インターネット字書きマンの落書き帳
バレンタイン、下駄箱にチョコが入ってた時の三馬(ひろみま)
2回かけてたっぷり表現した三馬の熱意を、たった1ページでヤバいものに昇華する広瀬。
すごすぎるよこの漫画、一体なに漫画なんだろう!?
そう思って、耐えられなくなって書きました。
中学二年生の頃、バレンタインで自分の下駄箱にチョコレートが入っていて大慌てをする三馬という概念と、「まぁ、そのチョコレートを入れたの俺だけどな」をしている広瀬の話です。
現状の最新話を見たら「広瀬は三馬の新しい一面を見たいという理由で匿名チョコレートを出す男だろう」という気持ちにしかならなかったので、そう……しましたよ!
バレンタインには早い気がしますが、どうぞ。
Happy~ Valentine~
Happy~ boys love~
多分ですが広瀬はモテるので鞄にバンバンチョコレートを入れて帰ってます。
すごすぎるよこの漫画、一体なに漫画なんだろう!?
そう思って、耐えられなくなって書きました。
中学二年生の頃、バレンタインで自分の下駄箱にチョコレートが入っていて大慌てをする三馬という概念と、「まぁ、そのチョコレートを入れたの俺だけどな」をしている広瀬の話です。
現状の最新話を見たら「広瀬は三馬の新しい一面を見たいという理由で匿名チョコレートを出す男だろう」という気持ちにしかならなかったので、そう……しましたよ!
バレンタインには早い気がしますが、どうぞ。
Happy~ Valentine~
Happy~ boys love~
多分ですが広瀬はモテるので鞄にバンバンチョコレートを入れて帰ってます。
『俺はただ新しい正ちゃんの可能性を見たかっただけだ』
「たたたたっ、大変だよ洋ちゃんッ……」
放課後になり、三馬が広瀬を求めてクラスに駆け込んでくるのは珍しい事ではなかった。
小学校の頃からリトルリーグでバッテリーを務め、ずっと広瀬と三馬でコンビを組みそのままこの幼馴染みコンビが中学の野球部でもコンビを組んでいるのは周知の事実だったし、三馬が広瀬にいつもベッタリくっついて野球の練習メニューについてはもちろんのこと、テスト前の勉強や三馬が着る普段の服も広瀬のアドバイスを受けている程だというのはもはや学校内では当然と受け入れられていた。
1年の頃は広瀬の外見と物腰の柔らかさ、頭の良さから広瀬目当てにキャーキャー言っていた取り巻きの女子たちも、2年になると広瀬の周りに常に三馬がいるのを当然のように受け入れ、次第に広瀬に離れていった。
当初は。
「もう、何なの三馬くんって。いっつも広瀬くんにベッタリで、あれじゃぁ広瀬くんも困るわよね!」
と怒りを抱いていた取り巻きの女子たちも、つい夢小説に出る嫌われ系女子の発言をしていたのだが、三馬の容姿や性格、そこそこポンコツでまぁまぁテンパる姿を見ているうちに。
「やだ、三馬くん……私より可愛いなんて……」
「わかったわ……三馬くん、広瀬くんと……幸せにね……」
「広瀬くん……三馬くんは任せたわよ……でも、幸せにならなきゃ許さないんだから……結婚式には親族席に座らせてね……」
と、当て馬キャラが負けた時みたいな事を言い出してどんどん離れていくようになったので、今ではテンパった三馬が広瀬に助けを求める姿はすっかり日常となっていたのだ。
だがその日の三馬がテンパっている理由を、広瀬はすでに知っていた。
「おい、どうしたんだよ正ちゃん。随分慌ててるな……ほら、水」
広瀬はあらかじめ準備しておいたペットボトルの水を取り出すと、ボトルを開け三馬へと手渡す。三馬はその水を一気飲み干すと一呼吸置いてから話し始めた。
「よ、洋ちゃん見て、見てくれこれッ……」
