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インターネット字書きマンの落書き帳

   
新堂の耳にピアス穴を開ける大倉の話(新堂←大倉/BL) 
鳴七版の大倉、ツラが最高にいい!(挨拶)

いや、アパシー 鳴神学園七不思議には出ていないんですけどね。
金髪でモノクルのギャンブラーって属性として最高すぎません?
あのツラで新堂と連んでいると思うと……。

新堂に対して片思いしてて欲しい!
友人、悪友ポジとして連みながら新堂に対して尽くしてるのに全然気付かれないまま、油断してたら他の奴に取られて密かに失恋していて欲しい!

という欲望を強く抱いているので、めちゃくちゃ新堂のこと好きだけど気付いたら失恋していた大倉を……書きましたッ!

新堂に対して特別感が欲しいから、という理由で新堂のピアス穴を開けたり、ピアスをプレゼントしたりする湿度の高い大倉が今なら無料で見れます!
お得だね♥

新堂の恋人に関しては名言してない描き方をしたけど、俺が新堂×荒井の生産工場なのでそれが出ている可能性がありますが、新堂×荒井はいいぞ。


『ギャンブラーの矜持』

 その日、大倉は新堂の勉強を教えていた。
 夏休み中に、三年にとっては引退試合になる最後の大会が控えている。だが、期末テストの点数が芳しくなければ補習があり、補習を受ければ練習時間が減る。それを避ける為、新堂は付け焼き刃の勉強に励んでいる所だった。

 とはいえ、普段から勉強などしない授業だって真面目に聞いてないような新堂だ。教えるにも基本的なことに躓くし、簡単な計算式にも人一倍時間がかかるという有様で教えている時間より新堂が頭を抱えて悩んでいる時間を見る方がよっぽど多かっただろう。

 大倉は頬杖をつきながら、懸命に数式を解く新堂の姿をぼんやりと眺めていた。

 金色に染めた髪は根元がだいぶ黒くなってきている。確か以前に染めたのは4月のはじめ、新学期がはじまる直前だったか。あれから三ヶ月近くたっているが未だ髪を染め直していないのだからプリンのような色合いになっても仕方ない。大倉はわりとまめに金髪に染めているが新堂は少しズボラな所があるから根元が少し黒くなったくらいでは気にしないのだろう。

 あるいは夏休みに入ったら髪を短くして、髪の色も今の金髪とはまた違った色に変えるのかもしれない。
 色を変えるとするのなら、今度は一体何色にするつもりだろう。新堂は派手で目立つ色を好むからそろそろ赤かオレンジのように奇抜で目立つ色であることは間違いない。これは、ボクシングの試合の時少しでも相手を威嚇する意味合いもあるそうだ。

 だが、どの色よりも地毛の黒髪の方が一案似合っていると大倉は思っていた。入学して間もない頃の新堂は大倉とさして身長も変わらず、今より少しあどけなさを残していたか。
 柔らかな黒髪を揺らしながらよく歯を見せて笑っていたっけ。あの頃は今よりさらにけんかっ早く派手な喧嘩をする事も多く、早くから黒木に目を付けられしょっちゅう進路指導室に呼ばれてはいたが、まだピアスはしていなかったか。

 大倉の視線は自然と新堂の耳へ向いていた。最近新堂はまたピアスの穴を増やしたようで、今日は新品のピアスを付けている。初めて穴を開けた時はあれだけ痛いのは嫌だとか黙って開けるな怖いだのと騒いでいたのに、気付いたら自分で増やしているのだから面白いものだ。
 大倉は新堂の耳に触れるとまだ新しいピアスを撫でた。

