インターネット字書きマンの落書き帳
バレンタインに皮肉がブーメランになる赤川と袖山のはなし(赤川×袖山/BL)
平和な世界線で付き合っている赤川×袖山の話をします。
というワケで、バレンタインデーですよね!(今日の日付を全く見ない発言)
袖山は料理ぜんぜんしないけど、「せっかく恋人が出来たから初めてのバレンタインだし頑張ってチョコレートつくる!」って息巻いて、頑張って作ってほしい……。
なんて思いながら書きました。
俺は赤川×袖山が普通の男子高校生っぽくお付き合いする姿が……だぁいすきッ……。
なぜなら袖山を書くのが大好きだから……。
というワケで、バレンタインデーですよね!(今日の日付を全く見ない発言)
袖山は料理ぜんぜんしないけど、「せっかく恋人が出来たから初めてのバレンタインだし頑張ってチョコレートつくる!」って息巻いて、頑張って作ってほしい……。
なんて思いながら書きました。
俺は赤川×袖山が普通の男子高校生っぽくお付き合いする姿が……だぁいすきッ……。
なぜなら袖山を書くのが大好きだから……。
『初めての手作り』
社会人も近年では上司や同僚の顔を立てるよう義理でチョコレートを渡す事は少なくなったようだが、学生にとって親愛や恋慕の情を伝えるのにはうってつけの行事がバレンタインデーなのは今も昔も代わりはないだろう。
2月も半ばを過ぎ、新一年生でも学生生活にもすっかり慣れた頃ともなれば好きな相手の一人や二人は出来てくるもので、思いを伝える為や日頃の感謝のためチョコレートを渡すという生徒も少なくない。そして、男子の多くは今日、自分は誰かからチョコレートをもらえるのかどうか期待しながら周囲の動向を見守っているものである。
まだ自分はもらえてない、あの生徒は随分もらっているようだ、あの生徒は誰かにあげるのだろうか。そんな思いを抱きながら教室を眺めるのも今でしか味わえない感情でありそれはチョコレートの味より深い味わいがあるものだ。
驚くほどチョコレートをもらっている友人などは見なくても目立ってしまうものだ。
バレンタイン当日、すでに紙袋がチョコレートでいっぱいになっている荒井を友人たちは恨めしそうに見つめていた。
「すごいねぇ荒井くん。こんなにチョコレートをもらう人って本当にいるんだ」
時田はカメラ片手に紙袋に入ったチョコレートを勝手に並べて撮影をしている。
丁寧に並べられた沢山のチョコは催事場にある高級チョコレートの包みに混じり、手作りらしいラッピングをされたブラウニーやクッキーもいくつか見られた。
「勝手に出さないでくださいよ時田くん。手渡ししてくれた人に失礼じゃないですか」
勝手に紙袋を開けられているのに気付いた荒井は広げられたチョコを元の場所へとしまう。慌てた素振りを見せるが時田の作る映画ファンを自称する荒井のことだから、並べられていい絵がとれるまで待っていたのは想像に難くないだろう。
赤川は手作りと思しき包み紙を一つつまみあげると、どこか呆れた顔を見せた。
「いやぁ、それにしてもみんな荒井くんのためによく作ってくるよね、どうせ全部捨てるんでしょ、これ」
「だ、ダメだよ赤川くん。捨てるなんて勿体ないだろう。みんな荒井くんのために作ってくれてるんだろうから……」
赤川の無責任に残酷な言葉を、隣にいた袖山は慌てて窘める。人の良い袖山にとって、もらった食べ物を捨てるという話そのものが悪い事に思えるのだろう。だが、赤川は止める袖山を横に、大仰な様子で手を広げると露骨なまでの嘲笑を浮かべる。
「何言ってるんだよ袖山くん。ここにあるチョコレートの殆どは普段、荒井くんの知らない生徒がくれたものだろう。荒井くんは普段、僕らと一緒に行動していて女の子の友達なんていないからね。そんな殆ど顔も知らないような相手から突然手作りの品を渡されて、素直に食べる方が馬鹿だと思うよ。見知った相手ならいざしらず、名前も覚えてないような相手がくれたプレゼントだ、毒が入っているかもしれないだろう?」
「そ、そんな事ないよ。毒なんて大げさだって……」
袖山は少し悲しそうに止めるが、赤川は滅多に感情を露わにしない袖山が自分を留める姿を見るのが少し面白くなり、調子に乗ってさらに饒舌に語る。
