始めた。
「それなんだけど、僕は本当に荒井くんと友達になりたいな、と思っただけなんだよ。だから今でも、荒井くんい嫌な思いをさせちゃったら悪かったな、って思っているんだよね」
「そんなことないよ、僕はあの時、本当に学校なんて行くのをやめようと考えていたから……袖山くんが声をかけてくれなかったら、僕はもう学校を辞めていたと思うんだ」
「うん、僕は荒井くんが学校を辞めないでいてくれて、本当に良かったと思っているよ。でも、それは荒井くんが学校に興味をもったからで、僕だけの力じゃないよ。それに……僕は、本当に、僕のわがままで荒井くんに声をかけたんだ」
そこで、袖山は少し俯き思案顔をする。
夕日は沈み、周囲は徐々に薄暗くなっていく。
「……それに、僕はね。小さい頃、少しだけ後悔していることがあるんだ。だから、僕はもう、そんな事をしたくない。そう思って……身勝手に、人に声をかけているだけなんだ。だからね、本当に気にしないでほしいんだよ」
「小さい時、何かあったのかな。袖山くん」
「う、うん……ごめんね、荒井くん。こんな話は聞きたくないだろうけど……」
袖山はそう前置きしてから、訥々と語り出した。
※※※
僕は、小さい頃から体が弱くて、両親を随分困らせたんだよね。
お父さんからも、お母さんからも、男の子なのに体が弱い、体力がない、って。
大きな病気はしなかったんだけど、それでも入院する事がたまにあってさ。
一度だけ、夏休みの頃かな。少し長めに入院することになったんだ。
検査入院で、大きな手術とかではないんだけど、それでも結構不安だったな。
僕が入院したのは小児科の病棟で、周りは僕くらいか、僕より年下の小さい子も結構多かったんだ。
同室の子で、僕と同学年だったのは一人だけかな。
彼は僕よりもっと具合が悪いみたいで、普段は車椅子に乗って移動をしていたんだ。
僕は入院はしたけど、自力で歩けたし、腕には常に点滴をいれていたけど移動は自由だったから、彼よりは元気だったと思うよ。
それで、その病院は週に一度、図書館から絵本の貸し出しがきたり、日曜日はボランティアの人が子供たちと遊んでくれたんだよ。
入院中って時間が経つのが遅くてね。
図書館で借りる絵本、2,3冊をもって、僕は他の子と本を交換して読んだり、自分より年下の子に本を読み聞かせたりしていたんだ。
ボランティアの人は日曜日に来て、僕らと簡単な、無理のないゲームをしたり、手品を見せてくれたり。
色々なことをして楽しませてくれたんだよ。
……僕はね、同室にいる同じ歳の彼を、いつも誘ったんだ。
図書館の本も、ボランティアの人も、とても楽しいから一緒に見に行かないかい?
そういって、ね。
でも彼はいつも、「大丈夫だから」とか「車椅子だと迷惑だし」って断っていたんだ。
僕も、断られたらあんまり強くはいえないな、って思ったんだよね。
無理強いして、嫌な奴だって想われたくもなかったから。
彼はね……僕が入院しているとき、すごく大きな発作を起こしたんだよ。
僕が見た時、顔色が真っ青で。
死んじゃう、って思って、僕がナースコールを押したんだ。
それで、すぐ来てくれたお医者さんが治療している姿を、僕はドキドキしながら見ていたんだ。
どうか助かって欲しい、元気になってほしいって。
そうして見ていると、彼の声が、聞こえてきたんだよ。
「まさるくん、ごめんね。僕、本当は絵本読みたかった」
「手品、見たかったしゲームで遊びたかった」
「まさるくんに迷惑かけるといけないから、いえなかった、ごめんね」
……その後、彼は別の部屋につれていかれてね。
僕が退院するまで、帰ってこなかったんだ。
僕は……僕は、本当に相手が遠慮しているかどうかわからないタイプの人間なんだな、と思ったから、無理にでも誘えば良かったって今でも後悔しているんだ。
だから、僕が今でもみんなを誘ったり、声をかけたりするの、自分のためなんだよ。
もし、遠慮していて、後で本当は行きたかった、とか。そういう思いをさせちゃうの、本当に悲しいから。
