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インターネット字書きマンの落書き帳

   
カシウスとアイザックの話(グラブル)
7周年月イベント面白かったネ!

SFやディストピア、ロボット、クローン……。
色々な要素を楽しめて、ファンタジーに無限の可能性を感じちゃうよ……!

それはさておき。
無事に帰還したあとも、どうしてもカシウスに対して罪悪感がもたげてしまう……。
そんなアイザックと、本当に欠片も気にしてないカシウスの温度差みたいなのをかきたいな。と思ってかきました。

双方の感情は友情、信頼に近いものですが、カシウスの距離感はバグっているのでキスはします。(距離感がバグっているので)
健全な関係ですよ。




『逃避は償いに成り得ない』

 バターをふんだんに使ったクッキーを頬張るカシウスの表情からはそれが美味しいのかうかがい知る事は出来なかったが、口に運ぶペースがはやく次々とクッキーを食べる姿からかなり気に入った味だという事はアイザックにも理解できた。

 月より無事に帰還してから随分と経った気がする。
 アイザックが月にいた頃、地上では大きな戦いが繰広げられ数多の被害も出たようだがその時のガレキも撤去され街は一応、普段通りの様子に戻って見えた。

(この世界にいた時は、ただ月に行くことに夢中だったけど……)

 アイザックは窓辺にこしかけ外を見る。
 心地よい風は肌を撫でれば、梢は揺れ擦れる音がする。
 道を行き交う人々が語らう声や子供が笑って外を走るような声がどこかから響いてきた。

(世界は、こんなに綺麗だったんだなぁ……)

 アイザックは一人そう思い目を閉じる。
 脳裏には月で見たどこまでも続く星の海と銀色に染まった岩や大地が浮んでいた。

 一面が鉄を多く含んだ岩ばかりという殺風景な月の世界と比べれば、この世界は何と彩りに満ちているのだろう。
 一切の無駄を省き合理的な判断を元に粛々と事を成していく月の世界からしてみれば、この世界は何と賑やかな事だろう。

 どちらも長く月で暮していれば無駄で、非合理な世界なのだろう。
 だがその非合理に心を動かされ、その非合理な日々を愛しいと思うようになっていたのだとしたら……。

(やはり、僕がした事は許される事じゃない……カシウスは何も言わないけど。僕は彼に何てことを……)

 カシウスの思いを汲む事なく月へ連れ帰り、彼の脳にある記憶隅々まで調べた。
 そこの記憶、あるいは記録はカシウスのプライバシーに触れる事である、というのはこちらの世界の常識であり月の世界の常識ではない。
 それが分っていても罪悪感は拭いきれない。
 これでカシウスが少しでも「非道い事をした」と。「自分を辱めた」などと思い、恨んでくれたのなら多少は救われたのかもしれないが、カシウスがアイザックを責める事は一度たりともなかった。
 むしろ、その命を賭けてアイザックを月から逃がしてくれたのは他ならぬカシウスであり彼がいなければアイザックは今頃、月の分解槽に沈んで跡形もなくなっていたか、そうでなくても脳髄だけのような存在になり永遠に月へ奉仕する部品の一部になっていたに違いない。

「……どうした、気分が優れないのか?」

 気付いた時、カシウスはアイザックの隣に立っていた。
 皿に入っていたクッキーはすでに空になっている。

 カシウス曰く、この世界にある食べ物の多くは暴力的なエネルギーの塊で栄養素のバランスも偏りが非道く合理的な食事とは言い難いものが多いのだが、そういった非合理的な食べ物の多くは何度も食べたくなる、こちら側の表現をするなら「癖になる味」なのだという。
 大量のバターを入れたクッキーも恐らく暴力的なエネルギーの塊で非合理的な栄養素をもつが、癖になる味わいだったのだろう。

「月での重力はこちら側より遙かに少ない……長らくあちらに居たのだから身体に変調もあるだろう。異常を感じたのならすぐに報告を……まだ養生が必用だろうからな」
「いや、もう大丈夫だよ。身体は心配ない……むしろ、元気になるのが早すぎる位かな。はは……」