「毒じゃなくても、家庭のキッチンなんて雑菌の温床だからね。滅多に料理なんてしてない奴が衛生管理も気にせず、慣れないレシピを見て作ったチョコレートなんて雑菌だらけで怖くて食べられるものじゃないさ。荒井くんだってそれくらい、わかってるんだろう?」
そして挑発するよう、意地の悪い笑みを荒井へと向ける。荒井は少し考える素振りを見せると、申し訳なさそうに袖山へ視線を向けた。
「別に赤川くんの意見を全面的に認めるつもりはないよ。だけど、見知らぬ相手からもらった食べ物は少し怖いというのは確かにそうだね……だから、プレゼントしてくれた人には悪いけど、このチョコレートをどうするかは、親と相談して決めようと思ってるんだ」
捨てるという言葉こそ使わなかったが、親と相談したらやはり処分するつもりなのだろう。
「そ、そっか……そうだよね、うん。確かに食べ物って、危ないもんね……」
袖山は納得したが、少し哀しそうにチョコレートでいっぱいになった紙袋を見つめていた。
※※※
ホームルームが終わると、赤川はすぐさま荷物をまとめゲーム研究会の部室へと向かっていた。期末テストが近づいた今は、部活動など原則中止となっているのだが、真っ直ぐ家に帰れば家族からテスト前なのだから勉強しろとせっつかれるのは目に見えている。それなら、学校でゲームをして時間を潰した方がよほど有意義だと思ったからだ。
元々頭が良く勉強の要領も良い赤川は授業と塾だけでもテストは平均点以上をとることが出来たのだから、テスト前に慌てて勉強する必用もないと思っていた。勉強ばかりしていても息が詰まると思っていたから、家で遊べない分学校で1時間ほどゲームをしてから帰るつもりだった。当然、部活棟は人の気配はなくこれならゲームに集中できそうだ。
「あ、あの。赤川くん!」
一人になったのを待っていたかのように、袖山が呼び止めた。
「ん、どしたのさ袖山くん。今はテスト期間中だろ?」
赤川はいま、袖山と付き合っている。それは周囲の友人も公認であり、普段だったら部室に誘い一緒にゲームをしている所だったが、テスト期間中は真面目に勉強したい袖山の気持ちを汲んで誘わないでいた。それなのに袖山から声をかけてきたものだから、珍しいと思ったのだ。
彼はあまり要領が良くないので、テスト勉強をしてもなかなか思うように点が延びないのをいつも悩んでいた。当然、テスト前の今日は遊びに行かず真っ直ぐ家に帰り勉強に励むのだろうと思っていたのだが。
不思議に思う赤川を前に、袖山は顔を真っ赤にして紙袋を差し出した。
「ご、ごめん。今日、バレンタインだから……赤川くんに、チョコレート。一人になったら、渡そうと思って……その、う、受け取ってくれるかな」
紙袋の口からは、いかにも手作りのラッピングが見える。
まさか、袖山がそんな準備をしていたなんて。自分には袖山がいるから元より女子からのチョコレートはたとえ義理でも受け取らないつもりでいた。だからチョコレートなどとは無縁だと思い込み、自分はもらう予定がないからこそ荒井を茶化していたからだ。
「……ご、ごめんね。慣れないくせに手作りして、雑菌の温床になってるかもしれないから。危ないと思ったら、捨てちゃっていいから」
袖山は少し悲しそうに紙袋を差し出す。赤川はそれを呆然と見つめていた。まさか自分の言葉がそのまま、災厄となって跳ね返るとは思ってもいなかったからだ。因果応報とはよく言ったものだが、こんなに早く報いが襲いかかってくるとは。袖山が手作りのチョコレートを準備しているのを知っていたのなら、絶対にあんな事を言わなかったというのに。
後悔が渦巻く最中、袖山は紙袋を強引に赤川へ押しつけると、袖山は
「ごめんね! それじゃぁ……」
と、顔を伏せ逃げるように走り去る。
「っ、ぁ……袖山く……」
止めようと思ったが、袖山は普段のんびりと行動するのにこういう時は驚くほど早く消えてしまうのだ。赤川が顔を上げ時には、もう袖山の姿消え失せている。