そう思ってるから声をかけているだけで、えらくないんだよ。僕のわがままなんだ。
※※※
全てを語り終わった後、袖山は深く息を吐く。
「だから、僕って、自分が後悔したくないから声をかけたり、誘ったりしているだけなんだ。あんまり積極的になれないから上手く行かないけど……本当に、僕のためにしていることだから、荒井くんが僕に感謝しなくてもいいんだよ。むしろ、僕は荒井くんと友達になれて感謝してるくらいだから」
日が沈み、周囲は薄闇に包まれる。
袖山は変わらぬ困ったような笑顔を、相変わらず浮かべていた。
荒井はそんな袖山に、静かに手を差し出す。
「……僕も、袖山くんと友達でいられてうれしいよ。あの時、キミが声をかけてくれて、本当に良かった」
「荒井くん……うん、ありがとう。少しでも、そう思ってくれたら……僕も、うれしいよ」
袖山は差し出された手を握り、自然と二人で歩き出す。
空には薄雲の下、月が爛々と輝いていた。
荒井は袖山とともに帰り道を歩いていた。
グラウンドに西日が射し、校長の銅像が赤く照らされている。
「袖山くん、どうして僕のことを誘ったりしたのかな」
僅かに土台がずれた銅像を見て、荒井はぽつりと呟いた。
鳴神学園に入って一ヶ月ほど経った頃、荒井はすでに飽きていた。
学校という画一的なカリキュラムの元で授業を強いられるのは苦痛だったし、どこを見ても話の合う相手がいなかったからだ。
もう学校などやめて家に引きこもって生活しよう。
自分の学力があれば選べる進路はいくらでもあるだろうし、つまらない人付き合いも、無駄な知識も必要ない。
そう思った荒井に声をかけてきたのが、袖山だった。
「学校に来てくれると嬉しいなぁ」
「荒井くんのこと、すごい人だと思っているんだ。だから、友達になりたいんだよ」
声をかけられた時は、つまらない友達ごっこをしたいだけの人間なのだろうと思っていた。
クラスみんなで仲良くだとか、学生生活の友情だとか、つまらない人間関係に翻弄されるのは嫌だったし、付き合うなら自分に見合った価値のある人間と付き合いと思っていた荒井にとって、取り立てて特技もなければ成績も人並み程度、運動に関しては人並み以下で体も弱く、よく喘鳴のため無理な運動が出来ない袖山など、一緒にいる理由も見いだせなかった。
「見て、荒井くん。これさ、少し変なんだよね。ちょっとずつ動いているみたいで……」
だけど、袖山の一言が荒井に「明日も学校に来てみよう」と思えるようにしてくれた。
「荒井くんがよかったら、明日も一緒に確かめてみない? 僕一人だと見間違えかもしれないから……」
袖山が、荒井にとって興味を抱ける話をもってきてくれた。
そのおかげで荒井は学校に通うようになり、今は優れた才能をもつ友人を多く見つけ、人並みに楽しい学園生活を送れている。
全てのきっかけは袖山だった。
彼がいなったら、今の荒井はなかったろう。
だからふと、気になってそんな事を口にしていた。
すると袖山はいつものように困った顔をして、申し訳なさそうに話し始めた。
「それなんだけど、僕は本当に荒井くんと友達になりたいな、と思っただけなんだよ。だから今でも、荒井くんい嫌な思いをさせちゃったら悪かったな、って思っているんだよね」
「そんなことないよ、僕はあの時、本当に学校なんて行くのをやめようと考えていたから……袖山くんが声をかけてくれなかったら、僕はもう学校を辞めていたと思うんだ」
「うん、僕は荒井くんが学校を辞めないでいてくれて、本当に良かったと思っているよ。でも、それは荒井くんが学校に興味をもったからで、僕だけの力じゃないよ。それに……僕は、本当に、僕のわがままで荒井くんに声をかけたんだ」
そこで、袖山は少し俯き思案顔をする。
夕日は沈み、周囲は徐々に薄暗くなっていく。
「……それに、僕はね。小さい頃、少しだけ後悔していることがあるんだ。だから、僕はもう、そんな事をしたくない。そう思って……身勝手に、人に声をかけているだけなんだ。だからね、本当に気にしないでほしいんだよ」
「小さい時、何かあったのかな。袖山くん」