三馬が差し出したのは、綺麗にラッピングされた文庫本サイズの箱だった。
中身はチョコレートだろう。ラッピングの上からはどこで買ったものかはわからないが、サイズや質感を見ても近所のスーパーやコンビニで売っているタイプのチョコレートではない。 一定ランクのデパート、その地下でおこなわれるバレンタインという催し物でしか購入することのできない、普段は日本にやってこないショコラティエが作った本格的なチョコレートだ。中学生の小遣いでは簡単に買えるものではないことは、当然広瀬にはわかる。
その日はバレンタインだ。
三馬は朝から取り巻きの友人たちを前に
「別にチョコレートなんて期待なんてしてねーしな!」
「俺は野球があるから女と付き合っている暇なんてねぇんだよ」
なんて得意気に語ってはいたが、本当は誰かがくれるのではないかと密かに期待していたのだろう。 野球部の練習が始まるまえに、自分の下駄箱を確認しにいったに違いない。そしてこのチョコを見つけ、どうしていいのかわからず広瀬に相談しにきたのだ 。
「何だ、プレゼントか。見る限り、チョコレートみたいだが……ははっ、正ちゃんもモテるようになったな」
「いやいや、笑ってる場合じゃないよ洋ちゃん! お、俺、女の子からこういうのもらったことないからどうしていいかわからなくって……こ、これ、アレかな? 義理チョコってやつ?」
「どうだろうな。今時、義理チョコをくばる女子なんてほとんどいないと思うが……」
「でもさぁ、これ、手紙とか名前とかも書いてなかったんだよ。誰から届いたかわからないんだけど……」
「きっと、正ちゃんに知られたくないけど、応援していることは伝えたいって奴がいたんだろう。それに、多分ちゃんと本命だと思うぜ。よかったな正ちゃん」
「えぇ……箱に何も書いてないのに何でそんなことわかるのさ……」
「これ、結構高級なチョコなんだぜ。義理チョコとか、好きでもない相手に高級なチョコをわたす相手なんていねぇよ」
「えええぇえええ!? そ、そうなんだ……うわー、どうしよう……どうしよう……」
三馬は頭を抑えると、目をぐるぐるさせながら顔を真っ赤にしている。
その姿を見ながら、広瀬は感慨に浸っていた。
(やっぱり正ちゃんはまだ初心な、小学校の頃と同じ恋愛観をもっているかわいい中学生だ……はじめて本命のチョコをもらってこんなに狼狽えてみせるなんて。 初めてみる正ちゃんのこの狼狽の表情。真っ赤になりながら神経に相手のことを考えている姿……今日もまた、新しい正ちゃんの姿が俺の目の前にある……なんて嬉しいことなんだ!)
小学校3年生の時に初めて会い、それから共に野球をする仲になり7年の時間が経っていた。
その間、三馬は広瀬の前で様々な表情を見せてくれていた。野球だけじゃなく日常を共に過ごす時間も増え、学校のイベントである林間学校や修学旅行も一緒にいった。地域の夏祭りにもだ。それだけ時間を共にしても、広瀬にはまだ知らない三馬の表情があり、それを最も近くで見る事ができる事実に最大の喜びを抱いていた。
実は、このチョコレートは広瀬が事前に買ったものである。
目的は一つ。
バレンタインの日に本命のチョコレートが入れられていたら三馬がいったいどんな反応をするのか、それが見たかったしそれを脳裏に焼き付けたかったから。ただそれだけだ。
そう、つまりいま目の前で狼狽えている三馬は、広瀬がこっそり入れたチョコレートで狼狽えているのである。
このチョコレートに対する感情は、当然広瀬が日頃三馬に世話になっている大事な相棒である、という親愛の気持ちが込められている。
だがそれ以上に!
(あぁッ……まだ俺の見てない表情の正ちゃん……まだこんな顔を見せてくれるんだな……ッ!)