「新堂ちゃん、ピアス増やしたんだ。これ、新しい奴だよね。買ったの?」

 指先でピアスを動かせば、新堂は大倉の手を払いのけると億劫そうな顔を向ける。

「触んなよ、まだ穴開けたばかりで痛ェんだよここは……いいだろ、俺がピアス増やしてもお前には関係ねぇし」
「ま、そうだけどさ。最近俺ともめっきりご無沙汰だろ。以前の新堂ちゃんだったらピアス買う金があれば遊んでくれてたのに、ちょっと寂しいと思ってね」

 大倉はカードを切る仕草をしながら悪戯っぽく笑う。少なくとも2年の頃の新堂は少し小金があると大倉のところに来て賭け事をしていた。
 ポーカーにしてもブラックジャックにしても、いつも熱くなりすぎて引き際を見誤る新堂は大概負けてスカンピンになるのだが、それでも大倉との賭け事を随分と楽しんでいたはずだ。

 だが、3年になってから大倉が密かに学校内で経営しているカジノにも顔を出さなくなっている。
 ボクシング部の主将になったのだから校則違反が見つかれば大会の出場も危ぶまれる立場ではあるが、新堂はそういう立場だからといって賭けをやめるようなタイプではないはずだ。
 そもそも主将を引き継いだ二年の夏からギャンブルをやめる気配はなく、暇があると賭け事に興じていたのだから。

 最後の大会が近づいたから練習に本気を出しているというのは多少あるのだろうがそれにしてもこんなに急激にギャンブルへの興味が失せるとは思えない。
 新堂はノートに目を向けると、大倉を見ないままこたえた。

「練習が忙しいンだって。それに、このピアスはもらい物だ。誕生日が近いから少し早いけどってプレゼントしてもらったんだ」

 こんなに高いものを? 喉まで出かかった言葉を飲み込む。
 ギャンブラーとして常に人の様子をうかがう癖がついている大倉は、生徒が身につけている文房具やアクセサリーを見て大体の値段を把握していた。
 安物の文房具を使っているくせにアクセサリーやメイク道具にはブランド品を使うような生徒は小遣いが少なく金に困っている奴が多いので、少し甘言を吐いただけで簡単にギャンブルへ落ちてくれるから誘いやすいカモだ。

 逆に、いい品をそろえていて服装も上品な生徒は家が裕福だからギャンブルなんてしなくても欲しいものは買えるし、危険な橋を渡るリスクを知っているから誘惑には乗らない。ヘタに声をかければ教師に密告されかねない。

 普段からそうやって身の回りの品を値踏みしているから、新堂の新しいピアスが決して安い物では無いというのは一目でわかっていた。学生の身分であれば気楽に買えるようなものではないものだ。少なくとも、嫌いな相手にポンと渡せるような品ではない。

「ふぅん、ピアスの穴もプレゼントしてくれた人が開けてくれたワケ?」
「そうだよ、どうせなら新しく開けてほしいって言われてな。まだ穴も増やせるから、別にいいぜって……」

 新堂はようやく閃いたように、のろのろと数式を書きだしていく。苦労して考えた甲斐があったのか、ようやく越えた一問目は何とか正解しているようだがそれにしても時間がかかりすぎだ。

 鳴神学園はマンモス校で成績もピンキリで数学のテストは数式だけが書かれているものは点を取らせるサービス問題のようなものなのだが、そのサービス問題でここまで苦戦しているとは先が思いやられる。

「新堂ちゃんの耳にピアスの穴を開けたいとか言い出すなんて、根性ある子がいるもんだねぇ。ボクシング部の後輩?」
「そんな訳無ェだろ……、この前日野に頼まれて出た七不思議の集会で顔をあわせてから、思ったより話が会うから集会終わった後もぽつぽつ連絡とってんだよ」

 新堂は二問目の問題を前に、再び手を止める。喋りながらでも一応、テスト勉強をしているあたり補習を逃れたいのは本気のようだ。
 だが、集会であった相手に関して新堂は本当のことを言っていない。新堂が嘘をつくとき、眉間にしわがよる癖があることに大倉は随分まえから気付いていた。他人の癖を読むのはギャンブラーとして必須の能力だ。だから大倉はイカサマなど使わなくても新堂に負ける事はないのだが、今ばかりはこの特技が忌々しく思える。

