インターネット字書きマンの落書き帳
きのこさんと山ガスが出る話(トシカイファン創作です)
都市伝説解体センターって、ひょっとしてゲ謎のほのぼの二次創作をしている?
と思った人、正解です!
そして俺は龍賀家のほのぼの二次創作をする人です、よーろしーくねー!
というわけで、谷原きのこさんと山田ガスマスクが出る話を……します!
季節は冬。
人の作ったものを食べられないタイプの山田ガスマスクが、友達付き合いで鍋パに行くけどやっぱり食べられない話ですよ。
山田! お願いだ! 潔癖であってくれ!
と思った人、正解です!
そして俺は龍賀家のほのぼの二次創作をする人です、よーろしーくねー!
というわけで、谷原きのこさんと山田ガスマスクが出る話を……します!
季節は冬。
人の作ったものを食べられないタイプの山田ガスマスクが、友達付き合いで鍋パに行くけどやっぱり食べられない話ですよ。
山田! お願いだ! 潔癖であってくれ!
「つぶれたパンと鍋の底」
鍋の中には大根やらはんぺん、ウィンナー巻きといった定番おでんの具がぐつぐつと煮えている。
おい、誰か箸とって。取り皿こっちにまわして。たまごは一人一個までだからな。
ロフト付き8畳ほどのワンルームに集まった男たちは思い思いに言葉を発しながら各々が鍋の具をつつく中、山田は目を伏せながらチューハイを傾けていた。生憎中身はもう空になっている。普段はあまり酒など飲まないのだが、知らないうちにペースがあがっていたようだ。空きっ腹にアルコールを入れたせいか、普段より酔いがまわるのが早い気がする。山田はうっすら赤くなった顔を隠すように頬へ手をあて、目の前で鍋をつつく友人たちを見ていた。
その日、山田は大学の顔見知りに誘われて鍋パーティに来ていた。特別に親しい相手でもなかったのだが、今の自分が連んでいる友人たちの間ではちょっとしたしきり役を買って出る事が多い相手で、山田も過去何度か世話になっている面倒見のいい男だ。彼はよく自宅で鍋パやたこパのような企画を開いていて、今日はそれに呼ばれたのだ。
ここに来ている連中は普段から手料理なんてしない奴らが多く、久しぶりに食べる温かな手作りを喜んで食べていたが、山田は何も食べずただその様子を見ていた。
というのも、山田は昔から人の作ったものが食べられないという性分だったからだ。
両親が共働きで小さい頃から惣菜や外食が多かったのもあるのか、他人の作った料理というのがどうしても食べられないのだ。
誰かにそう説明すると、やれレストランだって料理人が作っているのだろうとか、惣菜だってスーパーで揚げているんだろうなんて言われるのだが、販売目的で調理されているものと家庭料理とでは衛生状態が全く違う。
食中毒を出さぬよう毎日厨房をしっかり除菌している店の環境と、水場もろくに掃除せずボロボロの布巾をいつまでもひっかけておくような男所帯の台所を比べるのは飲食店に対しても失礼なくらいだろう。
そんな性分があるのを自分でもわかっていて、それでも今日のパーティに参加したのは普段から優しくしてもらっている友人からの誘いを毎回断るのも悪いと思ったからに他ならない。少し顔を出して義理立てするつもりだったし、ひょっとしたらもう他人と鍋をつつくのにも慣れているかもしれない。そう期待したのだが、やはりよく知らない連中と同じ鍋をつつくなんて耐えられそうになかった。
しかも、今日の鍋パーティは皆が当然のように鍋の中に箸をつっこんでいた。
最初は食事用の箸と、おでんの具を取り分けるための菜箸が存在していたのだが、誰かがめんどくさがって普通に箸を突っ込むようになってから、皆もそれに習えと各々が箸をつっこむようになっていたのだ。
こうなってしまっては、どんなに美味しそうな料理でも食べる気が失せる。
一番最初に取り分けてもらったこんにゃくと卵しか食べていないので腹は減っていたが、これ以上は食べようと思えなくなっていた。
周囲には食べていないのを悟られないよう酒を飲んで誤魔化していたが、集まった面子が酒豪しかいないのか置かれているのは酒ばかりでソフトドリンクの類いはない。