自分の知らない三馬正磨を見たい。
突き抜けるほど激しい推しへの欲求が堪えきれなかった結果でしかないのだ。
「ほ、本命だったらどうしよう……こ、これ! 差出人の名前も書いてないから誰からかわからないんだけど……」
「もし必要なら本人から名を明かすと思うぞ。黙っている、という事は密かに応援したいんだろう」
「そ、そうかな……!? こっちから探さなくてもいいかな……」
「名前を知られたくないくらい恥ずかしがり屋なんだ、派手に探したらかえって隠れてしまうかもしれないな……向こうからアプローチをしてくるまで待った方がいいだろうな」
最も、待っても現れないのは広瀬はわかっていた。
何故ならそれは自分がプレゼントしたものなのだから。当然、それを三馬に言うつもりもない。
「うーん、そっか。じゃぁ、もし現れた時にちゃんと返事を考えておかなきゃダメだよな……」
それでも真剣になって相手のことを思う三馬を前に、広瀬は少し思案する。
今回は広瀬が三馬の新しい可能性を見たい欲求だけでプレゼントされたチョコレートだったが、もし他の誰かからチョコレートをもらい、本気の告白を受けた時、三馬はどうするのだろう。
「……正ちゃんは、相手が現れたら付き合ってやる気か?」
「えぇ!? な、何言ってるんだよ洋ちゃん!? そ、そんな……誰かもわからない相手に、急に言われても……俺だって困るって。それに、調子にのってオッケーしたら実はギャルのいたずらでしたーって可能性もあるだろ」
三馬は気持ちのアップダウンが激しいが、基本的に自己肯定感は低い。調子に乗っている時は失敗など考えないが、普段の状態では失敗した時のことを考えて落ち込んでしまうのだ。しかも、必用以上に羞恥心が高いから一度失敗すると立て直すのに時間がかかる悪い癖があった。
そんなの、いたずらする相手の方が悪いのだから気にしなければいいのに。
腕組みをし考える広瀬の顔をのぞき込むようにして、三馬は笑ってみせた。
「でも、たぶん相手が誰でも断ると思うな。だって俺、今は洋ちゃんと野球やるのが一番楽しいし! 中学だと休日でもずっと野球の練習があるだろ? そうしたらデートとか、そういうので相手に時間使ってあげられないし、俺は洋ちゃんと遊ぶ時間も減らしたくないから……そういうのって、相手の子には失礼だと思うんだよね」
その言葉に、広瀬は唇を噛みしめる。
これは喜びのあまり笑顔になってしまいそうな自分を諫めるためだ。
(そうか、正ちゃんは今は恋人がいるより俺と野球をするほうが楽しいし、俺と遊んでいる時間の方を大事にしてくれるのか。 まだ正ちゃんの恋愛観が小学生みたいに初々しく、色恋沙汰に関しての想像力が働いていないから恋より友情をとってくれるのはわかっている。 だがそれでも、正ちゃんの一番である自分が嬉しいし誇らしい……)
広瀬は自然に三馬と肩を組むと、優しく笑ってみせた。
「よし、それじゃぁ今日も一緒に野球の練習するか。きっと普段の正ちゃんを見ていて好きになったんなら、野球の練習する正ちゃんのこともどこかで見ているさ」
「あっ……そ、そうだ。そうだね、洋ちゃん。わかった、すぐ準備してくるから!」
そうして元の教室に戻っていく三馬の背中を見送り、広瀬は口元を抑える。
そして胸に沸く歓喜の声を、一人で噛みしめるのだった。
「たたたたっ、大変だよ洋ちゃんッ……」
放課後になり、三馬が広瀬を求めてクラスに駆け込んでくるのは珍しい事ではなかった。
小学校の頃からリトルリーグでバッテリーを務め、ずっと広瀬と三馬でコンビを組みそのままこの幼馴染みコンビが中学の野球部でもコンビを組んでいるのは周知の事実だったし、三馬が広瀬にいつもベッタリくっついて野球の練習メニューについてはもちろんのこと、テスト前の勉強や三馬が着る普段の服も広瀬のアドバイスを受けている程だというのはもはや学校内では当然と受け入れられていた。
1年の頃は広瀬の外見と物腰の柔らかさ、頭の良さから広瀬目当てにキャーキャー言っていた取り巻きの女子たちも、2年になると広瀬の周りに常に三馬がいるのを当然のように受け入れ、次第に広瀬に離れていった。
当初は。
「もう、何なの三馬くんって。いっつも広瀬くんにベッタリで、あれじゃぁ広瀬くんも困るわよね!」
と怒りを抱いていた取り巻きの女子たちも、つい夢小説に出る嫌われ系女子の発言をしていたのだが、三馬の容姿や性格、そこそこポンコツでまぁまぁテンパる姿を見ているうちに。