赤川は何度も袋の中を覗き、喜びと後悔を噛みしめた。中に入っているのは手作りのガトーショコラで、見る限りは綺麗に作れている。几帳面な袖山だから何個か試作品を並べた上で一番良い出来のものを包んでくれたのだろう。
今日はもう家に帰ろう。帰ったらガトーショコラを食べて、必ず美味しかったと伝えよう。その前に、あんな事を言ってごめんと謝らなければ。
そして、好きだと伝えよう。何度も、何度でも、袖山が嫌だと思うくらいに伝えなければこの気持ちに収まりがつかない。
思いを胸に抱くよう、自然とプレゼントを抱きしめていた。
社会人も近年では上司や同僚の顔を立てるよう義理でチョコレートを渡す事は少なくなったようだが、学生にとって親愛や恋慕の情を伝えるのにはうってつけの行事がバレンタインデーなのは今も昔も代わりはないだろう。
2月も半ばを過ぎ、新一年生でも学生生活にもすっかり慣れた頃ともなれば好きな相手の一人や二人は出来てくるもので、思いを伝える為や日頃の感謝のためチョコレートを渡すという生徒も少なくない。そして、男子の多くは今日、自分は誰かからチョコレートをもらえるのかどうか期待しながら周囲の動向を見守っているものである。
まだ自分はもらえてない、あの生徒は随分もらっているようだ、あの生徒は誰かにあげるのだろうか。そんな思いを抱きながら教室を眺めるのも今でしか味わえない感情でありそれはチョコレートの味より深い味わいがあるものだ。
驚くほどチョコレートをもらっている友人などは見なくても目立ってしまうものだ。
バレンタイン当日、すでに紙袋がチョコレートでいっぱいになっている荒井を友人たちは恨めしそうに見つめていた。
「すごいねぇ荒井くん。こんなにチョコレートをもらう人って本当にいるんだ」
時田はカメラ片手に紙袋に入ったチョコレートを勝手に並べて撮影をしている。
丁寧に並べられた沢山のチョコは催事場にある高級チョコレートの包みに混じり、手作りらしいラッピングをされたブラウニーやクッキーもいくつか見られた。
「勝手に出さないでくださいよ時田くん。手渡ししてくれた人に失礼じゃないですか」
勝手に紙袋を開けられているのに気付いた荒井は広げられたチョコを元の場所へとしまう。慌てた素振りを見せるが時田の作る映画ファンを自称する荒井のことだから、並べられていい絵がとれるまで待っていたのは想像に難くないだろう。
赤川は手作りと思しき包み紙を一つつまみあげると、どこか呆れた顔を見せた。
「いやぁ、それにしてもみんな荒井くんのためによく作ってくるよね、どうせ全部捨てるんでしょ、これ」
「だ、ダメだよ赤川くん。捨てるなんて勿体ないだろう。みんな荒井くんのために作ってくれてるんだろうから……」
赤川の無責任に残酷な言葉を、隣にいた袖山は慌てて窘める。人の良い袖山にとって、もらった食べ物を捨てるという話そのものが悪い事に思えるのだろう。だが、赤川は止める袖山を横に、大仰な様子で手を広げると露骨なまでの嘲笑を浮かべる。
「何言ってるんだよ袖山くん。ここにあるチョコレートの殆どは普段、荒井くんの知らない生徒がくれたものだろう。荒井くんは普段、僕らと一緒に行動していて女の子の友達なんていないからね。そんな殆ど顔も知らないような相手から突然手作りの品を渡されて、素直に食べる方が馬鹿だと思うよ。見知った相手ならいざしらず、名前も覚えてないような相手がくれたプレゼントだ、毒が入っているかもしれないだろう?」
「そ、そんな事ないよ。毒なんて大げさだって……」
袖山は少し悲しそうに止めるが、赤川は滅多に感情を露わにしない袖山が自分を留める姿を見るのが少し面白くなり、調子に乗ってさらに饒舌に語る。
「毒じゃなくても、家庭のキッチンなんて雑菌の温床だからね。滅多に料理なんてしてない奴が衛生管理も気にせず、慣れないレシピを見て作ったチョコレートなんて雑菌だらけで怖くて食べられるものじゃないさ。荒井くんだってそれくらい、わかってるんだろう?」
そして挑発するよう、意地の悪い笑みを荒井へと向ける。荒井は少し考える素振りを見せると、申し訳なさそうに袖山へ視線を向けた。