山田は仕方なく、アルコール度の低いチューハイを手に取った。 これ以上強い酒を飲んだら、この場で眠って帰られなくなりそうだったからだ。
「なぁなぁ、山田くん。山田くんってば」
ジュースのように甘いチューハイを傾けていると、誰かが声をかける。見れば谷原が心配そうな顔をして山田を見ていた。
「あぁ、谷原サン。どしたの?」
「いや、あのねェ、なんというか。そう、実は谷原サン、昨日徹夜して今日飲み会でしょ? こんな時間だけどもうフラフラで、そろそろ家に帰ろうと思うんだけど途中で寝ちゃったりすると困るから、山田クンに送ってほしいなぁ、なんて。ほら、山田くんって谷原サンの家と割と近いじゃない? 頼むよー」
谷原が早口でそうまくしたてると、甲高い声だというのもあってか周囲にいる男たちは仕方なさそうな顔を向けた。
「おい、何だよ谷原。おまえ、徹夜だなんてどうせまたゲームだろ」
「こういう時は体調を万全にしてこいよな。ホント、谷原は仕方ない奴だぜ」
周囲の面々は、谷原だからしかたないといった顔でひとしきり笑った後、
「山田、もしよかったらそいつ送っていってくれないか? 家、近いんだろう?」
鍋パの主催者は、申し訳なさそうに山田へ頭を下げる。自分が主催じゃなければ当然、彼が送っていってたのだろう。だが、今の山田にとってはありがたい申し出だった。
「わかりました。荷物まとめたら行くよ、谷原サン」
「ホント? わー、ありがとねぇ山田くん。恩に着るよ!」
谷原は満面に笑みを浮かべると、おおよそ寝不足でフラフラだという人とは思えぬほど早く荷物をまとめ、山田をひきずるように家を出て行った。
家から出て路肩を歩いている時も、谷原は普段と変わらずあれこれと話しかけてくる。内容のほとんどが、普段山田と会う時に話すソシャゲの攻略法だ。寝不足の様子は全く見えない。きっと最初から山田を連れ出すための方便だったのだろう。
「ありがとね、谷原サン」
「えっ? えっ? どうしたの山田くん」
「だから、その……僕があまり食べてないから、心配して連れ出してくれたんだよね。正直、助かったから」
ぺこりと小さく頭下げる山田にの顔を谷原は心配そうにのぞき込んだ。
「うん、まぁ……ちょっと心配してたら、お酒で顔赤くなっちゃっててさ。何かあったらいけない、と思って……ほら、山田くんって人の作ったものとか食べられないタイプだもんね?」
「あ……そうだけど、気付いてたの、谷原サン?」
「この前栄子さんがメンバーのために作ってきたサンドウィッチも、きみだけ食べてなかったよね。あの時、人の作ったもの食べられないから、って断ってたの憶えてたんだよ。だから、今日の鍋パでキミを見た時、こんな所にいるの以外だなーと思って……そしたら、やっぱ全然食べてないからさ。やーっぱり、苦手なのに無理して来てるだなーって思って、差し出がましいかなーって気がしたけど、無理に帰らせちゃたの。ごめんねぇ」
「いや、助かったよ。あの人と付き合いは続けたいけど、手料理ってどうしてもだめだから」
「うんうん、わかるよーそういうの。人には苦手なものって絶対あるもんねー」
地下鉄の入り口にさしかかった時、谷原は何かを思いだした顔をして鞄をあさる。
そしてコンビニのビニール袋を山田に押し付けた。
「そうだ、山田くん全然食事してないでしょ? これ、中にパンとお茶が入ってる。コンビニのだから、山田くんも食べられると思うよ、ずっとお酒ばっかり飲んでたでしょ。家に帰ったらしっかり水分とっておいてね。そうしないと、明日残っちゃうよ」
「あ、ありがとう……谷原サンは?」
「谷原さんはねぇ、地下鉄じゃなくて向こうの駅なの。だからここでお別れだよ。ばいばーい! 気をつけて帰ってねー」
谷原は笑いながら手を振って、人混みへと消えていく。
向こうの駅とは、この地下鉄がある駅とはまた別の道を通る駅のことだろう。山田が心配で駅まで付き添ってくれたのだ。
長い地下鉄の階段を降り、駅のホームで周囲に人がいないのを確認すると山田は渡されたコンビニ袋を開けてみる。
中には、鞄の下に入っていたせいで潰れてペチャンコに圧縮されたツナサンドが入っていた。
「うわ、ぺっちゃんこでペラペラになってる。中身も出ちゃってるし……」