「やだ、三馬くん……私より可愛いなんて……」
「わかったわ……三馬くん、広瀬くんと……幸せにね……」
「広瀬くん……三馬くんは任せたわよ……でも、幸せにならなきゃ許さないんだから……結婚式には親族席に座らせてね……」
と、当て馬キャラが負けた時みたいな事を言い出してどんどん離れていくようになったので、今ではテンパった三馬が広瀬に助けを求める姿はすっかり日常となっていたのだ。
だがその日の三馬がテンパっている理由を、広瀬はすでに知っていた。
「おい、どうしたんだよ正ちゃん。随分慌ててるな……ほら、水」
広瀬はあらかじめ準備しておいたペットボトルの水を取り出すと、ボトルを開け三馬へと手渡す。三馬はその水を一気飲み干すと一呼吸置いてから話し始めた。
「よ、洋ちゃん見て、見てくれこれッ……」
三馬が差し出したのは、綺麗にラッピングされた文庫本サイズの箱だった。
中身はチョコレートだろう。ラッピングの上からはどこで買ったものかはわからないが、サイズや質感を見ても近所のスーパーやコンビニで売っているタイプのチョコレートではない。 一定ランクのデパート、その地下でおこなわれるバレンタインという催し物でしか購入することのできない、普段は日本にやってこないショコラティエが作った本格的なチョコレートだ。中学生の小遣いでは簡単に買えるものではないことは、当然広瀬にはわかる。
その日はバレンタインだ。
三馬は朝から取り巻きの友人たちを前に
「別にチョコレートなんて期待なんてしてねーしな!」
「俺は野球があるから女と付き合っている暇なんてねぇんだよ」
なんて得意気に語ってはいたが、本当は誰かがくれるのではないかと密かに期待していたのだろう。 野球部の練習が始まるまえに、自分の下駄箱を確認しにいったに違いない。そしてこのチョコを見つけ、どうしていいのかわからず広瀬に相談しにきたのだ 。
「何だ、プレゼントか。見る限り、チョコレートみたいだが……ははっ、正ちゃんもモテるようになったな」
「いやいや、笑ってる場合じゃないよ洋ちゃん! お、俺、女の子からこういうのもらったことないからどうしていいかわからなくって……こ、これ、アレかな? 義理チョコってやつ?」
「どうだろうな。今時、義理チョコをくばる女子なんてほとんどいないと思うが……」
「でもさぁ、これ、手紙とか名前とかも書いてなかったんだよ。誰から届いたかわからないんだけど……」
「きっと、正ちゃんに知られたくないけど、応援していることは伝えたいって奴がいたんだろう。それに、多分ちゃんと本命だと思うぜ。よかったな正ちゃん」
「えぇ……箱に何も書いてないのに何でそんなことわかるのさ……」
「これ、結構高級なチョコなんだぜ。義理チョコとか、好きでもない相手に高級なチョコをわたす相手なんていねぇよ」
「えええぇえええ!? そ、そうなんだ……うわー、どうしよう……どうしよう……」
三馬は頭を抑えると、目をぐるぐるさせながら顔を真っ赤にしている。
その姿を見ながら、広瀬は感慨に浸っていた。
(やっぱり正ちゃんはまだ初心な、小学校の頃と同じ恋愛観をもっているかわいい中学生だ……はじめて本命のチョコをもらってこんなに狼狽えてみせるなんて。 初めてみる正ちゃんのこの狼狽の表情。真っ赤になりながら神経に相手のことを考えている姿……今日もまた、新しい正ちゃんの姿が俺の目の前にある……なんて嬉しいことなんだ!)
小学校3年生の時に初めて会い、それから共に野球をする仲になり7年の時間が経っていた。
その間、三馬は広瀬の前で様々な表情を見せてくれていた。野球だけじゃなく日常を共に過ごす時間も増え、学校のイベントである林間学校や修学旅行も一緒にいった。地域の夏祭りにもだ。それだけ時間を共にしても、広瀬にはまだ知らない三馬の表情があり、それを最も近くで見る事ができる事実に最大の喜びを抱いていた。
実は、このチョコレートは広瀬が事前に買ったものである。
目的は一つ。
バレンタインの日に本命のチョコレートが入れられていたら三馬がいったいどんな反応をするのか、それが見たかったしそれを脳裏に焼き付けたかったから。ただそれだけだ。
そう、つまりいま目の前で狼狽えている三馬は、広瀬がこっそり入れたチョコレートで狼狽えているのである。
このチョコレートに対する感情は、当然広瀬が日頃三馬に世話になっている大事な相棒である、という親愛の気持ちが込められている。
だがそれ以上に!
