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インターネット字書きマンの落書き帳

   
ひょっとしたらデートに誘っているのかもしれない風間と坂上
何とか集会を乗り越えて新聞記事を書いている。
そんな平和な世界線の坂上くんが、風間さんに絡まれて「うへー」してるだけの話ですよ。

今回は、頑張って新聞記事を書いている新聞部に風間さんが差し入れをもってくる話です。
差し入れもってきたついでにデート誘っている!?
みたいな話になってますぞい。

Twitterランドでこのネタ書いた時は新堂が飯を食わせてましたが、風間もやってくれるだろうな。
自分の金でなければ!

そう思ったので、風間さんに来てもらいました。
坂上くんもきっと嬉しいでしょう。(他人事)



『休日はおごりデート』

 七不思議の集会が無事に終わってから数日後、記事の下書きに悪戦苦闘する坂上の前に風間が現れた。

「やっほー、坂上くん。ボクたちの華麗なる活躍を描いた記事は進んでいるかい? これ、差し入れだよー」

 片手には惣菜パンや菓子パンがパンパンにつまったビニール袋を提げている。
 あの風間が、わざわざ新聞部の部室まで来て差し入れなどどういう風の吹き回しだろう。
 二つ年下の後輩である坂上と顔をあわせるたび「500円を貸してくれないか」なんてニコニコ顔で圧を加え、500円がないと言えば「ジュースをおごってくれるだけでもいいよ」「コーラでいいから」「メロンパンが食べたい気分かなぁ」なんて何かをおごるように圧をくわえてくるのが風間だ。誰かのために差し入れをするようなキャラではないが、毒でも盛っているのだろうか。
 疑いの眼差しを向ける坂上の横で、日野はビニール袋の中身を改めた。

「何言ってるんだ風間、さも自分が差し入れに来たように言うんじゃない。これは岩下から託されたものだろう」
「えっ、岩下さんから?」

 坂上は集会で出会った岩下の姿を思い浮かべる。
 どこか物憂げな雰囲気の岩下は少し取っつきにくい印象があったから、こちらに差し入れ等と言う気づかいをしてくれると思っていなかったからだ。

「岩下はあれで結構面倒見がいいんだぞ。演劇部の部長なだけあって、色々気遣ってくれるんだ。最も、岩下との約束を守っている間に限るけどな」

 日野は笑いながら中に入ったパンを吟味する。
 購買で人気の焼きそばパンに、たっぷりのタルタルソースがかかった海老フライパン。定番のメロンパンの他に、マーブルチョコパンやたっぷりのホイップクリームがはさまったフルーツサンドなど、甘い菓子パンも沢山入っていた。

「何だよ、日野。ボクが運んだんだからボクのおかげみたいなもんだろう」

 風間は椅子にこしかけると、当然の権利であるかのようにコロッケパンを開ける。
 岩下に託された差し入れを自分も食べようとするのは何とも風間らしいと思いながら、坂上はホイップクリーム入りのメロンパンを取り出した。

「せっかく差し入れが来たから少し休憩しようか、誰かジュースを買ってきてくれないかな。お金は僕が出すから」
「はーい、それなら私が買ってきます。みなさーん、何がいいですかー」

 朝比奈は他の部員たちに声をかければ、倉田が勢い良く手を上げる。
 そして手際よく他の部員たちから注文を請け負うと、すぐさま購買部へと賭けだした。
 倉田はこういった時、いつでも手を上げ率先して雑務も請け負うから先輩たちの覚えもいい。この行動力とまめな性格は見習わなければいけない。

「恵美ちゃん、ボクはコーラをお願いね」

 しかし、どさくさに紛れて部員でも何でもない風間が注文を入れているのは本当にどうかと思う。やはり風間は見習ってはいけないタイプの先輩だ。反面教師にしよう。
 倉田が買い物に出かけている最中、他の部員たちも各々どんなパンがあるのか確認しに集まってきた。部活動を初めてから小一時間ほどたつから、皆そろそろ集中力が切れ始めた頃だったのだろう。
 坂上は皆より先にメロンパンを手に取り一足先に口にする。必死に記事を書いていた疲れと空腹もありいつもよりメロンパンが美味しく思えたからつい勢いよく頬張れば、風間はさも面白いものを見つけたかのような様子で坂上の頬をつついた。

「何だ坂上くん、キミはリスか何かかな? 頬袋いっぱいにパンを詰め込んで、随分可愛いじゃないか」

 暗に坂上の背丈が小さいことをからかっているのだろうか。
 どうせ僕は小さいですよ。風間さんみたいに背ばっかり大きいでくの坊にならないよう気をつけます。
 そんな嫌味でも言ってやったほうが、風間には丁度いい薬になるだろうか。
 いや、相手は先輩だから流石に失礼なことは言えない。日野の友達でもある人物を冷淡にあしらう訳にはいかない。
 こういう時、荒井さんだったらもっとバッサリ言いたい事を言うんだろうけどな。
 あれこれ考える坂上の隣に座り、日野はコッペパンを開けた。マーガリンと小倉あんがたっぷり入ったコッペパンだ。おしるこドリンクといい、日野は餡子を使った甘味が好きなのかもしれない。

「坂上は本当に頬が柔らかいんだな。頬が柔らかい人間は、普段笑っていないから表情筋を使ってない。だから頬が柔らかい……なんて俗説があるが、坂上、あんまり笑ったりしないのか」

 日野も坂上の頬をつつきながらそんなコトを言う。
 二人とも坂上が頬いっぱいにパンを詰め込んでいるのがそんなに面白いのだろうか。

「ち、ちゃんと笑ってると思いますよ。バラエティ番組とかも見ますし、友達とも下らない話はしますから」
「何だい坂上くん、キミは笑っていないのかい」

 風間はめずらしく心配そうな表情で坂上の顔をのぞき込む。
 だから、笑ってない訳ではないのだ。勝手に勘違いをしないでほしいし、風間のせいでいつも苦笑いをするハメになっているのではないか。
 集会で会ってからわずか数日でかけられた多数の迷惑と厄介ごとを思い出し、少し唇を尖らせる坂上を見て、風間は気の毒そうに頭を撫でた。

「何て可愛そうなんだ! よし、ボクが特別に楽しませてあげよう。今度の休日は空いてるかい?」
「え、あ……空いてますけど」
「だったらボクが特別に楽しい所につれていってあげよう。映画館でも遊園地でも好きな場所を言うといい。もちろん、キミのオゴリだけどね」
「えぇ!? 何で僕のおごりで風間さんと一緒に出かけないといけないんですか……」
「はは、急に次の休みが楽しみになってきたね。待ち合わせは駅前に10時にしようか、楽しみにしてるよ坂上くん」

 風間は坂上の頭を押さえつけるように撫でると、上機嫌で部室を後にする。

「ただいま戻りましたー! 風間さんどうしたんですか、ものすごいゴキゲンな様子でコーラを奪って出ていきましたけど……」

 部に戻った倉田が不思議そうに振り返り問いかけ、坂上は大きなため息で返事をする。
 どうして休日にまで風間と出かけないといけないのだ。しかもコチラのオゴリだとは。
 だが、行かなければきっとしつこく絡んでくるだろう。もう行かないという選択肢は断たれているのだ。

「はは、風間にデートの約束をとりつけられるとは災難だったな」

 おしるこドリンクを飲みながら、日野は他人事のように笑う。
 どうやらあの先輩にはまだしばらく振り回されそうだ。

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