袋は破れていないし、賞味期限も切れていない。見る限り昼頃に買ったものだが、鞄の奥底に詰め込まれていたので袋全体がツナマヨまみれになっていた。
「ほんと、谷原さんってカッコイイんだけど、肝心なところでかっこつかない人だよね」
山田は苦笑いをしながら、袋を開けてツナサンドをかじる。
パンはすっかり圧縮され袋も随分汚れていたが、久しぶりに食べる食事だったのもあってか、普段より美味しく感じた。
鍋の中には大根やらはんぺん、ウィンナー巻きといった定番おでんの具がぐつぐつと煮えている。
おい、誰か箸とって。取り皿こっちにまわして。たまごは一人一個までだからな。
ロフト付き8畳ほどのワンルームに集まった男たちは思い思いに言葉を発しながら各々が鍋の具をつつく中、山田は目を伏せながらチューハイを傾けていた。生憎中身はもう空になっている。普段はあまり酒など飲まないのだが、知らないうちにペースがあがっていたようだ。空きっ腹にアルコールを入れたせいか、普段より酔いがまわるのが早い気がする。山田はうっすら赤くなった顔を隠すように頬へ手をあて、目の前で鍋をつつく友人たちを見ていた。
その日、山田は大学の顔見知りに誘われて鍋パーティに来ていた。特別に親しい相手でもなかったのだが、今の自分が連んでいる友人たちの間ではちょっとしたしきり役を買って出る事が多い相手で、山田も過去何度か世話になっている面倒見のいい男だ。彼はよく自宅で鍋パやたこパのような企画を開いていて、今日はそれに呼ばれたのだ。
ここに来ている連中は普段から手料理なんてしない奴らが多く、久しぶりに食べる温かな手作りを喜んで食べていたが、山田は何も食べずただその様子を見ていた。
というのも、山田は昔から人の作ったものが食べられないという性分だったからだ。
両親が共働きで小さい頃から惣菜や外食が多かったのもあるのか、他人の作った料理というのがどうしても食べられないのだ。
誰かにそう説明すると、やれレストランだって料理人が作っているのだろうとか、惣菜だってスーパーで揚げているんだろうなんて言われるのだが、販売目的で調理されているものと家庭料理とでは衛生状態が全く違う。
食中毒を出さぬよう毎日厨房をしっかり除菌している店の環境と、水場もろくに掃除せずボロボロの布巾をいつまでもひっかけておくような男所帯の台所を比べるのは飲食店に対しても失礼なくらいだろう。
そんな性分があるのを自分でもわかっていて、それでも今日のパーティに参加したのは普段から優しくしてもらっている友人からの誘いを毎回断るのも悪いと思ったからに他ならない。少し顔を出して義理立てするつもりだったし、ひょっとしたらもう他人と鍋をつつくのにも慣れているかもしれない。そう期待したのだが、やはりよく知らない連中と同じ鍋をつつくなんて耐えられそうになかった。
しかも、今日の鍋パーティは皆が当然のように鍋の中に箸をつっこんでいた。
最初は食事用の箸と、おでんの具を取り分けるための菜箸が存在していたのだが、誰かがめんどくさがって普通に箸を突っ込むようになってから、皆もそれに習えと各々が箸をつっこむようになっていたのだ。
こうなってしまっては、どんなに美味しそうな料理でも食べる気が失せる。
一番最初に取り分けてもらったこんにゃくと卵しか食べていないので腹は減っていたが、これ以上は食べようと思えなくなっていた。
周囲には食べていないのを悟られないよう酒を飲んで誤魔化していたが、集まった面子が酒豪しかいないのか置かれているのは酒ばかりでソフトドリンクの類いはない。
山田は仕方なく、アルコール度の低いチューハイを手に取った。 これ以上強い酒を飲んだら、この場で眠って帰られなくなりそうだったからだ。
「なぁなぁ、山田くん。山田くんってば」
ジュースのように甘いチューハイを傾けていると、誰かが声をかける。見れば谷原が心配そうな顔をして山田を見ていた。
「あぁ、谷原サン。どしたの?」
「いや、あのねェ、なんというか。そう、実は谷原サン、昨日徹夜して今日飲み会でしょ? こんな時間だけどもうフラフラで、そろそろ家に帰ろうと思うんだけど途中で寝ちゃったりすると困るから、山田クンに送ってほしいなぁ、なんて。ほら、山田くんって谷原サンの家と割と近いじゃない? 頼むよー」