「う、うん……ごめんね、荒井くん。こんな話は聞きたくないだろうけど……」
袖山はそう前置きしてから、訥々と語り出した。
※※※
僕は、小さい頃から体が弱くて、両親を随分困らせたんだよね。
お父さんからも、お母さんからも、男の子なのに体が弱い、体力がない、って。
大きな病気はしなかったんだけど、それでも入院する事がたまにあってさ。
一度だけ、夏休みの頃かな。少し長めに入院することになったんだ。
検査入院で、大きな手術とかではないんだけど、それでも結構不安だったな。
僕が入院したのは小児科の病棟で、周りは僕くらいか、僕より年下の小さい子も結構多かったんだ。
同室の子で、僕と同学年だったのは一人だけかな。
彼は僕よりもっと具合が悪いみたいで、普段は車椅子に乗って移動をしていたんだ。
僕は入院はしたけど、自力で歩けたし、腕には常に点滴をいれていたけど移動は自由だったから、彼よりは元気だったと思うよ。
それで、その病院は週に一度、図書館から絵本の貸し出しがきたり、日曜日はボランティアの人が子供たちと遊んでくれたんだよ。
入院中って時間が経つのが遅くてね。
図書館で借りる絵本、2,3冊をもって、僕は他の子と本を交換して読んだり、自分より年下の子に本を読み聞かせたりしていたんだ。
ボランティアの人は日曜日に来て、僕らと簡単な、無理のないゲームをしたり、手品を見せてくれたり。
色々なことをして楽しませてくれたんだよ。
……僕はね、同室にいる同じ歳の彼を、いつも誘ったんだ。
図書館の本も、ボランティアの人も、とても楽しいから一緒に見に行かないかい?
そういって、ね。
でも彼はいつも、「大丈夫だから」とか「車椅子だと迷惑だし」って断っていたんだ。
僕も、断られたらあんまり強くはいえないな、って思ったんだよね。
無理強いして、嫌な奴だって想われたくもなかったから。
彼はね……僕が入院しているとき、すごく大きな発作を起こしたんだよ。
僕が見た時、顔色が真っ青で。
死んじゃう、って思って、僕がナースコールを押したんだ。
それで、すぐ来てくれたお医者さんが治療している姿を、僕はドキドキしながら見ていたんだ。
どうか助かって欲しい、元気になってほしいって。
そうして見ていると、彼の声が、聞こえてきたんだよ。
「まさるくん、ごめんね。僕、本当は絵本読みたかった」
「手品、見たかったしゲームで遊びたかった」
「まさるくんに迷惑かけるといけないから、いえなかった、ごめんね」
……その後、彼は別の部屋につれていかれてね。
僕が退院するまで、帰ってこなかったんだ。
僕は……僕は、本当に相手が遠慮しているかどうかわからないタイプの人間なんだな、と思ったから、無理にでも誘えば良かったって今でも後悔しているんだ。
だから、僕が今でもみんなを誘ったり、声をかけたりするの、自分のためなんだよ。
もし、遠慮していて、後で本当は行きたかった、とか。そういう思いをさせちゃうの、本当に悲しいから。
そう思ってるから声をかけているだけで、えらくないんだよ。僕のわがままなんだ。
※※※
全てを語り終わった後、袖山は深く息を吐く。
「だから、僕って、自分が後悔したくないから声をかけたり、誘ったりしているだけなんだ。あんまり積極的になれないから上手く行かないけど……本当に、僕のためにしていることだから、荒井くんが僕に感謝しなくてもいいんだよ。むしろ、僕は荒井くんと友達になれて感謝してるくらいだから」
日が沈み、周囲は薄闇に包まれる。
袖山は変わらぬ困ったような笑顔を、相変わらず浮かべていた。
荒井はそんな袖山に、静かに手を差し出す。
「……僕も、袖山くんと友達でいられてうれしいよ。あの時、キミが声をかけてくれて、本当に良かった」
「荒井くん……うん、ありがとう。少しでも、そう思ってくれたら……僕も、うれしいよ」
袖山は差し出された手を握り、自然と二人で歩き出す。
空には薄雲の下、月が爛々と輝いていた。
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