 少なくとも新堂にとって、ピアスの穴を開けた相手とは何かしら人に言えないような隠しごとを共有している存在なのだ。

 ただ、秘密を共有しているというだけならば親しい友人の可能性もあったろう。実際、大倉と新堂の間にも人前ではとても話せないような悪事や悪巧みのエピソードがいくつかある。だが、学生が出すには値が高いプレゼントを贈る相手と共有する秘密は、だいたい恋仲と決まっている。

 周囲には黙っているが、新堂は今、ピアスの穴を開けた誰かと親密に付き合っているのだろう。
 それなら賭け事を辞めているのも説明がつく。小銭を増やすより安くても恋人のそばにいるほうが楽しい時期なら仕方がないというものだ。これまで部活一筋で色恋沙汰に無縁だった新堂なら尚更だ。

 相変わらず数式を前に頭を抱える新堂を見ながらら、大倉はまた彼のピアスに触れた。今度はもっと古い、新堂が最初に開けたピアスの方だ。
 このピアスをプレゼントしたのは大倉だった。1年のころ、小遣いが欲しいが賭ける金がないとうだうだしている新堂に賭けを持ちかけた。

『金がなくても俺に勝ったらお小遣いあげちゃうよ。賭けるのは、新堂ちゃんの身体ってことで』
『何だよ、俺にボディーガードでもやらせようっていうのか?』

 あの頃、ギャンブルで負けが込んだ新堂の借金をチャラにするかわりに、少し危ない場所へ行く時彼にボディーガードをやらせる事が多かった。
 1年の後半には体つきも良くなり、髪も派手な色に染めすっかり不良っぽい外見になっていた新堂を連れて歩くだけで、面倒な輩はだいたい避けてくれるからだ。
 もし向かってくる相手がいても、元々腕っ節が強い新堂がボクシングを囓ったのもあって殆ど負ける事もなく頼りになるのもあったが、単純に大倉が新堂と連んでいるのが楽しいというのが連んでいた主な理由だった。

『いや、今は危ない橋を渡るつもりはないからねー。そうだなぁ、新堂ちゃんが負けたら指を詰める……?』
『やめろよ、いくら俺だって指詰めるつもりねぇし、腎臓も売らねぇよ』
『ははッ、冗談。でも、そうだな……もし俺に勝ったら新堂ちゃんに1万円のお小遣いを進呈しよう』
『……負けたら?』
『戦う前から負けを気にするなんて、勝負師としては失格だよぉ新堂ちゃん。そうだなぁ……負けたらピアスの穴を開けるってのはどう? 新堂ちゃん、髪も染めたしタッパもよくなったから、ピアス開けたらもっと迫力出ると思うし。いいんじゃなーい?』

 あの時、新堂は親からもらった身体に穴を開けたくないだの、痛いのには弱いだの散々文句を言ったが目の前にある一万円の誘惑には勝てず大倉と勝負し、見事に惨敗したのだ。

『はい、約束だからね。開けちゃうよー新堂ちゃん』
『黙ってやれよ大倉ァ、フェイントとかで声かけたりするんじゃ無ェぞ』
『なに? ビビっちゃってんの?』
『べ、別にビビってねぇけど、タイミングってのがあるからな』
『はい、じゃぁ、せーので開けるからねー』

 そういいつつ、何も言わず穴を開けた時の新堂ときたらひどく驚いて、泣きそうな顔をして大倉に詰め寄ったのは今でも覚えている。強面で不良を気取っているけど根は小心者だ、可愛いところがあると心の中で笑っていた。