谷原が早口でそうまくしたてると、甲高い声だというのもあってか周囲にいる男たちは仕方なさそうな顔を向けた。
「おい、何だよ谷原。おまえ、徹夜だなんてどうせまたゲームだろ」
「こういう時は体調を万全にしてこいよな。ホント、谷原は仕方ない奴だぜ」
周囲の面々は、谷原だからしかたないといった顔でひとしきり笑った後、
「山田、もしよかったらそいつ送っていってくれないか? 家、近いんだろう?」
鍋パの主催者は、申し訳なさそうに山田へ頭を下げる。自分が主催じゃなければ当然、彼が送っていってたのだろう。だが、今の山田にとってはありがたい申し出だった。
「わかりました。荷物まとめたら行くよ、谷原サン」
「ホント? わー、ありがとねぇ山田くん。恩に着るよ!」
谷原は満面に笑みを浮かべると、おおよそ寝不足でフラフラだという人とは思えぬほど早く荷物をまとめ、山田をひきずるように家を出て行った。
家から出て路肩を歩いている時も、谷原は普段と変わらずあれこれと話しかけてくる。内容のほとんどが、普段山田と会う時に話すソシャゲの攻略法だ。寝不足の様子は全く見えない。きっと最初から山田を連れ出すための方便だったのだろう。
「ありがとね、谷原サン」
「えっ? えっ? どうしたの山田くん」
「だから、その……僕があまり食べてないから、心配して連れ出してくれたんだよね。正直、助かったから」
ぺこりと小さく頭下げる山田にの顔を谷原は心配そうにのぞき込んだ。
「うん、まぁ……ちょっと心配してたら、お酒で顔赤くなっちゃっててさ。何かあったらいけない、と思って……ほら、山田くんって人の作ったものとか食べられないタイプだもんね?」
「あ……そうだけど、気付いてたの、谷原サン?」
「この前栄子さんがメンバーのために作ってきたサンドウィッチも、きみだけ食べてなかったよね。あの時、人の作ったもの食べられないから、って断ってたの憶えてたんだよ。だから、今日の鍋パでキミを見た時、こんな所にいるの以外だなーと思って……そしたら、やっぱ全然食べてないからさ。やーっぱり、苦手なのに無理して来てるだなーって思って、差し出がましいかなーって気がしたけど、無理に帰らせちゃたの。ごめんねぇ」
「いや、助かったよ。あの人と付き合いは続けたいけど、手料理ってどうしてもだめだから」
「うんうん、わかるよーそういうの。人には苦手なものって絶対あるもんねー」
地下鉄の入り口にさしかかった時、谷原は何かを思いだした顔をして鞄をあさる。
そしてコンビニのビニール袋を山田に押し付けた。
「そうだ、山田くん全然食事してないでしょ? これ、中にパンとお茶が入ってる。コンビニのだから、山田くんも食べられると思うよ、ずっとお酒ばっかり飲んでたでしょ。家に帰ったらしっかり水分とっておいてね。そうしないと、明日残っちゃうよ」
「あ、ありがとう……谷原サンは?」
「谷原さんはねぇ、地下鉄じゃなくて向こうの駅なの。だからここでお別れだよ。ばいばーい! 気をつけて帰ってねー」
谷原は笑いながら手を振って、人混みへと消えていく。
向こうの駅とは、この地下鉄がある駅とはまた別の道を通る駅のことだろう。山田が心配で駅まで付き添ってくれたのだ。
長い地下鉄の階段を降り、駅のホームで周囲に人がいないのを確認すると山田は渡されたコンビニ袋を開けてみる。
中には、鞄の下に入っていたせいで潰れてペチャンコに圧縮されたツナサンドが入っていた。
「うわ、ぺっちゃんこでペラペラになってる。中身も出ちゃってるし……」
袋は破れていないし、賞味期限も切れていない。見る限り昼頃に買ったものだが、鞄の奥底に詰め込まれていたので袋全体がツナマヨまみれになっていた。
「ほんと、谷原さんってカッコイイんだけど、肝心なところでかっこつかない人だよね」
山田は苦笑いをしながら、袋を開けてツナサンドをかじる。
パンはすっかり圧縮され袋も随分汚れていたが、久しぶりに食べる食事だったのもあってか、普段より美味しく感じた。
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