 アイザックは力なく笑ってから、カシウスの方へ向き直る。

「……ただ、やっぱりキミには申し訳ないと思うんだ。謝って済む事じゃないし、許してもらえるとも思ってない。けど……本当にすまなかった……」

 唇を噛みしめ、無意識のうちに手は血が滲む程強く握っていた。
 後悔と罪悪感は日に日にアイザックを蝕み、カシウスの姿を見る事さえ辛いと思える程に肥大していくというのに、当のカシウスは相変わらず涼しい顔を向け。

「問題ない……以前も謝罪の言葉を聞いたが、その時適切な回答はしているはずだ……何の問題もないと。おまえは最善を尽くし、俺もできる事を全てして今ここにある。それが全てであり、その過程においておまえが気に病む必用はない、と……」
「あぁ、わかってる。そう言うんだろうって……でも、僕の気持ちがどうしても許せないんだ。キミに非道い事をした。その事実をどうしても、僕自身が許す事が出来ない……」

 アイザックの言葉に、カシウスは目を閉じる。
 暫くその言葉の意味を計りかねているといった様子であったが、ややあって彼なりに合理的な答えを導き出したのだろう。

「つまり、アイザック。おまえは俺が許容している・していないに関わらず、自らを許す事が出来ないという事か」
「うん、まぁ……そうなるかな。心情的にもそうだし、実際にきみには非道い事をしたと……そう思っているから……」
「俺は気にしていない。極めて合理的な判断であの場を切り抜けたと、そう思っているしこの事でお前に対し嫌悪の感情は抱いていない……だが……もしお前自身が俺と共にいるのも辛いほどに苦しんでいるというのなら……俺も、何かするべきだろうな……」

 カシウスは目を閉じ、少し思案する。
 だがすぐに顔を上げると「そうだ」と何か思いついたような顔をして見せた。そして自らの長い髪を耳にかけると。

「これが正しい方法だかは分らないが……」

 静かにそう囁いた後、優しく唇を重ねる。
 唐突に重なる吐息を前にアイザックは何をされているのか分らず一瞬呆けるが、少しずつ自分がされている事を理解し、慌ててカシウスを突き放した。

「なぁ、にっ……何してるんだ、カシウスッ……」
「頬が紅潮しているな……心拍数も上がっているようだ。が……悪い兆候ではない。好意的な感情の動きとして解釈している。効果はあったようだな」
「ちが、えっ……ちょ、ま……」
「俺にとって、団長やルリア……ビィ……そういった仲間たちと同じようにアイザック。おまえとも、意味などない非合理的な時間を過したいと思っている。だから俺に対して隔たりは作らないでくれ……いいな」
「そうじゃなくって、今何したか分ってるのか!?」

 狼狽するアイザックを前に、カシウスは相変わらず無表情のまま首だけ傾げて見せた。

「信頼を示す行為だろう? フォッシルの民は、愛情を示すために唇で触れると聞いた。愛情というのは強い信頼と近いものだと思ったのだが……違ったか」

 自分のした事に疑問など微塵も感じていないのだろう。
 元より月の人間は男性、女性といった個体に囚われる事はないのだから当然かもしれない。

「はぁ……わかったわかった。キミにはもう少し、この世界の常識を教えておかないといけないみたいだ。もう暫くキミと付き合うとするよ」

 ため息交じりで頭を掻くアイザックを前に、無表情なカシウスも幾分か嬉しそうに見える。
 罪悪感がまだ残っているのは確かだ。
 実際に自分のした事が消えるワケでもない。

 だが傍にいる事が償いになるのなら、そうする事にしよう。
 ここで彼から遠ざかり目を背けてしまうのは簡単だが、きっとそれは自分を守るための逃避でしかないのだから。

 それなら傍にいよう。
 相棒もそれを望んでいるのだから。

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東吾
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インターネット駄文書き
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ネットの中に浮ぶ脳髄。
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