(あぁッ……まだ俺の見てない表情の正ちゃん……まだこんな顔を見せてくれるんだな……ッ!)
自分の知らない三馬正磨を見たい。
突き抜けるほど激しい推しへの欲求が堪えきれなかった結果でしかないのだ。
「ほ、本命だったらどうしよう……こ、これ! 差出人の名前も書いてないから誰からかわからないんだけど……」
「もし必要なら本人から名を明かすと思うぞ。黙っている、という事は密かに応援したいんだろう」
「そ、そうかな……!? こっちから探さなくてもいいかな……」
「名前を知られたくないくらい恥ずかしがり屋なんだ、派手に探したらかえって隠れてしまうかもしれないな……向こうからアプローチをしてくるまで待った方がいいだろうな」
最も、待っても現れないのは広瀬はわかっていた。
何故ならそれは自分がプレゼントしたものなのだから。当然、それを三馬に言うつもりもない。
「うーん、そっか。じゃぁ、もし現れた時にちゃんと返事を考えておかなきゃダメだよな……」
それでも真剣になって相手のことを思う三馬を前に、広瀬は少し思案する。
今回は広瀬が三馬の新しい可能性を見たい欲求だけでプレゼントされたチョコレートだったが、もし他の誰かからチョコレートをもらい、本気の告白を受けた時、三馬はどうするのだろう。
「……正ちゃんは、相手が現れたら付き合ってやる気か?」
「えぇ!? な、何言ってるんだよ洋ちゃん!? そ、そんな……誰かもわからない相手に、急に言われても……俺だって困るって。それに、調子にのってオッケーしたら実はギャルのいたずらでしたーって可能性もあるだろ」
三馬は気持ちのアップダウンが激しいが、基本的に自己肯定感は低い。調子に乗っている時は失敗など考えないが、普段の状態では失敗した時のことを考えて落ち込んでしまうのだ。しかも、必用以上に羞恥心が高いから一度失敗すると立て直すのに時間がかかる悪い癖があった。
そんなの、いたずらする相手の方が悪いのだから気にしなければいいのに。
腕組みをし考える広瀬の顔をのぞき込むようにして、三馬は笑ってみせた。
「でも、たぶん相手が誰でも断ると思うな。だって俺、今は洋ちゃんと野球やるのが一番楽しいし! 中学だと休日でもずっと野球の練習があるだろ? そうしたらデートとか、そういうので相手に時間使ってあげられないし、俺は洋ちゃんと遊ぶ時間も減らしたくないから……そういうのって、相手の子には失礼だと思うんだよね」
その言葉に、広瀬は唇を噛みしめる。
これは喜びのあまり笑顔になってしまいそうな自分を諫めるためだ。
(そうか、正ちゃんは今は恋人がいるより俺と野球をするほうが楽しいし、俺と遊んでいる時間の方を大事にしてくれるのか。 まだ正ちゃんの恋愛観が小学生みたいに初々しく、色恋沙汰に関しての想像力が働いていないから恋より友情をとってくれるのはわかっている。 だがそれでも、正ちゃんの一番である自分が嬉しいし誇らしい……)
広瀬は自然に三馬と肩を組むと、優しく笑ってみせた。
「よし、それじゃぁ今日も一緒に野球の練習するか。きっと普段の正ちゃんを見ていて好きになったんなら、野球の練習する正ちゃんのこともどこかで見ているさ」
「あっ……そ、そうだ。そうだね、洋ちゃん。わかった、すぐ準備してくるから!」
そうして元の教室に戻っていく三馬の背中を見送り、広瀬は口元を抑える。
そして胸に沸く歓喜の声を、一人で噛みしめるのだった。
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