「別に赤川くんの意見を全面的に認めるつもりはないよ。だけど、見知らぬ相手からもらった食べ物は少し怖いというのは確かにそうだね……だから、プレゼントしてくれた人には悪いけど、このチョコレートをどうするかは、親と相談して決めようと思ってるんだ」
捨てるという言葉こそ使わなかったが、親と相談したらやはり処分するつもりなのだろう。
「そ、そっか……そうだよね、うん。確かに食べ物って、危ないもんね……」
袖山は納得したが、少し哀しそうにチョコレートでいっぱいになった紙袋を見つめていた。
※※※
ホームルームが終わると、赤川はすぐさま荷物をまとめゲーム研究会の部室へと向かっていた。期末テストが近づいた今は、部活動など原則中止となっているのだが、真っ直ぐ家に帰れば家族からテスト前なのだから勉強しろとせっつかれるのは目に見えている。それなら、学校でゲームをして時間を潰した方がよほど有意義だと思ったからだ。
元々頭が良く勉強の要領も良い赤川は授業と塾だけでもテストは平均点以上をとることが出来たのだから、テスト前に慌てて勉強する必用もないと思っていた。勉強ばかりしていても息が詰まると思っていたから、家で遊べない分学校で1時間ほどゲームをしてから帰るつもりだった。当然、部活棟は人の気配はなくこれならゲームに集中できそうだ。
「あ、あの。赤川くん!」
一人になったのを待っていたかのように、袖山が呼び止めた。
「ん、どしたのさ袖山くん。今はテスト期間中だろ?」
赤川はいま、袖山と付き合っている。それは周囲の友人も公認であり、普段だったら部室に誘い一緒にゲームをしている所だったが、テスト期間中は真面目に勉強したい袖山の気持ちを汲んで誘わないでいた。それなのに袖山から声をかけてきたものだから、珍しいと思ったのだ。
彼はあまり要領が良くないので、テスト勉強をしてもなかなか思うように点が延びないのをいつも悩んでいた。当然、テスト前の今日は遊びに行かず真っ直ぐ家に帰り勉強に励むのだろうと思っていたのだが。
不思議に思う赤川を前に、袖山は顔を真っ赤にして紙袋を差し出した。
「ご、ごめん。今日、バレンタインだから……赤川くんに、チョコレート。一人になったら、渡そうと思って……その、う、受け取ってくれるかな」
紙袋の口からは、いかにも手作りのラッピングが見える。
まさか、袖山がそんな準備をしていたなんて。自分には袖山がいるから元より女子からのチョコレートはたとえ義理でも受け取らないつもりでいた。だからチョコレートなどとは無縁だと思い込み、自分はもらう予定がないからこそ荒井を茶化していたからだ。
「……ご、ごめんね。慣れないくせに手作りして、雑菌の温床になってるかもしれないから。危ないと思ったら、捨てちゃっていいから」
袖山は少し悲しそうに紙袋を差し出す。赤川はそれを呆然と見つめていた。まさか自分の言葉がそのまま、災厄となって跳ね返るとは思ってもいなかったからだ。因果応報とはよく言ったものだが、こんなに早く報いが襲いかかってくるとは。袖山が手作りのチョコレートを準備しているのを知っていたのなら、絶対にあんな事を言わなかったというのに。
後悔が渦巻く最中、袖山は紙袋を強引に赤川へ押しつけると、袖山は
「ごめんね! それじゃぁ……」
と、顔を伏せ逃げるように走り去る。
「っ、ぁ……袖山く……」
止めようと思ったが、袖山は普段のんびりと行動するのにこういう時は驚くほど早く消えてしまうのだ。赤川が顔を上げ時には、もう袖山の姿消え失せている。
赤川は何度も袋の中を覗き、喜びと後悔を噛みしめた。中に入っているのは手作りのガトーショコラで、見る限りは綺麗に作れている。几帳面な袖山だから何個か試作品を並べた上で一番良い出来のものを包んでくれたのだろう。
今日はもう家に帰ろう。帰ったらガトーショコラを食べて、必ず美味しかったと伝えよう。その前に、あんな事を言ってごめんと謝らなければ。
そして、好きだと伝えよう。何度も、何度でも、袖山が嫌だと思うくらいに伝えなければこの気持ちに収まりがつかない。
思いを胸に抱くよう、自然とプレゼントを抱きしめていた。
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