『そんな怒らないでって、じゃこれお詫びに俺から。せっかく穴開けたんだからピアスつけておくね。放っておくとすぐ塞がっちゃうから』

 たまたま持っていた風を装ってつけたピアスを、新堂は今でも愛用している。長年使っているから馴染んでいるというのが理由で、大倉から貰った事もきっと忘れているのだろう。

 大倉が今でもはっきりと覚えているのは、賭けそのものの目的が新堂にピアス穴を開ける事だったからだ。

 新堂の身体に自分で穴を開けたい。自分の所有物にならないのはわかっているが、どこかに自分の痕跡を少しでも残しておきたい。その思いが抑えきれなくなり、彼に似合いそうなピアスを買って密かに様子を伺っていたのだ。

 ピアスを開ける痛みは新堂にとってさほど大きいものではなかったのか、その後ピアスの数はどんどん増えていった。ピアスの数も増えてはいたが大倉がプレゼントしたピアスは気に入っているのか頻繁につけており、そのピアスをつけている時だけ新堂が自分のものになったような気がして嬉しかったのだが、新品のピアスと並んでつけられた今はただ空しさを感じるばかりだ。

「勉強してるんだから耳ばっか触んなって。何だ大倉、耳フェチだったのか?」

 新堂は再び大倉の手を振りほどく。

「いや、新しいピアスを買ったのに、古いピアスもずーっとつけてるんだなぁと思って」
「あぁ、これな……実はピアスの穴増やしたのも、これが原因なんだよ。俺が最初に開けたピアスの穴、お前が開けた奴だって話したら『じゃぁ新しい穴を開けさせて欲しい』なんて駄々こねはじめてなぁ……」

 他の男の痕跡が新堂の身体にあるのが許せなかったのだろう。その気持ちは、大倉も痛いほどわかる。どうやら新堂の恋人は大倉と似たような思いを抱くタイプの人間だったようだ。

「それで開けさせてあげたの? 優しいっていうか……」

 鈍感だな。と思ってまた言葉を飲み込む。
 新堂の恋人がピアスの穴を開けたがった理由は、明らか様に大倉に対する嫉妬だ。ピアスをプレゼントしたのも、新堂が自分のプレゼントしたピアスをつけている時は自分の所有物であるような優越感があるからだろう。

 同じ気持ちを抱いてピアスをプレゼントした大倉だから、その思いは手に取るようにわかっていた。

「……でも、新しいピアスに並べるにはこっちのピアス古くない? 結構色もくすんできてるし、そろそろ新しいのにしたら? 同じデザインで新しいのもあるでしょうに」

 そうすれば、もう諦められる。
 一時的にでも友人として連み、一瞬でも自分の手の中にあると思えた時間があるだけで幸せだったと思えるのだから。
 大倉はそう思っていたのだが。

「いや、捨てる訳ねぇだろ……これ、お前がプレゼントしてくれたんだもんな。最初につけたピアスで思い出もあるし、ダチから貰ったもん簡単に捨てたりしねぇよ」

 新堂は歯を見せて笑う。
 1年の頃、自分の前でよく見せていた笑顔と寸分違わぬ眩しい笑顔を前に、大倉は強く拳を握りしめていた。
 新堂という男は、いつもそうだ。大倉のことを友達としか思っていないのに、友達として最大限の敬意と友情をもって接してくれている。だからそれが友情だと、決して愛してくれないのだと理解していても嫌いにはなれないし、忘れることも出来ないのだ。
 新堂を所有したい気持ちで開けた穴が、今は大倉の心を掴んで放さないのは何という皮肉なのだろう。

「そっか。そうだよねぇ、新堂ちゃんは優しいから」

 優しいから、残酷だ。
 その言葉を飲み込んで、大倉は笑顔を見せる。
 鳴神学園でギャンブラーとして名を馳せている彼は、仮面を被るのが誰よりも上手くなっていた。

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HN:
東吾
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インターネット駄文書き
自己紹介:
ネットの中に浮ぶ脳髄。
紳士をこじらせているので若干のショタコンです。
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